「日本国民」の解釈
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/06 07:35 UTC 版)
「日本国憲法第9条」の記事における「「日本国民」の解釈」の解説
憲法9条は「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し」という文で始まる。この「日本国民」とは個々の国民ではなく全体としての日本国民もしくは一体としての日本国民を指すとされる。本条の趣旨からみて個々の国民を指すとみるべきではなく、通例においても個々の国民を指す場合には「すべて国民は」(例として日本国憲法第25条・日本国憲法第26条)あるいは「国民は」(例として日本国憲法第30条)の文言が用いられることが根拠とされる。そして、「日本国民」というこの文言は日本国と同義であるとされる。なお、この点については、日本国民と一体化した日本国政府と同義であるとみる説 がある一方で、主権者としての日本国民を指すのであって日本国政府と同義ではないとする説 もある。百里基地訴訟第一審判決では日本国政府を含むとしている。 以上のように「日本国民」は全体としての国民あるいは一体としての国民を指すとみるべきと理解されており、このことから個々の国民が自由な意思で各自の判断の下に外国軍隊や国連軍に志願し参加することは直接本条の問題とするところではないとみるのが多数説である。これに対して国連軍への参加の場合を除いてこのような行為は憲法の精神に反するとみる見解もある。しかし、この見解に対しては憲法は基本的には国民ではなく国家機関を直接の対象とする法規範であり(憲法の対国家性)、本条中の「国権の発動たる」の文言からも「日本国民」の文言に個々の国民を含めて考えるには無理があるとの批判がある。なお、本条の問題とは別に立法政策によってこれらの行為を禁止することは可能であると考えられている。 このほか国民が個人の立場で軍需産業に従事することは本条に反すると説く見解があるが、「日本国民」は個々の国民を意味するものではないとみる立場からはこのような解釈は妥当ではないという批判がある。 日本と兵役義務のある国の二重国籍者が正規の軍人として軍事行動に参加している例があるが議論は行われていない。
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