本塁打 本塁打の概要

本塁打

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/12/11 07:24 UTC 版)

定義

  1. 打者が打った正規の打球が、地面かあるいは「野手以外のもの」に触れることなく(これを「インフライトの状態」という)、両翼のファウルラインとフェンスの交差地点の間(交差地点上を含む)を通過してプレイングフィールドの外へ出た場合。または、ファウルラインがフェンスと交差する地点から垂直に伸びるファウルポール、もしくはポールのフェアゾーン側に伸びている長さ数十センチメートルの金網に当たった場合[1]。「プレイングフィールドの外へ出る」とは、スタンドに入ること、更にはスタンドを越して球場外へ出ること(場外本塁打)を意味する。プレイングフィールドの外にある壁(バックスクリーンなど)に当たって跳ね返り再びフィールドに戻った場合も含まれる。「インフライトの状態」でプレイングフィールドの外へ出るとは、野手のグラブなどをかすめてフィールド外に出る場合のみならず、本来ならフィールド外に出ないような飛球が野手のグラブや頭などに当たり跳ね返ったためにスタンドに入った場合も含む。
  2. 審判員が明らかに上記1になるであろうと判断した打球に対して、野手がグローブや帽子などを本来身につけるべき場所から外して投げつけ、現実に打球の進路を変えた場合。ただし、投げつけても打球に当たらなければそのまま競技続行である。

上記1、2の場合はボールデッドとなり、審判員は右手を頭上で回すジェスチャーとともに「ホームラン」を宣告し、打者を含めた全ての走者には本塁までの安全進塁権が与えられる。走者は本塁まで正規の走塁を行い、その数が得点となる。1点(走者なし)ならソロ、2点(走者1人)なら2ラン、3点(走者2人)なら3ラン、4点(走者3人、満塁)なら満塁本塁打(満塁ホームラン)あるいはグランドスラムと呼ぶ。打者走者が正規に本塁まで走塁し得点が認められたとき、打者に本塁打が記録される。

「インフライトの状態」とは、打者が打った打球がまだ地面かあるいは「野手以外のもの」に触れていない状態をいうので、一度野手に触れた後、地面に落ちることなくスタンドに入った場合も、「インフライトの状態でプレイングフィールドの外へ出た」ことになる。すなわち、フェア地域で野手に触れた打球で、まだ地面に落ちていないものが上記の定義1、2に該当する場合は本塁打であり、審判員によって「ホームラン」が宣告される[注 1]。ただし、打球に触れた野手の行為が失策に該当すると公式記録員が判定すれば、打者には本塁までの安全進塁権が与えられるものの、野手に失策が記録されるだけで本塁打も安打も打点も記録されない(英語で4-base errorと呼ばれる)[2][3]。一度野手が触れた打球は、その時点でフェアかファウルかが確定する[4]。したがって、野手がファウルグラウンドで打球に触れ、インフライトの状態のままフェアゾーン側のスタンドに入った場合は、ファウルボールである。一方、野手がフェアグラウンドで打球に触れ、インフライトの状態のままファウルゾーン側のスタンドに入った場合は、ボールデッドになり、審判員によって二塁打(エンタイトルツーベース)が宣告される[5]

野手がフェンスの上に登りジャンプして捕球を試みることなども許されている。フェンスに登った野手が、本塁打になりそうな打球をプレイングフィールド内で捕球した場合は、捕球したままプレイングフィールド内に残ればアウト、打球に触れたが、ボールがグラウンドに落ちた場合はボールインプレイとなる。また、捕球した選手ごとスタンドへ入ってしまった場合、審判員が正規の捕球とみなさなければ本塁打、正規の捕球の後にスタンドに入ったと判定した場合は、打者はアウトになり、ボールデッドとなって、無死もしくは一死の場合は塁上の走者に1個の安全進塁権(テイクワンベース)が与えられる[6](1979年公認野球規則に2.15「キャッチ」【原注】[注 2]が書き加えられたが、アウトになるルール自体が改正されたわけではない)。タッチアップと同等の行為であるが、ボールデッド状態の為この場合は走者がアウトになる事は無い。

なお、フェンスに登るなどしている野手は危険を承知でプレイしているものとみなされ、仮に観衆の妨害を受けたとしても、審判員によって妨害が宣告されることはない。ただし、観衆がフェンスを超えてプレイングフィールド側に手を出して野手を妨害したり打球に触れたりした場合は、審判員によって妨害が宣告され、ボールデッドとなる。審判員は、妨害がなければ競技はどのような状態になったかを判断して、ボールデッド後の処置をとる[7]

打球が外野フェンスの頂上に当たった場合はその時点でフェアとなるが、はねた打球がスタンドに入ったとき、それを本塁打と判定するかどうかについてはグラウンドによって事情が異なる。一般には、本塁打と判定するための境界線がフェンスの頂上に設定されているため、打球がその後スタンドに入るかポールに触れた場合は本塁打、プレイングフィールドに落下または野手が処理した場合はインプレーとなるが、例えばフェンス上に設置されている手すりなどがある場合の扱いは各野球場で定められており、この場合はその定められた境界線をフェンスの頂上に準ずるものとして扱う。

外野フェンスの中腹にあるラバーフェンスに当たった打球がはねてスタンドに入った場合、1992年の八木の「幻の本塁打」事件を機にルールの明文化が検討されたが、1994年のプロ・アマ合同の規則委員会で、プロは二塁打・アマチュアは本塁打という扱いとなるなど、ルールが二分化された[8]。しかし、2001年の第83回全国高等学校野球選手権大会日大三高内田和也が放った打球が、八木の打球と同様にラバーフェンスではねてスタンドに入り、アマの規定通り本塁打になったことで、大会本部に数多く「二塁打ではないか」という意見が寄せられた[8]。これを契機に2002年1月12に開催されたプロアマ合同の規則委員会で、プロに合わせて二塁打という扱いとなることが確認された[8]

かつては日本の一部の球場で本塁打数増加を目的に外野フィールドにフェンスを設けてプレイングフィールドを狭めるラッキーゾーンが設置されていたが、現在はほとんど廃止されている。

ドーム球場のフェア地域の天井や懸垂物などにボールが当たったり挟まったりした場合、その場所によって本塁打と認定するなど各球場ごとにグラウンドルールが定められている。詳しくはドーム球場の特別ルールの項を参照のこと。

日本プロ野球 (NPB) においては、2009年に試験導入、2010年より本塁打の判定に限りビデオ判定を完全導入した[注 3]。 ビデオ判定適用第1号は3月27日の東京ドームで行われた読売ジャイアンツ(巨人)対東京ヤクルトスワローズでホームランを打ったアーロン・ガイエルである。中堅フェンスの上部付近で跳ね返り、フェンス上部に当たって跳ね返ったとみてインプレーとし、「二塁打」になった。だが、直後に審判団が審判室でビデオを確認した結果、「フェンスを越えており本塁打」と判定を覆した。「ビデオでは打球が(ネット上部で)消えており、本塁打と判断した」と説明された。

ランニングホームラン

打者が打った打球のうち、一度でも地面に落ちたフェアボールを守備側が失策を伴うことなく処理する間に、打者走者が本塁まで進塁すると「ランニングホームラン」[9](走本塁打)または(走本)となる。この場合はボールインプレイであり、審判員の「ホームラン」の宣告はない。記録上は上記1、2と同じく本塁打として記録される。この場合、重要なのは、打者の走力やベースランの技術であるため、ヒット性のライナーでも本塁打となることもある。

サイクル本塁打

サイクル本塁打(サイクルホームラン)[10][11]とは、1試合に異なる4種類の本塁打(ソロ、2ラン、3ラン、満塁)すべてを打つことであるが、NPB・メジャーリーグ (MLB) ともに2022年までにこの記録を達成した個人はいない[10][12]

マイナーリーグでは、1998年7月27日にAA級 (2A) のアーカンソー・トラベラーズ(当時はセントルイス・カージナルス傘下)に所属していたタイロン・ホーン (Tyrone Horne) が、対サンアントニオ・ミッションズ(当時はコロラド・ロッキーズ傘下)との試合で初回に2ラン、2回に満塁、5回にソロ、6回に3ランを打って達成した例がある[14][15]。2022年8月11日には、同じくカージナルス傘下AA(当時スプリングフィールド・カージナルス)所属のチャンドラー・レドモンド(Chandler Redmond)が、ダイヤモンドバックス傘下AA(当時アマリロ・ソッドプードルズ)との試合で5回に2ラン、6回に満塁、7回にソロ、8回に3ランを打って達成した[16]

チームとして1試合で「サイクル本塁打」を達成した例としては、2022年3月31日の大阪桐蔭高校阪神甲子園球場第94回選抜高校野球決勝戦:選抜大会では史上初)[11]、2022年5月9日のロサンゼルス・エンゼルスエンゼル・スタジアム・オブ・アナハイム、対タンパベイ・レイズ戦)、2022年9月7日の読売ジャイアンツ東京ドーム、対横浜DeNAベイスターズ戦。チーム15年ぶり9度目)などがある[17][12]

アベック本塁打

アベック本塁打(アベック弾、アベックホームラン、アベックホーマー、アベックアーチ、アベック砲)とは、同じ球団の2人の選手が同じ試合で放った本塁打をいう。試合毎に回数で数える。1つの試合の中で一方又は双方の選手が複数の本塁打を放って達成した場合も(放った本塁打数に合わせて増えることはなく)1回と数える。2人の強打者が同時期に同球団に所属していなければあまり発生しない。下記のように、特に有名なものは特別な呼称が付けられる場合がある。

王貞治長嶋茂雄ON砲巨人)による106回、山本浩二衣笠祥雄YK砲広島)による86回、野村克也ケント・ハドリ南海)の70回、秋山幸二清原和博AK砲西武)による62回が有名である。


注釈

  1. ^ アシストホームランとも呼ばれ、元福岡ダイエーホークス岸川勝也鈴木貴久の、元読売ジャイアンツ松本匡史ボブ・ホーナーの放った打球を本塁打にしてしまっている。ホセ・カンセコは、カルロス・マルティネス英語版の放った打球が頭に当たり、これがフェンス外側へ飛んで、結果本塁打にしてしまったことがある。その他、大豊泰昭山田勉も本塁打をアシストしてしまったことがある。1960年8月9日のボストン・レッドソックス対クリーブランド・インディアンスの試合では、レッドソックス外野手のルー・クリントン英語版が、エンタイトル二塁打になるはずだったボールを偶然スタンドに蹴り込んでしまい、間の悪いアシストホームラン、しかも決勝打にしてしまうハプニングが起きている。
  2. ^ 当時のもので現在は本規則における用語の定義 15『キャッチ』【原注】に記載されている。
  3. ^ 2014年度からはフェンス際の打球と適用範囲が広がっている。

出典

  1. ^ 公認野球規則 5.05(a)(5)
  2. ^ 4ベースエラーの新人アデル「ボール見失って…」 日刊スポーツ(2020年8月10日)
  3. ^ Rangers score on rare 4-base error against Angels MLB.com (2020年8月10日)
  4. ^ 公認野球規則 本規則における用語の定義 25『フェアボール』(e), 32『ファウルボール』(d)
  5. ^ 公認野球規則 5.06(b)(4)(F)
  6. ^ 公認野球規則 5.06(c)(3)
  7. ^ 公認野球規則 6.01(e)
  8. ^ a b c 朝日新聞2002年03月05日27面
  9. ^ : inside-the-park home run または inside-the-park homeren:Inside-the-park_home_runも参照のこと。
  10. ^ a b c d e 久保田龍雄「かつて「1日がかり」では達成も…幻の“サイクル本塁打”に挑んだ男たち」『BASEBALL KING』フロムワン、2020年10月20日。2022年6月2日閲覧。オリジナルの2022年6月2日時点におけるアーカイブ。
  11. ^ a b サイクル本塁打、決勝負けなし9連勝などなど 大阪桐蔭の記録ずくめVアラカルト」『デイリースポーツ神戸新聞社、2022年4月1日。2022年6月2日閲覧。オリジナルの2022年6月2日時点におけるアーカイブ。
  12. ^ a b c “NPBで「サイクル本塁打」を1日で達成した唯一の選手 いつか「村神様」には1試合で達成を”. 日刊スポーツ (日刊スポーツ新聞社). (2022年9月30日). https://www.nikkansports.com/baseball/column/bankisha/news/202209300000014.html 2022年9月30日閲覧。 
  13. ^ 読売新聞』1999年4月19日東京朝刊スポーツA面19頁「巨人、5点差はね返したが… 河村真司「中継ぎの差」に沈む/中日9-7巨人」(読売新聞東京本社 西山栄一)
  14. ^ 1試合4本塁打 メジャーでは過去18人 サイクル本塁打はマイナーで記録」『Sponichi Annex』スポーツニッポン新聞社、2018年5月15日。2022年6月2日閲覧。オリジナルの2022年6月2日時点におけるアーカイブ。
  15. ^ Lisa Winston (2006年8月10日). “Horne's 'home run cycle' has yet to be replicated Recent college grad puts baseball history in perspective” (英語). MiLB.com Homepage. マイナーリーグベースボール. 2022年6月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年6月2日閲覧。
  16. ^ SportsCenterのツイート”. Twitter. 2022年11月15日閲覧。
  17. ^ エンゼルス “サイクル”本塁打の珍記録 ソロ、2ラン、3ラン、満塁全部出た そのうち2発が大谷」『Sponichi Annex』スポーツニッポン新聞社、2022年5月10日。2022年6月2日閲覧。オリジナルの2022年6月2日時点におけるアーカイブ。
  18. ^ 歴代最高記録 本塁打【通算記録】 - NPB.jp 日本野球機構(シーズン中は毎日更新)
  19. ^ 歴代最高記録 本塁打【シーズン記録】 - NPB.jp 日本野球機構
  20. ^ MLB 通算本塁打記録 - Baseball-Reference.com
  21. ^ MLB シーズン本塁打記録
  22. ^ カネシゲタカシ, 鳥越規央 『プロ野球 令和の最新データで読み解く「この選手がすごい! 」ランキング』辰巳出版、2020年、36-37頁。ISBN 4777826473 
  23. ^ 永山智浩 (2015年6月17日). “Webオリジナルコラム 本塁打率から見るプロ野球。「10.00」の壁を越えられるか?”. 週刊ベースボールONLINE. ベースボール・マガジン社. 2021年11月8日閲覧。
  24. ^ baseballchannel (2016年2月8日). “苦境に立つバレンティンとブランコ。復活の証明へ、スラッガー2人が挑む通算200号”. ベースボールチャンネル(BaseBall Channel). 株式会社カンゼン. 2021年11月8日閲覧。
  25. ^ DeNA筒香が通算150本塁打を達成 本塁打率で見る歴代強打者たち”. Full-Count. 株式会社Creative2 (2018年5月25日). 2021年11月8日閲覧。
  26. ^ 永山智浩 (2015年6月17日). “Webオリジナルコラム 本塁打率から見るプロ野球。「10.00」の壁を越えられるか?”. 週刊ベースボールONLINE. ベースボール・マガジン社. 2021年11月8日閲覧。
  27. ^ Career Leaders & Records for AB per HR”. Baseball-Reference.com. 2022年11月25日閲覧。
  28. ^ Single-Season Leaders & Records for AB per HR”. Baseball-Reference.com. 2022年11月25日閲覧。
  29. ^ NPB 通算被本塁打記録 - NPB.jp 日本野球機構
  30. ^ NPB シーズン被本塁打記録 - NPB.jp 日本野球機構





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