英語
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/22 14:49 UTC 版)
現況
英語話者の分類としては、1970年代に提唱された3タイプによる分類法が広く使用されている。すなわち、母語としての英語(English as a Native language、ENL)、第二言語としての英語(English as a second language=ESL)、外国語としての英語(English as a foreign language=EFL)である[18]。また、ブラジ・カチュルは上記の分類法を元に、英語の使用状況を、母語使用圏からなる内円・第二言語使用圏からなる外円・外国語としての使用圏からなる拡大円の3つの円を使ってモデル化した[19]。
英語圏
英語を母語とする人々が多数を占めたり、あるいは国語や公用語に英語が指定されている地域は英語圏と総称される。2007年時点では、全世界192カ国のうち英語を公用語としている国は55カ国にのぼっていた[20]。英語を母語としている人は世界人口の4.68%で、第1位の中国語(13.22%)と比べかなり少ない[21]。しかし公用語人口としては英語が世界一である[22]。
現在、イギリス(UK)全体としては圧倒的に英語話者が多数を占めているものの、英語が法的に国家の公用語とされているわけではない[23]。カナダ、オーストラリア、ニュージーランドをはじめとして数十の国または地域では公用語もしくは事実上の公用語となっている。アメリカ合衆国は、全人口の約8割が英語を話し最大の英語話者数を抱えているが、国としての公用語は指定していない。一方で州単位で公用語を決める動きが1980年代以降活発化し、2006年時点ではカリフォルニア州、フロリダ州、イリノイ州など50州の内28州で英語のみが公用語に指定されている[24]。詳しくはen:Template:Official_languages_of_U.S._states_and_territoriesを参照。
第二言語としての英語圏の多くは、イギリス帝国の植民地に由来する。イギリス統治期、現地エリート層のほとんどは英語で教育を受け、植民地行政でも英語が公用語とされたため、独立後も多くの国でこの状態が引き継がれ、政治・経済・教育といった公的分野で英語が使用されていることが多く、また国内言語が統一されていない国家においては、エリート層の共通語として英語が機能していることもある。ただしこうした国家において英語話者は多数派ではないことがほとんどである[25]。
国際共通語としての英語
意思の疎通が可能な国や地域を考慮すると、英語は世界でもっとも広く通用する言語と考えられている[26]。英米の影響などで英語が国際共通語として使われるようになったため、外国語として英語を学習・使用する人も多い。そのため、世界各国でイギリス(イングランド)方言・アメリカ方言などの英語の枠組みを超えた「新英語」が出現するようになった[27]。
英語は国際連合の公用語の一つであるほか、多くの国際機関において公用語としての地位を確立している。石油輸出国機構のように、英語を第一言語とする国家が加盟していないのにもかかわらず英語を公用語とする国際機関すら存在する。また、2007年時点においてインターネット上で最も使用される言語は英語であり、英語圏以外の国のマスメディアも多くの場合英語放送や英語版の発行を行っている。航空交通管制は英語での交信が原則となっている。学術分野でも英語は共通語となりつつあり、文化面でも映画や音楽などは英語使用が主流となっている[28]。翻訳においては、英語以外の言語間で翻訳を行う場合すら、直接翻訳ができない場合はいったん原語から英語へと変換し、またそこから他言語へ変換することが珍しくない[29]。このように経済、社会、文化など様々な分野でグローバル化に伴う英語の普及が進み、「国際共通語」としての英語の重要性は高まる一方である。こうしたことから各国でも盛んに英語教育が行われるようになり、欧州連合(EU)では、学校でもっとも学ばれている外国語となっている[30]。
英語が国際共通語として使用されるようになったのはそれほど古くはなく、19世紀まではフランス語が外交用語や国際共通語としての地位を占めていたが、第一次世界大戦後から英語はフランス語と並ぶ国際語としての地位を徐々に築いていった[31]。第二次世界大戦後イギリスは徐々に国際政治での影響力を弱めていくが、同じ英語を使用する国であるアメリカ合衆国が強い影響力を持つようになり、さらにイギリスから独立した国家群のほとんどは独立後も英語利用を続けることが多かったため、結果として英語が有用な外国語として世界に広く普及することになった[32]。
この現況に対して、英語の影響力強化を懸念する立場からは英語が他言語を圧迫し言語帝国主義に陥っている、すなわち英語帝国主義であるとの批判も見られる[33]。
注釈
出典
- ^ “English”. エスノローグ26版 (2023年). 2023年11月29日閲覧。
- ^ Hammarström, Harald; Forkel, Robert; Haspelmath, Martin et al., eds (2016). “英語”. Glottolog 2.7. Jena: Max Planck Institute for the Science of Human History
- ^ 例えば、青木輔清 編『英吉利語学便覧 初編』(明治5年刊)など。
- ^ kotobank「米語」(kotobank)
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- ^ オーストラリア政府観光局認定のオーストラリア・トラベル・アドバイザーによる解説. “オーストラリアの言葉”. 2010年10月27日閲覧。
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- ^ 「インド現代史1947-2007 上巻」p194-199 ラーマチャンドラ・グハ著 佐藤宏訳 明石書店 2012年1月20日初版第1刷
- ^ 「インド現代史1947-2007 下巻」p16-21 ラーマチャンドラ・グハ著 佐藤宏訳 明石書店 2012年1月20日初版第1刷
- ^ 「英語の歴史」p190-191 寺沢盾 中公新書 2008年10月25日発行
- ^ 貝原好古他 1910.
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