民権小説とは? わかりやすく解説

民権小説

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/03/04 15:44 UTC 版)

政治小説」の記事における「民権小説」の解説

明治以来仮名垣魯文など政治的題材小説書かれており、詩歌まで視野入れれば維新志士による漢詩政治文学と言える1874年板垣退助らによる民選議員設立建白以来自由民権運動広がり1877年明治10年)に設立され立志社活動の中では民権歌謡という新しい歌作られていた。1880年明治13年4月集会条例による弾圧開始される中、6月自由民権論主題にした政治小説として最初となる、戸田欽堂の『民権演義海波瀾』が書かれた。江戸時代人情本流れ汲み明治政府民衆芸者を争う2人の男に見立て対立から和解に向かう姿を描いており、当時期待された「官民調和」の色合い強く残している。だが、明治十四年の政変機に板垣自由党大隈重信立憲改進党結成する状況大きく変化することになる。1882年自由党機関紙自由新聞及び絵入自由新聞)を創刊立憲改進党参加者であった矢野龍渓は官を辞して自分がかつて副主筆務めていた郵便報知新聞復帰してその社主就任その影響によって事実上立憲改進党機関紙役目を果たすようになった。これらの新聞では自派主張分りやすく民衆伝えるために政治小説執筆・連載された(なお、こうした経緯からこれ機関紙記者兼業執筆する例が多かった)。 代表的な作品としては、立憲改進党矢野龍渓経国美談』(1883年)、自由党系ではフランス革命初期扱った歴史小説である大デュマ『一医師回想録』(Mémoires d'un médecin)を意訳した、自由党思想表したとされる桜田百衛西洋血潮小暴風』(1883年)、ステプニャク『地底ロシヤ』を元に1881年ナロードニキによるアレクサンドル2世暗殺悲劇的な結末描いた宮崎夢柳虚無党伝記 鬼啾啾』(1885年)、小室案外堂東洋民権百家伝』、末広鉄腸雪中梅』(1886年)、などが挙げられる。他に東海散士の『佳人之奇遇』(1885-97年)は会津遺民たる作者散士イスパニア政治家令嬢アイルランド独立闘士の娘との出会い端を発する物語で、自由民権から始まりナショナリズム国権拡張テーマとしており、中村光夫は「当時日本につたへられた物語伝統と、新しく醒めた世界認識との見事な調和があった」と評している。 特に『経国美談』『佳人之奇遇』は当時若者に強い支持を受け、『雪中梅』の写実主義的な筆致後世文学にも少なからず影響与えた当時人気北村透谷が「『雪中梅』は空前大著述と賞へられ、『佳人奇遇』は世界一大奇書と唫ぜらる」(『女学雑誌1890年1月当世文学の潮模様」)と揶揄するほどだった。坪内逍遥立憲改進党作家として『概世士伝』(翻訳)、『諷誡京わらんべ』などを発表したが、やがて政治的な文学から離れて写実的芸術小説進んだ。 また板垣退助1882年ヨーロッパ歴遊した際にユゴー会談し当時フランスイギリスの政治歴史ものを新聞翻訳掲載することを勧められ多く小説買って帰り坂崎紫瀾栗原亮一塚原渋柿園らによって翻訳翻案された。 これらの多く旧態依然古風な漢文くずしの文章で類型的な人物描写であったために、坪内らによる近代文学への革新促す動きにはつながらなかったが、当時青年達には魅力的であり、近代的人間像目指すロマンチックな心情捉えた。またこれまで小説卑しいものと捉えてきた知識人階層政治・社会問題題材として小説書いたことが、小説および文学人生において正面から取り組む問題とした意義認められる中村光夫日本近代小説』)。また『経国美談』は凡例にて、正史元にしながら人情滑稽加えて小説体と為す」としているのに対しウォルター・スコットアイヴァンホー』の翻訳である牛山鶴堂梅蕾余薫』(1887年自序では「政治人情トヲ兼ネ加フルニ」苦心したというように、坪内の『小説神髄』の小説論の影響を受けるようになっていく。

※この「民権小説」の解説は、「政治小説」の解説の一部です。
「民権小説」を含む「政治小説」の記事については、「政治小説」の概要を参照ください。

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