フリードマン検定-->多重比較
処理全体の差の検定が有意なときには,シェッフェの方法による対比較を行うことができる。
例題:
「8 名のボランティアを被検者として,ある薬剤を投与しない場合(0mg),10,20,40,80mg 投与する場合の 5 通りの処置を行い,効果を測定した結果は表 1 のようになった。薬剤の効果があるかどうかを 5% の有意水準で検定したところ,有意な差があると認められた。このとき,どの処理間に有意差があるかを多重比較により検討しなさい。」
投与量 | |||||
---|---|---|---|---|---|
被検者 | 0mg | 10mg | 20mg | 40mg | 80mg |
1 | 5 | 60 | 35 | 62 | 76 |
2 | 24 | 44 | 74 | 63 | 76 |
3 | 56 | 57 | 70 | 74 | 79 |
4 | 44 | 51 | 55 | 23 | 84 |
5 | 8 | 68 | 50 | 24 | 64 |
6 | 32 | 66 | 45 | 63 | 46 |
7 | 25 | 38 | 70 | 58 | 77 |
8 | 48 | 24 | 40 | 80 | 72 |
検定手順:
- 前提
- 各被験者ごとに観察値 Xi1 , Xi2 , ... , Xij , ... , Xic の小さい順に順位 Oij(1 ≦ Oij ≦ c)をつける(同順位がある場合には平均順位をつける)。
例題では表 2 のようになる。
表 2.薬剤投与量による効果の順位付け 投与量 被検者 0mg 10mg 20mg 40mg 80mg 1 1 3 2 4 5 2 1 2 4 3 5 3 1 2 3 4 5 4 2 3 4 1 5 5 1 5 3 2 4 6 1 5 2 4 3 7 1 2 4 3 5 8 3 1 2 5 4
- 各処理の順位の平均と分散を次式で定義する。
例題では, = 1.375, = 2.875, = 3.000, = 3.250, = 4.500。また,V = 80。
- 処理 i と 処理 j の対比較のための検定統計量 Sij は次式で定義される。
例題では,処理 1 と 処理 2 の対比較を行うために,S12 = { 8・8・( 5 - 1 )・( 1.375 - 2.875 )2 } / ( 2・80 ) = 3.6。その他の組合せも同様にして,表 3 を得る。
表 3.処理間の対比較の結果 条件 Sij 有意確率(P 値) 検定結果 処理 1 : 処理 2 3.600 0.4628369 n.s. 処理 1 : 処理 3 4.225 0.3764110 n.s. 処理 1 : 処理 4 5.625 0.2289584 n.s. 処理 1 : 処理 5 15.625 0.0035659 ** 処理 2 : 処理 3 0.025 0.9999225 n.s. 処理 2 : 処理 4 0.225 0.9941270 n.s. 処理 2 : 処理 5 4.225 0.3764110 n.s. 処理 3 : 処理 4 0.100 0.9987909 n.s. 処理 3 : 処理 5 3.600 0.4628369 n.s. 処理 4 : 処理 5 2.500 0.6446358 n.s.
- Sij は,自由度 c - 1 の χ2 分布に従う。
例題では,表 3 に示した Sij はすべて,自由度 4 のχ2 分布に従う。
- 有意確率を Pij = Pr{χ2 ≧ Sij}とする。
χ2分布表,または χ2 分布の上側確率の計算を参照すること。
例題では,処理 1 と 処理 2 の対比較をするときに,自由度 4 の χ2 分布において,Pr{χ2 ≧ 9.49}= 0.05 であるから,Pij = Pr{χ2 ≧ 3.6}> 0.05 である(正確な有意確率:Pij = 0.4628369)。他も同様。
- 帰無仮説の採否を決める。
例題では,有意水準 5% で検定を行うとすれば(α = 0.05),処理 1 と 処理 2 の対比較をするときに,Pij > α であるから,帰無仮説を採択する。すなわち,「処理 1 と 処理 2 の間に差があるとはいえない」。
他も同様に行う。
- 全ての群の組合せについて対比較を行ったとき,検定全体の危険率が α 以下であることが保証される。
例題では,「処理 1 と 処理 5 の間には有意な差があるが,他の処理間には差がない」と結論することが,危険率 5% の下でいえる。
フリードマン検定
例題:
「表 1 のようなデータがある。4 種の肥料間で収量に差があるか検定しなさい。」
肥料 | ||||
---|---|---|---|---|
品種 | B1 | B2 | B3 | B4 |
A1 | 9 | 17 | 12 | 16 |
A2 | 1 | 21 | 16 | 11 |
A3 | 7 | 19 | 6 | 9 |
R による解析:
> friedman.test(matrix(c(9,17,12,16,1,21,16,11,7,19,6,9), ncol=4, byrow=T)) Friedman rank sum test data: matrix(c(9, 17, 12, 16, 1, 21, 16, 11, 7, 19, 6, 9), ncol = 4, byrow = T) Friedman chi-squared = 7, df = 3, p-value = 0.0719
フリードマン検定
例題:
「8 名のボランティアを被検者として,ある薬剤を投与しない場合(0mg),10,20,40,80mg 投与する場合の 5 通りの処置を行い,効果を測定した結果は表 5 のようになった。薬剤の効果があるかどうかを 5% の有意水準で検定しなさい。」
投与量 | |||||
---|---|---|---|---|---|
被検者 | 0mg | 10mg | 20mg | 40mg | 80mg |
1 | 5 | 60 | 35 | 62 | 76 |
2 | 24 | 44 | 74 | 63 | 76 |
3 | 56 | 57 | 70 | 74 | 79 |
4 | 44 | 51 | 55 | 23 | 84 |
5 | 8 | 68 | 50 | 24 | 64 |
6 | 32 | 66 | 45 | 63 | 46 |
7 | 25 | 38 | 70 | 58 | 77 |
8 | 48 | 24 | 40 | 80 | 72 |
R による解析:
> dt <- matrix(c( + 5,60,35,62,76, + 24,44,74,63,76, + 56,57,70,74,79, + 44,51,55,23,84, + 8,68,50,24,64, + 32,66,45,63,46, + 25,38,70,58,77, + 48,24,40,80,72 + ), ncol=5, byrow=T) > friedman.test(dt) Friedman rank sum test data: dt Friedman chi-squared = 15.9, df = 4, p-value = 0.003156
フリードマン検定
例題:
「8 名のボランティアを被検者として,ある薬剤を投与しない場合(0mg),10,20,40,80mg 投与する場合の 5 通りの処置を行い,効果を測定した結果は表 5 のようになった。薬剤の効果があるかどうかを 5% の有意水準で検定しなさい。また,どの処理間に有意差があるかを多重比較により検討しなさい。」
投与量 | |||||
---|---|---|---|---|---|
被検者 | 0mg | 10mg | 20mg | 40mg | 80mg |
1 | 5 | 60 | 35 | 62 | 76 |
2 | 24 | 44 | 74 | 63 | 76 |
3 | 56 | 57 | 70 | 74 | 79 |
4 | 44 | 51 | 55 | 23 | 84 |
5 | 8 | 68 | 50 | 24 | 64 |
6 | 32 | 66 | 45 | 63 | 46 |
7 | 25 | 38 | 70 | 58 | 77 |
8 | 48 | 24 | 40 | 80 | 72 |
R による解析:
> dt <- matrix(c( + 5,60,35,62,76, + 24,44,74,63,76, + 56,57,70,74,79, + 44,51,55,23,84, + 8,68,50,24,64, + 32,66,45,63,46, + 25,38,70,58,77, + 48,24,40,80,72 + ), ncol=5, byrow=T) 新しく定義した関数を使う > friedman(dat) $Result Statistics d.f. P value 15.900000000 4.000000000 0.003156326 $Statistics Group 1 Group 2 Group 3 Group 4 Group 5 Group 1 0.000 3.600 4.225 5.625 15.625 Group 2 3.600 0.000 0.025 0.225 4.225 Group 3 4.225 0.025 0.000 0.100 3.600 Group 4 5.625 0.225 0.100 0.000 2.500 Group 5 15.625 4.225 3.600 2.500 0.000 $P.value Group 1 Group 2 Group 3 Group 4 Group 5 Group 1 1.000000000 0.4628369 0.3764110 0.2289584 0.003565936 Group 2 0.462836887 1.0000000 0.9999225 0.9941270 0.376410966 Group 3 0.376410966 0.9999225 1.0000000 0.9987909 0.462836887 Group 4 0.228958421 0.9941270 0.9987909 1.0000000 0.644635793 Group 5 0.003565936 0.3764110 0.4628369 0.6446358 1.000000000
フリードマン検定
対応のあるデータにおいて,代表値間に差があるかどうかを検定する。行と列を入替えることで,被験者間に差があるかどうかを検定できる。
例題:
「表 1 のようなデータがある。4 種の肥料間で収量に差があるか検定しなさい。」
肥料 | ||||
---|---|---|---|---|
品種 | B1 | B2 | B3 | B4 |
A1 | 9 | 17 | 12 | 16 |
A2 | 1 | 21 | 16 | 11 |
A3 | 7 | 19 | 6 | 9 |
検定手順:
- 前提
- r 種類の対象に c 種の処理を行い,観察値 Xij を得たとする(i=1,2,... ,r; j=1,2,... ,c)。 r は row,c は column の略
表 2.記号の定義 被験者 処理1 処理2 … 処理c 1 X11 X12 … X1c 2 X21 X22 … X2c : : : : : r Xr1 Xr2 … Xrc
例題では,r = 3,c = 4 である。
- 各被験者ごとに観察値 Xi1 , Xi2 , ... , Xij , ... , Xic の小さい順に順位 Oij(1 ≦ Oij ≦ c)をつける(同順位がある場合には平均順位をつける)。
- 表 3 に示すように,各処理ごとに順位の和 Rj を計算する。
表 3.順位 被験者 処理 1 処理 2 … 処理 c 1 O11 O12 … O1c 2 O21 O22 … O2c : : : : : r Or1 Or2 … Orc 順位の合計 R1 R2 … Rc
検算:
例題の場合,表 4 のようになる。
表 4.表 1 のデータのフリードマン検定 肥料 品種 B1 B2 B3 B4 合計 A1 1 4 2 3 A2 1 4 3 2 A3 2 4 1 3 Rj 4 12 6 8 30 Rj2 16 144 36 64 260
- 次式により検定統計量を求める。χ20 は,自由度が c - 1 の χ2 分布に従う。
例題では, χ20 = 7.0 であり,自由度 3 の χ2 分布に従う。
- 有意確率を P = Pr{χ2 ≧ χ20}とする。
χ2分布表,または χ2 分布の上側確率の計算を参照すること。
例題では,自由度 3 の χ2 分布において,Pr{χ2 ≧ 7.81}= 0.05 であるから,P = Pr{χ2 ≧ 5.5}> 0.05 である(正確な有意確率:P = 0.072)。
- 帰無仮説の採否を決める。
例題では,有意水準 5% で検定を行うとすれば(α = 0.05),P > α であるから,帰無仮説を採択する。すなわち,「肥料間の差があるとはいえない」といえる。
なお,処理の種類が少ない場合(c = 3,4,5 の場合)には統計数値表を参照して棄却限界値を求め,以下の規則で決定を下す。
注: 全体として処理間に差があるときには,どの処理間に差があるかについて多重比較(対比較)を行うことができる。
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