英語 現況

英語

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/18 01:15 UTC 版)

現況

ブラジ・カチュルによる英語使用状況モデル。内円にイギリスやアメリカなどの母語使用圏、外円にインドやナイジェリアなどの第二言語使用圏、拡大円に中国やロシア、ブラジルといった外国語としての使用圏が配されている

英語話者の分類としては、1970年代に提唱された3タイプによる分類法が広く使用されている。すなわち、母語としての英語(English as a Native language、ENL)、第二言語としての英語(English as a second language=ESL)、外国語としての英語(English as a foreign language=EFL)である[16]。また、ブラジ・カチュルは上記の分類法を元に、英語の使用状況を、母語使用圏からなる内円・第二言語使用圏からなる外円・外国語としての使用圏からなる拡大円の3つの円を使ってモデル化した[17]

英語圏

国別の英語話者人口 2/3をアメリカ合衆国一国が占める
2014年時点での人口に占める英語話者の割合。
  80–100%
  60–80%
  40–60%
  20–40%
  0.1–20%
  データなし
英語母語話者の人口に占める割合

英語を母語とする人々が多数を占めたり、あるいは国語や公用語に英語が指定されている地域は英語圏と総称される。2007年時点では、全世界192カ国のうち英語を公用語としている国は55カ国にのぼっていた[18]。英語を母語としている人は世界人口の4.68%で、第1位の中国語(13.22%)と比べかなり少ない[19]。しかし公用語人口としては英語が世界一である[20]

現在、イギリス(UK)全体としての国家語は英語であるが、イギリスの構成国であるイングランドやウェールズスコットランド北アイルランドでは英語以外の言語も公用語である。また、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドをはじめとして数十の国または地域で公用語もしくは事実上の公用語となっている。アメリカ合衆国は、全人口の約8割が英語を話し最大の英語話者数を抱えているが、国としての公用語は指定していない。一方で州単位で公用語を決める動きが1980年代以降活発化し、2006年時点ではカリフォルニア州フロリダ州イリノイ州など50州の内28州で英語のみが公用語に指定されている[21]。詳しくはen:Template:Official_languages_of_U.S._states_and_territoriesを参照。

20世紀中盤までイギリスが多くの植民地を抱えていたこと(イギリス帝国)は英語話者数の増加の要因となった。イギリスの取った植民地政策は間接統治であった。つまりエリート層をイギリス本国で教育させ、それぞれの植民地へ送り返した。上層階級であるエリート層はみな英語で教育を受けたため、植民地行政では英語が支配的となり、独立後もこの状態が続く。かくして旧イギリス領(現在その多くはイギリス連邦に加盟している)では法律が英語で起草されており、それによって公的に(政治経済・教育で)使われるようになり、イギリスとこれらの地域の共通語になった。

国際共通語としての英語

意思の疎通が可能な国や地域を考慮すると、英語は世界でもっとも広く通用する言語と考えられている[22]の影響などで英語が国際共通語として使われるようになったため、外国語として英語を学習・使用する人も多い。そのため、世界各国でイギリス(イングランド)方言・アメリカ方言などの英語の枠組みを超えた「新英語」が出現するようになった[23]

英語は国際連合の公用語の一つであるほか、多くの国際機関において公用語としての地位を確立している。石油輸出国機構のように、英語を第一言語とする国家が加盟していないのにもかかわらず英語を公用語とする国際機関すら存在する。また、2007年時点においてインターネット上で最も使用される言語は英語であり、英語圏以外の国のマスメディアも多くの場合英語放送や英語版の発行を行っている。航空交通管制は英語での交信が原則となっている。学術分野でも英語は共通語となりつつあり、文化面でも映画音楽などは英語使用が主流となっている[24]翻訳においては、英語以外の言語間で翻訳を行う場合すら、直接翻訳ができない場合はいったん原語から英語へと変換し、またそこから他言語へ変換することが珍しくない[25]。このように経済、社会文化など様々な分野でグローバル化に伴う英語の普及が進み、「国際共通語」としての英語の重要性は高まる一方である。こうしたことから各国でも盛んに英語教育が行われるようになり、EUでは、学校でもっとも学ばれている外国語となっている[26]

この現況に対しては世界中の非英語圏地域においてさまざまな反発が存在し、一部では顕著な反英語感情が見られる。「自然言語」の一つに過ぎないただの英語という言語がこれほどまでに高い国際的地位を保ち続け頑としてゆるがせにしない現在の状況は、イギリスやアメリカといった経済的超大国による国際支配の歴史を浮き彫りにするものであり、また世界の非英語国(特に発展途上国)への差別(特にその文化に対する差別)を助長するものであり、さらにはそうした途上国の文化を滅ぼすおそれがある。それらの批判に対する解決策としては、「国際語」向けに作られた人工言語(現在のところエスペラントが最有力)に地位を与えることが考えられるが、「英語の地位を落とすに足る積極的理由もなしに『国際語』をわざわざ変える必要はない」「(英語が既にこれほどまでに普及し強く根づいている現状において)変えるとなると世界的な混乱や波紋を呼ぶことになる」などの反論がある。

英語が国際共通語として使用されるようになったのはそれほど古くはなく、19世紀まではフランス語が外交用語や国際共通語としての地位を占めていたが、第一次世界大戦後から英語はフランス語と並ぶ国際語としての地位を徐々に築いていった[27]第二次世界大戦後イギリスは徐々に国際政治での影響力を弱めていくが、同じ英語を使用する国であるアメリカ合衆国が強い影響力を持つようになり、さらにイギリスから独立した国家群のほとんどは独立語も英語利用を続けることが多かったため、結果として英語が有用な外国語として世界に広く普及することになった[28]


  1. ^ English”. エスノローグ18版 (2015年). 2015年9月2日閲覧。
  2. ^ 例えば、青木輔清 編『英吉利語学便覧 初編』(明治5年刊)など。
  3. ^ kotobank 「米語」
  4. ^ 「英語の歴史」p97-100 寺沢盾 中公新書 2008年10月25日発行
  5. ^ 「言語世界地図」p197-199 町田健 新潮新書 2008年5月20日発行
  6. ^ 「英語の歴史」p137 寺沢盾 中公新書 2008年10月25日発行
  7. ^ 「世界の英語ができるまで」p239-241 唐澤一友 亜紀書房 2016年4月5日第1版第1刷発行
  8. ^ 「世界の英語ができるまで」p247-249 唐澤一友 亜紀書房 2016年4月5日第1版第1刷発行
  9. ^ 「英語の歴史」p146 寺沢盾 中公新書 2008年10月25日発行
  10. ^ 「英語の歴史」p24-25 寺沢盾 中公新書 2008年10月25日発行
  11. ^ 「英語の歴史」p38 寺沢盾 中公新書 2008年10月25日発行
  12. ^ 「世界の英語ができるまで」p20-21 唐澤一友 亜紀書房 2016年4月5日第1版第1刷発行
  13. ^ 「世界の英語ができるまで」p24-26 唐澤一友 亜紀書房 2016年4月5日第1版第1刷発行
  14. ^ 「世界の英語ができるまで」p36-38 唐澤一友 亜紀書房 2016年4月5日第1版第1刷発行
  15. ^ 「世界の英語ができるまで」p42-44 唐澤一友 亜紀書房 2016年4月5日第1版第1刷発行
  16. ^ 「英語系諸言語」p88-89 トム・マッカーサー著 牧野武彦監訳 山田茂・中本恭平訳 三省堂 2009年9月15日第1刷発行
  17. ^ 「英語系諸言語」p117-118 トム・マッカーサー著 牧野武彦監訳 山田茂・中本恭平訳 三省堂 2009年9月15日第1刷発行
  18. ^ 「言語世界地図」p194 町田健 新潮新書 2008年5月20日発行
  19. ^ CIA. “The World Factbook -Field Listing ::Languages” (英語). 2009年11月26日閲覧。
  20. ^ 『なるほど知図帳世界2009』昭文社、2008年。ISBN 978-4398200396
  21. ^ 「アメリカ」(世界地誌シリーズ4)p82-83 矢ヶ﨑典隆編 朝倉書店 2011年4月25日初版第1刷
  22. ^ en:List_of_languages_by_number_of_native_speakers
  23. ^ 「英語の歴史」p143 寺沢盾 中公新書 2008年10月25日発行
  24. ^ 「英語の歴史」p5-10 寺沢盾 中公新書 2008年10月25日発行
  25. ^ 「よくわかる翻訳通訳学」(やわらかアカデミズム・わかるシリーズ)p69 鳥飼玖美子編著 ミネルヴァ書房 2013年12月10日初版第1刷発行
  26. ^ Eurobarometer (2006年2月). “Europeans and their Languages (PDF)” (英語). 2009年11月26日閲覧。
  27. ^ 「言語世界地図」p196 町田健 新潮新書 2008年5月20日発行
  28. ^ 「変容する英語」p160 菅山謙正編 世界思想社 2005年8月10日第1刷発行
  29. ^ 「世界の英語ができるまで」p86-87 唐澤一友 亜紀書房 2016年4月5日第1版第1刷発行
  30. ^ 「世界の英語ができるまで」p97 唐澤一友 亜紀書房 2016年4月5日第1版第1刷発行
  31. ^ 「英語の歴史」p113 寺沢盾 中公新書 2008年10月25日発行
  32. ^ 「世界の英語ができるまで」p98-99 唐澤一友 亜紀書房 2016年4月5日第1版第1刷発行
  33. ^ 「世界の英語ができるまで」p105-106 唐澤一友 亜紀書房 2016年4月5日第1版第1刷発行
  34. ^ 「世界の英語ができるまで」p108-109 唐澤一友 亜紀書房 2016年4月5日第1版第1刷発行
  35. ^ 「世界の英語ができるまで」p124-125 唐澤一友 亜紀書房 2016年4月5日第1版第1刷発行
  36. ^ 「世界の英語ができるまで」p117 唐澤一友 亜紀書房 2016年4月5日第1版第1刷発行
  37. ^ 「世界の英語ができるまで」p114-115 唐澤一友 亜紀書房 2016年4月5日第1版第1刷発行
  38. ^ 「世界の英語ができるまで」p167-170 唐澤一友 亜紀書房 2016年4月5日第1版第1刷発行
  39. ^ 「世界の英語ができるまで」p190-191 唐澤一友 亜紀書房 2016年4月5日第1版第1刷発行
  40. ^ 「世界の英語ができるまで」p186 唐澤一友 亜紀書房 2016年4月5日第1版第1刷発行
  41. ^ オーストラリア政府観光局認定のオーストラリア・トラベル・アドバイザーによる解説. “オーストラリアの言葉” (日本語). 2010年10月27日閲覧。
  42. ^ 「世界の英語ができるまで」p198-200 唐澤一友 亜紀書房 2016年4月5日第1版第1刷発行
  43. ^ 「世界の英語ができるまで」p212-216 唐澤一友 亜紀書房 2016年4月5日第1版第1刷発行
  44. ^ 「世界の英語ができるまで」p221-224 唐澤一友 亜紀書房 2016年4月5日第1版第1刷発行
  45. ^ 「インド現代史1947-2007 上巻」p194-199 ラーマチャンドラ・グハ著 佐藤宏訳 明石書店 2012年1月20日初版第1刷
  46. ^ 「インド現代史1947-2007 下巻」p16-21 ラーマチャンドラ・グハ著 佐藤宏訳 明石書店 2012年1月20日初版第1刷
  47. ^ 「英語の歴史」p190-191 寺沢盾 中公新書 2008年10月25日発行





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