タミル料理 タミル料理の概要

タミル料理

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/09 14:40 UTC 版)

インドでは多くの地域でごくまれにしか定着していないが、タミル・ナードゥ州の人々は他の人に食べ物を提供することは人への奉仕であると深く信じている[1]。郷土料理にはベジタリアンと肉食 (非ベジタリアン (en))の両方の料理のレパートリーが豊富である。材料では豆類、なかでもレンズ豆がよく使われ、さまざまなスパイスをブレンドして風味を付ける。野菜乳製品は欠かせず、酸味料ではタマリンドが好まれる。

砕いたバーダ (揚げパン) をまぶした乳製品

イドゥリ (南インド式の朝食) や行事にはタミル伝統料理を丁寧に手をかけて調理し、伝統的な配膳方法で供する。食事のマナーにも決まりがあり、宴卓代わりに床にバナナの葉を敷いて料理を並べ、食事は床に座って右手のきれいな指のみ使って食べ物を口に運ぶ。指は食後に洗い、バナナの葉は牛の餌にする。朝食は通常、ドーサか炊いた米のいずれかを主食に、副食としてサンバールラッサムを添え、昼食には乳製品を食する。

典型的なメニュー

日常的な食事を「サッパドゥ」と呼び、バナナの葉を敷いて炊いた米と一般的なタミル料理のおかずを盛り、さまざまな調味料を並べ自分の好みに風味をととのえながら食べる。食後には普通、デザート (ふだんはパーヤサム Paayasam) [注 1]を出し、コーヒー紅茶を添える[2]

タミル・ナードゥ州の菜食料理

おめでたいことがあったとき招待したゲストと分け合って食べるごちそうを「ヴィルンドゥ」という。祭りや特別な儀式食は炊いた米や米料理 (トマトライスなど) と汁物が必ず整えられ、ダルやレンズ豆のシチュー (サンバール) あるいはココナッツまたはダルのスパイシーなシチュー (カラ・クザンブ)、タマリンドとハーブや香辛料のシチュー (ラッサム) を基準に次のような副菜を並べる。食後には消化を助けるとして、ビンロウジ石灰のペーストをバナナかキンマの葉で巻き、供される。

  • タイル (ヨーグルト) thayir
  • ポリヤル (野菜の揚げ物) poriyal
  • バルバル (野菜または肉の炒め物) varuval
  • クーツ (野菜とグリーンダルまたはココナッツのあえ物) kootu
  • キーライ・マシヤル (葉物野菜のペースト) keerai masiyal
  • アヴィヤル (野菜炒めにバターミルクまたは豆腐を加えた物) aviyal
  • パチャディ(豆腐とキュウリまたは玉ねぎのサラダ) pachadi
  • アパラム (揚げたパパド) appalam
  • トバイヤル (複数の食材を合わせたパテ) thovaiyal
  • オルカイ (ピクルス) oorukai
  • パヤサム (牛乳かココナッツミルクまたはダル汁などを甘く調味した各種の飲料) payasam

正式には招待客を床に広げた椰子のフロアマットの上に座らせ、バナナの葉を敷いて宴会料理でもてなした。現在は同じ種類のメニューを西洋式のディナーテーブルで供することが多く、バナナの葉をテーブルマットのように使う。その敷き方は、上下の幅の中心を葉の茎が通るようにして、幅が狭い端を招待客の左、反対端を右にする。洗った葉を敷くものの、宴の主人の礼儀として食事の前に葉に水を振る。バナナの葉は、茎を境に上半分は副菜、下半分は米飯を置く決まりで、食事をする指に近い右下部分はデザートとして、牛乳で炊いた温かくて甘いパヤサムほか、ケサリ、甘く味付けしたポンガル Pongal などを配する。左上は塩味の調味料として塩ひとつまみ、ピクルス少々、一口分のサラダまたはチャツネなど。葉の中央はバナナかヤム芋じゃがいもの輪切りをフライにしたり、豆や米粉を薄く伸ばしてぱりっと揚げたパーパドまたはワッフル状のアルナのパーパド (アッパラム Appalam) とバーダ(英語)など穀類の揚げ物を適宜、盛り付ける。 右上の角はスパイスの効いた食品としてカレーや唐辛子の辛味、酸味と甘味も香辛料に数え、あるいは汁気のないものを置くと決まっている。

地方料理

タミル人が定住した地域はそれぞれ固有の郷土料理に加えて、独自の地方料理を作りだした。さらに古代タミラカムの版図に属した4つの地域によって、タミル料理のバラエティーがある。

チョーラ・ナードゥ地方

チョーラ・ナードゥ地方の位置

タミル・ナードゥ州から隣接する旧ポンディシェリ連邦直轄領にわたるチョーラ・ナードゥ地方 (Chola Nadu) 地方に特徴的な料理がある。クンバコナム特別市 (Kumbhakonam) とその周辺の地方である。

チョーラ・ナードゥ料理として著名な地域の伝統料理は菜食と非菜食に対応し、クンバコナム風カダッパ Kumbhakonam Kadappa、タヴァライのバーダ Thavalai vadai、アダイの炒め物 Adai Aviyalなど、またハーブを多用する「おばあちゃん流」パティ・ワティヤムが知られている。この料理を味わうにはベパサー Veppathur のリゾート Mantra Koodam に足を延ばすとよい。周辺の村々の伝統のレシピを凝縮している。ベジタリアン料理はほとんどタミル系ヒンズー教徒の聖職者カーストであるアイヤル (ブラフマン) 社会が食べ継いで来たもので、地元のクンバコナム地区には非菜食料理としてパニヤール Panniyar の伝統料理もある。

  • クダンタイ (クンバコナム) のキンマ・チキンカレー kudanthai vethalai
  • マヤバラム・マトンカレー Mayavaram mutton curry
  • マドゥクル・ミーン・クザンブ Madhukur meen kuzhambuなど。

チョーラナードゥ州の料理の特徴は収量が多い米を使う点にあり、このチダンバラム地域 Chidambaram からクンバコナム、タンジョーレ地域などにかけて、最もよく知られたメニューがセヴァイという米の細麺 (Sevai) である。チャツネやホストス khostus を使いさまざまな味付けで楽しむ。

  • プリヨダリ Puliyodhari
  • サンバサダム sambha sadam
  • クンバコナム・ビリンジ Kumbhakonam birinji
  • Amirtha podi sadam

キビの品種も多くクレープ状のドーサ kutharai valli dosai ほか、料理の種類もとても豊かである。

パンディーア・ナードゥ地方

薄く打ち延ばしたパロタ生地を団子にまとめた。これを鉄板で焼く。

チェティナード地域はカライクディ Karaikudi と隣接地域で構成され、いずれも菜食の伝統料理と非菜食料理があり、代表的な菜食料理はイディアッパム idiyappam、ウタパパム uthappam、パニヤラム paniyaramなどが知られる。

ナンジルナードゥ Nanjilnadu の郷土料理は、南インドのタミル・ナードゥ州最南端を占めるカンヤクマリ地域 Kanyakumari のナンジルナードゥ地方に由来する。

マドゥライ Madurai 独得の郷土料理のメニューにムッタイパロタ英語版[注 2]があり、カリドサイ(マトンのドーサ) などもある。飲み物ではパルチパル paruthipal (綿実で作るコットンミルク) とジガルタンダ[注 3]が人気を分ける。前者の材料はバクリシマ bacharicima、綿毛、カルダモン、ヤシの樹皮と樹液、すり潰したココナッツである。完成すると容器を「バラム」と呼ばれる綿毛をよった紐で結び、家に持ち帰る。

コットンミルクは胸焼けしやすく、ヤシの葉で作った飲料があればおさまる。タミル・ナードゥ州やマドゥライにはコットンミルクの露店が多く出て、マドゥライでJil Jil と呼ぶ。

コングナードゥ地方

コングナードゥ郷土料理のオプトゥはホットケーキに似る。 Obbattu

コングナドゥ英語版地方にも名物料理がある。この地域はごま油とヤシ油が特産品で、ウコンとともに生産高は国内最高とされ、ココナッツオイルパームシュガーを多用する郷土料理はオプトゥ[注 4]、コラウルンダイ(ミートボール)、テンガイパール(パームシュガー入りホットミルク)[注 5]、あるいはデザートのウルンドゥカリ[注 6]などが有名。カチャヤムなど[注 7]も人気がある。肉料理でも知られ、羊肉、鶏肉、魚を使う。この土地でパロタと呼ぶ薄力粉マイダを焼いた主食は、北インドの小麦粉のパラタとおおよそ同じ。家庭料理のアリシンパルプ・サダム Arisimparupu sadam も郷土食である。

オプトゥはピザのようにかりかりに焼いたパンケーキで、甘い具を挟んで楽しむ。米粉を使うウルンドゥ・カリにもパームシュガーとヤシ油が入る。




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