鉄道ファン 鉄道ファンによる迷惑・犯罪行為

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鉄道ファン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/12 15:09 UTC 版)

鉄道ファンによる迷惑・犯罪行為

左下の寝台列車を撮影しようとホームに殺到する鉄道ファン(東京駅

鉄道趣味に関する活動の中で、法律やマナーをわきまえず迷惑行為を繰り返す者もいる。

車内や駅構内で無謀な撮影・収録を試みるなどの他の利用者に迷惑となる行為や、それに伴う駅員・警備員との対立のほか、鉄道会社の所有物を盗むという犯罪行為すら発生している。これら悪質なファンの行動を原因とする一般の乗客や鉄道沿線の近隣住民とのトラブルも少なくない。また、一部の鉄道会社ではこれらの迷惑行為を考慮して、ファンサービスの企画(動態保存車両の特別運転や車両基地の一般公開など)を縮小、もしくは一切行わない方針とする傾向も見られる。

日本でこのような迷惑行為が増加したのは、1970年代の蒸気機関車全廃に伴う「SLブーム」でファンが著しく広がり、それに続く「ブルートレインブーム」で当時の若年層がより流入したことが原因であると考えられている。この時代、列車撮影が盛んになるとともに、撮影名所での場所取り、不法侵入や危険な区域への立ち入り、窃盗破壊行為、列車妨害等々の無法行為や、過熱した鉄道ファンが沿線で夜行列車撮影のために深夜徘徊することが問題になった[注釈 11]

鉄道ファンは自動車ファンなどと異なり、趣味対象を直接所有することは極めて難しい。鉄道関係のイベントで解体された車両の備品などを販売している事例はあるが、車両そのものの譲渡や寄贈を受ける(斎藤茂太など)場合には相応の資金力やコネクションが要求される[注釈 12]。そうした背景もあってか、保存車両や鉄道敷地内の備品が盗難されることもある[注釈 13]。イベント列車などの運転、廃車回送、路線の開業あるいは廃止などでファンが集まる際、上記の如くマナーに欠ける者の迷惑行為により、鉄道ファンに対する世間の評価を低下させているのが現状である。

以下は迷惑行為の例である。

  • 犯罪・法令違反
    • 鉄道車両・関連施設の部品・備品等の窃盗破壊・除去[26][27][28][29][30][31]
    • 立入が禁止されている鉄道用地などへの無断侵入[32][33]
    • 鉄道用地にドローンマルチコプター)を飛ばす行為
    • 「列車の撮影に邪魔」と思しき理由で公有地や他人の私有地にある樹木などを勝手に伐採する犯罪行為も続発しておいる(所謂「刈り撮り鉄」)[34]
    • 第1種踏切で遮断中の踏切を強行突破して撮影する行為や、第3種と第4種踏切で通過中の列車に近寄り撮影する行為
    • 撮影地へのゴミの投棄
    • 鉄道員の制服を詐取する行為[35]
    • 運転室への侵入(鉄道営業法第33条により罰せられる)[36]
  • 迷惑行為・マナー違反(犯罪・法令違反以外。なお程度の度合いにより、殺人罪、暴行罪、傷害罪、威力業務妨害罪、公務執行妨害罪、往来危険罪等の刑罰の適用を受ける場合あり)
    • ホーム白線からはみ出た位置での写真撮影(冒頭写真を参考)
    • 線路敷地内へはみ出した機器による撮影
    • 軌道敷へ侵入しての撮影[37]
    • 走行している列車に向かってのフラッシュ撮影(運転士の視界を損なったり、信号確認などに悪影響を及ぼすおそれがあり危険)
    • ホームや車内通路などにおける脚立・三脚の使用による、他一般利用客の通行の阻害(俗に言う「ひな壇」)
    • 走行中の列車の窓から手を出す、印刷物を掲げるなどの行為
    • 鉄道車両の廃車反対、保存や譲渡といった、鉄道会社に対する無理な要望。特に保存については要求だけ行い、保存や維持管理にかかる経費の支出といった行為について消極的な、いわゆる「口は出しても金は出さない」姿勢が多く見られる[38]
    • 鉄道車両やサービスに対して特定の鉄道事業者の方針を絶対視する、あるいは個人の好みに合わないという理由から[39]鉄道事業者を批判・中傷する行為。こうした批判行為は一般のファンのみならず、一部の鉄道雑誌や専門書などでも見られ、著者の偏見や出版社側が事実関係を検証しないために起こることが多い[40]
    • 「撮影時フレーム内に入る」などの理由で他の鉄道ファンや一般利用者、沿線住民などに罵声を浴びせる行為(俗に言う「罵声大会」)[41]
    • 趣味活動を注意・制止する駅員や警備員、鉄道警察などとの争い。
    • 本人の承諾を得ずに鉄道関係の従業員を勝手に撮影し、その画像をネット上で公開する。
    • 撮影場所に向かうために、キセル乗車をする。

注釈

  1. ^ 特に朝鮮半島では、軍事境界線付近と北朝鮮となったエリアでは、鉄道が残っていても自由に旅行することはできない。
  2. ^ かつて多数運行されていた夜行列車では代わりにもなった。
  3. ^ 「てっちゃん」「みっちゃん」ともに、アクセントは「ちゃ」の場所にある。なお、「鉄ちゃん」の語は、一般のゲームプレイヤーにも人気を博した鉄道運転ゲーム『電車でGO!』のナビゲーション役キャラクターの名前としても用いられている。
  4. ^ なお、1995年に連載・刊行が始まった、山口よしのぶの漫画『名物!たびてつ友の会』単行本の、読者からの手紙を紹介するページに既に「鉄子」の語が見えることから、1990年代には「鉄子」の語が存在していたことがうかがえる。
  5. ^ 2007年4月から同年6月までTBS系で放送されていたテレビドラマ『特急田中3号』では主に「テツ」の愛称を用いていた。
  6. ^ (内容のほとんどは鉄道とは関係ない)オタク文化を扱うテレビ番組において「鉄道オタク」という言葉が使われ(実際はそうでないにもかかわらず)鉄道趣味者は全員「オタク」であるかのような解説がなされていることや、鉄道ファンにオタク文化の代表である二次元萌えアニメを好む人が多いことも、この語を浸透させる要因にもなっている。
  7. ^ 「『ガラパゴス化した日本の鉄道』そのものに興味を抱く人」と、「海外の鉄道に比べて日本の鉄道同士だと類似点が多く、プラスアルファという形で追究しやすいと感じる人」の2パターンがある。
  8. ^ 例えば、『鉄道ジャーナル』1997年3月号において、ヨーロッパの鉄道に関する特集を約50ページにわたって特集したが、当該月号の読者の人気投票では、日本国内の記事が軒並み上位に入り、日本国外の記事はいずれも不人気だった、という事例がある。
  9. ^ 鉄道のみならず、道路橋、道路トンネル、通信施設(電波塔)、軍事基地ではない空港飛行場港湾、国によってはスラムなども撮影が禁止されていることが多く、身柄を拘束された場合、撮影済みフィルムの没収や画像データの消去という処分が下される。
  10. ^ 鉄道ファンに対するものではないが、テレビ番組『世界の車窓から』の撮影班がテロ事件後のロケーション撮影においてニューヨークペンシルベニア駅での撮影時に「2度尋問された」という案件があり、沿線での列車撮影時には「3度捕まった」ほか、サスケハナ川橋梁での撮影のためにカメラを設置していた際には貨物列車運転士により警察に通報された、と撮影日記に記している。[8]
  11. ^ エスカレートしすぎたゆえに、1976年(昭和51年)には小学生が写真撮影のために線路敷内に侵入し、列車に轢かれて死亡する事故(京阪100年号事故)が発生し、大都市近辺における蒸気機関車の保存運転が事実上不可能となる(事故防止の沿線の警備にコストが掛かりすぎるため)など、結果としてファン自身の不利益になるような事態もある。
  12. ^ 車両自体は無償譲渡の場合が多い(鉄道会社にしてみれば、本来必要な解体費用がかからないため)が、保存・保管のための用地の準備、輸送・補修等に莫大な費用を要する。
  13. ^ こうした行為は俗に撮り鉄にかけて盗り鉄などと揶揄されている。
  14. ^ 杵屋栄二も戦災にあいコレクションを失っている。

出典

  1. ^ a b 乗り鉄入門:第1回 そもそも「乗り鉄」ってどんな趣味? マイナビニュース(2013年7月29日)2022年10月19日閲覧
  2. ^ <杜の都のチャレン人>絵を通じ人と人連結 鉄道復興を支援する「描き鉄」[リンク切れ]河北新報
  3. ^ 一例として:弘前市に「空想」の地下鉄路線図 大学生が考案、話題に 朝日新聞デジタル(2020年1月30日)2022年10月19日閲覧
  4. ^ 神奈川県高鉄連
  5. ^ 関東学鉄連公式ブログより
  6. ^ 貨物時刻表 人気じわり 一般販売30年、年2万部迫る 特集や写真で読者つかむ」日本経済新聞ニュースサイト(2021年5月13日)2022年10月19日閲覧
  7. ^ 愛用の時刻表はどれ?「西村京太郎」創作の秘密 誰もが知りたかった疑問を鉄子が直撃 東洋経済オンライン(2019年4月27日)2022年10月19日閲覧
  8. ^ テレビ朝日テレコムスタッフ. “アメリカ編 撮影日記”. 2018年8月11日閲覧。
  9. ^ MATERFER
  10. ^ BOM SINAL
  11. ^ Frateschi
  12. ^ MINITRENES FERROMODELISMO ARGENTINO
  13. ^ amigosdeltren.cl
  14. ^ CazaTrenes
  15. ^ Centro-Oeste.Brasil
  16. ^ REVISTA FERROVIÁRIA
  17. ^ Todo Trenes
  18. ^ REVISTA RDI
  19. ^ Tren Rodante
  20. ^ Ferroclub Argentino CDP Escalada
  21. ^ Ferroaficionados argentinos
  22. ^ Grupo Ferroaficionados Uruguay
  23. ^ 齊藤 啓介 (2021年6月26日). “開館準備進む、過去と未来をつなぐ台湾の国家鉄道博物館”. 公益財団法人ニッポンドットコム. 2022年4月28日閲覧。
  24. ^ 行くぞ!最果て!秘境×鉄道「モンゴル 絶景列車[リンク切れ]NHK(2020年5月12日閲覧)
  25. ^ 高蕾 (2021年5月14日). “民政部公布中国教育服務行業協会等12家涉嫌非法社会組織名單”. 新華社. https://china.huanqiu.com/article/437Rpk8cPNV 2022年7月28日閲覧。 
  26. ^ “ワル鉄”暗躍? 廃線間近な三木鉄道で盗難相次ぐ[リンク切れ]産経新聞(2008年3月19日)
  27. ^ 寄せ書きノート9冊なくなる 「秘境」で人気のJR坪尻駅(三好)[リンク切れ]徳島新聞(2009年4月24日)
  28. ^ 秘境駅のスタンプまた受難 坪尻駅から盗難?8月下旬になくなる」徳島新聞(2018年12月18日)
  29. ^ 列車から車内放送用の機器盗まれる JR北「不届き者」朝日新聞(2016年5月20日)
  30. ^ 特急のヘッドマークなど134点盗んだ疑い 男を追送検 朝日新聞(2016年6月3日)
  31. ^ SL撮影の邪魔?鉄道標識なくなる 山口、窃盗容疑捜査」朝日新聞(2017年8月1日)
  32. ^ 「撮り鉄」侵入でJRに遅れ 関西線の線路脇に三脚 日本経済新聞ニュースサイト掲載の共同通信記事(2010年5月9日)
  33. ^ 「秘境駅」撮影、線路に入った会社員を書類送検 読売新聞(2012年2月21日)
  34. ^ 沿線で勝手に樹木伐採「刈り撮り鉄」の大問題 撮影の邪魔?他人の所有物なら器物損壊罪に 東洋経済オンライン(2021年5月8日)2022年10月19日閲覧
  35. ^ 詐欺事件:鉄子と呼ばれる鉄道好きの女、JR西制服を詐取容疑」毎日新聞(2013年2月26日)
  36. ^ 東武6050系電車東武10000系電車等の増解結を伴う運用をする形式には必ずその旨が車内貫通扉上に記載されている。
  37. ^ 線路内の“撮り鉄”慌てて逃げるも……電車は緊急停止ANN(2021年3月26日)
  38. ^ 鉄道ファン』1986年11月号,p.132
  39. ^ 『鉄道ファン』1994年6月号,p.135
  40. ^ 坂上茂樹「高木 蒸気機関車技術論に対する疑問以上のもの大阪市立大学大学院経済学研究科 Discussion Paper No.118, 2019年4月3日(PDF)
  41. ^ 「おいこら、どけぇ! 下がれ!」 迫る「Xデー」“葬式鉄”暴走を警戒する関係者(3/7)産経デジタルiza 2015年1月22日
  42. ^ 株式会社野村総合研究所広報部『NRIニュースレターVol.38 データ潮流:延べ172万人、4110億円規模の「オタク」市場』 (PDF) [リンク切れ](2005年10月20日)
  43. ^ (繁体字中国語)有社會關懷的熱愛 就不會變壞蘇昭旭老師的全球鐵道視野部落格
  44. ^ (繁体字中国語)[1]2015年11月20日,聯合報
  45. ^ (繁体字中国語)鐵道迷瘋「京急700」 闖淨空區3米近拍害列車急煞2016年12月12日,ETNEWS
  46. ^ (繁体字中国語)直接闖進軌道、禁入也硬擠! 鐵道迷搶拍光華號行為超脫序2016年10月30日,ETNEWS
  47. ^ 伊藤一郎「鉄道趣味のあゆみ」『鉄道ジャーナル』1972年10月号、P76
  48. ^ 「鉄道省令第17号 国有鉄道軍用資源秘密保護規則」『官報』1939年9月28日(国立国会図書館デジタルコレクション)
  49. ^ 【TOKYO発】有料撮影会も次々 撮り鉄ブームのいま 日常の姿にも鉄道愛を/最長寿月刊誌1000号編集長に聞く東京新聞』朝刊2022年6月15日26面(2023年8月15日閲覧)





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