レズビアン レズビアンによるフェミニズム(女性の権利拡張運動)

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レズビアン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/12 02:38 UTC 版)

レズビアンによるフェミニズム(女性の権利拡張運動)

19世紀後半、多くのレズビアンがその権利(フェミニズム)のために立ち上がった。「ボストンマリッジ(女性同士で築く家庭)」という語がその権利を主張する運動の上で、女性同士の家庭生活を示す言葉として多用された。1970年代1980年代前半の第二次の運動では、北米西欧でも新たに多くの賛同を得た。1970年代の終わりごろまでには、学術的な分野の一部ではあるがフェミニズム(ことに女性同性愛者の権利)として認められるようになった。昨今では不満の表現として、この1970年代の同性愛者の権利解放運動が挙げられている。

レズビアンのフェミニズムに関する指導書においては、男性優位社会資本主義社会、植民地主義社会などが、性別の認識と実際の性別が入り混じることに与える影響が考察され[要出典]、時としてこれらの社会制度がレズビアンの疎外や不満点のもっともたるものであると記述している。

また、エイドリアン・リッシュは自らのエッセイ「強制的異性愛とレズビアンのあり方」 (Compulsory Heterosexuality and Lesbian Existence) の中で、「“色欲的で金銭的で感情的な”女性との接し方」として異性愛を揶揄している。

他の主立った思想家活動家としてはリタ・メイ・ブラウン(Rita Mae Brown)、Audre Lorde、Marilyn Frye、Mary Daly、Sheila Jeffreysが挙げられる。

性の認識

ベッドにて
油絵 1893年 アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック

女性間の同性愛における性行為は、異性間、男性間のそれと同様に多様である。女性同士の肉体関係にある者の中には、自身をレズビアン、倒錯愛などと認識していない者もいる。他のどのような対人関係、性的関係においても、その前後の流れ次第であることと同様である。

昨今[いつ?]西側諸国における社会的、文化的価値観の変容や、新たな学術的見地からも、レズビアンとしての性が市民権を得るようになってきている。

2002年に行われた米国医療センターにおける保健調査報告が、2005年に「 性行動と特定保健指標:2002年15歳~44歳の米国人男女, Sexual Behavior and Selected Health Measures: Men and Women 15-44 Years of Age, United States, 2002」と題して発表された。その中で15歳~44歳の女性の4.4%が直近12か月以内に他の女性との性的関係を持った、と記されている。また、同じく15歳~44歳の女性への「これまでに他の女性と何らかの性的な関係を持ったことがあるか」との問いに対し、11%が「ある」と答えている。レズビアンの性について書かれたこの調査内容は、女性の性の上での自立、移り変わる女性間の性、女性の性の悦びの再認識、ネガティブな性の固定観念の露呈など、様々な物議をかもした。

各国での法制化

1990年代に入るとレズビアンの権利と地位向上を訴えるため、何十ものレズビアン・アベンジャーが組織された。今日ではオランダベルギースペインポルトガルノルウェースウェーデンアイスランドカナダ南アフリカ共和国アメリカ合衆国等で同性結婚が法制化されているが、まだまだ多くの国に受け入れられていないのが現状である。2004年マサチューセッツ州は米国で初めて同性結婚を法制化した。

アイスランドの女性政治家ヨハンナ・シグルザルドッティルは、私生活ではレズビアンで、2009年2月1日首相に就任し、同性愛者を公言した世界初の国家首脳になった。さらに、2010年6月27日に女性脚本家と結婚し、同性結婚をした世界初の国家首脳となった。

対照的にイギリスでは、かつて一度もレズビアンが違法であったことはなく、逆に男性の同性愛が1967年になって初めて合法化された。これはヴィクトリア女王が女性間の性交が可能とは思わず、1885年発布の刑法から女性の同性愛が漏れたためと言われている[誰によって?]1921年、レズビアンを違法とするようフレデリック・マキステン英語版 (Frederick Macquisten) 下院議員が提議したが、貴族院にて否決された。その決議の中で、当時の貴族院議長バーケンヘッド卿は、「女性が1000人いたとしても、そのうち999人はそのような悪習(同性愛)に手を染めるとは思えぬ」と断じた。1928年、レズビアンを題材とした小説、「寂しさの泉 (The Well of Loneliness)」が、公の場で卑猥な表現を行ったとして発売禁止となり、発売認可のための論議を呼んだ。一方で、節度あるレズビアン小説は自由に流通していた。

ユダヤ教の思想では、男性間の同性愛は厳しく非難されるが、女性間のそれには寛大な傾向があった。しかし今日のイスラエルでは例年テルアビブでWorld Pride(同性愛者のパレード)が行われている。

これら西側諸国のような同性愛は、イスラム教国では差別的な法を排除しているトルコを除いては滅多に認められない。サウジアラビアイエメンでは、懲役鞭打ち、果ては死刑などの厳しい処罰がなされる。イランでの同性愛を禁ずる法律は、幾分緩和、廃止されてきたと伝えられるが、依然として男性間の同性愛に関しては禁止されている。(→ イスラーム教徒による性的マイノリティー迫害も参照)


注釈

  1. ^ もともとこの語は蔑称であったのを当事者たちが reappropriate (肯定的な意味の込めなおし)したものだという。en:Dyke (slang) を参照。
  2. ^ 参考文献 3. (1998年)によれば、「あなたの性指向・性自認を自分自身の言葉で表すとしたら?」との質問に対して、「レズビアン」を筆頭に、「ビアン」「ダイク」「既成の言葉では表現できない」などの回答が見られる。

出典

  1. ^ Online Etymology Dictionary。もともと Lesbian は地名の形容詞で、Japanese, Russian などと同様「~人」の意味もあり、初期の Lesbianism/lesbianism は「レスボス人のごとき風潮」といった意味の造語であった。この言葉が「レズビアニズム」として定着すると、Lesbian/lesbian もその関連で使われることが多くなり、現在に至っている。なお、ギリシャではこの言葉をめぐって訴訟も起きている。これについてはレスボス島を参照。
  2. ^ http://www.glaad.org/reference/lgbtq
  3. ^ 東京新聞2019年10月25日21面
  4. ^ a b c d 参考文献 6. 153頁
  5. ^ 参考文献 3. 322頁
  6. ^ a b 参考文献 6. 270頁
  7. ^ 参考文献 7. 116頁
  8. ^ 参考文献 8. 29頁
  9. ^ 参考文献 9. 10頁
  10. ^ 参考文献 6. 140頁
  11. ^ a b c 木村朗子、三成美保(編)「クィアの日本文学史:女性同性愛の文学を考える」『同性愛をめぐる歴史と法:尊厳としてのセクシュアリティ』 明石書店 2015年、ISBN 9784750342399 pp.195-206.
  12. ^ a b c d ゲイの民俗学 礫川 全次 批評社 (2006/01)ISBN 978-4826504355
  13. ^ a b 大正女性文学論 新・フェミニズム批評の会 翰林書房 ISBN 978-4877373085
  14. ^ 『ゲイの民俗学』磯川全次 批評社(2006/01)ISBN 978-4826504355
  15. ^ 『レズビアンの歴史』リリアン フェダマン著 富岡明美 原美奈子 訳 筑摩書房 1996年 ISBN 978-4480857330
  16. ^ a b c d e f g h 『レズビアンの歴史』リリアン フェダマン著 富岡明美 原美奈子 訳 筑摩書房 1996年 ISBN 978-4480857330
  17. ^ Bullough, Vern L. (2004). "Sex Will Never be the Same: The Contributions of Alfred C. Kinsey". Archives of Sexual Behavior. 33 (3): 277–286. doi:10.1023/B:ASEB.0000026627.24993.03. PMID 15129046.
  18. ^ なぜ卵子と精子が必要か?父母ゲノムの明確な意志 | 東京農業大学”. www.nodai.ac.jp. 2022年8月10日閲覧。
  19. ^ 日本経済新聞社・日経BP社. “哺乳類は少数派 メスだけで命つなぐ単為生殖の不思議|ナショジオ|NIKKEI STYLE”. NIKKEI STYLE. 2022年8月10日閲覧。
  20. ^ 『百合作品ファイル』一迅社 (2008/8/14) ISBN 978-4758070157 -


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