英語 文法

英語

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/11/18 03:22 UTC 版)

文法

方言と変種

英語は複数中心地言語であり、明確な標準語は存在しない。ただし、最も早くイングランドに植民地化されたアメリカでも17世紀初頭、それ以外は18世紀末から19世紀末にかけての植民地化によって英語圏となったため言語が分化する時間が短く、さらに英語圏諸国は密接な関係を維持しているために言語の断絶も少なくなっており、意思疎通ができなくなるほどの言語分化は起こっておらず、一体性を持った言語として存続している[5]。英語の系統としては、アメリカ大陸への植民によってアメリカ英語とイギリス英語の系統に分かれており、アメリカ英語系統はカナダ英語とアメリカ合衆国英語とに分かれ、合衆国英語は植民地化したフィリピン英語の元となった。これに対し、イギリスは18世紀末以降の積極的な植民によって世界各地に英語圏を広げていき、オーストラリア英語やニュージーランド英語、西インド諸島英語やインド英語など、カナダを除く旧イギリス領諸国の英語は全てイギリス英語の系譜へと連なっている[6]

一方、英語圏の辺縁においては、言葉の通じないもの同士が簡単なコミュニケーションを取るためのピジン英語が各地で成立した。特にカリブ海地域においては、奴隷貿易によって連れてこられたものたちの間で多様なピジン言語が成立し、さらに次の世代には母語話者を得て文法・語彙が整備され、ジャマイカ・クレオール語に代表される英語系のクレオール言語が多数成立した[7]。このクレオール言語は解放奴隷によって西アフリカへと持ち込まれ、クリオ語などの英語系クレオール言語がさらに成立した[8]。英領の太平洋諸島においてもこの過程は存在し、パプアニューギニアトク・ピシンなどの英語系クレオール言語が成立している[9]。英国が世界各地に植民地を建設した関係上、英語を起源とするピジン言語クレオール言語は非常に数が多く、全世界のピジン・クレオール言語の約40%は英語を起源とすると考えられている[10]

方言

職業変種

民族変種

その他の変種

英語系クレオール言語

混合言語

歴史

西暦400年代のユトランド半島からブリテン諸島への移住。
Jutes: ジュート人
Angles:アングル人
Saxons: サクソン人

もともとイギリス諸島の先住民はケルト系であり、ケルト語系の言語が使用されていた。やがて1世紀からローマ人ブリテン島に駐留にするようになったが、そのローマ人が西暦410年に本国に引き上げると、5世紀半ばから6世紀にかけて、ジュート人アングル人サクソン人といったゲルマン系の人々が大陸からブリテン島に渡来して、先住のケルト人を支配するようになり、イギリス諸島においてゲルマン系の言語が定着した。ここから英語の歴史が始まる。彼らの話していた言語はゲルマン語派のうちの西ゲルマン語群に属しており、ドイツ語オランダ語と近い関係を持っていた。なかでもオランダのフリースラント州で話されていたフリジア語とは極めて近い関係にあり、アングロ・フリジア語群として同一語群の中に含まれている[11]

以後の英語の歴史はふつう、450年から1100年頃にかけての古英語、1100年頃から1500年頃にかけての中英語、それ以降の近代英語の3期に大別される。中英語と近代英語の間は初期近代英語と分類でき、また20世紀以降の近代英語は現代英語と分類される[12]

古英語は渡来者たちの方言差を引き継ぐ形で方言を持っていたが、10世紀前半に陸地王国が統一されると徐々に標準語の需要が高まっていき、10世紀末にはウェストサクソン方言が標準書記言語としての地位を確立した[13]。しかし11世紀ノルマン・コンクエストによってフランスから来た貴族階級が話していたロマンス諸語オイル語系のノルマン語が公用語として14世紀まで使われ、英語は公的部門で使用されなくなり、確立した標準語も消失した。このことにより、中英語ではロマンス諸語、特にフランス語からの借用語の増大と、庶民の間での英語の簡素化がすすみ、形態変化の単純化、名詞の性別の消失などを引き起こした[14]。ただし中英語の変化のどこまでが言語接触の影響によるものかは議論がある。その後、1362年には公的な場面で英語が使用されるようになり、15世紀初頭には公文書にも使用されるようになった。これに伴い、公文書体に準拠した書き言葉の整備が進んだ[15]。一方、15世紀初頭には大母音推移と呼ばれる発音の変化がはじまり、近代英語初期である17世紀初頭まで続いたことで、英語の発音は以前と比べ大きく変化したものの、書き言葉の綴りは伝統的な発音に基づいて整備されることが多く、さらに活版印刷の普及などによってこの綴りが固定化したため、単語の発音と綴りの間にずれが生じるようになった[16]


注釈

  1. ^ ミットフォード貝原好古『諺艸』の他、佐倉惣五郎を描いた悲劇『東山桜荘子』なども英訳した。

出典

  1. ^ English”. エスノローグ18版 (2015年). 2015年9月2日閲覧。
  2. ^ 例えば、青木輔清 編『英吉利語学便覧 初編』(明治5年刊)など。
  3. ^ kotobank 「米語」
  4. ^ 「英語の歴史」p97-100 寺沢盾 中公新書 2008年10月25日発行
  5. ^ 「言語世界地図」p197-199 町田健 新潮新書 2008年5月20日発行
  6. ^ 「英語の歴史」p137 寺沢盾 中公新書 2008年10月25日発行
  7. ^ 「世界の英語ができるまで」p239-241 唐澤一友 亜紀書房 2016年4月5日第1版第1刷発行
  8. ^ 「世界の英語ができるまで」p247-249 唐澤一友 亜紀書房 2016年4月5日第1版第1刷発行
  9. ^ 「英語の歴史」p146 寺沢盾 中公新書 2008年10月25日発行
  10. ^ 「よくわかる社会言語学」(やわらかアカデミズム・わかるシリーズ)p81 田中春美・田中幸子編著 ミネルヴァ書房 2015年9月20日初版第1刷発行
  11. ^ 「英語の歴史」p24-25 寺沢盾 中公新書 2008年10月25日発行
  12. ^ 「英語の歴史」p38 寺沢盾 中公新書 2008年10月25日発行
  13. ^ 「世界の英語ができるまで」p20-21 唐澤一友 亜紀書房 2016年4月5日第1版第1刷発行
  14. ^ 「世界の英語ができるまで」p24-26 唐澤一友 亜紀書房 2016年4月5日第1版第1刷発行
  15. ^ 「世界の英語ができるまで」p36-38 唐澤一友 亜紀書房 2016年4月5日第1版第1刷発行
  16. ^ 「世界の英語ができるまで」p42-44 唐澤一友 亜紀書房 2016年4月5日第1版第1刷発行
  17. ^ 「英語系諸言語」p88-89 トム・マッカーサー著 牧野武彦監訳 山田茂・中本恭平訳 三省堂 2009年9月15日第1刷発行
  18. ^ 「英語系諸言語」p117-118 トム・マッカーサー著 牧野武彦監訳 山田茂・中本恭平訳 三省堂 2009年9月15日第1刷発行
  19. ^ 「言語世界地図」p194 町田健 新潮新書 2008年5月20日発行
  20. ^ CIA. “The World Factbook -Field Listing ::Languages” (英語). 2009年11月26日閲覧。
  21. ^ 『なるほど知図帳世界2009』昭文社、2008年。ISBN 978-4398200396 
  22. ^ 「よくわかる社会言語学」(やわらかアカデミズム・わかるシリーズ)p147 田中春美・田中幸子編著 ミネルヴァ書房 2015年9月20日初版第1刷発行
  23. ^ 「アメリカ」(世界地誌シリーズ4)p82-83 矢ヶ﨑典隆編 朝倉書店 2011年4月25日初版第1刷
  24. ^ 「よくわかる社会言語学」(やわらかアカデミズム・わかるシリーズ)p88-89 田中春美・田中幸子編著 ミネルヴァ書房 2015年9月20日初版第1刷発行
  25. ^ en:List_of_languages_by_number_of_native_speakers
  26. ^ 「英語の歴史」p143 寺沢盾 中公新書 2008年10月25日発行
  27. ^ 「英語の歴史」p5-10 寺沢盾 中公新書 2008年10月25日発行
  28. ^ 「よくわかる翻訳通訳学」(やわらかアカデミズム・わかるシリーズ)p69 鳥飼玖美子編著 ミネルヴァ書房 2013年12月10日初版第1刷発行
  29. ^ Eurobarometer (2006年2月). “Europeans and their Languages (PDF)” (英語). 2009年11月26日閲覧。
  30. ^ 「言語世界地図」p196 町田健 新潮新書 2008年5月20日発行
  31. ^ 「変容する英語」p160 菅山謙正編 世界思想社 2005年8月10日第1刷発行
  32. ^ 「よくわかる社会言語学」(やわらかアカデミズム・わかるシリーズ)p94-95 田中春美・田中幸子編著 ミネルヴァ書房 2015年9月20日初版第1刷発行
  33. ^ 「世界の英語ができるまで」p86-87 唐澤一友 亜紀書房 2016年4月5日第1版第1刷発行
  34. ^ 「世界の英語ができるまで」p97 唐澤一友 亜紀書房 2016年4月5日第1版第1刷発行
  35. ^ 「英語の歴史」p113 寺沢盾 中公新書 2008年10月25日発行
  36. ^ 「世界の英語ができるまで」p98-99 唐澤一友 亜紀書房 2016年4月5日第1版第1刷発行
  37. ^ 「世界の英語ができるまで」p105-106 唐澤一友 亜紀書房 2016年4月5日第1版第1刷発行
  38. ^ 「世界の英語ができるまで」p108-109 唐澤一友 亜紀書房 2016年4月5日第1版第1刷発行
  39. ^ 「世界の英語ができるまで」p124-125 唐澤一友 亜紀書房 2016年4月5日第1版第1刷発行
  40. ^ 「世界の英語ができるまで」p117 唐澤一友 亜紀書房 2016年4月5日第1版第1刷発行
  41. ^ 「世界の英語ができるまで」p114-115 唐澤一友 亜紀書房 2016年4月5日第1版第1刷発行
  42. ^ 「世界の英語ができるまで」p167-170 唐澤一友 亜紀書房 2016年4月5日第1版第1刷発行
  43. ^ 「世界の英語ができるまで」p190-191 唐澤一友 亜紀書房 2016年4月5日第1版第1刷発行
  44. ^ 「世界の英語ができるまで」p186 唐澤一友 亜紀書房 2016年4月5日第1版第1刷発行
  45. ^ オーストラリア政府観光局認定のオーストラリア・トラベル・アドバイザーによる解説. “オーストラリアの言葉” (日本語). 2010年10月27日閲覧。
  46. ^ 「世界の英語ができるまで」p198-200 唐澤一友 亜紀書房 2016年4月5日第1版第1刷発行
  47. ^ 「世界の英語ができるまで」p212-216 唐澤一友 亜紀書房 2016年4月5日第1版第1刷発行
  48. ^ 「世界の英語ができるまで」p221-224 唐澤一友 亜紀書房 2016年4月5日第1版第1刷発行
  49. ^ 「インド現代史1947-2007 上巻」p194-199 ラーマチャンドラ・グハ著 佐藤宏訳 明石書店 2012年1月20日初版第1刷
  50. ^ 「インド現代史1947-2007 下巻」p16-21 ラーマチャンドラ・グハ著 佐藤宏訳 明石書店 2012年1月20日初版第1刷
  51. ^ 「英語の歴史」p190-191 寺沢盾 中公新書 2008年10月25日発行
  52. ^ 貝原好古他 1910.





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