賃金の定義
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/18 09:17 UTC 版)
本項で労働基準法について以下では条数のみを挙げる。 第11条 この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。 所定貨幣賃金の代わりに支給されるもの(その支給により貨幣賃金の減額を伴うもの)、労働契約においてその支給があらかじめ明確に定められているものは「賃金」とみなされる(昭和22年9月13日発基17号)。具体的には休業手当、通勤手当、スト妥結一時金、税金や社会保険料の補助は「賃金」に含まれる。特に税金など、必ず支払わなければならないものを使用者が補助又は立替払いすると、「賃金」とみなされる(昭和63年3月14日基発150号)。 一方、代金を徴収するもの(その代金が甚だしく低額なものを除く)、労働者の厚生福利施設とみなされるものは「賃金」とみなさない(昭和22年9月13日発基17号)。具体的には以下のものは「賃金」に含まれない。 恩恵的・任意的給付 退職金、結婚祝金、病気見舞金、死亡弔慰金、災害見舞金など。ただし、労働契約、就業規則、労働協約などであらかじめ支給条件が明確になっているものは「賃金」とみなされる(労働基準法の施行に関する件(昭和22年9月13日付け発基第17号、都道府県労働基準局長あて労働次官通達))。 福利厚生的給付・企業設備(現物給付) 住宅の貸与、食事の供与(昭和30年10月10日基発644号)、あるいは支給される制服や作業服(昭和23年2月20日基発297号)、作業用品(昭和27年5月10日基収2162号)などの現物給付は福利厚生的給付であり、原則として「賃金」にはあたらない(労働基準法解釈例規について(昭和63年3月14日付け基発第150号・婦発第47号、都道府県労働基準局長あて労働基準局長・婦人局長通達))。ただし、住宅を貸与する場合に、住宅の貸与を受けない者に均衡上一定額の手当を支給している場合には、その均衡給与相当額は「賃金」とされる。 労働者に対し、労働協約によらずして物又は利益が供与された場合において、それを「賃金」とみるか否かについては、実物給与に関する法の趣旨及び実情を考慮して慎重に判定する。支給されるものが労働者の自家消費を目的とせず明らかに転売による金銭の取得を目的とするもの、労働協約によってないが前例もしくは慣習としてその支給が期待されている貨幣賃金の代わりに支給されるものは「賃金」として取り扱う(昭和22年12月9日基発452号)。 ストックオプションの付与は、「賃金」に当たらない。オプション保有者たる労働者が権利の行使について任意であるため、制度として実施するには就業規則に記載すべきとされる(改正商法に係るストツク・オプションの取扱いについて(平成9年6月1日基発第412号、道府県労働基準局長宛て、労働省労働基準局長通達))。 解雇予告手当 解雇予告手当は「賃金」ではないが、解雇の申渡しと同時に通貨で直接支払わなければならない。 休業補償(法定超過額を含む) 休業補償として第76条に定める「平均賃金の60%」は最低の基準であるから、事業場で休業補償として平均賃金の60%を上回る制度を設けている場合には、その全額が休業補償であり、「賃金」とはならない(昭和25年12月27日基収3432号)。 休業手当(第26条)は法定超過額を含む全額が「賃金」となる。 出張旅費、宿泊費 生命保険料の補助、財産形成貯蓄奨励金の支給 労働者が自己を被保険者として生命保険会社と任意に保険契約を締結したときに企業がその保険料の補助を行う場合、その保険料補助金は、労働者の福利厚生のために使用者が負担するものであるから、「賃金」とは認められない(昭和63年3月14日基発150号)。 顧客から受け取るチップ等 チップは旅館従業員等が客から受け取るものであって、「賃金」ではない(昭和23年2月3日基発164号)。使用者がサービス料として一定率を定めて客に請求し、収納したものを集計し労働者に分配する場合は賃金となる(昭和39年5月21日基収3343号)。 最低賃金法第2条、賃金の支払の確保等に関する法律第2条では「賃金」を「労働基準法第11条に規定する賃金をいう。」と定め、また労働契約法においては通達において「賃金」を「労働基準法第11条でいう「賃金」と同義である」と定め(平成24年8月10日基発0810第2号)、勤労者財産形成促進法においては通達において「賃金」の範囲を「労働基準法上の賃金の範囲とおおむね同様であること」(昭和47年1月22日発基第3号)とし、いずれも労働基準法と同様の解釈となる。
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