新井紀子 新井紀子の概要

新井紀子

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/20 00:07 UTC 版)

人物

東京都出身。東京都立国立高等学校を経て[2][3]一橋大学法学部に入学。高校までは数学が嫌いだったが、大学の数学の授業で、数学の面白さに目覚め[4]松坂和夫教授に師事。大学4年時に、数学基礎論の研究が盛んだったイリノイ大学数学科に留学し、竹内外史教授に師事。1年でイリノイ大学数学科を優等(magna cum laude)で卒業した後、奨学金を受けて、イリノイ大学大学院5年一貫制博士課程 数学研究科[5]に進学。1990年に修士号を取得[6]

イリノイ大学在学中に数学者の新井敏康と結婚。1990年に帰国し、長女の出産後、1994年に一橋大学法学部を卒業[7]。その後名古屋市専業主婦をしていたが、数学者になることを志し、夫の赴任先にあった広島市広島市立大学情報科学部助手に着任。1997年東京工業大学より博士(理学)の学位を取得。高橋正子教授主査による論文の題は「On Lengths of Proofs in Propositional Calculi(命題論理における証明の長さの研究)」[8]。2006年から国立情報学研究所教授。また2004年から母校一橋大学で教養集合位相や、数理論理学を講じる[9]

2009年度日本OSS奨励賞受賞。2010年文部科学大臣表彰[10]。2018年2月に刊行した『AI vs.教科書が読めない子どもたち』(東洋経済新報社)により、同年日本エッセイスト・クラブ賞石橋湛山賞山本七平賞[11][12]大川出版賞[13]、TOPPOINT大賞[14]、翌2019年にビジネス書大賞をそれぞれ受賞[15]。2021年東京都教育委員会委員(2021年6月から2023年9月まで)[16]。2022年科学技術分野の文部科学大臣表彰科学技術賞受賞[17]内閣府総合科学技術会議ICTワーキンググループ委員、文部科学省科学技術・学術審議会総合政策特別委員会委員、日本学術会議連携会員、国立大学法人一橋大学経営協議会委員、独立行政法人大学評価・学位授与機構運営委員なども務める[10]

研究・開発

2001年からNetCommonsを開発、2009年からResearchmapを開発。2011年からは人工知能東ロボくん」研究開発プロジェクトのプロジェクトディレクタを務めている[18]

2011年より東大合格を目指すAI「東ロボくん」の開発に携わる。東ロボくんは2015年には5科目8教科全体の偏差値が57.1となるなど、人間の受験生の上位2割に入るそこそこの成績向上を収めたが、一方で国語の偏差値は49.7となるなど読解力が低く、AIは「問題文が読めない」「文脈を理解できない」ことが課題となった[19]。問題文の意味が分からないままビッグデータを学習して計算力と暗記力によって統計的にそれらしい回答を導き出す、という現在のAIでは、東大に合格できる程度の読解力を身に着けることは不可能と判断され、東ロボくんの開発は2016年に凍結された。

東ロボくんの開発に携わる中で、文脈を理解できないAIよりも成績が低い人間の受験生が8割もいることに気付く[20]。2015年の調査では、多くの中高生も、AIと同様に文脈を理解しないまま計算や暗記によって問題を解いていることが判明した。これからAIが進歩して社会に浸透していくなかで、計算や暗記では人間はAIに対抗できないため、人間は人間らしい読解力や意味理解を深めることが重要になるとの観点から、AIの性能を上げるよりも、中高生の読解力向上が直近の課題と考えるようになる[21]。そのため、2016年より「教育のための科学研究所」を設置し[22]、中高生の読解力を調査する「リーディングスキルテスト」を実施している。


  1. ^ 『読売年鑑 2016年版』(読売新聞東京本社、2016年)p.391
  2. ^ Company, The Asahi Shimbun. “朝日新聞デジタル:国立高校長に聞く - 東京 - 地域”. www.asahi.com. 2019年11月5日閲覧。
  3. ^ 「ロボットと歩む未来はバラ色か?」東京都立国立高等学校
  4. ^ 「ヘンタイよいこ」新井紀子は明日への希望を忘れない。”. ほぼ日刊イトイ新聞. 2019年11月6日閲覧。
  5. ^ a b c d e f 新井 紀子 - 研究者 - researchmap”. researchmap.jp. 2019年11月5日閲覧。
  6. ^ 新井紀子教授の言うことは信頼できるのか?『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』
  7. ^ [1]HQ
  8. ^ 博士論文書誌データベースによる
  9. ^ 「個性は主張する」HQ
  10. ^ a b [2]国立情報学研究所
  11. ^ 「■石橋湛山賞に新井紀子さん 」福井新聞(2018年9月28日 午前5時00分)
  12. ^ 「エッセイスト賞、内藤さんら受賞 」日本経済新聞2018/5/29 20:50
  13. ^ 大川出版賞
  14. ^ 2018年上半期「TOPPOINT大賞」
  15. ^ ビジネス書大賞 2019”. ビジネス書大賞 2019. 2019年10月22日閲覧。
  16. ^ a b 読解力研究で知られる新井紀子教授 東京都教育委員に任命教育新聞
  17. ^ 新井紀子氏の令和 4 年度科学技術分野の 文部科学大臣表彰科学技術賞受賞に寄せて日本数学会
  18. ^ [3]
  19. ^ 「東ロボくん」が偏差値57で東大受験を諦めた理由 | DOL特別レポート ダイヤモンド・オンライン 2016年11月18日
  20. ^ AI研究者が問う ロボットは文章を読めない では子どもたちは「読めて」いるのか?(湯浅誠) - 個人 - Yahoo!ニュース 2016年11月14日
  21. ^ 「AIの性能を上げている場合ではない」──東ロボくん開発者が危機感を募らせる、AIに勝てない中高生の読解力 - ITmedia NEWS 2016年11月21日
  22. ^ 教育のための科学研究所”. 教育のための科学研究所. 2023年10月24日閲覧。
  23. ^ a b 「平成18年度 国立情報学研究所年報」220頁
  24. ^ [4]
  25. ^ [5]
  26. ^ [6]
  27. ^ 「読解力 「子供は読めているのか」診断テストを開発」毎日新聞2017年9月23日 07時00分(最終更新 9月23日 07時00分)
  28. ^ アドバイザー就任のお知らせトヨタシステムズ


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