空挺戦車 空挺戦車の一覧

空挺戦車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/14 14:09 UTC 版)

空挺戦車の一覧

第二次世界大戦中

L3 豆戦車 (L3-33)
サヴォイア・マルケッティ SM.75

イタリア王国

  • L3 空挺戦車
L3 豆戦車 (L3の派生型の一つとしての空挺型が、L3 空挺戦車である。母機となったサヴォイア・マルケッティ SM.82はサヴォイア・マルケッティ SM.75の派生型で、1937年に初飛行していることから、L3 空挺戦車の実用配備はその頃と考えられる。
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Mk.VIIテトラーク軽戦車

イギリス

滑空機能があるグライダー輸送機(輸送用飛行機)で曳航する技術が開発されると、以前より重い物を運べるようになった[1]イギリス軍は1944年6月のノルマンディー上陸作戦を始めとするヨーロッパでの反攻作戦で大型軍用グライダーハミルカー Mk I」を運用し始める[1]。Mk.VIIテトラーク軽戦車(1940年初配備)は、その一年前の1943年、アメリカ製のM5軽戦車に主力軽戦車の座を奪われた状態でたまたま6輌が余っていたため、空挺部隊に移管され、実戦投入される運びとなった[1]。1945年のヴァーシティー作戦(米英軍によるライン川渡河作戦)にも少数が参加している。
ハフナー ロータバギー
1942年に試作された、車両用ローターカイト英語版で、先に試作された個人用のハフナー ロータシュートの拡大版に当たる。グライダー同様の曳航牽引と、オートローテーションによる緩降下を可能とする構想だった。バレンタイン歩兵戦車を同様の形態としたロータタンクも提案されたが実現に到らなかった。
アントノフ A-40 の、計画当初のデザイナーズモデル

ソビエト連邦

飛行機の後方に戦車を牽引して滑空させようとするもので、当初の計画から大幅な変更がなされた後、1942年に試作機が初飛行を果たすものの、実用化するには飛行機の機体強度が足らないなど、少なくとも当時の技術では非現実的であったことから、計画は中止された。
O・A・アントーノフが実現させようとしたのは、有翼の戦闘車両であり、グライダー(滑空機)の機能を追加された軽戦車であった。ゆえに、この兵器は、まずは車両(空挺戦車)であり、次に航空機(滑空機)である。
左:二式軽戦車。1942年撮影。    右:特三号戦車。1946年以前に撮影。

大日本帝国

開発名「ケト」。1944年(昭和19年)配備。大型グライダーに搭載する形で空挺作戦への投入が計画された。
開発名「クロ」。上述のソ連軍A-40と同様、戦車に翼を装着し直接牽引にて滑空輸送する構想で、1944年(昭和19年)に開発着手されるも頓挫した。

アメリカ合衆国

ハミルカー Mk I から自走して降りるイギリス軍の M22ローカスト。1945年撮影。
ハミルカー Mk I 輸送グライダーに搭載する空挺戦車として最初から設計された[1]。配備されたのは1945年以降。しかしながら、米英両国とも大戦末期の限定的使用したのみに終わっている[1]
供与されたイギリス軍での愛称は「ローカスト」 (M22 Locust

第二次世界大戦後

ソビエト連邦 ロシア

ASU-57
ASU-85
戦車的役割を果たす車両で、空中投下が可能な空挺戦車として[6]、1947年、開発に着手されている。1951年生産開始・初配備。
輸送機で運ぶ空挺戦車として開発された[6]。1950年代の終わりにソビエト空挺軍(ロシア空挺軍の前身)が制式採用し、1980年代までの主要装備として運用した。
BMD-1
BMD-2
BMD-3
BMD-4
空中投下が可能な装甲戦闘車両である[6]BMDシリーズの基礎を作った。1965年開発着手、1968年試作、1969年制式採用・初配備。装甲の脆弱さのために短命で終わったが[6]、実戦でのデータを蓄積しつつ後継の開発が続けられることになった[6]



1985年にソビエト連邦軍が制式採用・初配備。





1990年にソビエト連邦軍が制式採用・初配備。





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2S25スプルート-SD
BMOシリーズの最新型として、現在(2021年時点)、1,000両近くが配備されている[6]




1990年代初めに開発着手されるも、2010年に計画を断念するとの発表があった。しかし、修正されたうえで2012年に計画の存続が発表され、その後、実用配備された。ロシア本国における分類呼称は「空挺自走砲」だが輸出PRでは軽戦車ともされる。


AMX-13

フランス

1951年採用、1952年初配備。フランスを中心に世界各国で採用され使用された。
1955年、AMX-13よりも低姿勢でコンパクトな空挺戦車として開発された。砲塔・武装の異なる複数のタイプが試作されたものの量産化に到らなかった。


M56スコーピオン

アメリカ合衆国

1953年に制式採用され、その後、初配備される。1960年代、ベトナム戦争に投入された。後継のM551シェリダンに世代交代する形で退役した。アルミ合金[7]



アメリカ陸軍のM551シェリダン(ベトナム戦争中の1969年撮影)
1960年開発着手、1962年試作、1965年採用、1966年初配備。アルミ合金7000番台超々ジュラルミン)製[8][7]水陸両用、空中投下可能、既存の軽戦車を凌ぐ火力と機動力を保有、152mm口径ガンランチャー搭載と、空挺戦車としてのスペックは充実しており[8]、ベトナム戦争に1,000輌が投入された[5]。しかし、軽量化のために細くせざるを得なかった履帯は、ぬかるみの多いベトナムという地域で機動性を発揮できなかった[5]。軽量化したこと自体も障害物の多い戦地では不利に働き、構わず乗り越えて進む戦車本来の動きが不可能であった[5]。つまり、地盤が緩いうえに倒木だらけの戦地に派遣してはならない車両であった。また、装甲の薄さを南ベトナム解放民族戦線に見抜かれ、ゲリラ部隊の恰好の標的になってしまった[5]。頼みのガンランチャーも、装填できなくなるトラブルや不発が相次いだ[5][7]。このようなことから、アメリカ軍のほとんどの部隊がM551を敬遠し、主力戦車であるM60パットンを使用するようになっていった[7]。ベトナム戦争で空中投下されることは一度も無かった[4]
1989年のパナマ侵攻では、1個中隊のM551シェリダン10輌がパラシュートで空中投下された[4]。しかし、着地する際に損傷・故障する車両が続出し、降下後に活動できた車両は約半数に過ぎなかった[4]
最後の実戦配備は1991年の湾岸戦争における砂漠の盾作戦で、緊急展開部隊としてサウジアラビアに急派され、貴重な機甲戦力としてイラク軍(バアス党政権下のイラク軍)のサウジアラビア侵攻に備えている。湾岸戦争の終戦後は予備役となり、後継のM8 AGS※後述)も計画が中止された。このような経緯から、厳密な意味での「空挺戦車」としては、M551が実戦配備された世界最後の空挺戦車となっている[5]
1983年開発着手、1994年試作、1996年計画中止。

西ドイツ ドイツ

ヴィーゼル1 Mk.20
ヴィーゼル2 AFF
ヴィーゼル2 オツェロット
1975年に実用試作されるも、当時の西ドイツのドイツ連邦軍は関心を示さなかった。1984年に量産決定。1989年に生産・初配備。東西ドイツの統一後の開発と運用は、統一ドイツに引き続がれた。


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03式空挺歩兵戦闘車

中華人民共和国

中華人民共和国の歩兵戦闘車 (IFV) で、中国人民解放軍における初の空挺戦車。正式名称は「ZBD-03 傘兵戦車」。
2009年に初公開された。

  1. ^ a b c d e f g h i 乗りもの 20210208, p. 1.
  2. ^ a b c d airborne”. 英辞郎 on the WEB. アルク. 2021年2月8日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g 乗りもの 20200202, p. 2.
  4. ^ a b c d e 乗りもの 20200202, p. 4.
  5. ^ a b c d e f g h 乗りもの 20200202, p. 3.
  6. ^ a b c d e f 乗りもの 20210208, p. 3.
  7. ^ a b c d 乗りもの 20210208, p. 2.
  8. ^ a b 乗りもの 20200202, p. 1.


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