木造軸組構法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/17 02:36 UTC 版)
特徴
- 日本の木造住宅の工法としては、主流の工法である。技術的には伝統工法そのものというわけではなく、多くは1960年代頃から発達したものである。
- 使用される木材は、例として、土台が105mm×105mmの檜、大引きが90mm×90mmの檜、柱が105mm×105mmの杉、間柱が30mm×105mmの杉、梁が105mm×{105mm, 120mm, 150mm, 180mm, 210mm, 240mm, 270mm, 300mm, 330mm, 360mm}の米松、筋交いが105mm×45mmの米松、母屋が105mm×105mmの米松、垂木が45mm×45mmの米松など、実に多種多様である。
- 木造軸組構法では、各部材に、継手・仕口などの複雑な加工を施すため、手作業による加工には高度な技術が必要とされる。そのため、近年は人件費および工期を減らすためプレカット工場での機械による継手・仕口の加工が主流となっている。
- 使用する釘は、主に鉄丸くぎ(N釘)のN50・N65・N75・N90であるが、これらの釘は他の釘と見分けがつきにくく、誤使用を防ぐため厳重な検査が不可欠である。
- 木材同士の接合のみでは地震により引っ張られて抜ける可能性があるため、近年は柱の上部と下部にはかど金物やホールダウン金物、梁の両端部には羽子板ボルト、筋交いの両端部には筋交いプレートなど、補強金物の使用が義務付けられている。しかし、ホールダウン金物は施工漏れ事例も多くあるため、この取り付けには厳重な検査が不可欠である。
- 木造軸組構法の耐震基準は兵庫県南部地震や新潟県中越地震などの大きな地震によって木造軸組構法の脆弱性が指摘されるたびに見直され、1981年(昭和56年)(必要壁量の割増し)、2000年(平成12年)(偏心率の制限・ホールダウン金物などの設置義務化)、2008年(平成20年)(すべての建物での構造計算の義務化)と改正されてきた。そのため、(第二次世界大戦後に建設されたものでは)建築年代の古いものほど耐震性が低い可能性が高い傾向があり、構造用合板を採用した新しいものについては、木造枠組壁構法に匹敵する耐震性を確保しているとされる。
- 柱や梁などの線材が基本構造であることから、気密性・断熱性・防音性の向上には工夫が必要であり、近年は構造用合板などのボード類に気密パッキンを貼り付けて軸組みに打ちつけるボード気密工法などが開発されている。これに断熱材を組み合わせることによって、次世代省エネルギー基準に適合した建築物を作ることができる。
- 耐力壁ではない壁は構造上建物の剛性にほとんど寄与しないため、窓や扉等の開口部を拡大したり増設したりするような大規模なリフォームが容易なメリットもある。しかし、耐力壁まで撤去するような悪質なリフォームには注意する必要がある。
- 施工順序としては、基本的に基礎→土台→主要部分→小屋組み→屋根→床→壁 となる。屋根が比較的早期の段階で取り付くのは雨の多い日本において適しているとされる。
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