哲学における意志とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > ウィキペディア小見出し辞書 > 哲学における意志の意味・解説 

哲学における意志

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/08 15:27 UTC 版)

意志」の記事における「哲学における意志」の解説

ショーペンハウアーはその主著意志と表象としての世界に於いて世界の全活動原動力は、我々の内にも現象している意志であるとした。 しかし彼による意志の定義は「行為促す自発的な思考」のことではない。というのも思考呼ばれるものはつまりは抽象的認識であって、脳に与えられ単なるデータ(客観)に過ぎず、それ自体自発的行為生み出すことはありえない各自生まれつき性格に基づき知覚による直接的認識と、概念による抽象的認識により与えられ動機比較衡量し、最終的に行為必然的に発生する。ゆえに、我々が何らかの行為を行う限りにおいての自由意志は全くの幻想であり、これを完全に否定している。羽虫に光が与えられれば火の中であろう飛び込まない自由意志無く、石に物理的衝撃与えられれば転がらない自由が無いのと同じように、人間行為必然的に発生するのである彼によると、意志人間動物だけでなく、植物、さらに岩や惑星などの無機物など全てのものにいわば内在している。しかしこれは、神のような普遍的存在者が偏在しているという意味ではない。というのも人間活動も、動機(つまり脳に現れ直接的認識=知覚間接的認識=概念)に基づいて活動発生させる「何か」は客観的には(つまり脳の認識形式である根拠原理基づいて)説明することは不可能であり、重力磁力そのものが何であるのかを説明することが不可能であるのと事情変わらないからである。脳に現象として現れるのは、既に脳の認識形式経た後の「意思客観化されたもの」であり、意志自体(つまり物自体)ではない。 それゆえ意志人間胃腸生殖器にも、脳による認識作用とは関係無く植物と同様、いわば「盲目的」に作用している。というのも、我々の意志強烈な怒り悲しみと言った動揺晒され場合例えば「腸が煮えくりかえると言われるように、その影響内臓にも及ぶ。一方で純粋に脳による認識作用を行う活動例え藝術鑑賞学問などの活動によっては、感情激変のように他の内臓影響を及ぼすことは見られない故に、脳すなわち認識作用は、胃腸生殖器同じく意志仕え機能持った臓器一つにすぎないとしている。 先に意志物体に「内在している」と表現したのもいわば比喩的表現であって意志空間中に存在していて直接知覚できるもの、つまり客観として直接に我々に現れるのではない。なぜなら空間と時間は我々の脳の認識形式であって、それは客観となり我々に把捉される前の「物自体」である意志には適用されず、意志が脳を媒介とした現象として顕れて初めて、我々の知覚によって認識されるからである。つまり、意志は我々の脳の機能により全ての物事主観と客観分離されるより前に、その適用受けずにある「何か」である。時間結局は脳に由来する認識機能であるから意志時間からも超越していると推測される。 以上の議論から、人間認識作用によって幾分かでも世界本質である意志性質把握できるのは、行為(つまり意志現象)を行った後で、自らの行為についての反省、すなわち自らの行為抽象的に再認識するというプロセスを経なければならない。これにより意志が自らを否定し意志意志としての活動停止することが起きうるという。それが仏教で言う涅槃や、聖者呼ばれる人々内面起きた人類起きうる最も高貴な精神状態である、と説明されている。彼の哲学では、人間の自由はこの点にのみ認められている。なぜなら意志意志としての活動をする限り行為動機基づいて必然的に発生し概念による抽象的動機に基づく行為が「自由意志」であると表面上思われるのは、じつは錯覚に過ぎないからである。 さらに補足すると、意志が「目標定めてその達成のために行為促す」という説明は、意志前提とした説明仕方であって意志そのもの説明には全くなっていない。何故なら「目標」や「達成」というのは、つまりは意志(欲求)に対応する相対的概念であり、「北とは何か」を説明するのに「南の反対である」と説明するのと同じである。「目標」とは「意志(欲求)の対象」であり、「達成」とは「もはやそれが意志(欲求)の対象では無くなったということ言い換えたに過ぎないからである。

※この「哲学における意志」の解説は、「意志」の解説の一部です。
「哲学における意志」を含む「意志」の記事については、「意志」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「哲学における意志」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「哲学における意志」の関連用語

1
4% |||||

哲学における意志のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



哲学における意志のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの意志 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS