イスラエルの本格空襲
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「ガザ侵攻 (2014年)」の記事における「イスラエルの本格空襲」の解説
7月8日未明、イスラエル国防軍は本格的なガザ攻撃を開始した。アッバース自治政府大統領は、イスラエルにただちにガザへの攻撃を止めるよう表明した。8日のみでパレスチナ側は25人が死亡、100人以上が負傷し、イスラエル側は2人が負傷した。ガザ地区からのロケット弾は、テルアビブやエルサレムにも到達した。イスラエルのネタニヤフ首相は「われわれは市民の安全を第一に考える」と述べ、市民を標的にしたロケット弾攻撃を容認しないことを表明した。またイスラエルは、地上部隊侵攻を前提に予備役4万人を召集した。 7月9日、ガザ地区からのロケット砲攻撃はイスラエル北部ハデラ北方に着弾した。飛距離110km以上は過去最長とみられる。また、ハマースはイスラエルの原子力施設がある、ネゲヴ砂漠の都市ディモナにロケット弾3発を発射したと発表した。しかし、イスラエルはミサイル防衛システム「鉄のドーム」などによりこの時点での死傷者は無く、パレスチナ側は38人が死亡した。「鉄のドーム」の迎撃成功率は約9割、あるいは86%であるという。また、ネットニュースサイトBuzzFeedの取材に答えたあるイスラエル軍人は、「我々は、ガザへの芝刈り以上のことを行う。我々はそれを焼き払うだろう」と述べた。 7月10日、ガザ地区の死者は少なくとも86人、負傷者は約560人に達した。中にはカフェで2014 FIFAワールドカップ観戦中に空襲に遭い、殺害された者もいた。国際連合安全保障理事会は緊急理事会を開き、潘基文国連事務総長は双方に自制を呼びかけた。理事各国はこの後、非公式協議で声明を検討したがまとまらなかった。 エジプトは、パレスチナの負傷者らを医療機関に搬送するためラファ検問所を開放した。 7月11日、ガザ地区の死者は102人、負傷者700人以上に達した。オバマ米大統領は、ネタニヤフ首相との電話会談で、戦闘の沈静化に向け、あらゆる努力を行う必要性を強調した。同日、イスラエル側に2人の負傷者が出た。また、レバノンからもイスラエルに攻撃があり、イスラエルはレバノンの攻撃拠点を攻撃した。 7月12日、イスラエルメディアはさらなる空襲強化の方針を報じた。イスラエル国防軍筋は、ガザ地区住民に退避勧告を出し始めたことを明らかにした。イスラエル外務省は、Twitterで退避勧告ビラの見本を公開した。しかし、どこに逃げれば安全かは書かれていないという指摘もある。 イスラエル南部スデロットでは、空襲を見物するイスラエル人らが見られた。 7月13日、ガザ地区の死者は170人以上、負傷者1100人以上に達した。イスラエル海軍特殊部隊がガザ地区に上陸し、初めて地上戦になった。ただ、閣議では当面は空襲を続ける方針を確認した。 7月14日、イスラエルはガザ北側、エレツからアシュケロンにかけてを立入禁止区域にした。イスラエルは、ガザ周辺に兵士や戦車を配備しており、地上侵攻準備の可能性が指摘された。 同日、エジプトはイスラエル、ハマース双方に1週間のガザ停戦を提案し、無条件受け入れを要求した。主な内容は次の通りである。 現地時間15日9時(日本時間15時)より戦闘を段階的に縮小させ、12時間後に完全に停止する。 ハマースはイスラエルへの攻撃を止め、イスラエルはガザ地区への攻撃を止める。 治安条件を満たした人と物資にエジプトとガザ境界検問所の通行を許可する。 停戦から48時間以内に、双方の代表がカイロで本格交渉を開始する。 また、駐日アラブ各国大使は、この日までに人道的な状況悪化が深刻だとして強く警告する声明を出した。罪のないガザ市民の殺害を直ちにイスラエルにやめさせるよう、日本政府に対して協力を求めた。 7月15日、パレスチナ側の死者は197人に達した。また、イスラエル側で初めて死者が1人出た。 イスラエルはエジプトの停戦案受け入れを表明し、攻撃を一時停止した。しかしハマース側は反発し、ガザ地区からの攻撃も続いたため、イスラエルは攻撃を再開し、停戦は白紙になった。これは、エジプトのシーシー政権がもともと親イスラエルで、事前協議をイスラエル側のみ行い出した案であることに、ハマースやイスラーム聖戦などから反発が上がったためである。イスラエルのネタニヤフ首相は同日のテレビ演説で、「戦闘継続と、それによって犠牲が生じることを選んだのはハマスだ」と非難した。 同日、クネセト(イスラエル国会)副議長のモーシェ・フェイグリンは、en:Arutz Shevaに「最大火力でガザ全体を徹底殲滅」し、ガザ地区再占領とユダヤ人による入植、武装勢力関係者およびイスラエルに忠誠を誓わない非ユダヤ人住民の追放などを行うよう主張した。フェイグリンはかねてよりガザ地区をイスラエル領と主張している。フェイグリンは8月1日にも、Facebookに持論を重ねて投稿した。 7月16日、パレスチナ側の死者は225人に達した。イスラエルはこの日までにガザ地区住民約10万人に退避勧告を出した。 またこの日イスラエル国防軍は、海岸でサッカーに興じる子供4人を軍艦の砲撃で殺害した。目撃したNBC特派員のアイマン・モハルディーンは、直前まで一緒にボールを蹴っていたという。近くにはジャーナリストの投宿したホテルがあり、負傷者の手当に協力した者もいた。イスラエルは、「テロリストの拠点を狙った攻撃だった」と主張した。 同日、ハマースはエジプト案拒否を正式に表明し、代案としてエジプトに通じる検問所の管理と全面開放などを要求した。エジプト案では、検問所全面開放は事後協議とし、検問所管理をファタハに委ねるとしているからである。また、Mondoweissによると、ハマースの主な要求は以下の通りである。 検問所の国際管理(国連またはアラビア諸国) ガザ周辺からのイスラエル国防軍戦車の撤退 イスラエル人少年殺害事件後に拘束した囚人の釈放 漁業制限の10kmへの緩和 国連の監督の下、国際港と国際空港を作り機能させる ファタハとハマースの交渉へのイスラエルの不介入 工業地区の再建およびガザ地区における経済開発の改善 これらの要求をイスラエル側が受け入れられるならば、10年間の停戦に応じると主張した。しかしイスラエルは相手にしなかった。 7月17日、イスラエルとハマースはエジプトの首都カイロで、同国の仲介者を挟み停戦を協議した。エジプトは停戦案を拒否したハマースを暗に批判した。またイスラエル国防軍のピーター・ラーナー報道官は「(ハマースは)情勢沈静化を図る提案を繰り返し拒否した」と批判し、地上侵攻以外の選択肢がなくなったと述べた。また国連の要請に基づき、午前5時から5時間一時停戦した。 NBCは、先日イスラエル国防軍による子供4人の殺害を目撃したモハルディーン特派員をガザの取材から外したため、憶測を呼んだが、7月18日に復帰した。
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