世界とは何かとは? わかりやすく解説

世界とは何か

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 16:40 UTC 版)

マルティン・ハイデッガー」の記事における「世界とは何か」の解説

ハイデッガー1919年講義哲学使命について」において生の直接的経験は「環世界体験(Umwelterlebnis)」として考察され、「そのつど固有の自我鳴り響くということのうちでのみ、環世界的なことが体験される。つまり、世界となる。したがって私にとって世界となるところでは、そのときはいつでも、私はなんらかの仕方まさしくそこにいるのである」と説明され環世界経験事象ではなく、性起(Ereignis)であると論じられた。 1919-20年の講義現象学根本問題」では「われわれの生は世界である。すなわち、われわれがその内生きる世界であり、生の諸傾向がその中へと入りそのつどその内部で進展する世界である。そしてわれわれの生は、それが世界の内で生きるかぎりにおいてのみ生としてある」として、さらに環世界、共世界(Mitwelt)、自己世界(Selbstwelt)の3つの世界構造論じた1929年-1930年冬学期形而上学根本諸概念世界-有限性-孤独講義においてハイデッガーは「世界とは何か」という問いについて、 Der Stern ist weltlos.(石は世界喪失的である。=石には世界がない) Das Tier ist weltarm.(動物世界貧困的である。=動物世界乏しい) Der Mensch ist weltbildend.(人間世界形成的である。) の3つの命題出して、まず動物人間区別前に物質生命区別について考察開始し生物本質有機体に見る。ハイデッガー発生学者ヴィルヘルム・ルー研究をもって有機体とは「諸器官を持つもの」のことであり、「器官Organ)」はギリシア語organon用具)を語源とするもので、有機体複雑な用具ということもできるが、そうすると有機体機械差異何かと問う。さらにハイデッガーは、ハンス・ドリーシュ調和等能系(harmonious equipotential system)すなわち「ある発生系において、材料除去付加組み換え行っても、常に完全な形態のものに発生する場合の系」を評価して、ここに規定的な因子としての全体性というイデー見出しつつ、有機体要素総計でなく、その生成建造構造全体性によって導かれていることを確認する。ただし、ハイデッガーハンス・ドリーシュ生気論的なエンテレヒーは危険であるとして評価していない。またハイデッガーは、ヤーコプ・フォン・ユクスキュル環世界概念について、「肢体全体性自身をも、われわれが抑止解除の輪と呼んだものが枠組みをなすところの真の根源的全体性基礎にして初め理解される」と述べている。小林睦の解説によればハイデッガーのいう「抑止解除」とはユクスキュルの「知覚標識による触発」であり、「抑止解除の輪」とはユクスキュルの「機能環」に対応しており、動物抑止解除の輪=機能環に適合しているあり方ハイデッガーは「朦朧性」としている。 ハイデッガーによれば動物人間世界了解する可能性としての開明性剥奪されており、環世界対象への衝動捕囚されているが、動物また、対象感覚する器官がもつ技能発動し抑止解除」できるという意味で、対象へと開かれている。したがって動物人間との本質的差異は、世界了解する可能性としての開明性剥奪されていることにあるとされるまた、ハイデッガーダーウィンの「適応概念においては有機体環境事物存在的なもの(Vorhandenes)にとどまっていると批判している。こうしてハイデッガー機械論生気論進化論はいずれも「有機体全体的性格把握できていないとして、存在者の存在様態としての道具存在性(Zuhandenheit)と事物存在性(Vorhandenheit)の区別重視する。こうしてハイデッガーは、世界形成的である人間動物のように挙動するのでなく、存在者への態度をとり、自分存在全体連関において関わらせるのであり、人間にとっての世界とは「全体における存在としての存在者の開性」を意味する考察したこのようなハイデッガー思索は、自然科学無批判精神科学適用する生物学主義」を批判するのであるが、ジャック・デリダ現存在ではない動物は、事物存在でも道具存在でもなく、したがって実存カテゴリーによって動物について語ることはできない批判し小林睦も少なくともこの段階では「人間中心主義」を免れていないと批判している。

※この「世界とは何か」の解説は、「マルティン・ハイデッガー」の解説の一部です。
「世界とは何か」を含む「マルティン・ハイデッガー」の記事については、「マルティン・ハイデッガー」の概要を参照ください。

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