『アンジェの平和』
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/14 08:04 UTC 版)
「マリー・ド・メディシスの生涯」の記事における「『アンジェの平和』」の解説
『アンジェの平和』には危機から逃れるマリーが描かれている。1620年にマリーはルイ13世に対して反乱を起こしたが、レ・ポン=ド=セの戦いで敗北し、アンジェで不本意な休戦協定にサインさせられた。マリーが保護を求めていることが、治安を司る神殿、柱間の不吉な象徴物、空を覆う黒雲で表現され、さらに不本意な休戦を受け入れることに対する動揺を意味する象徴物も描かれている。円形の神殿は古代から現代に至るまで見られる構造で、ユノとマリー自身に関係のあるイオニア様式の建物でもある。神殿上部のくぼみには「アウグスタの保護 (Securitati Augustae)」と刻まれた銘板があり、この建物が王太后を保護する神殿であることを表している。『アンジェの和睦』がマリーの安全、あるいは保護を主題とした作品であるかについては議論があるが、敗北に屈することのないマリーの精神性が描かれていることは確かである。古代ローマ風の情景に描かれたマリーは神の力の体現者として描かれており、マリーの顔を照らす光がそのことを鑑賞者に訴えかけている。これら様々な寓意や象徴を突き詰めていくと、マリーの神格化に収斂していく。異なる衣装を着用した2人の女性はどちらも「平和」の擬人化であり、このことからもルーベンスは『アンジェの平和』の鑑賞者に困惑あるいは興味を与えることによって、この作品をより深く全体を通じて鑑賞してもらうことを期待していたと考えられている。
※この「『アンジェの平和』」の解説は、「マリー・ド・メディシスの生涯」の解説の一部です。
「『アンジェの平和』」を含む「マリー・ド・メディシスの生涯」の記事については、「マリー・ド・メディシスの生涯」の概要を参照ください。
- 『アンジェの平和』のページへのリンク