ハニートラップ ハニートラップの概要

ハニートラップ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/12 23:31 UTC 版)

概要

「ハニー・トラップ」という言葉はイギリス小説家ジョン・ル・カレ造語であり、『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』(1974年)で用いられてから広く一般に広まった[3][4]

'You see, long ago when I was a little boy I made a mistake and walked into a honey-trap.'
'He made an ass of himself with a Polish girl,' said Guillam. 'He sensed her generosity too.'
'I knew Irina was no honey-trap but how could I expect Mr Guillam to believe me? No way.' —  Carré, John le (2011). Tinker Tailor Soldier Spy. Penguin Books Ltd. Kindle. p. 49.

女性工作員は、対象男性を誘惑し、性的関係を利用して懐柔するか、これを相手の弱みとして脅迫し、機密情報を要求する。ヒューミント英語: HumintHuman intelligenceの略)の一種である。また、隙を見せた標的をその場で殺害することもある。ただし、必ずしも女性スパイが仕掛けるものとは限らず、東ドイツ国家保安省(シュタージ)のロミオ諜報員のように、男性スパイによって対象となる女性を罠にかけることもある。こういった要素から、色仕掛けによる諜報活動といえる。

なお、ハニートラップは直訳すると「蜜の罠」や「甘い落とし穴」となり、同じような意味合いで使用されるセクシャル・エントラップメント英語: Sexual Entrapment)は「性的な囮(おとり)」という意味である。

冷戦時代、ソビエト連邦により頻繁に行われた(特にKGB十八番であったとされる)。

中華人民共和国においては中華人民共和国国家安全部が管轄する各直轄市国家安全局によって行われ、各市・省ごとに担当国があり、上海市国家安全局はアメリカ北京市国家安全局はロシア天津市国家安全局は日本韓国を担当しているとされる[5][要検証]

イスラエル総保安庁は2021年4月12日、敵対するイランの情報機関が若い女性を装ったSNSアカウントでイスラエルの民間人に国外での接触を持ち掛け、誘拐など危害を加えようと図った事例が複数確認されたと警告を発した[6]

事例

磯田道史の調査と研究によれば、尾張徳川家の蔵書である蓬左文庫にある尾張藩士の書いた『趨庭(すうてい)雑話』という資料に、徳川宗春が家臣に対し、女性忍者によるハニートラップを仕掛けていた話が記されており[7]、宗春自身、江戸幕府からハニートラップを仕掛けられたため(徳川吉宗の質素倹約令と対立したため)、その女性忍者を刺殺したとある[8]。また、さらに時代が下り、尾張藩士の深田家が書いた随筆『感興漫筆』にも、宗春が女性忍者を手討ちにした話が詳細に記述されている(くノ一が「赤婆々」と呼ばれていたことなど)[9]。これらの内容が深田家では一子相伝されていたこと、時が経ち、秘する必要性がなくなり、手討ちにされた山伏(忍者)と女性忍者も、幕末になると深田家当主によって供養されることにもなり、戒名が付けられたとまで記されていることから、磯田は、200年以上厳重に秘密にされていた話が作り話とは考えにくいとしている[9]

第二次世界大戦前の日本海軍ドイツ国に傾斜したことを疑問に思った半藤一利は、ある取材で元海軍中佐千早正隆[10]に質問したところ、その原因がハニートラップであると答えたとする[11]。それによると、駐在武官としてドイツに滞在している間に、ドイツはクラブのような店で美人メイドを派遣して来て、いつの間にかドイツの色仕掛けに篭絡され、気がつけば、ドイツびいきになっていたという[11]。こうしたことが原因のためか、元海軍の多くが、質問に対して黙ることが多く、聞き出せたのも、うっかり話してしまった感があるとしている[11]

諸君!』1998年(平成10年)6月号で加藤昭は、橋本龍太郎が総理在任中に中華人民共和国の女性官僚と関係があったと報じた。女性は中国側のスパイとみられているが、これについて橋本側は、女性は中国大使館に勤務する通訳であり、職務上接点があっただけと釈明している。なお、橋本は日中友好団体の日本国際貿易促進協会会長を務めており、中国へのODA事業などを積極的に進めていた[12]


  1. ^ 英辞郎.
  2. ^ a b kb.
  3. ^ Dickson, Paul (2014年6月17日). “How authors from Dickens to Dr Seuss invented the words we use every day” (English). TheGuardian.com (Guardian Media Group). https://www.theguardian.com/books/2014/jun/17/authors-invented-words-used-every-day-cojones-meme-nerd 2018年9月27日閲覧。 
  4. ^ シズマン (2018), p. 81.
  5. ^ Pocket Movie (23 December 2020). 12月15日 大紀元ニュース ◆カナダ、中国人民解放軍への訓練中止◆中国が世界で大規模なハニートラップ◆米首都で大規模集会「米国を救わねばならぬ (動画共有サービス). YouTube. 2020年12月25日閲覧大紀元時報
  6. ^ 「イランが色仕掛け」イスラエル、誘拐に注意喚起『読売新聞』朝刊2021年4月14日(国際面)
  7. ^ 磯田 (2019), p. 110.
  8. ^ 磯田 (2019), pp. 112–113.
  9. ^ a b 磯田 (2019), p. 114.
  10. ^ 坂本 ほか (2018), p. 127.
  11. ^ a b c 半藤 (2017), p. 115.
  12. ^ 加藤 (1998), pp. 26–43.
  13. ^ 武藤弘樹「不倫相手は妻が仕掛けた友人、見事に「罠」にハマった男の顛末」『DIAMOND Online』株式会社ダイヤモンド社、2019年5月25日。2020年12月25日閲覧。


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