真空管 形態

真空管

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/24 12:44 UTC 版)

形態

真空管の形状(左からナス管、ST管、GT管、mT管)

容器にはおおむね6つの形態がある。

  • ナス管(1930年代まで): 茄子(ナス)形[13]のガラス管。S管とも呼ばれる[14]
  • ST管(1930年代 - 1950年代): だるま[13]のガラス管で、「ダルマ管」とも呼ばれる[14]
  • GT管(1940年代 - 1950年代)
  • mT(ミニチュアあるいはミニアチュア)管(1950年代 - 末期)
  • サブミニチュア(サブミニアチュア)管(1960年代 - 末期): 1941年にRCA社で補聴器用に開発、1942年に試作・量産開始された近接信管に使用された)
  • ニュービスタ[注釈 11]管(1960年代 - 末期)

この他に外装を金属としたメタル管がある。メタル管は金属の筒で覆われているため、外から内部を見ることはできず、放熱効率を高めるため一般的に黒く塗装されている。メタル管は大文字を使いMT管と表記することがある[14]。これはミニチュア管と区別するためである。

mT管以降の小型真空管は、機器単体に多くの真空管を利用するようになり、その小型化、多様化需要によって主力となったものである。

ただ、小型の真空管そのものは真空管実用化の初期にはすでに作られており、1919年頃には「ピーナッツ・チューブ」と呼ばれる、mT管よりも若干大きめの真空管、WE-215Aが登場している。しかしこれは初期の真空管の使用が電池蓄電池乾電池)に頼っていたことから、その主な目的は節電であり、WE-215Aなどは「経済管」とも呼ばれていた。

発熱する真空管では無理な小型化は望ましいものではなく(激しい温度変化による材料の大きな膨張伸縮により、特に電極部に損傷が生じやすく、この部分からの外気侵入が問題となる)、その後間もなく電灯が普及し、電灯線交流電源)による使用が一般化したことから、メタル管が登場した1935年以降、一部の目的を除き、民需には主にST管、軍需には主にメタル管という状態になった。

真空管はRCA社のメタル管により技術的にほぼ完成されたものとなったが、メタル管は軍需により開発されたものであり、コスト高であった。そこで低コストでメタル管に劣らない諸特性を持つものとしてGT管[注釈 12]が考案され、主に民需用として用いられた。 GT管は米国ではかなり普及したが、日本では太平洋戦争の影響と特許の関係であまり生産されず、戦後、ST管から直接、mT管へとその需要が移行した。

第二次世界大戦後の本格的な需要により、真空管本体とピンを一体としたmT管が主力となり、世界各国で広く生産された。その後、ピンを廃してリード線をそのまま真空管本体から引き出すことにより、さらに小型化したサブミニチュア管が作られた。

そしてトランジスタとの市場競争となった末期のニュービスタ管は、プリント基板に搭載して使用する目的のため、当時のトランジスタと同じ程度の大きさまで小型化が進められた。

なお、現在[いつ?]も生産が続けられているオーディオ用真空管(後述)などでは、オリジナルのものはメタル管やGT管であっても、ガラス管部がST管形状となっているものなどもある。

複合管

1本の容器に複数本分の機能を封入した、複合管(双三極管・三極五極管など)と呼ばれる製品もある[13]


注釈

  1. ^ : electron tube
  2. ^ : thermionic valve
  3. ^ 「電子管」は熱電子を利用しないものなど、より広い範囲の素子を指して使われることもある。
  4. ^ : diode
  5. ^ : triode
  6. ^ : tetrode
  7. ^ : pentode
  8. ^ : rectifier
  9. ^ どちらも直熱型三極管
  10. ^ 後のUZ-2A5。
  11. ^ : Nuvistor
  12. ^ GTは「glass tube」の略とされる。
  13. ^ 油脂等の汚れがフィラメントからの熱を吸収し、その部分の温度を上げることでガラスを歪ませるため。製造管理の行き届いた現代の白熱電球においてもハロゲンランプなど、大きさの割には消費電力の大きい電球は、同じく油脂汚れ厳禁である[23]。日本放送協会編 ラジオ技術教科書(1946〜1947年)、電気学会編 電気材料(1960年)にも記述がある。
  14. ^ 高周波での増幅特性で半導体素子を凌駕する事は現在でも珍しくはない。事実、高信頼性と低消費電力が要求される放送衛星通信衛星等の人工衛星では現在でも送信用に真空管の一種である進行波管が使用される

出典

  1. ^ 広辞苑第六版【真空管】定義文
  2. ^ 広辞苑第六版【真空管】定義文の後の叙述文
  3. ^ 平凡社『世界大百科事典』vol.14, p.261【真空管】
  4. ^ "管球". 精選版 日本国語大辞典(小学館). コトバンクより2021年5月22日閲覧
  5. ^ 用例: 論文検索 "球スーパー"”. 日本の論文をさがす. 国立情報学研究所 (NII). 2021年5月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年5月22日閲覧。
  6. ^ a b 用例:通商産業大臣官房調査統計部(編)「1 生産動態統計」『平成元年 1989 機械統計年報』、通商産業省、1990年、286-288頁、2021年5月22日閲覧 
  7. ^ "石". 精選版 日本国語大辞典(小学館). コトバンクより2021年5月22日閲覧: 「せき【石】(2)〘接尾〙(2)」
  8. ^ http://www.at-s.com/news/article/economy/shizuoka/456410.html デブリ撮影に浜ホト貢献 真空管カメラ、福島原発投入へ 静岡新聞 2018年3月15日閲覧
  9. ^ https://gigazine.net/news/20140626-nasa-vacuum-transistor/ 半導体に取って代わられた真空管に復権の兆し、超高速のモバイル通信&CPU実現の切り札となり得るわけとは? GIGAZINE 2018年5月18日閲覧
  10. ^ Bijl著「The Thermionic Vacuum Tubes and It's Applications」、1920年
  11. ^ タイン著「Saga of Vacuum Tube」、1977年
  12. ^ 浅野勇著「魅惑の真空管アンプ 上巻」
  13. ^ a b c 甘田, 早苗『初級ラジオ工作』誠文堂新光社、東京、1949年10月10日、86頁。doi:10.11501/1169566https://dl.ndl.go.jp/pid/1169566/1/48 
  14. ^ a b c ラジオ科学社 編『真空管の話』ラジオ科学社、東京〈ラジオ・サイエンス・シリーズ ; 第1集〉、1953年1月20日、29頁。doi:10.11501/2461951NCID BA65558749NDLJP:2461951https://dl.ndl.go.jp/pid/2461951/1/17 (要登録)
  15. ^ Donovan P. Geppert, (1951). Basic Electron Tubes, New York: McGraw-Hill, pp. 164 - 179. Retrieved 10 June 2021
  16. ^ Winfield G. Wagener, (May 1948). "500-Mc. Transmitting Tetrode Design Considerations" Proceedings of the I.R.E., p. 612. Retrieved 10 June 2021
  17. ^ Staff, (2003). Care and Feeding of Power Grid Tubes, San Carlos, CA: CPI, EIMAC Div., p. 28
  18. ^ GE Electronic Tubes, (March 1955) 6V6GT - 5V6GT Beam Pentode, Schenectady, NY: Tube Division, General Electric Co.
  19. ^ J. F. Dreyer, Jr., (April 1936). "The Beam Power Output Tube", Electronics, Vol. 9, No. 4, pp. 18 - 21, 35
  20. ^ R. S. Burnap (July 1936). "New Developments in Audio Power Tubes", RCA Review, New York: RCA Institutes Technical Press, pp. 101 - 108
  21. ^ RCA, (1954). 6L6, 6L6-G Beam Power Tube. Harrison, NJ: Tube Division, RCA. pp. 1,2,6
  22. ^ エレクトロニクス術語解説 1983, p. 256.
  23. ^ 自動車用電球ハンドブック 第6版” (PDF). 日本照明工業会. p. 26. 2022年9月24日閲覧。






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