組織 (社会科学) 構造

組織 (社会科学)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/03/22 02:12 UTC 版)

構造

組織が大きくなる(組織を構成する成員の数が増える)につれて、組織は機能や目的に従って何らかの構造を持つようになる。構造は組織図などによって明示化されることもあれば、暗黙的に生じることもある。それらの構造の類型を組織形態と呼ぶことがある[5]

主に企業について、組織構造には以下のものがある[6]:

官僚制組織
高度に専門化した職務に分化され、ピラミッド型の階層を構成する。上意下達の指示、命令が行われ、支配秩序が整備される。コンティンジェンシー理論によれば、不確実性の低い環境下で効果を発揮する。不要なレントシーキングを防ぐ効果もある。

職能別組織構造

職能別組織構造(: functional organizational structure)は集団を機能ごとに分割した組織構造である。

職種に基づき構成員を営業・生産・開発といった部署へ配属し管理する。部署が担う業務範囲が限られるため、機能効率を追求しやすく専門性を蓄積・確立しやすい。中小企業に多い形態である。一方、全般的な管理能力が身につきにくい、意思決定が遅くなる可能性があるなどの欠点もある。

事業部制組織構造

事業部制組織構造(: divisional organizational structure)は集団を事業・製品ごとに分割した組織である。

事業・製品に基づき構成員を食品部・清涼飲料水係といった部署へ配属し管理する。各事業部が独立的に活動を展開することが多い。事業部間に競争原理が働くことなどによるメリットの一方、同じ組織内で不要な競争が生じたり、事業部をまたがるような活動が行いにくくなるといった弊害も指摘されている。

マトリックス組織

事業部制と職能別組織を複合した組織構造で、縦の組織と横の組織を組み合わせる。さらに3次元マトリックス組織もある。職能ごとの高度な専門性と、事業部組織の持つ行動力などのメリットを同時に達成できる。一方、1人の人間が縦横2つの組織に属することになるため、命令系統が混乱し、複雑な調整が必要になるデメリットがある。

プロジェクト組織
特定の課題を解決するために各部門から専門家を集めて臨時に編成される組織。
ラインとスタッフ
ピラミッド型の命令系統の中に位置づけられ、実業務を直接遂行する構成員(ライン)と、その命令系統から離れ専門家としてラインの業務を補佐する構成員(スタッフ)からなる。

公式組織と非公式組織

一般に、組織には階層構造が存在し、公式に定められた権限関係が存在する。公式に定められた階層構造や権限関係は、組織図によって表される。組織図によって表されるような公式的で明示的な組織構造を、公式組織と言う。例えば「社長 - ○○部 - ××課」などの権限関係は、組織図に明示化される公式組織である。

公式組織とは異なる、成員間の個人的・人間的なつながりから生じる組織構造を、非公式組織と言う。例えば趣味や飲み会を通じて生じる、公式的には確認することのできない個人的なつながりを言う。非公式組織は、公式組織には存在しない成員間のつながりや公式組織とは異なる種類の関係を組織にもたらし、組織全体の情報伝達やコミュニケーションに影響を与える。米国で行なわれたホーソン実験において、非公式組織を介した一体感などの意識が勤労意欲を支えているモラルに大きな影響を及ぼしていることが分かっている[6]


注釈

  1. ^ 日常語では組織を、それに関係する集団として考えるが以下ではバーナードらの定義に基づいた議論を行う。

出典

  1. ^ Barnard, C., The functions of the executive, Cambridge, MA: Harvard University Press, 1938.(山本安次郎・田杉競・飯野春樹訳『経営者の役割』ダイヤモンド社、1956年)
  2. ^ 田島壮幸責任編集『経営学用語辞典』税務経理協会、1997年
  3. ^ Simon, Herbert A., Administrative Behavior Fourth Edition, New York: Free Press, 1997.(二村敏子・桑田耕太郎・高尾義明・西脇陽子・高柳美香『【新版】経営行動』ダイヤモンド社、2009年)
  4. ^ "経営組織の3要素(必要十分条件) 組織の共通目的..." 小松原. (2013). 価値創造の経営学 -グローバル競争時代の理論-. 言視舎. p.103.
  5. ^ 組織形態とは”. IT用語辞典 e-Words. 2023年2月4日閲覧。
  6. ^ a b 板倉宏昭 『経営学講義』勁草書房、2010年、87-93頁。ISBN 978-4-326-50334-6 


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