政府の長
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/22 04:04 UTC 版)
政府の長の役職名
政府の長の役職名としては、英語でいえばPrime Minister(首相)がよくみられる。これは多くの国で正式な役職名として用いられているが、一方で、国家元首の下で行政を担うminister(大臣)のうち正式に首席を占める役職を指す一般名詞としても非公式に用いられる。なお、Ministerという語(ラテン語で召使いや部下を意味する)は、政府の構成員(閣僚)についての通常の役職名である。
正式に国家元首自身が政府の長でもある場合もある。職権上当然にそうなる場合もあるし、絶対君主がアドホックに自身を政府の長に指名するような事例が積み重なることによる場合もある。そうでない場合においては、国家元首は政府の長および他の大臣に対して形式的には上位にある。国家元首が実際に政治上の上位者(絶対君主や行政権を有する大統領)であることもあれば、むしろ理論上または儀礼上の性格としてということもある。さまざまな憲法において異なる役職名が与えており、また同じ役職名であっても当該国の憲法や政治体制によってその政治的な意味は異なることがある。
半大統領制においては、政府の長は国家元首と立法府(議会)の双方に対して責任を負うことがある。例えば、フランス第五共和政(1958年以降)においては共和国大統領が首相を任命するが、国民議会において政策を通すことができ、その支持を得られる人物を選ぶ必要があるため、反対勢力が国民議会を(すなわち予算とほとんどの立法を)支配するようになれば、大統領は反対勢力から首相を任命することを事実上強いられる。この場合はコアビタシオン(cohabitation、保革共存)と呼ばれ、首相が国内政策を定めることになり、大統領はほぼ外交関係に限定されることとなる。
政治的指導者の場合
支配的な国家元首の下にある場合
広義には、「首相」(prime minister)との語は、絶対君主たる国家元首の下において相当する様々な地位を指すものとしておおざっぱに用いることもある。特に古代や封建時代。この場合、「首相」(prime minister)という用語は時代錯誤的であり、日本語では「宰相」といった用語のほうが通常である。この場合、首相は君主の所望に基づいて奉仕するのであり、君主の許容したものを超える権力は有しない。不祥事を起こした政府の長はその失敗ゆえに処刑されることすらあった。このような役職には次のようなものがある。
- Diwan
- Mahamantri
- Pradhan
- Wasirまたは大宰相
事実上の国家元首の場合
場合によっては、国家元首は名目上の存在に過ぎず、政府の長が支配者であることもある。政府の長がその役職を世襲する場合すらある。このような役職には次のようなものがある。
- メロヴィング朝の宮宰
- ムガル帝国のNawab wasir(Awadhの知事も)
- サーターラおよびマラータ帝国のPeshwa
- 日本の征夷大将軍
- セルジューク・トルコのスルタン(バグダッドのカリフを操り人形とした。なお、後にイスラム圏においてはいずれも絶対的な支配者の称号として用いられた。)
- マムルーク朝のスルタン(アッバース朝の末裔をカリフとして擁立した。)
- ネパール王国の宰相(ラナ家の世襲)
国家元首兼政府の長の場合
モデルによっては国家元首と政府の長は同一である。これには以下のものがある。
- (行政権のある)大統領
- 元首と政府の長が別に存在しても、同一人物が兼務することになっている場合(例えば1976年から2019年までのキューバでは憲法第74条で「国家評議会議長は、国の長であり、政府の長である」と規定されており、首相職である閣僚評議会議長を兼務することになっていた)[1]。
- 首相を置かずに(またはブルネイのスルタンの様に自身を首相として)君臨し支配する絶対君主
- 古代・中世の共和国の長
- ナチス・ドイツにおいて用いられた総統(Führer)
このほか、単一で最高の政治的機関(最高会議幹部会・国家評議会・連邦参事会など)が集団で政府を指導するとともにその中から(例えば持ち回りで)国家元首を出すような場合もある。
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