IMI タボールAR21
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/24 06:10 UTC 版)
TAR-21 | |
IMI タボール TAR-21 | |
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種類 | 軍用小銃 |
製造国 | イスラエル |
設計・製造 | IMI/IWI |
仕様 | |
種別 | アサルトライフル |
口径 | 5.56mm |
銃身長 | 460mm |
ライフリング | 6条右回り・7インチ一回転 |
使用弾薬 | 5.56mm NATO弾 |
装弾数 | 30発(湾曲箱形弾倉、M16系STANAG マガジン) |
作動方式 | ロングストロークピストン方式 |
全長 | 725mm |
重量 | 3,300g(オプション装備時)/2,800g(オプション非装備時) |
発射速度 | 700-1,000発/分 |
銃口初速 | 950m/秒 |
有効射程 | 300-500m |
歴史 | |
設計年 | 1997年-2001年 |
製造期間 | 2002年- |
配備期間 | 2006年- |
配備先 | #タボールの採用状況 |
関連戦争・紛争 |
イスラエル:ガザ侵攻 (2006年)、レバノン侵攻 (2006年)、ガザ紛争 (2008年-2009年)など グルジア:南オセチア紛争 (2008年) タイ:カンボジア・タイ国境紛争 (2008年) |
バリエーション | #タボールのバリエーション |
概要
「タボール」(ヘブライ語:תבור「変貌」)とは、旧約聖書に登場し、新約聖書においてもイエスが昇天したと伝えられているガリラヤ地方のタボール山(Mt.Tavor、Taborとも表記されるが、これはヘブライ語のVとBはほぼ同じ発音であることに起因する)から取られた。機種型式(基礎モデル)名および通称として使われる「TAR-21」とは「Tavor Assault Rifle - 21st Century=21世紀のタボール・アサルトライフル」の略である。
ちなみにタボールと同時期に登場したアサルトライフルには、21世紀を目前に設計されたことから、タボールと同様に次世代の軍用小銃という意味合いで「21」を付けたアサルトライフルが数種存在する。有名なものでは、シンガポールSTK社設計のSAR21、イスラエル設計のガリル・アサルトライフルをライセンス生産している南アフリカデネル・グループ・ベクター設計のCR21がある。
開発された背景
タボールが設計された背景には、アメリカ軍から格安で購入してイスラエル軍に支給されていたM16A1、CAR-15、そして軍の一部に支給されていたガリルを置き換えることと、輸出用が主体として設計されていたガリルが旧式化したことにある。
このため、イスラエル軍の近代化と現代の兵器マーケットに対応するため、新型アサルトライフルの開発をイスラエル軍はIMI社の小火器部門(当時)に命じた。その後、IMI社のデザイナーであったポーランド出身のザルマン・シェベス(Zalman Shebs)を開発責任者とするチーム「フォームテック」が組織され、1994年より試作品「AAR90」(アドバンス・アサルト・ライフル90)として5世代に渡り研究開発が続けられた[1]。
当時のイスラエル軍が主として提示した"車両からの出入りや市街戦を容易に行うべく全長は短く、だが野戦時でも平坦な中東の戦場に対応するため射程や威力は十分に確保する"と言う条件を満たすライフルはブルパップ方式であるとチームは判断し、彼らが他の各国のアサルトライフルを比較・研究して開発し、1997年に基礎を確立させた結果が、この「タボール」なのである。
完成型は1999年のミリポルで初公開された。
特徴・基本仕様
ステアー社で設計されたAUGの初期型のストックにハンドガードを追加し、なおかつ「ごつく」したような、イスラエル製らしい外見をしたブルパップ方式のスタイルである。トリガーガードと一体化したグリップ上部にはバレルを冷却させるための通風孔がある。肩付けする部分のバットプレートは開閉可能で、内部にあるボルトを取り出して掃除することが可能である。コッキングハンドル(手で操作して弾を薬室に送り込むための可動式取っ手)部分はバレル冷却用の通風孔を兼ねている。このコッキングハンドルは独立式であり、ボルトの動きとは連動しないため、射撃中に動く事はない。バレルがレシーバー以外の部位には直接接触しない「フリーフローティング方式」を採用し、射撃時の命中精度の安定化やフルオート射撃時のバレル加熱によるストックの溶け出しを防止している。
外観のストックにはAUGと同様のセンサテック(合成樹脂)を採用し、内部パーツにはセンサテックとアルミニウム合金を多用している。これにより後述するスタンダード仕様・TAR-21では約2,800g(全オプションパーツ無し)という、アサルトライフルでは1、2を争う軽さを誇り、腐食にも強い。主要機器があるストック後部に重量を集中させることで、即座に銃身を持ち上げ構えて戦闘態勢へ移りやすくしているが、バランスが後方寄りになりやすく、人によっては構えた時の安定性が悪く感じる問題も残されている(ただし、これについては後述のバイポッド(二脚)、M203 グレネードランチャー、フォアグリップなどを取り付け、前方への重量を増やせば若干改善できる)。
外部デザインに関する問題として、特にブルパップ方式でのショルダーストック部分は主要機器の集約する場所だけあって大きくなりがちで、見た目としても重く感じてしまう。そこで開発総責任者のシェベスは、ストック全体に段差やラインを多めに彫り込んだ独特なデザインで、ライフル自体を小さく見せて視覚的に解決する事とした(それでも実際に後方寄りな重量バランスのため、ユーザーの判断により前述の方法を取られる事もある)。
現行モデルのハンドガードには、握りやすさを改善するための盛り上がった線が六本追加された他、軽量化対策や握りやすさの改善策としてトリガーガード/グリップにも溝を彫り込んでいる。最近のモデルではピカティニー・レールを標準装備した改良型ハンドガードが供給されている。TAR-21、CTAR-21、STAR-21、GTAR-21のタボールのストックは共通だが、X95のみ様々な条件を前提とするため別デザインの物となっている(後述するX95の項目を参照)。
作動機構は、AK-47をほぼそのままコピーしたガリルとは異なり、新規設計のガスオペレーション/ロングストロークピストン/ロテイティングボルト・システムを採用している。これは、AR-18の機構をアレンジした物で、オリジナルとの違いはショートストローク式ピストンをロングストローク式ピストンに置き換え、ボルトロッキングラグを他には見られない大小4個の特異なデザインに変更した点にある。このため、AR-18やM16系で採用されている7個のマイクロロッキングラグよりもボルト作動の確実性やクリーニングの容易さを高めたものとなっている。
工作精度や製造ノウハウの安定していない最初期の試作モデルでは、ガリルより粉塵に弱いとされるM4A1と比べても作動不良が続出したらしく、一度は1998年に行われたイスラエル軍新規制式突撃銃トライアルにおいて落選してしまった。しかし、テストの結果を反映させ、また、工作精度やノウハウそして生産ライン確立の過程で徹底的に改良され、2003年頃にようやく完成した量産モデルの性能がイスラエル軍に認められて採用された(ちなみに、このような完成までの経緯はウージーやガリル、ネゲヴなど、IWI社製銃器全般に共通する事柄である)。
口径5.56x45mm(SS109)系列の弾薬を使用し、基本的にはM16系(STANAGタイプ)の30発マガジンを使用するが、アダプターを併用することにより、ガリル用の35発マガジンも流用できるなど、既存アサルトライフルとのマガジンの共通性を図っている。理論的にはM16用100発ドラムマガジンや、ガリルARM用50発ロングマガジンも装着することは可能ではあるが、ブルパップ方式のデザイン上、構えや安定性が悪くなるため推奨されない。
同様にブルパップ方式のデザイン上、アイアンサイト(金属式照準器)で照準を付けることが難しいので、タボールにはドットサイト(光学式照準器)が標準装備としてバーチカル・グリップ上部の通風孔の上に装着可能であるが、後に非常用アイアンサイトも追加された。これらについては後述する。ブルパップ方式は基本的に薬莢の排出方向で右利きか左利きかで改造を施さなくてはいけないが、タボールはコッキングハンドルを反対側に付け変え、排出しない排莢口を塞ぐといった最小限の改造で両利き対応としている。なお、コッキングハンドルの無い部分にはピカティニー・レールが装着可能で、様々なオプション機器を取り付け可能である。同様にセレクタースイッチも利き手により変更されるほか、イスラエル軍において広く扱われるM16系突撃銃のスイッチの位置と合わせており、移行した際の違和感を少なくしている。
他に、構えた射手の顔面にチャンバーが存在するため、シェベスは万一の弾薬の異常燃焼事故に対処すべく、高圧ガスを前方へ逃がして被害を最小限に食い止めるメカニズムを新たに開発した。このタボール独自のメカニズムには特許が下りている[2]。また、最終弾の発射後にはチャンバーを開いたままとするボルト・ホールドオープン機構も備えている。
フラッシュハイダー(消炎器)にはライフルグレネードやサウンド・サプレッサー(サイレンサー、減音器)を装着可能で、銃身には銃剣(バヨネット)装着用のアタッチメントを取り付けて銃剣戦闘も可能としている。ハンドガードは取り外し可能で、取り替えて専用のオプションを取り付けることができる。
なお、2009年度のIWI社の大規模な方針転換およびカタログリニューアル計画の一つとして、タボールの一種として開発されたが特異な位置付けにあったマイクロ・タボールMTAR-21をX95に改称、派生の別モデルとして完全に独立させた(後述)。
- ^ 月刊『Gun』2008年1月号 国際出版株式会社 特集「ミリポル2007」89ページ
- ^ 月刊『Gun』2008年1月号 国際出版株式会社 特集「ミリポル2007」89~90ページ
- ^ 月刊『ガンマガジン』2012年9月号 ユニバーサル出版株式会社 特集「ショット・ショー2012」120ページ
- ^ イスラエル国防軍公式HP
- ^ RPCフォート社公式HP
- ^ Difesa Brasil.com
- ^ 月刊『Gun』2005年3月号 国際出版株式会社 特集「バイオハザードⅡアポカリプスのステージガン」71-73ページ
- 1 IMI タボールAR21とは
- 2 IMI タボールAR21の概要
- 3 バリエーション
- 4 タボールの採用状況
- 5 トイガンのタボール
- 6 参考文献
固有名詞の分類
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