テネシー級戦艦 テネシー級戦艦の概要

テネシー級戦艦

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/20 01:32 UTC 版)

テネシー級戦艦
竣工時のテネシー
基本情報
艦種 戦艦
命名基準 州名。1番艦はテネシー州にちなむ。
建造所 ニューヨーク海軍工廠
メア・アイランド海軍工廠
運用者 アメリカ海軍
建造期間 1916年 - 1919年
就役期間 1920年 - 1947年
計画数 2隻
建造数 2隻
前級 ニューメキシコ級戦艦
次級 コロラド級戦艦
要目
常備排水量 33,190トン
満載排水量 40,400トン(戦時計画)
全長 624 ft (190 m)
水線長 182.9 m
97 ft 5 in (29.69 m)
改装後:34.74 m
吃水 31 ft (9.4 m)
機関方式 ウエスチングハウス式(「カリフォルニア」はGE式)タービン発電・ターボ・エレクトリック4基4軸推進
主缶 バブコック・アンド・ウィルコックス重油専焼水管缶8基
出力 28,900 shp (21.6 MW)
速力 21 kn (39 km/h)
航続距離 就役時:10ノット / 8,000 nmi (15,000 km)
改装後:15ノット / 9,200 nmi (17,000 km)
燃料 重油:1,900トン(常備)、4,570トン(満載)
乗員 士官:58 - 62名
下士官:1,022名
兵装
就役時
35.6 cm(50口径)三連装砲4基
12.7 cm(51口径)単装速射砲14基
7.6 cm(50口径)単装高角砲4基
53.3 cm水中魚雷発射管単装2基
改装後
35.6 cm(50口径)三連装砲4基
12.7 cm(38口径)連装高角砲8基
ボフォース 4 cm(56口径)四連装機関砲10基
エリコン 2 cm(76口径)単装機銃43 - 60丁
装甲
竣工時
舷側:203 - 343 mm(水線部)
甲板:89 mm(主甲板)、38 mm(下甲板)
主砲塔:457 mm(前盾)、254 mm(側盾)、127 mm(天蓋)、229 mm(後盾)
主砲バーベット:320 mm(最厚部)
機関部:140 mm
弾薬庫部:165 mm
司令塔:406 mm(側盾)、152 mm(天蓋)
改装後
舷側:203 - 343 mm(水線部)
甲板:140 mm(弾薬庫)、165 mm(機関区)
主砲塔:457 mm(前盾)、254 mm(側盾)、178 - 190 mm(天蓋)、229 mm(後盾)
主砲バーベット:320 mm(最厚部)
副砲防盾:50 mm(前盾)、50 mm(側盾)、50 mm(天蓋)、50 mm(側盾)
CIC:127 mm(側盾)、127 mm(天蓋)
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概要

1921年に撮られたニュー・メキシコ。本級との外観の違いは簡素な艦橋構造と1本煙突である。後方に第一次世界大戦時のクレムソン級駆逐艦の1隻が見える

アメリカ海軍1915年度計画で2隻の建造が議会に認められた。

当時のアメリカ海軍における海軍の立案理論はアルフレッド・セイヤー・マハン少将に強く影響を受けており、敵艦艇を捜索する能力は二の次に考えられていた。そのため敵よりも強力な艦砲と強固な装甲を持つことが重要であると見なされていた。テネシー級はその大艦巨砲主義を具現化した艦ともいえる。テネシー級の基本設計は1913年頃から始められていたが、海軍内部での研究結果が未成熟なためにペンシルベニア級の改良型である戦艦を2隻建造する事とし、これが「ニュー・メキシコ級」である。そして1916年度海軍計画においてニュー・メキシコ級の設計実績にユトランド沖海戦の戦訓を取り入れて改設計された初のアメリカ戦艦としてテネシーとカリフォルニアと名付けられて2隻が建造・就役した。

この時期、仮想敵国としてドイツ帝国海軍の戦艦の存在があり、高初速砲による長射程を持つドイツ式の大砲は脅威となり、アメリカ戦艦も対抗できる長射程の大砲と、高い耐久性を持つ防御様式の改良が推し進められた。テネシー級以前の戦艦の主砲仰角は15度までしかなかったが、テネシー級の14インチ砲においては倍の30度までの高い仰角を取ることができたため、その射程は10,000ヤード (9 km)ほど延伸した。防御面においては広範囲に及ぶ実験および試験の結果、テネシー級の水線下の装甲はそれ以前の艦に比べ強固なものとなった。

また、上部構造物には就役時から射撃指揮装置が設置され、主砲および副砲には火器管制システムが装備されていた。このため、テネシー級およびコロラド級の5隻は篭マストの頂上部の見張り所が大型化し、そこに設置された観測所からのデータを射撃方位盤で火器管制を行い、その特徴的なマスト形状は他国からの識別上の特徴であった。その後、アメリカ海軍では長距離射撃の結果を艦載機によって測定するようになったため、テネシー級の「水平線を超えて」砲撃を行う能力は実用的な価値を持つことになった。このため、就役後に水上機を搭載して弾着観測を行えるようになった。しかし、遠距離砲撃時の主砲の散布界の悪さは変わらないうえ、ユトランド沖海戦以降は前級と変わらない水平防御の脆弱さも指摘されていた。

テネシー級はアメリカ海軍における「標準型戦艦」コンセプトの一部であった。その設計概念は、アメリカ海軍が低速部隊と高速部隊の包括的運用を可能とするための、重要なものであった。「標準型」の概念は長距離射撃、21ノットの速度、700ヤード (640 m)の回転半径およびダメージ・コントロールの改善が含まれていた。この「標準型」にはネバダ級ペンシルベニア級ニューメキシコ級およびコロラド級が含まれた。

艦形について

就役後から海軍休日時代

1921年に撮られたテネシー。上部構造物の2番主砲塔の付近に12.7 cm速射砲がまだ搭載されている

テネシー級の船体形状は前級に引き続き長船首楼型船体である。鋭く前方に傾斜したクリッパー型艦首から艦首甲板上にMark 6 1918年型 35.6 cm(50口径)砲を三連装砲塔に納め、1・2番主砲塔を背負い式で2基、2番主砲塔の基部から甲板よりも一段高い艦上構造物が始まり、その上に司令塔が立つ。司令塔の背後から箱型の艦橋が立ち船橋(ブリッジ)で接続させていた。艦橋構造はニュー・メキシコ級よりも大型化し、箱型艦橋を基部として当時のアメリカ海軍の大型艦の特色である状の前部マストが立つ。前部マストの下部に航海艦橋、頂上部に2層構造となった見張り所を持つ。

船体中央部に2本煙突が立ち、その周囲が艦載艇置き場となっており、1番煙突の側面部に片舷に1基ずつ立つ探照灯台を基部とするクレーン2基により運用された。2番煙突の後方で船首楼が終了し、そこから甲板一段分下がって籠状の後部マストと3番・4番主砲塔が後ろ向きに背負い式配置で2基が配置されていた。

1920年代後半に撮られたテネシー級。後部甲板上に水上機2機が搭載されている

テネシー級の副砲である12.7 cm(51口径)速射砲は2番主砲塔後方の上部構造物上に単装砲架で片舷1基ずつ2基と、船体中央部にケースメイト(砲郭)配置で放射状に単装で5基の計12基を搭載していた。

就役後の1922年に甲板上の12.7 cm速射砲2門を撤去して7.6 cm(50口径)高角砲を単装砲架で4基を搭載した。1924年からカタパルト1基を設置して水上機1機を運用し始め、1920年代後半に全ての艦でカタパルト1基と水上機2機を搭載した。1929年に7.6 cm高角砲全てを撤去し、新型の12.7 cm(25口径)高角砲に更新し、これを単装砲架で8基を搭載した。近接火器として12.7 mm単装機銃8丁を搭載した。1941年に12.7 cm速射砲2門を撤去して7.6 cm高角砲を単装架で4基を追加して搭載した。

1942年3月にテネシーは7.6 cm高角砲4基を撤去して、代わりに近接火器としてMark 1 2.8 cm(75口径)機関砲を四連装砲架で4基を甲板上に搭載し、エリコン 2 cm(76口径)機関砲を単装砲架で16基を搭載した。また、マスト上にSCレーダーとFC Mk 3型レーダーのアンテナを設置した。同年6月に更に2.8 cm四連装機関砲を追加で4基を搭載した

第2次世界大戦時

写真は1943年のテネシーの写真。高速航行で白波を蹴立てているが最大速力は1ノットほど低下している

第二次世界大戦において、大破着底したカリフォルニアに加えて損傷復旧するテネシーも損傷復旧の際に上部構造物を撤去し、艦橋構造は大型の箱型艦橋の上にプレハブ構造の塔型艦橋が乗る形式となり、サウス・ダコタ級に近似した塔型艦橋と1本煙突と後部マストをもつ外観となった。射撃管制装置はMark34が前部艦橋と後部艦橋の頂上部に計2基が搭載され、射撃レーダーも最新のMark8に更新された。対空警戒レーダーも前部艦橋の頂上部にSKレーダーアンテナが、後部艦橋上にSCレーダーが設置された。これら艦橋構造が大型化したため、機関復旧時に煙突は2本煙突から、艦橋に接続した1本煙突に変更となった。

武装面においては対空火器も「12.7 cm(38口径)高角砲」を連装砲架で舷側甲板上に片舷4基ずつ計8基、近接火器としてボフォース 4cm(56口径)機関砲を上部構造物の周囲に四連装砲架で10基搭載した。寧ろ、対空火器の配置は新戦艦群より理想的になった。船体防御に関しては設計時には想定外の魚雷攻撃を受けて大破したことから水線下にバルジを追加して強化した。この対空火器の強化に伴う重量増加と、バルジによる浮力強化により満載排水量は40,345トンにまで膨れ上がったため、最大速力は20ノットに低下した。


  1. ^ 学研, p.124


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