嫌儲 アフィリエイトと「まとめサイト」に関する判断基準

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嫌儲

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/05 01:16 UTC 版)

アフィリエイトと「まとめサイト」に関する判断基準

2ちゃんねるの書き込みを無断で商用利用する「2ちゃんねるまとめサイト」などの活動に対しては、「嫌儲」的な発想による憎悪の矛先が向けられる一方で[3]、自分のブログに書き込んだ文章によってアフィリエイト収入を得ているアルファブロガーのように、運営者が一から自分で作り上げたコンテンツや、運営コストがかかっていることが傍目にも明らかなサイトに対しては、アフィリエイトは「サイトの維持費用を捻出する上で必要なもの、或いは正当な対価」として理解を示し、通常は嫌儲の対象とならない[2][3]

その一方、インターネット・コミュニティにとって好意と悪意の判断基準は曖昧で、周囲の強い意見に流されたり、感情の整理されていない感覚的なものになったりしやすく、実際に誰が得をするのかという発想まで行き着かないこともある[17]

楽曲のJASRAC登録問題に関する賛否の指摘

2007年に鶴田加茂が音声合成ソフトウェア「初音ミク」を用いてニコニコ動画上で発表した楽曲「みくみくにしてあげる♪【してやんよ】」の商業展開を行う際に、楽曲制作者の許可がないまま、ドワンゴ・ミュージックパブリッシング(現在のドワンゴ・ユーザーエンタテインメント)がJASRACに登録した騒動で、コンテンツを作り上げた著作権者が「嫌儲」的な発想による批判の矛先となった[17]

この楽曲は本来、個人が作詞作曲してインターネット上に発表した作品であったが、それを受容して消費する側の間に、楽曲は「自分たちが応援して育てたコンテンツ」であり自分たちと著作権者は対等であるという感覚が広まった[注釈 2]とされ[18]、楽曲を作成した権利者が著作権を行使した結果、金儲けを憎悪する人々や、著作権管理団体を悪の権力と受け止める一部のユーザーの反感を買ったのではと考えられている[17]

この出来事は、著作権者と受け手のコンテンツに対する貢献度が対等ではないにもかかわらず、正当な権利を行使した権利者が被害者となってしまった例として、「嫌儲」的な発想への批判が寄せられた[17][注釈 3]


注釈

  1. ^ ただし、オンライン百科事典「ウィキペディア」はコンテンツが商用利用されることを禁じておらず、また逆に商用利用不可能な文章・画像・その他メディアの投稿を受け入れていない。ウィキペディア日本語版の案内「Wikipedia:ガイドブック 著作権に注意#ウィキペディアのライセンス」や「Wikipedia:ウィキペディアを二次利用する」などにその旨の記載がある。
  2. ^ ファンが対象に入れ込んだ結果、ファン自身が自分のことを対象のグループの一員であるかのように錯覚してしまうこと自体は、スポーツファンなどにも見られる認知バイアスの一種である
  3. ^ その後しばらくの間は、ニコニコ動画で発表されたり『初音ミク』を用いて作られたりした楽曲を著作権管理団体に登録することに対して、批判的な意見が支配的になった[19]。しかし、2008年頃から、それらの楽曲がカラオケで流行の兆しを見せるようになると、彼らが著作権管理団体に楽曲を登録していないために正当な対価を受け取れず、著作権管理団体を利用する音楽家たちとの間に報酬の格差があることに対して、そもそも不平等を是としないインターネットの利用者の間から批判の声が上がるようになる[19]。やがて、インターネットから流行が発祥した楽曲を著作権管理団体に登録することは当たり前のことになっていった[19]

出典

  1. ^ a b c d ネットの「嫌儲」 徹底リサーチと卓越した攻撃力で影響力大」『週刊ポスト』2014年3月28日号、小学館、2014年3月17日、2014年3月18日閲覧 
  2. ^ a b c d e f 佐藤信正 (2008年1月21日). “ネット発キーワード「嫌儲」~ユーザーコンテンツに広告を付けると嫌われる”. 日経トレンディネット. 日経BP社. 2008年1月21日閲覧。
  3. ^ a b c d e 榎本秋(編) 編『オタクのことが面白いほどわかる本』(第1刷)中経出版、2009年6月5日、91,96頁頁。ISBN 978-4-8061-3358-2 
  4. ^ a b c d しっぽ (2006年5月28日). “「嫌儲」についてと、vip系ブログを叩き潰すとどうなるか。”. しっぽのブログ. 2007年11月25日閲覧。
    しっぽ (2006年6月2日). “「嫌儲」の心理と正義感、資本主義、あと転載について。”. しっぽのブログ. 2007年11月25日閲覧。
  5. ^ 鷹木創 (2006年6月1日). “2ちゃんネタは誰のもの? スレ紹介ブログの閉鎖相次ぐ”. ITmediaニュース (ITmedia). https://www.itmedia.co.jp/news/articles/0606/01/news066.html 2015年2月3日閲覧。 
  6. ^ a b c d e f 第三次ブログ連戦争へ:なぜ2ちゃんねるは「転載禁止」を選んだのか――「まとめサイトVS住民」繰り返す歴史”. ねとらぼ. ITmedia (2014年3月6日). 2014年4月11日閲覧。
  7. ^ 『現代用語の基礎知識2008』にはてなダイアリーキーワードが掲載されます”. はてなダイアリー日記. はてな (2007年11月14日). 2007年11月25日閲覧。
  8. ^ “「アサヒる」「初音ミク」「ローゼン麻生」、現代用語の基礎知識に”. ITmediaニュース (ITmedia). (2007年11月14日). https://www.itmedia.co.jp/news/articles/0711/14/news075.html 2011年12月21日閲覧。 
  9. ^ a b 「アフィカスに振り回されるのにはうんざり」 2ch一斉「転載禁止」なぜまた? 管理人の意図、影響は”. ねとらぼ. ITmedia (2014年3月20日). 2014年3月24日閲覧。
  10. ^ a b 2chまとめブログに「転載禁止」の警告”. ガジェット通信. 未来検索ブラジル (2012年6月4日). 2012年6月10日閲覧。
  11. ^ a b 「悪質」まとめサイトが大ピンチ 2ちゃんねるから「転載禁止」通告”. J-CASTニュース. ジェイ・キャスト (2012年6月4日). 2012年6月10日閲覧。
  12. ^ “「中世ジャップランド」と「ヘル朝鮮」──SMAPとJYJで繋がった日韓のネットスラングの共通性”. Yahoo!ニュース. (2016年3月22日). https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/37371c9635cf4dbd0078aabffc4233884dd197d6 2022年10月11日閲覧。 
  13. ^ ちきりん (2012年6月11日). ““嫌儲”の人、“好儲”の人”. Business Media 誠. アイティメディア. p. 1. 2015年3月22日閲覧。
  14. ^ 川上量生(インタビュアー:山田俊浩)「ドワンゴ川上会長、「炎上は放置、謝らない」 「ネットが生んだ文化」、コピー、炎上、嫌儲 (5/5)」『東洋経済ONLINE』、2014年11月24日http://toyokeizai.net/articles/-/54092?page=52015年3月22日閲覧 
  15. ^ 濱野智史(インタビュアー:小田嶋隆清野由美)「「日本ではネットで金儲けしようとするやつが嫌われる」「そう、いわゆる『嫌儲』ですね」」『日経ビジネスオンライン』、2011年5月2日http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20110428/219683/2015年3月22日閲覧 
  16. ^ a b 「嫌儲」 ピュアさと他人の不幸喜ぶメシウマの二面性が同居」『週刊ポスト』2014年3月28日号、小学館、2014年3月18日、2015年3月23日閲覧 
  17. ^ a b c d “座談会 UGCの可能性を考える(前編):「ニコ動作家はもうけちゃダメ?」「才能、無駄遣いしていいの?」”. ITmediaニュース (ITmedia). (2008年7月18日). https://www.itmedia.co.jp/news/articles/0807/18/news048.html 2011年12月21日閲覧。 
  18. ^ logu_ii (2015年2月2日). “スポーツファンが応援するチームを自分自身と混同してしまう心理とは?”. GIGAZINE. 2015年2月3日閲覧。
  19. ^ a b c 川上量生; 加藤貞顕(インタビュー)「「アップル、アマゾンはクリエーターの天国にはなれない」 川上量生氏が語った、コンテンツビジネスの未来」『logmi』、2015年3月6日https://logmi.jp/business/articles/394072015年3月22日閲覧 


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