スレイター事件とは? わかりやすく解説

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スレイター事件

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/25 18:45 UTC 版)

アーサー・コナン・ドイル」の記事における「スレイター事件」の解説

1908年12月、スコットランド・グラスゴーでマリオン・ギルクリストという老女ダイヤモンドブローチ奪われ撲殺された。警察容疑者としたのはユダヤ系ドイツ人オスカー・スレイターだった。スレイターギャンブル犯罪まがいのことに手を染めてきた素行の悪い人物だったうえ、この直前ダイヤモンドブローチ質に入れており、しかも偽名で船に乗ってニューヨーク渡航していたため、一見して疑わしい人物だった。またユダヤ人だったため、人種的偏見を向けるのにも格好標的だった。 警察の捜査粗略というより、彼を犯人仕立てあげようという悪意こめられているものだった。たとえば、証人たちはあらかじめスレイター写真犯人写真と言って見せつけられスレイター犯人証言するよう誘導されていた。唯一の物的証拠であるスレイター質入れしたダイヤモンドブローチはギルクリフトのものと一致せず質入れした時期殺人事件前だと判明したが、警察はそれらの情報隠ぺいしていた。 ニューヨークにいるスレイター当局から犯罪人引き渡し脅迫受けたため、自発的にイギリスに帰国し、逮捕され裁判かけられたが、警察による証拠捏造隠蔽弁護士裁判官杜撰さによって死刑判決受けてしまった。当時スコットランドには刑事事件の上制度がなかったため、スレイターできることはもはや国王エドワード7世慈悲乞うことだけだった世論スレイター同情し、2万人もの減刑嘆願署名集まり、恐らくその影響死刑執行2日前に終身重労働刑に減刑された。 ドイル1910年にこの事件証拠矛盾扱ったウィリアム・ラフヘッド弁護士小冊子読んで事件知り冤罪事件との確信強めたが、エダルジ事件での役人結託隠蔽うんざりしていたため、今回はすぐに腰を上げようとはしなかった。 しかし調べれば調べるほど、エダルジ事件より酷い冤罪事件分かり結局彼は取り組む決意をした。1912年夏に小冊子オスカー・スレイター事件』を出版したこの中でドイルスレイター偽名アメリカ逃亡したのは、若い愛人一緒にいることが妻にばれることを恐れて警察から逃れようとしたのではないことを指摘した。また凶器とされるスレイター持っていた小型ハンマーについては「画鋲抜いたり、小さな石炭のかけらをたたく以上のことをしたら限界超える」と指摘した。またこの冤罪ユダヤ人対す人種的偏見根ざしている点も指摘したドイル介入事件注目を集める中、事件担当した刑事ジョン・トレンチ警部補良心の呵責に耐えかね、警察の方で証言捏造したことを暴露した。しかし裁判所はこの暴露再審理由として十分ではないとして却下し、しかもトレンチ警部補警察上層部圧力解雇され年金打ち切られてしまった。警察腐敗ぶりに愕然としたドイルは、『スペクテイター』誌において「この事件警察無能さ頑迷さの最高の一例として犯罪傑作集不滅名を留めるだろう」と語ったその後、この事件について動き10年以上なかった。その間スレイター服役続けドイル再審請求何度も司法当局提出したが、取り合ってもらえない状況続いた1925年2月服役して16年になるスレイター看守目を盗んで釈放され囚人仲間利用してドイル助け求め手紙送った。これを読んだドイルは、再びこの問題本腰を入れて取り組む決意固めたドイル1927年7月ジャーナリストのウィリアム・パークが出版したスレイター無罪訴え著作オスカー・スレイターについての真実』に協力した。この本は世論大きな影響与え、この事件に関するマスコミ再調査過熱した1927年11月に『エンパイア・ニュース(英語版)』紙は、警察用意した証人警察から「スレイター犯人証言しろ」と脅迫されていたことを明らかにした。同紙のライバル紙『デイリー・ニュース』も、警察証人賄賂送っていたことを明らかにした。マスコミの報道合戦警察腐敗実態がさらに暴露されることを恐れたイギリス政府同時期に突然スレイター釈放し、この問題鎮静化させようとした。 スレイター釈放されたものの、いまだ無罪認められたわけではなかった。ドイル間髪いれずスレイターの名誉回復および不当な刑罰対す刑事補償請求行った今回再審認められたが、スレイターには金がなかったため、裁判費用支援者たち募金およびドイルの1,000ポンド資金援助賄われた。裁判結果スレイターは公式に無罪判決されたものの、刑事補償はわずか6,000ポンドしか払われず、18年にも及ぶ不当投獄対するものとしては少なすぎた。しかも裁判費用全額負担せねばならなかった(ドイルとしては刑事補償1万ポンド裁判費用全額国持ちが妥当と考えていた)。 ドイルはあくまで司法・警察腐敗正すために行動したであってスレイター個人人柄好きなわけではなかった(ドイル強烈な国家主義者であり、スレイターのように不道徳な生活を送る根なし草コスモポリタン嫌いだった)ため、無罪判決得た今、スレイターとは縁を切るつもりだった。彼がお礼として送ってきた贈り物もすべて返却している。またドイルスレイター支援者たち裁判費用返還しないことを批判したドイルにとっては大した金額ではなく自分への返還どうでもよかったが、ほかの貧し支援者たち債務押しつけようとしていることは許せなかった。ドイルスレイターに「きみは私が今まで会った人間中でももっとも恩知らず愚かな人間だ」と批判する手紙送っている。

※この「スレイター事件」の解説は、「アーサー・コナン・ドイル」の解説の一部です。
「スレイター事件」を含む「アーサー・コナン・ドイル」の記事については、「アーサー・コナン・ドイル」の概要を参照ください。

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