金属の防食方法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/29 13:40 UTC 版)
1.不動態金属 酸化物バリアー層が水や酸素の内部進入を阻止する金属は不動態金属と呼ばれ、アルミなどが例にあがる。この性質を利用したものにステンレス鋼がある。ステンレスに含まれるクロム (Cr) は強固な酸化物バリアー層 (Cr2O3) を形成するので、鉄に比べて錆びにくい性質を持つ。 2.防食被膜の形成 人為的に耐腐食被膜を形成させることは金属の表面処理して極く普通に行われている。耐腐食の方法で分類すると次のようになる。バリアー型被膜 - ブリキ(鉄のスズめっき)、琺瑯、ペンキ塗装、プラスチック被覆 多孔質型酸化被膜 - アルマイト、クロメート 犠牲アノード型被膜 - トタン(鉄の亜鉛めっき) バリアー型被膜 腐食しやすい金属の表面を耐腐食性のある別の金属層で覆い尽くすことにより耐腐食性を向上させる。一般的には、めっき加工(電着めっきあるいは融着めっき)として施される(めっきの項に詳しい)。あるいは被覆に樹脂を使用する場合があるが、金属面との接着性がめっきよりは劣り、多分に装飾的な要素が大きい。 多孔質型酸化被膜 アルマイトとして知られているアルミニウムの表面加工が有名である。電解液条件を整えた液体の中で地金金属を陽極酸化でイオン化し、表面近傍で厚い酸化被膜層(Al2O3;数百Å)を形成させる方法である。このアルマイトで生成される酸化被膜の構造は表面に向けて多数の微細な孔(穴)を有した多孔質層となっている。この孔は陽極酸化処理時に流れた電流の通り道が結果として残ったものである。ただし、ほとんどのアルマイト処理は陽極酸化処理後に封孔処理を行うので、アルマイト製品の表面に孔は残っていない。ただしアルマイト表面に塗装が必要な製品は塗装の密着性向上の為、あえて封孔処理を抑えている。これによりアルマイト表面では非常に強い塗装の密着性を示す。フライパンのフッ素樹脂塗装などに利用されている。 なお、電着めっきは陰極で行うが、アルマイト化処理は陽極で行う。金属めっきの析出は還元反応でありアルマイトは酸化反応である為。 犠牲アノード型被膜 ピッティングコロージョンを防ぐひとつの方法である。めっきによるバリアー型被膜で膜厚よりも深い傷が生成すると、地金が大気にさらされることになり逆にめっき金属と地金との間で電解腐食を生じる。このとき、地金よりもイオン化傾向の大きい金属を採用すると、めっきが犠牲電極(陰極防食法)の働きをして、優先的にめっき層が腐食を受けるので地金の腐食を大幅に遅らせることができる。この目的で鉄の亜鉛めっき(方法は、主に、厚い被膜を作りやすくウィスカの発生しない溶融めっき)が使用され、大幅に鉄の寿命を延ばすことが可能となる。 犠牲アノード型被膜はめっき層が厚ければ、その分地金の寿命を延ばすことが出来る。犠牲アノード型被膜が長く犠牲電極(陰極防食法)として働くからである。またこの現象は被膜だけでなく、ネジや金属板などの間でも起きる為、湿度の高い場所での異なる金属の接合では注意が必要である。この時に起きる金属間の腐食を電食と言う。主にネジ側のイオン化傾向を下げるか、イオン化傾向の近い金属の使用で対策がされている。 3.電気防食法 電気防食法には陰極防食法(カソード防食法、英語:Cathodic protection、略称:CP)と陽極防食法(アノード防食法)があるが、一般的に使われるのは陰極防食法である。流電陽極方式 水に浸漬された鉄などの表面では、局所的な無数の電池が形成される。この時、鉄は電気的な流れで酸化され腐食されていく。ここでアルミニウム、亜鉛、マグネシウムのようなイオン化傾向の大きい金属を鉄などの被防食体に接続することでガルバニ電池を形成し、アノードとなったイオン化傾向の大きい金属へ電子が優先的に流れ腐食し、カソードとなった鉄が保護される。 このイオン化傾向の大きな金属は、犠牲陽極と呼ばれる。 外部電源方式 外部電源方式とは、犠牲陽極と被防食体の間に直流電源を設置し、常に電流を流すことでイオン化傾向に関係なく被防食体を保護する方式である。 4.乾燥した空気を常時流す 吊橋のメインケーブルは錆びないようケーブル送気乾燥システムを使用しているところがある。この方式は明石海峡大橋が最初に取り入れ、その後多くの橋に導入された。 5.防錆防食の梱包材料 防錆油(気化性防錆油含む)、防錆剤(気化性防錆剤含む)、気化性防錆紙、防錆フィルム、乾燥剤、脱酸素剤がある。主にこれらを防錆フィルムやポリエチレンフィルムなどのバリア性のある包装材料に金属と同梱して用いる。なお、防錆油(気化性を有さない)は直接金属と塗布する必要がある。
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