濡れ 濡れの概要

濡れ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/02/24 02:47 UTC 版)

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ぬれの例。木の葉が水を撥くため、接触角が大きい。

現象

液体や固体の物質が、気体のように散逸せずにまとまりを維持するのは、それらの内部の原子や分子同士が互いに引き付け合っているためであるが、表面ではその力が物質の面方向に強くはたらき表面張力となって現れる。容器に収められ重力以外の外力を受けていない液体では、自重と表面張力のつり合いによって外形が定まるが、固体では固有の外形を維持する力が強いため表面張力が観察されにくい。ただし、固体と液体が接触する時は液体だけでなく固体の表面張力も顕在化する。液体の表面張力に比べて固体の表面張力が大きいと、固体に接触した液体は自ら球形になろうとするよりも固体の表面に広がろうとして良くぬれる。固体と液体が接触した場合の両者の表面張力の違いによってぬれの度合いが異なってくる[2]

接触角

接触角の定義

固体表面が液体及び気体と接触しているとき、この3相の接触する境界線において液体面が固体面と成す角度を接触角(contact angle)といい[3]、接触角が90°以下の状態をぬれると呼ぶ[4]。また、接触角が小さい性質を親水性、大きい性質を撥水性という。特に撥水性、親水性が強い性質を超撥水超親水という。

A:接触角が大きい:ぬれにくい
B:接触角が中程度
C:接触角が小さい:ぬれやすい

表面のぬれやすさは接触角によって定量的に測ることができる。表面張力が小さい固体はぬれにくく、液体が付着したときの接触角は大きくなる。反対に、表面張力が大きい固体はぬれやすく、液体が付着したときの接触角は小さくなる。テフロンなど撥水性のある物質の表面では接触角は180°に近くなり、液滴はほぼ球形になる。一般に原子結合が強く安定した物質は表面エネルギーが小さく、活性が低いため酸化などの反応も起きにくい。また、表面に光沢のある固体は、そうでないものに比べ接触角が大きくなる傾向がある。

ヤングの式

接触角と表面張力の関係を表す、トマス・ヤングによる次の式をヤングの式という[5]

付着ぬれ  拡張ぬれ  浸漬ぬれ
付着仕事の導出
拡張仕事の導出
浸漬仕事の導出
付着ぬれ
大きな固体に少量の液体が接した状態を付着ぬれという。液体が一定の形を保っている状態から、固体と液体を引き離すのに必要な仕事は、
である。この式はデュプレの式[9]と呼ばれ、Wa付着仕事という。
拡張ぬれ
液体が固体表面に拡がっていく状態を拡張ぬれという。液体がぬれ広がっている状態から、ぬれていない状態にするのに必要な仕事は、
である。Ws拡張仕事または拡張係数という。Ws > 0であれば液体は表面エネルギーを減らすためにぬれ広がり、Ws < 0であればある接触角をなして不完全なぬれ状態となる[9]
浸漬ぬれ
固体全体が液体に沈んだ状態を浸漬ぬれという。固体が液体に浸かっている状態から、液体を退けるために必要な仕事は、
である。Ww浸漬仕事という。

ヤングの式をそれぞれの仕事の式に代入すると、

  • 付着仕事:
  • 拡張仕事:
  • 浸漬仕事:

となるので、付着ぬれはθ > 90°で、浸漬ぬれはθ < 90°で起こる。


  1. ^ 物理学辞典編集委員会 『物理学辞典』(三訂版) 培風館、2005年9月30日、1687頁。ISBN 978-4563020941 
  2. ^ 谷村康行 『「非破壊検査」基礎のきそ』(初版) 日刊工業新聞社、2011年4月26日、32頁。ISBN 9784526066757 
  3. ^ 『物理学辞典』(三訂版)、1190頁。
  4. ^ 『基礎のきそ』、32-33頁。
  5. ^ 田中一義; 田中庸裕 『物理化学』 丸善、2010年、451頁。ISBN 978-4-621-08302-4 
  6. ^ 諸貫信行 『微細構造から考える表面機能』 工業調査会、2010年、78頁。ISBN 978-4-7693-1292-5 
  7. ^ a b 中島章 『固体表面の濡れ制御』 内田老鶴圃、2007年、70-74, 86頁。ISBN 978-4-7536-5631-8 
  8. ^ ただし接触角のヒステリシスと転落角は必ずしも相関しない。物理的挙動につながるのは各接触角の余弦の差であり、接触角のヒステリシスは直接的につながるものではない。しかし余弦は接触角90°を境にして符合が変わってしまうため、転落のしやすさを直感的に把握するため、接触角のヒステリシスが便宜的に用いられる。
  9. ^ a b 中島章 『固体表面の濡れ製』 共立出版、2014年、18-22頁。ISBN 978-4-320-04417-3 
  10. ^ 井本稔 『表面張力の理解のために』 高分子刊行会、1992年、79頁。ISBN 4-7702-0056-0 


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