物語要素事典 |
仲介者
『北野天神縁起』 菅原道真配流の宣旨を取り消させようと、宇多院は、わが子醍醐帝のいる清涼殿へむかう。しかし取り次ぎの蔵人頭菅根は、道真に対して恨みを含むところがあったので、院の来訪を帝に知らせなかった〔*『江談抄』第3-28に類話〕。
『牛人』(中島敦) 魯の大夫・叔孫豹は、庶子の豎牛(じゅぎゅう)を信頼して、家政一切をまかせる。叔孫豹が一室に病臥するようになると、外部との連絡は、すべて豎牛が受け持つ。豎牛は、嫡子である孟丙や仲壬の言葉を叔孫豹に取り次がず、讒言を重ねて、孟丙を殺し仲壬を国外へ追う。叔孫豹のために膳部の者が運ぶ食事は、すべて豎牛が食べ、叔孫豹は餓えて死ぬ〔*→〔乗っ取り〕1aの『銀の仮面』(ウォルポール)を連想させる〕。
『史記』「李斯列伝」第27 趙高は、二世皇帝胡亥と丞相李斯の間を裂こうと、胡亥が暇な時には李斯の諌言を取りつがず、胡亥が酒と女を楽しんでいる時にかぎって、李斯を目通りさせる。胡亥は怒る。
『パンチャタントラ』巻1・主話 ジャッカルのダマナカが、信頼し合っている獅子王ピンガラカと牡牛サンジーヴァカの双方に、相手がおまえに害意を持っている、と偽りの告げ口をして、両者の仲を裂いた〔*『パンチャタントラ』を翻案した『カリーラとディムナ』第1章では、山犬ディムナが同様の悪事をする〕。
『水鏡』下巻 「他戸親王が生きている」との噂を聞いた光仁帝が、使者に確かめに行かせる。百川が使者を「真実を申すなら、命はない」と脅したため、使者は他戸親王に会いながらも、「別人でした」と光仁帝に報告する。
『藍染川』(能) 太宰府の神主と契りを結んだ京の女が、子を連れて筑紫へ神主を尋ね行く。神主の妻は夫に知らせずに、「対面せぬ。京へ帰れ」との偽手紙を作って女に渡す。女は悲嘆して藍染川に身を投げる。
『オセロー』(シェイクスピア) 将軍オセローがキャシオーを副官に任命したため、イアーゴーはオセローを恨む。オセローが妻デズデモーナに贈ったハンカチをイアーゴーは手に入れ、それをキャシオーに持たせるなどして、イアーゴーは、デズデモーナとキャシオーが不義をはたらいているかのように、オセローに思わせる。オセローはイアーゴーの言葉にふりまわされて判断力を失い、デズデモーナを絞殺する。
『千一夜物語』「『ほくろ』の物語」マルドリュス版第261~262夜 美少年「ほくろ」は、離縁されたばかりの美人妻と結婚することになるが、先夫が結婚の妨害を老婆に依頼する。老婆は「ほくろ」と美人妻の双方に、「相手はらい病だ」と嘘を告げる。しかし二人は互いに美しい裸身を示し合って老婆の嘘を知り、結婚する。
『戦国策』第17「楚」(4)210 楚の懐王のもとに美女が贈られ、寵愛される。王の夫人が、その女に「王様は汝の鼻がお嫌いゆえ、鼻を隠せ」と教え、王には「あの女は王様の体臭を嫌って鼻を隠している」という。美女は鼻斬りの刑に処せられる〔*和尚と小僧型の昔話『鼻が大きい』は、これと同型〕。
*逆に、仲介者たちが策を用いて、仲の悪い男女を結びつける→〔立ち聞き(盗み聞き)〕7の『空騒ぎ』(シェイクスピア)。
『十二夜』(シェイクスピア) オーシーノウ公爵が、オリヴィア姫への求愛の使者として小姓シザーリオを送る。しかし小姓シザーリオは実は女(本名ヴァイオラ)であり、ひそかにオーシーノウ公爵を恋している。一方オリヴィア姫は、小姓シザーリオ(=ヴァイオラ)を女とは知らず、一目惚れする〔*最後には、オリヴィア姫はヴァイオラの双子の兄セバスチァンと結婚し、ヴァイオラはオーシーノウ公爵と結ばれる〕。
『トリスタンとイゾルデ』(シュトラースブルク)第12・16章 イングランドのマルケ王の花嫁にイゾルデ姫を迎えるべく、騎士トリスタンが使者としてアイルランドへ赴く。ところが、トリスタンがイゾルデ姫を伴ってイングランドへ戻る船中で、二人は誤って媚薬を飲み、恋に落ちる→〔処女〕3。
『日本書紀』巻13安康天皇元年2月 安康天皇が弟大泊瀬皇子(後の雄略天皇)のために、大草香皇子の妹幡梭皇女を娶ろうと考える。大草香皇子はこれを承諾し、家宝の押木珠縵(おしきのたまかづら)を天皇に献上すべく、使者の根使主に託す。ところが根使主は珠縵を横取りし、「大草香皇子が求婚を拒絶した」と天皇に報告する。天皇は怒り、大草香皇子を殺して、幡梭皇女を大泊瀬皇子に与える〔*『古事記』下巻の同記事では、妹の名を若日下王とする〕→〔装身具〕2。
『ばらの騎士』(R・シュトラウス) オックス男爵が新興貴族ファニナルの娘ゾフィーと近々結婚するので、青年伯爵オクタヴィアンが使者として、婚約のしるしの銀のばらを届ける。ところがゾフィーとオクタヴィアンは、互いを一目見て心ひかれる。やがてオックス男爵の不品行が明るみに出て、結局ゾフィーとオクタヴィアンが結婚することになる。
仲介者に関連した本
- イエス・キリスト 唯一の仲介者〈下〉贖いと救いに関する試論 (現代カトリック思想叢書 (23)) ベルナール セスブーエ サンパウロ
- 外務省―世界と手をむすぶ仲介者 (図説にっぽんの役所) 榊原 昭二 あいうえお館
- まんが版「定期借家権」がよくわかる本―貸主・借主・仲介者のために! 定期借家権活用方策研究会 不動産経済研究所