ZTE 各国政府との対立

ZTE

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/16 09:54 UTC 版)

各国政府との対立

アメリカ

オバマ政権

2012年10月、アメリカ合衆国下院の諜報委員会 (The House Intelligence Committee) は、ファーウェイとZTEの製品について、中国人民解放軍中国共産党公安部門と癒着し、スパイ行為やサイバー攻撃のためのインフラストラクチャー構築を行っている疑いが強いとする調査結果を発表し、両社の製品をアメリカ合衆国連邦政府の調達品から排除し、民間企業でも取引の自粛を求める勧告を出した[13][14][15]

2016年3月に、アメリカ合衆国商務省がZTEとその子会社に対して、2010年イラン政府系通信会社と北朝鮮に禁輸措置品を納入し、またその事実を組織的に隠蔽したとして輸出規制措置とした。

トランプ政権

翌年の2017年3月には、アメリカ合衆国商務省は最高約1,300億円の罰金の支払いと、社内のコンプライアンス教育の徹底、今後6年間にわたり規制を順守したか年次報告を行うことなどの司法取引を行うことで輸出規制措置を実施しないことで合意した。また、この様な多額の罰金の支払い命令を受けて、世界各国で事業の縮小を行っている。

アメリカ国防総省アメリカ合衆国国土安全保障省にZTEが下請け経由で通信機器を納入していたことも問題となっており[16]、共和党のトム・コットン上院議員とマルコ・ルビオ上院議員は2018年2月7日、米当局者へのスパイ行為に対する懸念を理由に、ファーウェイとZTEの通信機器について、米国政府の購入やリースを禁じる法案を提出した[17]。2018年2月13日に諜報機関の長官が、アメリカ合衆国上院情報委員会の聴聞会において、アメリカ国民はファーウェイやZTEの製品を使うべきではないと発言したとの報道がなされた[18][19]

さらに2018年4月16日には、同社が前年の司法取引で合意した社員の処分について、一部しか実施していないなどアメリカ合衆国連邦政府に繰り返し虚偽の報告を行っていたとして、アメリカ合衆国商務省がアメリカ企業によるZTEへの製品販売を7年間禁止すると発表した[20]。同社製品に使用されているアメリカ製品の割合は25-30%に達し、この措置は同社事業に深刻な影響を与えるとみられている。

2018年4月16日、アメリカ合衆国商務省は、北朝鮮などに対する禁輸措置違反を理由に、ZTEへのアメリカ製品の輸出禁止を発表。これに対しZTEは「我が社は2016年4月以来、過去の輸出管理規制の教訓から、輸出規制に適合するよう努力してきたとの声明を発表した[21][22]

2018年4月、アメリカ合衆国国防総省はZTEとファーウェイが製造した携帯電話やモデム[23]などの製品について、軍の人員、情報、任務に対して許容不可能なセキュリティー上の危険をもたらすとして、アメリカ軍基地での販売を禁じ[24]、軍人には基地の外でも中華人民共和国製品の使用に注意するよう求めた[25]

2018年5月、トランプ大統領は習近平国家主席総書記)への個人的な好意[26]を理由として13億ドルの罰金を条件にZTEの制裁緩和を合意したと表明し[27]、翌6月に訪中したウィルバー・ロス商務長官は米国政府職員の配置や罰金を受け入れたことにより、ZTEに対する制裁解除で中華人民共和国と合意したと述べ[28]ピーター・ナヴァロ通商製造業政策局長は、追加違反があればアメリカ事業を閉鎖させると示唆した[29]。この際、イヴァンカ・トランプの提携先の中国企業が対中関税を免除されたことや父ドナルドによるZTEの販売禁止解除に伴ってイバンカが中国で申請していた商標登録が承認されたために市民団体や議会から利益相反であるとして追及を受けた[30]

2018年7月、米商務省はZTEの販売禁止措置を解除した[31]

2018年11月、民主党のクリス・バン・ホーレン議員と共和党のマルコ・ルビオ上院議員はベネズエラニコラス・マドゥロ政権の開発した大規模国民監視システム「祖国カード」への協力を理由に、米国政府にZTEの制裁違反の可能性の調査を要請した[32]。なお、ZTEはベネズエラで国産携帯電話端末Vergatarioも開発するなどベネズエラと密接な関係があり[33]、マドゥロ大統領は米国の制裁に対抗してZTEとファーウェイへの投資を表明している[34]

イギリス

2018年4月、イギリスのサイバーセキュリティー当局は自国の通信業界に対し、国家安全保障上の懸念を理由にZTEの機器・サービスを使用しないように呼び掛けた[15]。この警告の中で、イギリス政府は中華人民共和国政府に「幅広い強制権」を付与するとした中華人民共和国の新法にとりわけ警戒感を示した[15]

オーストラリア

2018年8月23日、オーストラリア政府は、ZTEに対して第5世代移動通信システム(5G)への参入を禁止した。中華人民共和国のメーカー側に重要情報が漏洩することを危惧したもので、ファーウェイにも同様の措置が科されている[35]


  1. ^ “東日本大地震の放射能流出時、日本入りしたファーウェイ皇太女・孟晩舟副会長(1)”. 中央日報. (2018年12月14日). https://web.archive.org/web/20190607144618/https://japanese.joins.com/article/122/248122.html 2019年7月16日閲覧。 
  2. ^ http://www.zte.com.cn/cn/about/corporate_information/history/
  3. ^ ZTE Ramps 2008 Revenues - 同社プレスリリース・2009年3月20日
  4. ^ “通信機器企業捜査で中国、一帯一路戦略に影響も 対米依存、部品調達で危機”. 産経ニュース. (2018年4月26日). https://www.sankei.com/article/20180426-WT5DMJ44DFOQFKDX6YTZK4QSFY/ 2018年4月29日閲覧。 
  5. ^ 田村和輝 (2014年2月14日). “携帯電話事情(2) – 端末ラインナップ”. 2016年2月9日閲覧。
  6. ^ 米、中国ZTEに罰金1360億円 イランや北朝鮮に違法輸出”. 日本経済新聞 (2017年3月8日). 2021年2月2日閲覧。
  7. ^ 中興通訊:CDMA携帯の国内販売は累計800万台 2007/07/19 (木) 10:20:41 [中国情報局]
  8. ^ 中興通訊:ブラジル・テレコム3G設備を納入
  9. ^ “[ZTEジャパン ZTE、エチオピアの通信ネットワーク事業が、新潮新書『アフリカ』に掲載”]. ZTE. (2011年3月4日). http://www.zte.co.jp/press_center/news/ztejapan/201103/t20110304_1023.html 2018年2月1日閲覧。 
  10. ^ 烽火通信科技集団 - 百度百科(2018-07-04更新)2018年7月12日閲覧
  11. ^ “ZTEが経営破綻、完全国有化との報道”. ライブドアニュース. (2018年7月2日). http://news.livedoor.com/article/detail/14952009/ 2018年7月12日閲覧。 
  12. ^ “米上院議員、中国ZTEのベネズエラでの案件巡り政府に調査要請”. ロイター. (2018年11月29日). https://jp.reuters.com/article/venezuela-zte-idJPKCN1NY038 2018年12月13日閲覧。 
  13. ^ 米下院特別委 中国通信大手を名指し「対米スパイ工作に関与」”. 産経新聞 (2012年10月9日). 2012年10月9日閲覧。
  14. ^ 中国通信機器大手、ファーウェイは「危険な存在」なのか 各国が「締め出し」に動く中で、日本はどうする”. ジェイ・キャスト (2014年3月26日). 2014年3月26日閲覧。
  15. ^ a b c “中国ZTE機器の使用、英米が警告 安保理由に”. ウォールストリートジャーナル. (2018年4月17日). http://jp.wsj.com/articles/SB11378008564936913642304584168413899754136 2018年4月28日閲覧。 
  16. ^ “中国製機器が米国防総省に、通信傍受や破壊工作の懸念”. Viewpoint. (2017年6月5日). http://vpoint.jp/world/usa/89214.html 2018年2月1日閲覧。 
  17. ^ “米上院議員、政府の華為・ZTE通信機器使用を禁じる法案提出”. ロイター. (2018年2月7日). https://jp.reuters.com/article/china-usa-telecoms-idJPKBN1FS07V?utm_campaign=trueAnthem:+Trending+Content&utm_content=5a7bd6fa04d3012e189ac7f4&utm_medium=trueAnthem&utm_source=twitter 2018年2月9日閲覧。 
  18. ^ “Six top US intelligence chiefs caution against buying Huawei phones”. CNBC. (2018年2月15日). https://www.cnbc.com/2018/02/13/chinas-hauwei-top-us-intelligence-chiefs-caution-americans-away.html 2018年4月28日閲覧。 
  19. ^ “Don’t use Huawei phones, say heads of FBI, CIA, and NSA”. THE VERGE. (2018年2月14日). https://www.theverge.com/2018/2/14/17011246/huawei-phones-safe-us-intelligence-chief-fears 2018年4月28日閲覧。 
  20. ^ “米商務省、中国ZTE向け製品販売を7年間禁止 違法輸出で”. ロイター. (2018年4月16日). https://jp.reuters.com/article/usa-china-zte-commerce-idJPKBN1HN2H7V 2018年4月17日閲覧。 
  21. ^ “中国:米禁輸措置に反発 通信大手規制、報復求める声も”. 毎日新聞. (2018年4月21日). https://mainichi.jp/articles/20180421/ddm/008/020/027000c 2018年4月29日閲覧。 
  22. ^ “ZTE、「米商務省の輸出禁止令は受け入れられない」”. PC Watch. (2018年4月26日). https://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/1119275.html 2018年4月29日閲覧。 
  23. ^ “美国防部禁止使用华为及中兴手机”. ラジオ・フリー・アジア. (2018年5月2日). https://www.rfa.org/mandarin/Xinwen/7-05022018164109.html 2018年5月5日閲覧。 
  24. ^ “中国2社の携帯電話、米軍基地で販売禁止に”. AFP. (2018年5月5日). https://www.afpbb.com/articles/-/3173479 2018年5月5日閲覧。 
  25. ^ “米軍基地でファーウェイ・ZTE携帯の販売取りやめ 国防総省、安全保障上のリスク理由に”. 日本経済新聞. (2018年5月4日). https://www.nikkei.com/article/DGXMZO30129410U8A500C1000000/ 2018年5月4日閲覧。 
  26. ^ “トランプ大統領、習主席への「個人的な厚意」-ZTE制裁見直し”. ブルームバーグ. (2018年5月23日). https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-05-22/P955ID6S972A01 2018年5月28日閲覧。 
  27. ^ “トランプ大統領、中国ZTEへの制裁緩和で合意 経営陣の刷新、巨額罰金支払い条件”. フジサンケイ ビジネスアイ. (2018年5月28日). https://www.sankeibiz.jp/macro/news/180528/mcb1805280500009-n1.htm 2018年5月28日閲覧。 
  28. ^ “【電子版】米政府、中国ZTE制裁解除で合意 ロス商務長官”. 日刊工業新聞. (2018年6月8日). https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00476783 2018年6月8日閲覧。 
  29. ^ “中国ZTE、追加違反あれば米事業閉鎖へ=ナバロ氏”. ロイター. (2018年6月11日). https://jp.reuters.com/article/usa-trade-china-zte-idJPKBN1J613M 2018年6月11日閲覧。 
  30. ^ “トランプ父娘、中国ビジネスで甘い汁──ZTEへの制裁緩和には米議会も反発”. ニューズウィーク. (2018年5月29日). https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/05/zte.php 2021年3月1日閲覧。 
  31. ^ 米商務省、ZTEへの販売禁止措置を解除 事業再開へ”. ロイター (2018年7月14日). 2018年7月28日閲覧。
  32. ^ “米上院議員、中国ZTEのベネズエラでの案件巡り政府に調査要請”. ロイター. (2018年11月29日). https://jp.reuters.com/article/venezuela-zte-idJPKCN1NY038 2018年12月13日閲覧。 
  33. ^ “Movilnet, ZTE to launch El Vergatario handset on 8 May”. telecompaper.com. (2009年5月4日). http://www.telecompaper.com/news/article.aspx?cid=670105 2019年6月9日閲覧。 
  34. ^ “ベネズエラ大統領、ファーウェイ支援で投資を表明”. 日本経済新聞. (2019年5月25日). https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45265770V20C19A5000000/ 2019年6月15日閲覧。 
  35. ^ ファーウェイ、ZTE 豪が5G参入禁止” (2016年8月23日). 2018年8月27日閲覧。
  36. ^ 中興通訊(ZTE)とウィルコム「XGP」技術に関する共同検討の覚書締結について - ウィルコムプレスリリース・2009年2月18日
  37. ^ ZTE初の国内向け音声端末はベーシックな“かんたん携帯”――「840Z」 - ITmedia +Dmobile・2010年5月18日
  38. ^ “ZTEが「nubia」ブランドのスマホで事実上の日本再参入 “売れ筋の価格帯”で勝負”. ITmedia Mobile. (2024年3月14日). https://www.itmedia.co.jp/mobile/spv/2403/14/news203.html 2024年3月16日閲覧。 
  39. ^ 基本的にウェアラブル端末であるが先述の通りVoLTE対応FD-LTE専用モジュールを搭載し、更に音声通話機能に対応することから実質的にはフィーチャーフォン扱いとなる。


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