天才
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/08 06:14 UTC 版)
天才の類似表現として、ギフテッド、神童、神に愛された人などがある。
概要
天才は、普通の人より優れた才覚を発揮する。美術、音楽、文学などの芸術や、スポーツ、政治、自然科学、数学、哲学のほか、様々な分野において、天才と称される人が見られる。努力によって学業成績などが社会的に認められるに至った秀才とは区別される。
心理学
多くの天才は、精神障害に苦しむ。例えば、フィンセント・ファン・ゴッホ[2] 、ヴァージニア・ウルフ、ジョナサン・スウィフト[3]、 ジョン・ナッシュ[4]、 アーネスト・ヘミングウェイ[5]、クルト・ゲーデル、ゲオルク・カントール、ノーバート・ウィーナー、アイザック・ニュートン、フリードリヒ・ニーチェ、フリードリヒ・ヘルダーリン、ニコラ・テスラなど。
ドイツの病跡学者のヴィルヘルム・ランゲ=アイヒバウムは天才300人から400人を選び、そのうち一生に一度でも精神病を患った人は12~13%であるという数字を発表した。さらに、その中から特に有名な天才中の天才というべき78人を選ぶと、精神病の人は37%、精神病的な人は83%以上に及ぶとした。健康な人は6.5%にすぎなかった[6][7]。
近年の研究でも、天才性と精神障害との関連を示唆する結果が得られている。2012年10月9日に発表されたカロリンスカ研究所の研究では、天才の創造性と精神障害には有意な相関があることが示された[8]。2015年6月8日、芸術的創造性と精神疾患が共通する遺伝子で発現するとする研究結果が英科学誌『ネイチャー ニューロサイエンス』に発表された[9][10]。
天才の成り立ち
天才とは一般に、天性の素質に恵まれて才能を発揮する者とされる。知的活動分野における天才の成り立ちを伝記などから紐解く限りでは、多くが幼少時から才能の示すものが多いものの、必ずしも彼らが幼時から天才として認知されているとは限らない。
逆に「神童(総合的な学業成績に秀でた子供)も、大人になればただの人」などという警句にみられるように、幼い頃に学業成績に秀でたからといっても、それが大人になっても続くとは限らない。
一般に見られる天才のステレオタイプとして規律と型にはまった知識を身に付けることを要求される学校教育では、単に学業成績に秀でた秀才と、斬新な着眼力や独創性を発揮する天才とは、皮肉にも相反する傾向があるというものがあるが、寧ろ例外であることが多い。ただし学問的分野での天才肌の児童は、深い理解に伴う疑問や批判精神が湧き出ることから、扱い難い生徒として教師に敬遠されることもある。だが多くは義務教育課程の成績は優秀で著名な大学に入学し、飛び級する者も多く、幼少時からの学校教育の秀才かつ学者として大成した天才が多い。
天才は、同じ事項をマスターしたときの理解の深さでは、秀才タイプを圧倒的に凌駕する才能を発揮する。
一方、周囲のサポート等により、子供の頃から問題行動を含めて特異性の見られた人が、挫折せずに努力を続けることにより後年になって高く評価されるケースも多く、そのような特異性を持つ子供を幼い頃から専門的に養育することで、その才能を伸ばそうとする取り組みも古くから行われている。ノーバート・ウィーナーはハーバード大学講師の父に特別な英才教育を授けられ、11歳で大学に入学している。カール・フリードリヒ・ガウスは小学校に入学した時、彼に数学を教えられる人物がいなかったため、校長がハンブルクから数学の本を取り寄せ自習させた。米国などではギフテッド(意訳すれば「神に祝福された者」)と呼ばれる、専門の教育で才能を開花する余地のある子供らが見出されている。アメリカ教育省は1993年に定義を発表、これに合致する児童に特別な教育(特別支援教育の一種、ギフテッド教育)を与え、その才能を育てようという模索が続けられている。これらでは従来、いわゆる学習障害とみなされていた者も部分的に含まれる場合もある(2e)。欠点に着目してそこをカバーするのか、長所を見出してそこを集中的に伸ばすかという問題も絡む。同様に扱われる存在として芸術性を発揮するタレンテッドがある。(詳しくはギフテッドを参照。)
天才と凡人
天才といえば聞こえが良いが、上述のように、アンバランスに偏った才能の持ち主であるため、芸術、スポーツ、学問いずれの分野でも、価値観も非常識であるケースが多い。天才芸術家による薬物中毒汚染や金銭感覚の逸脱は余りにも有名であるが、これも個人差がある。
良く知られている「天才の奇行」の逸話には、フィンセント・ファン・ゴッホが、自画像を描く際に「自分の耳が邪魔だ」と言って自ら耳を切り落とした、といったものがある。ただし、ゴッホはてんかんもしくは統合失調症を発症しており、「天才の奇行」が「天才」故の奇行ではなく、精神病や薬物への逃行など環境からのストレスによって引き起こされるものも多い(もっともゴッホの場合、メニエール病を発症しており激しい耳鳴りのせいで耳を切ったという説もある)。身体能力に関しても生まれながらに極めて優秀な資質を持っている人ほど身体を上手く使えず、才能を発揮するのが困難な例が大半を占める。加えて運動量以上に身長が高い、体重が重い場合は更に身体を上手く動かしにくくなる。
- ^ “天才(てんさい)の意味”. goo国語辞書. 2019年12月7日閲覧。
- ^ “VINCENT VAN GOGH'S BIOGRAPHY: MENTAL HEALTH”. www.vangoghgallery.com. 2024年3月8日閲覧。
- ^ “Who was Jonathan Swift? Everything You Need to Know” (英語). www.thefamouspeople.com. 2024年3月8日閲覧。
- ^ “The Sveriges Riksbank Prize in Economic Sciences in Memory of Alfred Nobel 1994” (英語). NobelPrize.org. 2024年3月8日閲覧。
- ^ “Ernest Hemingway (1899 – 1961)”. 2024年3月8日閲覧。
- ^ 『天才 創造のパトグラフィー』福島章 p.78 講談社現代新書 ISBN 4061457217
- ^ 『天才―創造性の秘密』 (みすずライブラリー) W. ランゲ=アイヒバウム p.117 ISBN 978-4622050629
- ^ Kyaga, Simon; Landén, Mikael; Boman, Marcus; Hultman, Christina M.; Långström, Niklas; Lichtenstein, Paul (2013-01-01). “Mental illness, suicide and creativity: 40-Year prospective total population study”. Journal of Psychiatric Research 47 (1): 83–90. doi:10.1016/j.jpsychires.2012.09.010. ISSN 0022-3956 .
- ^ “創造性と精神病をつなぐ遺伝学 | Nature Neuroscience | Nature Portfolio”. www.natureasia.com. 2024年3月8日閲覧。
- ^ “芸術的創造性、精神疾患と共通の遺伝子で発現か アイスランド研究”. www.afpbb.com (2015年6月9日). 2024年3月8日閲覧。
- ^ 『天才の心理学』p.28 エルンスト・クレッチマー 岩波文庫 ISBN 978-4003365816
- ^ 藤原正彦『天才の栄光と挫折―数学者列伝』(新潮選書 2002年のちに文春文庫)。
- ^ NHK未来への提言 ナンシーアンドリアセン 心を探る脳科学p.86-87 ISBN 978-4140812228
- ^ トーマス・エジソン#名言・『快人エジソン - 奇才は21世紀に甦る』ISBN 4-532-19020-7
天才と同じ種類の言葉
- >> 「天才」を含む用語の索引
- 天才のページへのリンク