原動機付自転車
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/05 00:21 UTC 版)
法規制と免許
第一種原動機付自転車の運転に必要な免許と第二種原動機付自転車の運転に必要な免許は区別して扱わなければならない。また速度制限や交差点での右折の方法に関する規則も異なっている。
第一種原動機付自転車の運転に必要な免許
道路交通法上の原動機付自転車(前述)を公道上で運転するためには原動機付自転車免許(正式な略称「原付免許」)を受け、運転中はその運転免許証を携帯することが必要で、警察官から求められればその運転免許証を提示しなければならない。原付免許は16歳から取得が可能である。試験は学科試験の筆記試験のみで、技能試験は必要ないが、事前または事後に運転免許試験場、警察署、指定自動車教習所などが主催する技能講習を受けなければ、免許証は交付されない。技能講習修了済みでなければ学科試験の申し込みができない地域もある。
なお、大型免許、中型免許、準中型免許、普通免許、大型特殊免許、大型二輪免許、普通二輪免許の第一種免許を受けた人は、「それぞれ同表の下欄に掲げる種類の自動車等を運転することができる」とされており、いずれも末尾に「原動機付自転車」も含まれている[6]。つまり大型免許、中型免許、準中型免許、普通免許、大型特殊免許、大型二輪免許、普通二輪免許のいずれかの第一種免許を受けている人は第一種原動機付自転車(つまり50cc以下の原付)を運転することができる。 [7]
道路交通法上の原動機付自転車(つまり第一種原付、50cc以下)について、他の自動車と比べた場合の主な違いは、政令で定める最高速度が30km/hであり[注 3]、交通整理が行われている交差点で法が定める条件[注 4]に該当する場合に『二段階右折』が義務づけられる点である[8]。
道路運送車両法等による、登録の必要がないリヤカーを牽引して走行することが認められているが、積載量や車両寸法、最高速度に制限があるほか、条例により、運行に条件がつく場合がある。
ヘルメット着用は、1986年(昭和61年)より義務づけられた。1970年代後半から、ヘルメット着用義務のない手軽な乗り物としてスクーターを中心に急速に普及したが、それに伴い交通事故が増えたことにより、ヘルメット着用が義務づけられることとなった。
第二種原動機付自転車の運転に必要な免許
排気量が50cc超125cc以下つまり第二種原動機付自転車の運転に関しては、2005年に法制度が変更され「小型限定普通二輪免許」が設けられたので、それを取得すればよい。運転中はその運転免許証を携帯する必要があり、警察官から求められればその運転免許証を提示しなければならない。
普通自動二輪車の免許(普通自動二輪免許)や大型自動二輪車の免許(大型自動二輪免許)を取得している人は、その免許で第二種原動機付自転車を運転することもできる。
なお第二種原動機付自転車は、「原動機付自転車免許」(つまり第一種原動機付自転車用の免許、50cc以下の原付のための免許)では運転できない。また第二種原動機付自転車は、四輪の普通免許、中型免許、大型免許などを受けているだけでも運転できない。つまり四輪の免許だけでは運転できない。第二種原動機付自転車の運転に必要な免許を受けていないのに第二種原動機付自転車を運転してしまうと「無免許運転」として扱われる。
第二種原動機付自転車は、政令で定める最高速度は 60 km/hであり、交差点では二段階右折をしない(してはならない)[9]。
保安基準
自動車に準じて道路運送車両の保安基準が定められている。タイヤ、ブレーキ、エンジン装置、消音器等は自動二輪車のミニチュア版の性能が求められているほか、保安基準に適合する前照灯、番号灯、後部反射器、警音器、後写鏡を備えなければならない。なお、最高速度[注 5]が20km/h以上の原動機付自転車については、尾灯、制動灯、方向指示器、速度計を備えなければならない[10]また、輸入車を含めて排出ガス規制をクリアしなければならない[11]。
電動の小型車両等に対する規制
エンジンやモーターなど動力を用いる車両は、原則としてその出力(上述の排気量、定格出力など)により自動車または原動機付自転車に分類されるため、セグウェイや軽量の電動自転車(フル電動のもの)など、一見オートバイやスクーターに見えない車両であっても、道路を運転する場合には、前述の法規制のほか、以下の重い規制と違反行為に対する罰則が適用されている。
ただし、後述する例外(一定の形態の車、および産業競争力強化法による区域・期間を限定した特例措置によるもの)に基づき、下記の規制の一部または全部が除外されていた。
また、2023年(令和5年)7月1日以降は、「特定小型原動機付自転車」が新たな基準及び規制により法令改正・施行されている。
- 車両のタイプに応じた運転免許(原動機付自転車免許、普通自動二輪車免許、普通免許など)を受けていなければ、無免許運転により3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処される[注 6]。
- 自動車損害賠償責任保険等に加入せず運行した場合は、無保険運行として1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処される[12]。
- ナンバープレートの登録および表示義務。原付格の場合、公安委員会遵守事項違反として5万円以下の罰金(東京都の場合)。検査対象外軽自動車格の場合、無届運行として30万円以下の罰金。検査対象格の場合、無車検運行として6月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処される[注 7]。
- 道路運送車両の保安基準(前述)に適合しないものを運転した場合には、整備不良違反として、3月以下の懲役又は5万円以下の罰金に処される。
- 通常の自動車等と同様に、歩道や路側帯、自転車道は一切通行できない[注 8][注 9]。
- ヘルメットの着用義務もある(ただしミニカーやトライクなど、普通自動車(交通法)等の扱いとなる場合、および特定小型原動機付自転車を除く)
- 運転免許証の携帯義務[注 9]
- 自賠責保険証書の携帯義務[注 10]
- 放置違反金制度を含む駐停車違反の取締対象になる。
- 交通事故や道路交通法等の違反行為に対し、運転免許の行政処分の対象となる[注 9]。
- 人身事故を起こした場合には、状況に応じて自動車運転死傷行為処罰法(過失運転致死傷、危険運転致死傷、無免許運転による加重)により最長で20年以下の懲役(加重により最長30年以下)に処される可能性もある。また、自動車損害賠償保障法に基づき人身事故に対する損害賠償につき無過失責任が適用される。[注 11]
例外(常時)
エンジンやモーターなど動力を用いる車両で、前述の自動車または原動機付自転車扱いとならないものは、以下に列挙するものであって、以下の基準を完全に満たすものに限られている。
例外(産業競争力強化法による区域・期間を限定した特例措置)
なお、2023年(令和5年)7月1日以降の「特定小型原動機付自転車」の法令改正・施行によりこの特例措置は終了したとみられる[13]。
- 2020年(令和2年)10月16日付け認定新事業活動計画[14]
- 特例措置:特定原動機付自転車は、車両通行帯の法令の基準に基づき普通自転車専用通行帯を通行でき、また、通行しなければならない[15]。
- 特例措置以外の規制は従前と同様である[15]。
- 対象車両:特例命令に基づく産業競争力強化法の認定を受けた認定新事業活動において貸与された車両であって同事業に基づき対象区域内の道路を通行している特定原動機付自転車 ※本項でも「特定原動機付自転車」とする
- 対象区域:認定新事業活動計画に基づく特定地域(渋谷区・新宿区・世田谷区・千代田区、神奈川県藤沢市・千葉県柏市[18][19]、千葉市[20]、愛媛県今治市から広島県尾道市まで、神戸市、および福岡市[21]のそれぞれ一部区域)
- 対象期間:2020年(令和2年)10月から2021年(令和3年)3月まで[14]、一部は2021年(令和3年)1月から同3月まで[20]
- 根拠法令[15]
- 2021年(令和3年)2月8日付け回答に基づく認定新事業活動計画[23][13]
- 特例措置:特定小型電動車は、次の規制が適用される[23]
- 特定小型電動車の運転者は、乗車用ヘルメットの着用義務が免除される
- 特定小型電動車は、車両通行帯または自転車道の法令の基準に基づき普通自転車専用通行帯または自転車道を通行でき、また、通行しなければならない
- 特定小型電動車は、自転車が規制対象外となっている一方通行の交通規制において、その適用から除外される
- 特例措置以外の規制は従前と同様である。
- 対象車両:特例命令に基づく産業競争力強化法の認定を受けた認定新事業活動において貸与された車両であって同事業に基づき対象区域内の道路を通行している特定小型電動車 ※本項でも「特定小型電動車」とする
- 対象車両の基準(抄):長さ140cm・幅80cm・高さ140cm各以下、原動機は電動機、最高速度15km/h、運転者席は立席[23]。
- 対象区域:2021年(令和3年)4月以降、事業ごとに個別認定される
- 対象期間:上に同じ。なお、個別に期間を定めて実施され、最長で2023年(令和5年)6月末まで実施された[13]。
- 根拠法令:未詳(2020年(令和2年)10月16日付け認定新事業活動計画と同様と思われる)
- 特例措置:特定小型電動車は、次の規制が適用される[23]
法規に対する意見
この節には独自研究が含まれているおそれがあります。 |
スクータータイプのものに関して、幹線道路において30km/hの法定速度を守って走ると、他の車両との速度差が大きくかえって危険であるとして、原動機付自転車の法定速度を引き上げる要請や[24]、小型二輪免許を現行よりも簡略化して、原付二種(50ccを超え125cc以下のオートバイ。ただし、側車のない場合)の普及を促進する提案がある[25]。
あるいは原動機付自転車免許を、簡略化した普通自動二輪車免許(小型限定)と統合して、小型の二輪車の売り上げの回復を計る提言もある[26]。さらに別の意見として、原付一種も原付二種も運転としては変わらないので、原動機付自転車免許と普通自動二輪車免許(小型限定)を統合した上で、普通自動車・準中型自動車・中型自動車・大型自動車・大型特殊自動車の付帯免許として、売上の回復を図る提言もある[27]。
注釈
- ^ 自転車を「チャリンコ」と呼ぶ文化に基づく。
- ^ (50cc以下区分の場合、設計は多くが「49cc」となっている。50.0ccで製作することが困難であることと、50ccをほんのわずかでも超えると法律違反となるため、念のため49ccにしてある。)
- ^ 道路交通法施行令第11条より。30km/hを超える最高速度が指定されている道路であっても、30km/h以下で走行しなければならない。
- ^ 片側(一方通行の場合は道路全体)が三車線以上で「原動機付自転車の右折方法(小回り)」の標識が無い場合、又は、車線数に関わらず「原動機付自転車の右折方法(二段階)」が設置されている場合。
- ^ 保安基準における「最高速度」は、法規制速度のことではなく、車両の性能上の最高速度のことである。
- ^ 特定小型原動機付自転車は、免許不要であり、16歳以上であれば運転可能である。
- ^ 小型自動車(登録ナンバー車)格であれば、道路運送車両法違反(未登録運行罪)にも問われる。
- ^ 道路外出入りのための横断や、駐停車のために規定の路側帯に入る場合を除く。
- ^ a b c 特定小型原動機付自転車を除く。詳細は同項目を参照。
- ^ それぞれ罰則あり。特定小型原動機付自転車も対象である。なお、電動キックボードや一般原付・自動二輪車等であって密閉のボックス等を備えない車両については証書の携行に困難が伴うとされたため、2023年(令和5年)6月1日施行の改正法令および自動車損害賠償保障法に係る民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律に基づき、スマートフォン等による電磁的提示も有効となる予定である。ただし詳細は未詳
- ^ 特定小型原動機付自転車も対象である。
出典
- ^ 「二輪における運転免許制度改正の歴史」
- ^ ウェブアーカイブ - 日本自動車工業会「二輪車販売台数の内訳(2012年時点)」
- ^ “自動車:特定小型原動機付自転車について - 国土交通省”. www.mlit.go.jp. 2023年7月2日閲覧。
- ^ “自動車:道路運送車両の保安基準(2022年12月23日現在) - 国土交通省”. www.mlit.go.jp. 2023年7月2日閲覧。
- ^ “国土交通省|報道資料|特定小型原動機付自転車に関する保安基準の整備等を行います!”. 国土交通省. 2023年7月2日閲覧。
- ^ 道路交通法第85条第2項
- ^ 道路交通法第85条第2項
- ^ 道路交通法第34条第5項
- ^ [1]
- ^ 道路運送車両法第四四条、および道路運送車両の保安基準第六十二条の三より。
- ^ “道路運送車両の保安基準の細目を定める告示”. 自動車交通局 技術安全部環境課 (2012年10月1日). 2020年1月19日閲覧。
- ^ 『セグウェイ』は整備不良…50万円の罰金命令 - Response.jp
- ^ a b c “産業競争力強化法関係|国家公安委員会Webサイト”. 国家公安委員会Webサイト. 2023年7月2日閲覧。
- ^ a b “産業競争力強化法に基づく新事業活動計画を認定しました (METI/経済産業省)”. www.meti.go.jp. 2021年2月17日閲覧。
- ^ a b c 「立ち乗り電動スクーター」に係る特例措置について(通達) (PDF) 警察庁交通局交通企画課長、警察庁交通局交通規制課長
- ^ a b “新事業特例制度の活用実績(METI/経済産業省)”. www.meti.go.jp. 2021年2月17日閲覧。
- ^ a b 国家公安委員会告示第四十三号 (PDF)
- ^ https://www.meti.go.jp/press/2020/10/20201016005/20201016005-1.pdf
- ^ https://www.meti.go.jp/press/2020/10/20201016005/20201016005-3.pdf
- ^ a b https://www.meti.go.jp/policy/jigyou_saisei/kyousouryoku_kyouka/shinjigyo-kaitakuseidosuishin/press/210115b_press.pdf
- ^ https://www.meti.go.jp/press/2020/10/20201016005/20201016005-2.pdf
- ^ https://www.npa.go.jp/laws/kaisei/furei/200925/honbun.pdf
- ^ a b c https://www.npsc.go.jp/policy/list/koutsuu/sankyouhou.pdf、p.7
- ^ 規制改革集中受付期間/全国規模での規制改革要望に対する回答への再検討要請(様式1) (PDF) (p.4「原動機付自転車の最高速度制限の緩和」管理コードz0100070)
- ^ 二輪車特別委員会の調査提言書「二輪車の利用環境デザイン」 (PDF)
- ^ 八重洲出版 雑誌 モーターサイクリスト 2009年5月-11月号の集中連載記事「50ccはいらない?」第1回~第7回。二輪販売業関係者の提言は第5回と第6回、二輪車特別委員会委員長の免許制度の技能講習案の詳しい説明は第7回
- ^ 「クルマの免許で125ccバイクまで」の是非を問う
- ^ “手軽な「原チャリ 」消えてしまうのか50cc原付一種 各社のラインアップは今”. 乗りものニュース. (2021年8月22日) 2023年11月3日閲覧。
- ^ “若者の味方「原付バイク」はどこへ消えた? ヤマハ・ホンダ提携が示すバイク文化の凋落”. 東洋経済ONLINE. (2016年10月10日) 2023年11月3日閲覧。
- ^ “「原付免許は125ccまで」”. モーターファン. (2023年9月11日) 2023年11月3日閲覧。
- ^ “原付き免許で「小型バイク」可能に、警察庁が検討 排ガス規制に対応”. 朝日新聞デジタル. (2023年9月7日) 2023年11月3日閲覧。
- ^ “"原付きバイク"総排気量125cc以下も区別追加検討 警察庁”. NHK NEWS WEB. (2023年9月11日) 2023年11月3日閲覧。
- ^ バイク・原付の事故率と事故の原因
- ^ バイクの二人乗りの条件。原付や子供の二人乗りは禁止?高速はいつから乗れる? チューリッヒ保険
- ^ ミニバイク エントリー方法 - 岡山国際サーキット
- ^ <Road to MotoGP> ついに世界統一規格「ミニGP」スタート! - Webオートバイ・2022年4月18日
- ^ アキヨシ カズタカ『げんつき 相模大野女子高校原付部』株式会社KADOKAWA、2013年1月。ISBN 484014785X。
- ^ トネ・コーケン『スーパーカブ』株式会社KADOKAWA、2015年5月。ISBN 4041056632。
原動機付自転車と同じ種類の言葉
- 原動機付自転車のページへのリンク