富山都心線の開業(環状線の復活)
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「富山地方鉄道富山軌道線」の記事における「富山都心線の開業(環状線の復活)」の解説
富山市は人口減少と少子高齢化に対応するため、「公共交通を軸としたコンパクトなまちづくり」をめざす都市政策を打ち出し、都心部の活性化及び市内の公共交通再編を路面電車を生かし発展させる方向で推進する政策を決定。その第一弾として2006年(平成18年)に富山ライトレールを開業。続く第二弾として、路線縮小により消滅していた、繁華街を回遊可能な環状線の復活を打ち出した。 計画当初は丸の内停留場を起点として1)すずかけ通りから旅籠町交差点を経て平和通を経由して西町停留場へ至る「旅籠町ルート」(旧西部線の路線復活)、2)県道44号線を東進し大手町交差点より大手モールを経由して富山国際会議場前や富山市民プラザ前を通り越前町交差点より平和通を経由して西町へ至る「大手町ルート」 (戦災前の路線復活)の二案が検討されたが、2006年(平成18年)6月に、2)の「大手町ルート」を採用することを決定、2007年(平成19年)11月15日には、丸の内から西町に至る約0.9kmを単線で敷設し富山駅前→丸の内→大手モール→荒町→富山駅前の約3.5kmを左回りでの環状運転とすることを盛り込んだ「地域公共交通総合連携計画」を国土交通省に提出すると同時に、「軌道運送高度化実施計画」としての認定を申請した。これは、同年10月に施行された地域公共交通活性化法(LRTなどで上下分離方式を認めたもの)に基づき、市が軌道や電気設備・信号設備・車両等の建設整備・保有・開業後の補修を担当する軌道整備事業者、富山地鉄が富山市から施設や車両を借りて委託営業を実施する軌道運送事業者として認定を受ける「上下分離・官設民営方式」による事業を申請するもので、軌道法における免許取得申請に相当するものである。翌2008年2月28日に全国で初の「軌道運送高度化実施計画」第一号認定を受け、これにより事業費は約30億円のうち約13億円の国費補助を受け、市の負担は約17.5億円へと軽減することとなった。 市ではこの認可に先立ち2007年度中より路線予定道路における上下水道、電線、ガス管といった地中埋設物の調査を完了。認定後の2008年(平成20年)4月、年度明けと同時に埋設物移設工事を開始した。このとき将来の乗客数増加を睨み、複線化が可能なように移設を実施している。さらに同年5月16日工事施行認可を国交省に申請、同年11月21日に認可され、12月には軌道敷設工事に着手した。新設部分の路線名は「富山都心線」と命名され、停留場は大手モール北端に国際会議場前停留場、同南端越前町交差点に大手モール停留場、平和通り総曲輪フェリオ前にグランドプラザ前停留場の3か所が新設された。軌道・架線・停留場の工事は順調に進み、2009年(平成21年)11月末に概成した。 工事と並行して2008年(平成20年)10月、車両デザインが決定。車両は2006年(平成20年)に開業した富山ライトレールや富山県高岡市の万葉線と全く同型同規格の新潟トランシス社製2車体連接LRV(超低床電車)であるが、富山ライトレールのレインボーカラー7色の車体色とは対照的な白・銀・黒のモノトーンを採用。内装もシートモケットはブラックとオレンジ、タイヤハウス部をライトブラウンとして温かみを持たせるなど環状線の独自性や個性を出すことにも留意されている。また、前面および側面の行先表示に路面電車車両としては日本国内で初めてフルカラーLEDが採用された。車両の愛称は一般公募とされ、選考の結果「セントラム」という名称に決定した。これらの車両は2009年(平成21年)11月12日に白と銀色、11月18日に黒色と順次南富山車両区に納入され、12月2日より軌道工事が完工した新線も使用しての環状試運転が開始された。 2009年(平成21年)12月23日、歩行者専用とした大手モールに3編成の環状線全車両を集結、市民に開放して車両の展示・撮影会を行った後、午後1時より富山市による開業記念式典が開催された。続いて午後2時より発車式を行い、開業記念イベントとして無料試乗会が実施された。この日の運行は大手モール停留場では乗車のみとし、グランドプラザ前停留場 - 富山駅前停留場方面 - 丸の内停留場では自由乗降、 国際会議場前停留場で全員降車、空車にて大手モール停留場へ回送して次の希望者を乗車させるという特別運行で、3000人以上が最新車両による新線走行を体験した。当日は22時までこの無料体験のみを行って運行を終了、正式な「市内線3系統」としての営業運転は翌12月24日の始発より開始された。 乗車運賃は既存線と共通の大人200円子供100円の均一運賃で、指定された乗り継ぎ停留場で1・2系統と3系統(環状線)の相互に向かわない方向に30分以内に乗り継ぐ場合のみ、それぞれの車内にて乗り継ぎ券の発行を受けて追加運賃無しで乗車可能となっている。なお、許認可上の富山都心線の区間は丸の内から西町までである。しかし西町停留場の富山駅方面行きホームは西町交差点の南側にあって環状線の電車は停車できない。このため、富山都心線開業当初は1つ手前のグランドプラザ前停留場を西町停留場(南富山駅前方面)への乗り継ぎ停留場として指定していた。2013年5月17日に中町(西町北)停留場が西町交差点の北側に開業し、環状線の西町停留場(南富山駅前方面)への乗り継ぎ停留場をグランドプラザ前停留場から中町(西町北)停留場に変更した。
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