食品衛生法 食品及び添加物

食品衛生法

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/13 16:02 UTC 版)

食品及び添加物

食品添加物

食品添加物とは、食品の製造過程または食品の加工や保存の目的で、食品に添加、混和などの方法によって使用するものと定義されている(法第4条第2項)。厚生労働大臣が定めたもの以外は、使用等が禁止されている(法第12条)。ただし、一般に飲食に供されるもので添加物として使用されるもの(一般飲食物添加物)及び天然香料は例外となる。天然香料とは、動植物から得られた物又はその混合物で、食品の着香の目的で使用される添加物と定義されている(法第4条第3項)。

なお、従前は、化学的合成品たる添加物とそれを含む添加物製剤が対象とされていたが、平成7年の法改正によって規制強化が行われ、化学的合成品以外の添加物(天然物)を含めた添加物全体に拡大された。

新開発食品の販売禁止

科学技術の発展により、これまで食経験の無いものを摂取する可能性が生じており、こうした背景を踏まえ設立された規定である。厚生労働大臣は必要に応じて安全性の確証が得られるまで、暫定的にその販売を禁止することができる(法第7条)。

対象となる食品の範囲

  1. 新物質、若しくは食品や添加物として利用されることがなかったもの(法第7条第1項関係)
  2. 食品としての食経験はあるが、例えば、これまで食経験のない程度まで濃縮して飲食に供されるようなもの(法第7条第2項関係)
  3. 死亡事例や劇症肝炎等の重篤な疾患が発生した場合で、食品として利用されることがなかった未知の物質が含まれるおそれがあるもの(法第7条第3項関係)

なお、これまで2.は、アマメシバを含む粉末剤、錠剤等の加工食品について適用事例[5]がある。(1.3.は無し。)

包括的輸入禁止

厚生労働大臣は、高い頻度で基準違反が発見された場合(検査件数全体の5%以上)などにおいて、特に必要があると認めるときは、特定の国・地域で製造されたすべての食品または添加物、器具またはは容器包装について、販売等を包括的に禁止することができる(法第9条, 法第17条)。なお、これまで本条の適用事例はない。

病肉等の販売等の禁止

疾病にかかり又は異常のある獣畜や家きんの肉・臓器・骨など、へい死した獣畜や家きんの肉・臓器・骨などは、販売等してはならない(法第10条第1項)。

家畜伝染病予防法に規定する法定伝染病・届出伝染病など、患畜の肉は一切食用にすることができず、と畜場法食鳥処理の事業の規制及び食鳥検査に関する法律と併せて、厳格な規制が行われている。

獣畜とはめん羊山羊水牛をいい、家きんとはあひる七面鳥をいう。

なお、獣畜が不慮の災害により即死した場合(例えば、トラックや汽車にはねられて即死した場合)において、と畜検査員(獣医師)が人の健康を損なうおそれがなく飲食に適すると認めたときには、販売等することは差し支えない。

獣畜の肉等の輸入

輸入肉・食肉製品については、輸出国政府機関によって発行された衛生事項を記載した証明書を添付したものでなければ、輸入ができない(法第10条第2項)。この衛生証明書は、法第27条に基づく輸入届出の際に、検疫所への提出が求められる。

証明されるべき内容は、前項と同じ(患畜の肉や食肉製品でないこと)である。

なお、アメリカ合衆国オーストラリアニュージーランドからの輸入の場合には、紙の書類ではなく、オンライン(FAINS)による送信が認められている。

食品等の規格基準

厚生労働大臣は、公衆衛生の観点から食品中の残留基準や製造・加工の基準を定めることができる(法第13条第1項)。基準に合わない食品は、販売等してはならない(法同条第2項)。なお、基準設定に際しては、薬事・食品衛生審議会の意見が聴かれ、専門家による議論の結果が反映される。

法文中の、食品の成分の『規格』とは、微生物や添加物等のいわゆる残留基準のことであり、『基準』とは、製造方法や保存方法についての基準のことである。両者を合わせて、『規格基準』と称されることが多い。

主な食品の規格基準

清涼飲料水氷菓魚肉ねり製品食肉製品、ゆでがに、生食用かき冷凍食品即席めん類、容器包装詰加圧加熱殺菌食品など、食品ごとに規格基準が定められている[6]

主な食品(代表例) 規格
清涼飲料水 ヒ素、鉛、カドミウム 不検出 スズ 150.0ppm以下 大腸菌群 陰性 緑膿菌及び腸球菌 陰性(ミネラルウォーター)
魚肉ねり製品 大腸菌群 陰性 亜硝酸根 0.05g以下  
ゆでがに 腸炎ビブリオ陰性 生菌数 100,000/g以下 大腸菌群 陰性
加熱後摂取冷凍食品(凍結直前未加熱) 生菌数 3,000,000/g以下 E.coli 陰性
生食用冷凍鮮魚介類 生菌数 100,000/g以下 大腸菌群陰性 腸炎ビブリオ 最確数100以下
容器包装詰加圧加熱食品(レトルト食品) 発育し得る微生物 陰性

農薬等のポジティブリスト制度

すべての農薬等に対して、一律基準(0.01ppm)を超えて残留する食品については、原則として販売禁止とする制度である(法第13条第3項)。ただし、個別に残留基準が設定されている場合は、その基準により規制する。

なお、『農薬等』には食品中に残留する農薬のほか、残留する動物用医薬品、飼料添加物も含まれる。

総合衛生管理製造過程(HACCP)

HACCPに基づく衛生管理を経て製造又は加工された食品について、厚生労働大臣により承認が与えられる(旧法第13条第1項)。承認可能な品目は、製造基準(加工基準)の定められた食品のうち、乳、乳製品、清涼飲料水、食肉製品、魚肉練り製品、容器包装詰加圧加熱殺菌食品に限定されている(施行令第1条)。承認を受けた製造方法(加工方法)については、例えば、殺菌条件等が製造基準(加工基準)を満たさなくても、法律に適合するものとみなされる(旧法第13条第6項)。


  1. ^ 昭和二十二年法律第二百三十三号 食品衛生法”. 2024年5月5日閲覧。
  2. ^ 山本俊一「日本の食品衛生史 -特に食品衛生法以前の食品添加物について-」『食品衛生学雑誌』第21巻第5号、日本食品衛生学会、1980年、327-334頁、doi:10.3358/shokueishi.21.327 
  3. ^ 歴代課長の回顧録「食品衛生研究」1967年1月号
  4. ^ 厚生労働省 食品衛生法の改正について”. 2024年5月5日閲覧。
  5. ^ 平成15年9月12日厚生労働省告示第307号
  6. ^ 食品別の規格基準について厚生労働省
  7. ^ a b c 国民生活 No.76(2018)”. 国民生活センター. 2021年9月7日閲覧。
  8. ^ 食安発0317第3号 平成23年3月17日 厚生労働省医薬食品局食品安全部長 放射能汚染された食品の取り扱いについて” (PDF). 厚生労働省 (2011年3月17日). 2012年5月7日閲覧。
  9. ^ 厚生労働省告示第百二十九号 平成二十四年三月十五日” (PDF). 厚生労働省 (2012年3月15日). 2012年5月10日閲覧。
  10. ^ 厚生労働省告示第百三十号 平成二十四年三月十五日” (PDF). 厚生労働省 (2012年3月15日). 2012年5月10日閲覧。
  11. ^ 厚生労働省令第三十一号 平成二十四年三月十五日” (PDF). 厚生労働省 (2012年3月15日). 2012年5月10日閲覧。
  12. ^ a b c 「自宅で漬物作れない…」秋田の農家ら困惑 営業は専用作業場が必要に”. 河北新報 (2021年9月6日). 2021年9月7日閲覧。
  13. ^ 広瀬晃子 (2024年6月3日). “「ご当地」漬物が消える? 設備投資がネックに 食品衛生法改正”. 毎日新聞. 2024年6月8日閲覧。
  14. ^ 食品等のリコール情報届出制度”. 東京都福祉保健局. 2021年9月7日閲覧。
  15. ^ 食品衛生法の改正について”. www.mhlw.go.jp. 2024年6月1日閲覧。






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