タコメーター 装備としてのタコメーター

タコメーター

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/22 08:13 UTC 版)

装備としてのタコメーター

1960年代頃までは高価なオプション、あるいは競技用、スポーツ走行用の計器とされていたタコメーターではあるが、電気式タコメーターと電子部品の低価格化によって安価に提供できること、メーターデザイン上の見栄えの向上、もしくはステータス性の向上の効果があることなどから、さまざまな価格帯の車両にも搭載されるようになった。

現代ではリムジンやショーファードリブン以外では当たり前の装備となり、運転を楽しむ方向性を持つドライバーにとっても是非ともほしい装備となっている。フルBセグメント以下でなおかつ非スポーツ系の実用型小型ハッチバック軽自動車を含む)および小型実用セダンにもスポーツ系以外のグレードにも装備するようになった[注釈 3]。しかし、これとは正反対に三菱・ランサーセダン(2007年後期以降のモデル、現在既に絶版)やトヨタ・カローラアクシオ/カローラフィールダーの各ガソリン車(2019年8月以降のモデル)、2000年代後半以降のダイハツ・ミラシリーズ(ミラカスタムミラココアの一部グレードは除く。特に無印ミラはOEMのスバル・プレオを含む2013年前期以降の車種整理後の乗用モデルに限定される)のようにマイナーチェンジや一部改良、仕様変更などにおいて全車、もしくはスズキ・MRワゴン日産・モコ(いずれも2代目モデル以降)、トヨタ・パッソダイハツ・ブーン(いずれも2代目モデルのみ)、トヨタ・ライトエースタウンエーストラック(2008年以降のモデル)、トヨタ・カムリダイハツ・アルティス(カムリは9代目日本市場向けモデル以降、アルティスは4代目以降[注釈 4])、トヨタ・ポルテ(2代目以降[注釈 5])、ホンダ・アコード(V6エンジン搭載車を除く9代目モデル以降[注釈 6])、マツダ・キャロル[注釈 7]などのようにフルモデルチェンジなどにおいて全車、タコメーターがそれぞれ廃止される場合もある。

しかし、実用性を重視するドライバーにとっては視認性のしやすさを前提とし、アナログ式やデジタル式に関係なくスピードメーターの盤面のサイズをより大型化し、他は水温計などの針式の計器を極力排除することが好まれ[注釈 8]、それまで全グレード標準装備であったタコメーターを一部のグレードを除きフルモデルチェンジで省略した軽自動車や軽自動車以外のコンパクトカーも存在する[注釈 9]。また、一部の商用車などのコスト優先の車両の場合にはまず先行的に省略される装備でもあるが、ホンダは商用車でも[注釈 10]タコメーターを標準装備とし、トヨタや日産も一部のカーゴ型商用車でも[注釈 11]それぞれタコメーターを標準装備としているほか、更にホンダのハイトワゴン型軽ボンネットバンであるN-VANも全車にタコメーターが標準装備としている(2020年3月現在、新車として販売されている一連の軽商用車としては唯一の事例)。

つまり、タコメーターは法律上必要な装備ではなく、タコメーターを排除したり、故障により動作しない状態であっても整備不良となることはなく、車検にも影響はない。

これらタコメーターのない車を自動車を趣味とする者が使用するときのオプショナルパーツとして、後付けタコメーターもカー用品店で販売されている。また近年では、一部の後付けタコメーターに限り、配線をほとんど加工することなく、故障診断コネクターにカプラーオン(ワンタッチ)で取付けできる製品[注釈 12]も登場している。

一方で、回転パルスが微弱で検知できないなどの理由から(特殊な配線パーツを使う場合を除き)タコメーターが装着不可能とされている車種も存在する[注釈 13]

競技・スポーツ装備

拡大表示されたタコメーター (F1)
エンジン回転数が上昇すると作動し、ステアリング上面のランプが点灯する。近年のF1のエンジンは回転数が19,000-20,000rpmに瞬時に達するため、拡大表示が用いられる。

マニュアルトランスミッション全盛の当時では、ギアチェンジのタイミングを計るのに有効な計器であったが、当時から乗用車の日常使用レベルで必須とされていたわけではなく、スピードメーターの文字盤に各ギアのレンジを表記することで、タコメーターの代用とすることも多かった。必須とされたのは競技などのスポーツ目的での運転であり、特にレーシングカーではドライバーがスピードを知る意味はあまりなく、当初よりタコメーターのみを装備していた。これは現在でも同様である。

レーシングカーに針式のタコメーターを装備する場合、パワーバンドの領域が最も見やすい真上にくるように、表示面を故意に傾けて装備する場合がある。これを模して、乗用車やオートバイの装備でもタコメーターを傾けるドレスアップがある。

競技車両用のなかには、文字盤の目盛りにパワーバンド以下を省略したものがある。これは、限りある指針の指示角度をパワーバンド中心に展開したものであり、拡大表示とよばれる。この場合、エンジン回転数がパワーバンドに達するまでは、計器として作動しない。

法的な規制がないことから競技用のタコメーターを公道で使用しても問題が無いため、レーサーレプリカであるスズキ・RG250ガンマには3,000rpm以下では動作しない(スケールがない)タコメーターが演出として装備されていた。

オートマチック車の装備

コンパクトカー軽自動車はエンジンのパワーが基本的に非力であるため、高速道路走行などでは高回転域を多用しがちである。そのような場合、エンジンの回転数を上げ過ぎないための指標としての存在意義がある。また、自動変速機の段数が充分ではなく、変速比の段間差が大きいため、高速走行にてシフトダウンする際にエンジンを過回転させない指標にもなる。CVTでない自動変速機で、意図的に手動にてシフトアップ(L→2→D"O/D OFF"→D"O/D ON")する場合も価値がある。

運転を楽しむための『スポーツ系』に分類される乗用車では、手動変速機や手動モードつき自動変速機が多く、変速タイミングの指標ともなる。通常の公道での走行ではエンジンからの音に変速のタイミングを頼る人が多いが、近年ではエンジンが静音型に改良されているので、車内でオーディオを聞きながら運転しているときには便利である。

エコラン装備

トラック(73式大型トラック)のタコメーター(計器盤中央)

経済走行を心がけるドライバーが、不必要にエンジンを高回転させて燃料を浪費したりしないための指標として使うこともある。また旧式車両において、燃費を向上させるテクニックの手助けとなる計器として使用される。現在ではECUによって統合的に管理されているため、ドライバーはあまり意識をする必要はなくなった。また近年は燃費特性の良い回転領域を保てるように、センターパネルの液晶に具体的なアドバイスを表示する車両もある。

バストラックなどの、ディーゼルエンジンを持つ商用の大型自動車の文字盤には、トルクバンドが緑色で示されていることがある(→#グリーンゾーン)。最大トルク発生回転数が、最大燃費効率回転数と一致することから、省燃費運転の指標とされる。この範囲より回転数が高くなったりレッドゾーンに達した場合、警告音やランプの点灯を行って運転者に知らせる機能を持つ製品もある(たとえば三菱ふそうのバスは、不経済走行と書いてあるランプが点灯し警告音が鳴る)。この警告機能はデジタルタコグラフと連動させているものも存在する。


注釈

  1. ^ 国産車のタコメーターの目盛は大抵1/1000である。1/100の目盛は一部の輸入車に見られる。
  2. ^ エンジン音の音程の高さは回転数に比例する。毎分3,000回転でエンジン音は50Hzとなる。しかし音程による判断を確実にするには絶対音感が必須であり、万人に可能なものではない。
  3. ^ 2020年3月現在、新車として販売されている車種の一例 :トヨタ・パッソMODA(モーダ)/ダイハツ・ブーンCILQ(シルク)トヨタ・ヤリスのガソリン車全グレード、およびトヨタ・カローラアクシオ/カローラフィールダーの各ハイブリッド車、三菱・ミラージュの全グレード(ただし前期型の場合、最廉価グレードのみタコメーターは非装備となっていた)、最廉価グレードを除くマツダ・デミオ(ディーゼル車を含む)、最上級グレード、および一部のコンプリートカーの日産・マーチ(前者が「G」(前期型は「12G」)、後者が「NISMO S」)など。
  4. ^ その理由は日本向け9代目カムリ/4代目アルティスが全車ハイブリッド車となったため。
  5. ^ 2代目ポルテと同時発表・同時発売された姉妹車のトヨタ・スペイド(初代)を含む。
  6. ^ 先述のトヨタ・カムリとほぼ同じ理由で日本向けを含む9代目以降のアコードの4気筒エンジン搭載車が全車ハイブリッド車となったため。
  7. ^ ただしキャロルのOEM元であるスズキ・アルトはスポーツ系グレードの「ターボRS」および「ワークス」に限りタコメーターが標準で装備される(キャロルはスポーツ系グレードは当初から未設定)。
  8. ^ 2020年3月現在、新車として販売されている商用車を除く車種の代表的な例:トヨタ・パッソ/ダイハツ・ブーン(いずれもオリジナル(ノーマル)モデル全般)、トヨタ・カローラアクシオEX/カローラフィールダーEX(いずれも4WD仕様を含むガソリン車)、トヨタ・ポルテ/スペイド(ポルテは2代目以降より)、スズキ・アルト(「ターボRS」および「ワークス」以外の全グレード)/マツダ・キャロル、ダイハツ・ミライース/スバル・プレオプラス/トヨタ・ピクシスエポック、カスタムシリーズを除くダイハツ・タントダイハツ・ウェイク/トヨタ・ピクシスメガの各自然吸気エンジン搭載仕様車などがこれに該当する。
  9. ^ 例・4代目スズキ・ワゴンR/4代目マツダ・AZ-ワゴン
  10. ^ 例・ホンダ・アクティバンホンダ・パートナーなど
  11. ^ 前者が5代目ハイエース、後者がOEMのいすゞ・コモを含むNV350キャラバン
  12. ^ 例 : ピボット社製「PROGAUGE PT5 チビタコ[1]/PT6[2]/PTX[3]/MULTI GAUGE X2R[4]」など
    ちなみに国産車の場合、1998年以降に新規発売、およびモデルチェンジを受けたトヨタ車およびダイハツ車、および2008年以降に新規発売されたダイハツ製OEM、およびトヨタ製OEMのスバル車(例として前者がスバル・DEXスバル・ルクラ、スバル・プレオ(2代目以降)、スバル・プレオ+、スバル・ステラ(2代目以降)、スバル・シフォンスバル・サンバー(7代目以降)、スバル・ジャスティ(日本向け2代目以降)、後者がスバル・トレジアがこれに該当)、CAN通信採用車がこれに該当する。
  13. ^ 例を挙げるとDefiの適用車種検索では、ミニカミニキャブeKなど三菱軽自動車複数車種に対し(三菱製OEMの日産の軽自動車を含む)、「純正タコ非装着車は取り付け不可」と明言されている。またこれらの車種にタコメーターを取り付ける際には、純正部品のハーネス(MB991799)を加工装着してパルスを増幅する事例が多数報告されている。
  14. ^ 例として2代目ダイハツ・フェローMAXでは3,000rpm以下[3]、2代目スズキ・フロンテSSでは3,500rpm以下[4]をイエローゾーンとした。

出典

  1. ^ "タコメーター". 日本大百科全書(ニッポニカ). コトバンクより2023年9月13日閲覧
  2. ^ あっても使わなかった…? 消えた装備と必要だった理由”. 自動車情報誌「ベストカー」. p. 2 (2022年5月9日). 2023年9月13日閲覧。
  3. ^ 軽に高性能エンジンを搭載!? これぞ羊の皮を被った狼な軽自動車5選”. くるまのニュース. p. 3 (2018年12月28日). 2023年9月13日閲覧。
  4. ^ フロンテSS”. 名車文化研究所 (2020年9月14日). 2023年9月13日閲覧。
  5. ^ 10,000回転を超えるエンジンを持った車はどの程度存在したのか?”. CarMe[カーミー] by 車選びドットコム (2019年6月3日). 2023年9月13日閲覧。
  6. ^ 省エネ運転マニュアル” (PDF). 全日本トラック協会. p. 7 (2010年9月). 2023年9月19日閲覧。
  7. ^ 【必須装備が絶滅危機!?】 なぜ必要? タコメーターの意義と存亡”. 自動車情報誌「ベストカー」 (2019年6月19日). 2023年9月19日閲覧。
  8. ^ 株式会社インプレス (2015年1月14日). “【インプレッション】三菱ふそう「エアロエース MS」「エアロエース MM」”. Car Watch. 2023年9月19日閲覧。


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