川内村
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/22 15:14 UTC 版)
概要
福島県双葉郡川内村は、東経140度50分、北緯37度19分、阿武隈高地の中央部に位置し、阿武隈高地の最高峰「大滝根山」東斜面に立地し、標高500 - 600メートルの高原がその大部分を占める。
東京電力福島第一原子力発電所事故の影響により、全村が放射能汚染の可能性がある地域となったため2011年(平成23年)3月17日以降、仮役場を郡山市にあるビッグパレットふくしま内に設置していたが[2]、2012年(平成24年)4月に役場機能を村に戻した。2016年(平成28年)6月14日に全域の避難指示を解除した。
地理
阿武隈高地の最高峰、大滝根山をはじめ700 - 900メートルの起伏の多い山岳に囲まれた高原性の盆地である。耕地は、村の中央を貫流する木戸川とその支流に沿って開け、その中に大小24の集落が散在している。村の大きさは、東西およそ15km、南北およそ13km、総面積197.38km2の約90パーセントが山林、原野で占められている。
隣接する自治体
地形
この地域は、阿武隈高地の最高峰「大滝根山」東斜面にあたっているために、東に傾斜する高原状地形を木戸川とその支流が浸食し谷を形成している。 やや詳細に見ると、木戸川・小白井川に沿って分布する標高570メートルから400メートルの小規模な谷底平野を除けば、中央部から東部のかなりの地域を含む丘陵地、東部及び西部の山地に分けることができる。
丘陵地は、谷に接する部分を除いては急な傾斜地は無く、糠馬喰山(733メートル)・大津辺山(778メートル)を除いて谷底平野からの高さは200メートルを超えることは無い。 東部山地は、大鷹鳥谷山(794メートル)・鬼太郎山(750メートル)を結ぶ南北帯状の地域で、富岡町・楢葉町に続く東斜面の傾斜は比較的緩やかであるが、西斜面は地質的条件を反映して急傾斜地をつくっている。
西部山地は、大滝根山(1193メートル)・高塚山(1066メートル)・万太郎山(959メートル)などの比較的高い山がみられ、大滝根山と万太郎山を結ぶ方向に平行な数段の平坦面が認められ、そのなかには過去の侵食基準面が含まれている。 東部山地より西方に分布する河川は、木戸川とその支流である。木戸川の源流は大滝根山頂の北方2キロの地点にあり、これに大四郎川・楢生川・小白井川・川内川・滑津川等が合流する。これらの支流からの水を集めた木戸川は、東部山地を横切るときに峡谷をつくる。
地質
川内村の大地は、東部山地と西部山地の一部を作っている変成岩類とその他の地域に見られる深成岩類、それらを部分的におおう未固結堆積物で構成される。
変成岩類には、黒雲母片岩(白と黒の縞模様があって、黒雲母・石英・斜長石などからできている)および緑閃石・緑泥石片岩(緑閃石・緑泥石・石英・斜長石などからできている)で、もとになった岩石は、古生代の石炭紀 - ペルム紀あるいはより古い時代に堆積した中性 - 塩基性の凝灰岩 - 凝灰質砂岩とみられている。
深成岩類には、広く分布しているいろいろな種類の花崗岩・閃緑岩類そしてかんらん岩類がある。
花崗岩類には片状構造を持つ古期花崗閃緑岩類とよばれるものと新期花崗岩類とされるものがあり、前者には高塚山・万太郎山などに分布する花崗閃緑岩(角閃石・斜長石・正長石・石英から構成される)がある。後者は鬼太郎山から毛戸付近を通る破砕帯の東側に見られる新期花崗閃緑岩(角閃石・黒雲母・石英・正長石・斜長石と少量の燐灰石・ジルコン・磁鉄鉱・褐簾石から構成される)・糠馬喰山・檜山・大平などに分布する灰色黒雲母花崗岩(黒雲母・斜長石・正長石・石英から構成される)・淡紅色黒雲母花崗岩(黒雲母・斜長石・淡紅色の正長石・石英から構成される)などに分類される。
閃緑岩類とかんらん岩類は小規模な分布をしている。この地域の花崗岩類および深成岩類は地価深所まで風化作用が及んでいる場所が多く急斜面などで崩壊などを起こすことがある。
これらの深成岩類を貫いて輝緑岩・花崗閃緑ひん岩・石英斑岩・流紋岩・半花崗岩などがみられる。未固結の堆積物には深成岩類をおおう粘土・砂・段丘礫・崖錐・火山灰などがある。
気候
寒暖の差が大きく気温の年較差、日較差が大きい顕著な大陸性気候である。
気温
冷涼であるが年変化のようすは福島県下の各測定点の傾向と変わるところは無い。夏日の出現は8月をピークにして70日ほどで、8月を中心に30℃以上の真夏日もあるが朝晩は15℃前後まで気温が下がることもあり日較差の大きな気候である。冬の日較差も大きく最低気温は毎年-10℃を下回り朝晩の冷え込みは厳しい。
冬日の出現は、阿武隈高地の他の観測点と似て130日ほどあって、冬の期間は長いといえる。真冬日は4日ほどである。
この地域の初霜は10月10日ごろ、終霜は4月30日ごろである。この終霜の時期と栽培植物の育成時期が重なるため凍霜害が出ることがある。
降水量
年間の降水量は1500ミリ程度で福島県内では少ないほうである。
降水の傾向は、阿武隈高地のほかの地域と同様に6月から10月にかけてが多く年間降水量の6 - 7割が集中する。
この地域に大雨をもたらす原因は、台風(1971年・台風23号による日降水量は528ミリに達した)。南岸低気圧・日本海低気圧・梅雨前線などである。このうち南岸低気圧は、ときとして湿り雪を降らせ着雪の被害を見ることができる。
風
この地域、特に谷底平野では地形に影響された風が卓越し、夏季(5 - 9月)には南東風、冬季(11 - 4月)には西北西の風が卓越する。風速の年平均は秒速1.1メートルで弱い。
川内(1991年 - 2020年)の気候 | |||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
月 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 年 |
最高気温記録 °C (°F) | 16.3 (61.3) |
20.1 (68.2) |
23.0 (73.4) |
29.7 (85.5) |
32.8 (91) |
34.5 (94.1) |
35.7 (96.3) |
36.5 (97.7) |
33.6 (92.5) |
28.2 (82.8) |
24.1 (75.4) |
20.3 (68.5) |
36.5 (97.7) |
平均最高気温 °C (°F) | 4.3 (39.7) |
5.2 (41.4) |
9.1 (48.4) |
15.2 (59.4) |
20.4 (68.7) |
23.1 (73.6) |
26.9 (80.4) |
27.9 (82.2) |
23.7 (74.7) |
18.2 (64.8) |
13.1 (55.6) |
7.3 (45.1) |
16.2 (61.2) |
日平均気温 °C (°F) | −0.5 (31.1) |
0.0 (32) |
3.3 (37.9) |
8.8 (47.8) |
14.0 (57.2) |
17.7 (63.9) |
21.7 (71.1) |
22.5 (72.5) |
18.6 (65.5) |
12.6 (54.7) |
6.9 (44.4) |
2.1 (35.8) |
10.6 (51.1) |
平均最低気温 °C (°F) | −5.3 (22.5) |
−5.1 (22.8) |
−2.1 (28.2) |
2.4 (36.3) |
7.8 (46) |
12.9 (55.2) |
17.5 (63.5) |
18.4 (65.1) |
14.2 (57.6) |
7.6 (45.7) |
1.2 (34.2) |
−2.7 (27.1) |
5.5 (41.9) |
最低気温記録 °C (°F) | −17.7 (0.1) |
−18.4 (−1.1) |
−17.0 (1.4) |
−11.5 (11.3) |
−3.1 (26.4) |
1.4 (34.5) |
6.2 (43.2) |
6.2 (43.2) |
1.0 (33.8) |
−4.7 (23.5) |
−9.2 (15.4) |
−18.0 (−0.4) |
−18.4 (−1.1) |
降水量 mm (inch) | 62.3 (2.453) |
47.4 (1.866) |
95.1 (3.744) |
122.4 (4.819) |
111.3 (4.382) |
141.2 (5.559) |
181.2 (7.134) |
171.8 (6.764) |
234.1 (9.217) |
181.0 (7.126) |
70.2 (2.764) |
48.3 (1.902) |
1,484.1 (58.429) |
平均降水日数 (≥1.0 mm) | 5.9 | 5.9 | 9.1 | 9.5 | 10.4 | 12.3 | 13.8 | 11.2 | 12.1 | 9.9 | 7.0 | 6.3 | 114.9 |
平均月間日照時間 | 170.7 | 169.0 | 186.9 | 194.3 | 203.6 | 148.5 | 144.0 | 159.6 | 122.2 | 132.0 | 149.2 | 161.6 | 1,943.4 |
出典1:Japan Meteorological Agency | |||||||||||||
出典2:気象庁[3] |
- ^ 図典 日本の市町村章 p50
- ^ 東日本大震災:全町全村避難 福島8自治体、住民散り散り毎日新聞 2011年3月19日 10時14分(最終更新 3月19日 15時12分)
- ^ “川内 過去の気象データ検索”. 気象庁. 2023年9月27日閲覧。
- ^ 角川日本地名大辞典編纂委員会『角川日本地名大辞典 7 福島県』、角川書店、1981年 ISBN 4040010701より
- ^ 日本加除出版株式会社編集部『全国市町村名変遷総覧』、日本加除出版、2006年、ISBN 4817813180より
- ^ “定額給付金:「納税に振り替え」撤回 川内村謝罪へ”. 毎日新聞. (2009年3月21日)
- ^ 福島第一原子力発電所事故の影響により運休していたが、2018年4月に運行が再開された。
- ^ 以前のルートとは異なる(神俣駅を経由)。かつては復興支援バスとして小野新町 - 川内間のみの運行だったが、2017年10月のダイヤ改正により車庫のある上三坂まで延長された。
- ^ 鈴木文彦「BUS★CONER」『鉄道ジャーナル』第46巻第8号、鉄道ジャーナル社、2012年8月、159頁。
- ^ 川内で「無料巡回バス」運行開始 村民の足、企業が支援 - 福島民友、2017年04月04日 09時28分配信、同年5月12日閲覧
- ^ “川内村における震災後の状況と復興に向けて”. 2021年3月11日閲覧。
- ^ Harada, Kouji H.; Niisoe, Tamon; Imanaka, Mie; Takahashi, Tomoyuki; Amako, Katsumi; Fujii, Yukiko; Kanameishi, Masatoshi; Ohse, Kenji et al. (2014-03-11). “Radiation dose rates now and in the future for residents neighboring restricted areas of the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant” (英語). Proceedings of the National Academy of Sciences 111 (10): E914-E923. doi:10.1073/pnas.1315684111. ISSN 0027-8424. PMC 3956155. PMID 24567380 .
- ^ “NHK仙台放送局 | 被災地からの声”. NHK仙台放送局 | 被災地からの声. 2021年3月11日閲覧。
- ^ Chung, Yun-Shan; Harada, Kouji H.; Igari, Keiko; Ishizuka, Jinrou; Koizumi, Akio (2020-12). “The incidence of diabetes among the non-diabetic residents in Kawauchi village, Fukushima, who experienced evacuation after the 2011 Fukushima Daiichi nuclear power plant disaster” (英語). Environmental Health and Preventive Medicine 25 (1): 13. doi:10.1186/s12199-020-00852-x. ISSN 1342-078X. PMC 7210664. PMID 32384869 .
- ^ Cui, Limeng; Orita, Makiko; Taira, Yasuyuki; Takamura, Noboru (2020-09-15). Mousseau, Tim A.. ed. “Radiocesium concentrations in mushrooms collected in Kawauchi Village five to eight years after the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant accident” (英語). PLOS ONE 15 (9): e0239296. doi:10.1371/journal.pone.0239296. ISSN 1932-6203. PMC 7491737. PMID 32931520 .
固有名詞の分類
- 川内村のページへのリンク