タミル料理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/09 14:40 UTC 版)
英語化した料理用語
- カレーとは、タミル語の kari を英語に音訳した名前[4][5]。
- タミル語で「コショウの水」を意味する milagu thanneer は、英語で「マリガトーニ」 mulligatawny と呼ばれコショウのスープを指す[6]。
- 粥 (かゆ) という意味の英単語 congee の原語はタミル語のカンジ kanji に由来する[7]。
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ベン・ポンガル Ven Pongal
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米粉のクレープ ドーサ Dosai
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マフィン型に似た鉄板で焼くクジ・パニヤラム Kuzhi Paniyaram
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マドゥライの郷土料理マトンのドーサ Kari dosai
料理
ほとんどのタミル人の主食は米である。日常の昼食は (時には夕食も) 炊いた米 (choru) と、副菜は一般にサンバール、ポリヤル (カレー)、ラッサム、クート kootu(シチュー)とヨーグルトを添える。
朝食
主食とおかず (副菜) を組み合わせる。
主食
主食のイドリ idli は米とブラックグラム (black gram) の粉を混ぜて発酵させた生地を蒸した餅である。一般にさまざまな種類のチャツネやサンバールまたはバダのカレー vadacurry を添えて供する。おなじく主食のドーサは練った米粉とブラックグラムの生地を発酵させ薄焼きにしたクレープであり、サンバールあるいはチャツネを合わせる。サーダ saada、カル kal、ムッタイ muttai dosai、ニール dosai、ラバ rava、パアシ・パルプ paasi paruppu など、種類もいくつかある。
イドリの副菜ヴァダ Vadai には素材によって主に2種類ある。伝統料理のポンガル Pongal は土鍋で米を水と牛乳で沸騰させ、粘り気のある泡がわくまで煮る。鍋から煮こぼれた乳状の上層もポンガルと呼ぶ。ドーサと同じ発酵生地を使い、製菓用マフィン型に似た小さな凹みの並ぶ専用の鉄板で焼くとパニヤラム Paniyaram ができる。アッパム Appam はその発酵生地をもっと薄めて熱っしたフライパンに注ぎ、鍋肌を回して均等に広げて焼く。すると周囲が薄く中央はふわふわと柔らかく焼きあがる。
ドーサよりもわずかに厚くふわふわと柔らかいのはウサッパム Uthappam である。材料は通常のイドリやドーサ用の発酵生地で、プレーンのほか細かく刻んだ野菜やタマネギを混ぜたものもある。ウプマ Upma はタマネギや青唐辛子を小麦粉またはラバ粉 rava の生地に混ぜ込み、米粉や押し麦状に干した米フレークまたは穀物粉であればなんでも代用できる。
プトゥ Puttu とは一般に米粉で層状に作る円筒形の蒸しケーキである。好みの粉で作ることもある。粉は水を加えて混ぜ、練りすぎないように気を付けてプトゥ用の蒸し筒に入れ、このとき、すりおろしたココナッツと交互に層にする。米粉の蒸し団子で具を詰めたものはコスカッタイ Kozhukkattai といい、具にはすりおろしたココナッツとジャガリーから、もっと手をかけた香辛料を利かせた具も用意する。セバイ Sevai (イディアッパム Idiyappam) とはビーフンのような米粉の麺、蒸し餅アダイ Adai、さらに野菜料理と揃えると、繊維とカルシウムが豊富な非常に充実した完全食メニューが調う。ダイエット中の人や糖尿病患者に勧めているという。
朝食の種類
いくつかの定型があるものの、ありあわせの素材で自由に組み合わせる。
- 瓢箪のドーサ Sorrakkai dosai/
- バターのドーサ Vennai dosai
- ドラムスティックと Raadi adai のドーサ Murungai keerai raai adai (Drumstick leaves and Raadi adai)
- 野菜オムレツ
- 赤米のイドゥリ
- ラディッシュのドーサ Mullangi dosai
- トウモロコシのイドゥリ Chola idli
- トウモロコシのドーサ Chola dosai
- ホースグラムのドーサ Kollu dosai
- 蓖麻(ひま) のイドゥリ Kottaimuthu idli
- Raagi レンズマメのドーサ Raagi adai dosai
- 即席キビドーサ
- 玄米イドゥリ
- フェヌグリーク・ドーサ Vendhaya dosai
- カンチプラム・イドゥリ Kanchipuram
- Moong ダール豆のドーサ Paasi paruppu dosai
- 揚げイドゥリ Kaima idli
- 唐辛子チャツネのイドゥリ Podi idli
- Set dosai
- 野菜パニヤラム
- トウモロコシのパニヤラム Chola paniyaram
- 発酵させたヒエキビのドーサ Kuthiraivaali dosai
- マフィン型パニヤラム Kuzhi paniyaram
- 3色イドリ 人参、ミントもしくはコリアンダーとプレーン
- ビーツのイドゥリ
- ライ麦のドーサ Kambu Dosai
- マサラ・ドーサ
- ゴビマサラ・ドーサ
- 焼きペーパー 原文ママ Paper roast
- 焼きギー Ghee roast
- ペーパーマサラ原文ママ Paper masala ドーサ
- ギー・マサラのドーサ
- チーズ・ドーサ
- 激辛トウガラシ・マサラのドーサ
- 鶏肉のキーマカレーのドーサ
- マトンのカリ kari ドーサ
- カシューナッツ・マサラのドーサ
副菜としてのおかず
レンズマメを中心に野菜を煮たサンバールはシチューともチャウダーとも呼べ、タマリンドの出汁に挽きたての新鮮なスパイスで味を調える。チャツネにはさまざまな種類があり、ココナッツ、玉ねぎ、トマト、コリアンダー、カラ Kara、ニンニク、プリ Puli など。
チェッティナード地方の伝統料理のおかずとしてチェンナイでも非常に人気が高いバーダ Vada カレー。トーガイヤル Thogaiyal というペーストは何種類もの材料を合わせてすり潰してあり、主要な材料の味を引き立てている。ココナッツ、ダール豆 (パルプ)、コリアンダー、ミントの葉 (プチナ)、カルベッピーライ (カレーの葉)、ごまの実 (エル)、コル (ホースグラム)、生姜 (インジ)、ニンニク (ポンドゥ) などを中心に組み合わせる。
飲み物
- 最も人気のある飲み物はコーヒー。タミルの伝統において社交の主な手段であり、一般に高級なピーベリー ( Peaberry) または安価なアラビカ種のグルメコーヒー豆を使用する。フィルターでいれるコーヒーはまるで茶道のように決まった手順を守っているため、豆の焙煎から粉に挽きフィルターで熱湯をくぐらせるところまで、一連の段階がある。時には香りづけにチコリを加える。コーヒーフィルターと特製の器を使い、数杯の粉末コーヒーに沸騰したお湯を注いで得られる液体を煎じ液と呼ぶ。コーヒーを飲む器はタンブラーという独特の形をしており、砂糖と温めた牛乳、少量の煎じ液を注ぐ。また濃くいれた紅茶も人気がある。
- クース Koozh 米をごく柔らかく煮た重湯 (おもゆ=薄いかゆ) のこと。カンジとも呼ぶ。
- シャルバット Sharbat 果物や花びらで作る飲み物。
- パアナカム Paanakam レモンジュースとジャガリー(パームシュガーとキビ糖を混ぜた甘味料)、干した生姜とカルダモンで作る飲み物。
昼食と夕食
主菜とカレーなど米料理を組み合わせる。米料理には炊いた米のチョルと粥のポンガルがある。
副菜
具により何種類もメニューがある。カレーのようにご飯に混ぜるものと、単体のおかずとして主食に添えるものがある。
菜食メニュー
- スープ、シチュー
- ココナッツのスープ Aviyal 生のココヤシの実を用意し、ナッツと野菜とヤシ油で作る。
- サンバール レンズマメのシチュー。味付けはタマリンドと挽きたてのスパイス類。
- レンズマメのスープ Rasam 胡椒、コリアンダー、クミンシードを利かせる。
- カレー類
- 辛いカレー Kaara Kozhambu 唐辛子、タマリンド、ココナッツほか、地元のスパイス類。具はそのときに入手できる地元の野菜を取り合わせて、オクラ(kozhambu)やナス(Kozhambu)、あるいは鶏のドラムスティック(kozhambu)でメニューを組む。
- クート Kootu 実ものや葉もの野菜のカレー。レンズマメも定番で、扱いは副菜。定食の定番で、ご飯の付け合わせとしてサンバールやレンズマメのスープに添える。
- 酸っぱいカレー Puli Kozhambu タマリンドの量を増やして酸味を利かせたカレー。唐辛子も多く、地元のスパイス類。具はありあわせの野菜を使う。
- ヨーグルトのカレー Mor Kozhambu あまり辛くないカレー。地元のスパイス類、ココナッツで調味。具によって野菜(オクラ、じゃがいも、キュウリ)や、フルーツ(マンゴー、パイナップル)などのバラエティーがある。
- レンズマメのカレー Paruppu Kozhambu やや辛味が柔らかいカレー。地元のスパイス類で調味。
- 野菜料理
- スバヤル Thuvayal 甘ずっぱい保存食。作り方はチャツネと同じだが、ペースト状につぶしてある。マンゴーなど果物と香料を一緒に煮くずす。
- 野菜炒め Poriyal 数種類の野菜を取り合わせた炒め物。ハーブと香辛料を利かせる。
非菜食メニュー
肉や卵を使うカレーには、町単位ではっきり特徴が出ている。
- 魚のカレー Meen Kozhambu 唐辛子を実ごと使いタマリンドも入れるため、辛味と酸味が強い。
- 卵のカレー Muttai Kuzhambu 辛味が強くスパイスが効いている。
- 鶏肉のカレー Kozhi Kozhambu 同上。
- マトンのカレー Mutton Kozhambu 同上。
サンバール
スープのうちサンバールの材料は単品でナス、オクラ、苦瓜、マンゴー、あるいは組み合わせでじゃがいもとトマトと人参、人参と豆類を使ったり、肉入りで鶏の足肉(ドラムスティック)などを使う[注 8]。
ラッサム
シチューに属する。
カレー
カレーの種類
- ササゲと茄子 Thatta payaru kathirikkai kozhambu
- ドラムスティックと葉物野菜 Murunga keerai kozhambu
- そら豆 Pidukkam paruppu kozhambu
- キノコ Kaalan kozhambu
- フェヌグリークの種 Vendhaya kozhambu
- 炒めたそら豆 Mochai kozhambu
- 干し豆 Pattani kuzhambu
- 揚げ茄子 Ennai kathrikkai kozhambu
- 辛みとオクラ Vendaikkaai kaara kozhambu
- 辛みと茄子 Kathrikkai kaara kozhambu
- 緑豆のもやし Mulai payaru kozhambu
- 玉ねぎとシーヤル(赤いエシャロット)Ulli theeyal
- どじょう(チャンナ)とシーヤル Kadalai theeyal
- ドラムスティックとシーヤル Murungakkai theeyal
- そら豆とシーヤル Mochai theeyal
- ニンニクとシーヤル Poondu theeyal
- トカドヘチマ Peerkangaai paal kozhambu(Ridgegourd)
- ホースグラム Kollu kozhambu
- ほうれん草のペースト Keera kadaisal
- そら豆とレンズ豆 Avarakkai paruppu kuzhambu
- ピーマン Milagai mandi
- 大角豆とタマリンド Kaaramani puli kozhambu
- レンズ豆の餅入り Urundai kozhambu
- ドラムスティックとタマリンド Murungakkai puli kozhambu
- ニンニクとタマリンド Poondu kozhambu
- カボチャとレンズ豆 Poosani paruppu kootu
- スズメナスビとイヌホオズキ Vatha kozhambu
- 大豆 Soya kozhambu
- さつまいも Sakkarai valli kilangu kozhambu
- 苦瓜 Pavakkaai pitla
- 苦瓜とタマリンド Pavakkaai puli kozhambu
- クミンの種 Jeeraga kozhambu
- 胡椒 Milagu kozhambu
- ヤムイモ Karunai kilangu kozhambu
ポリヤール、炒め物
副菜として調理される炒め物はあらゆる野菜類をカレー仕立てにしたり挽きたての新鮮な香辛料で調味したりする。
- ゴマ入りパンプキンフライカレー Parangikkaai ellu poriyal
- イエローパンプキン Arasanikaai poriyal
- カラバッシュ Calabash ピーナッツ Sorakkaai verkaadalai poriyal
- マドゥライポテトフライのマサラ Kizhangu pottalam
- ヤム芋のバナナ包み焼き Senai kizhangu poriyal
- ジャガイモ炒め Urulai milagu varuval
- ヤムチョップ Senai chops
- ネギ炒め Vengaaya thalai poriyal
- ドラムスティックと葉物野菜 Murungakeerai poriyal
- じゃがいものポディマス Urulai podimaas
- 小ナスの詰め物の油マサラ Ennai kathrikkaai masala
- エシャロット Chinna vengaayam poriyal
- ヤードロングビーンズ Kaaramani poriyal
- キャロットビーンズのココナッツ・マサラ Carrot beans thovaran
- チャンナ(channa)のメティ包み焼き Vendhaya keerai kadalai poriyal/Methi leaves channa fry
- アルビ Cheppankizhangu varuval
- チェッティナード風スパイシーポテト Chettinad urulai poriyal
- チェッティナード風スパイシーポテトと豆 Chettinad urulai pattani poriyal
- ほうれん草 Agathi keerai poriyal
- ソラマメとココナッツ Avarakkai poriyal
- アイビーひょうたん Kovakkai poriyal
- 人参とキャベツ Carrot kose poriyal
- キノコと青唐辛子 Kaalan milagu varuval
- オクラ Vendakkaai poriyal
- ビーツとココナッツ Beetroot poriyal
- チャイプティ瓜 Chow chow poriyal
- 生バナナ Vaazhakkai podimas
- Ridgegourd 瓜 Peerkangaai poriyal
- カブ Mullangi poriyal
- タピオカ Maravalli kizhangu poriyal
- アスパラガス Thanneer muttaan kizhangu poriyal
- ヘビカボジャ Snake gourd Pudalangaai poriyal
- グリーングラム Payaru thovaran
- 生パパイヤ Pappaalikkai poriyal
- フェヌグリークの葉 Vendhaya keerai poriyal
- 激辛唐辛子 Kudaimilagaai milagu poriyal
- カリフラワー Cauliflower milagu pirattal
- ヤギの血 Ratha poriyal
クート(副菜の汁物)
鶏肉料理
マトン料理
魚介類の料理
卵料理
甘い料理 (デザート)
各種プディング、キール、ボリ bholi、シュガーボール(落雁に似た砂糖菓子)、揚げドーナッツ(Adhirasam)、団子(Paniyaram=蒸し団子、揚げ団子、焼き団子)、小麦粉の練り切り Kesari、甘い米粥 pongal など。
伝統的なおつまみ、軽食
- ムルック Murukku 小麦粉と豆の粉の菓子、Chakliにはヒヨコマメの粉が入る。
- Seedai
- Bajji 揚げ餃子に似たおつまみ。インドの広い地域で見られ、露店でも人気。ケララ、タミル・ナードゥ、マハラシュトラ、グジャラート、アーンドラ・プラデーシュ、カルナータカ、アッサム、西ベンガル、オリッサで食べる。
- プーリー 全粒粉の薄い揚げクレープ
- Mixture / Michar
- Sevu
- パコラ 野菜や肉のフライ。一口大に切り小麦粉の生地を付けて浸してから揚げる。スナックまたは前菜。
- バーダThattu Vadai Settu 揚げドーナッツ
- 米粉のだんご Kozhukkatta 砕いたココナッツ、ヤシ糖やジャックフルーツのジャム (Chakkavaratti) などで甘味を付ける
漬物、ピクルス
単体もしくは組み合わせで無数のレシピがある。たとえばレモン、ニンニク、トマト、玉ねぎ、マンゴー、スグリ、シトロン、人参、赤唐辛子、干しトマトほか、生姜とタマリンドなど。
ポディ、チャツネ粉
乾燥させて粉末状にしたチャツネ粉は炊いた米やギーに混ぜて味付けをする。幼児や子供向けには、辛味をつけず調理する。
関連項目
- 1 タミル料理とは
- 2 タミル料理の概要
- 3 英語化した料理用語
- 4 脚注
- 5 関連文献
- タミル料理のページへのリンク