原動機付自転車
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/05 00:21 UTC 版)
概説
オートバイの一種であり、排気量が規定の範囲内(50cc以下や125cc以下)のものを指している。
道路交通法では総排気量が50cc以下または電動機が定格出力が0.6kW以下のものを指す[注 2]。一方、道路運送車両法では125cc以下のものを原動機付自転車と区分しており、このなかで第一種原付(総排気量50cc以下または定格出力0.6kW)と第二種原付(総排気量50ccをこえ125cc以下または電動機の定格出力が0.6kWをこえ1.0kW以下)に区分されている。2輪の50cc以下であればすべて原動機付自転車扱いとなる。(最高出力が規定より大きいものは原付ではなくなり、自動二輪車に分類される)→#法律上の定義
「原動機付自転車」は基本的に総排気量または最高出力にもとづいた法律上の区分である。車輪の数は二輪タイプだけでなく三輪タイプもあり、内燃機関や電気モーターを動力とする。前輪に直結したハンドルバーで操作するものがほとんどであり、自動車のような円形ハンドルは使われない。
黎明期は自転車の前輪の上に小さな(短い水筒ほどの大きさの)エンジンを付けただけのものだったが、やがてエンジンが座席下に配置されるようになった。
自転車を基礎としたデザインで発展してきたが、ペダル部が不要なために乗降性を目的とした「スクータータイプ」が開発され、1980年代から「スクータータイプ」のなかでも樹脂製(プラスチック製)の外装でボディを覆って金属製のフレームを見えなくしたタイプの販売割合が圧倒的に大きくなった。後部への積載を目的とした後二輪の三輪タイプにはホンダ・ジャイロ、安定性を目的とした前二輪の三輪タイプにはヤマハ・トリシティ等がある。
第一種原動機付自転車を運転するには、原動機付自転車の運転免許(いわゆる「原付免許」)が必要である。オートバイの免許制度は改正を繰り返し、2005年の法改正の後は、第二種原動機付自転車(つまり50cc超125cc以下)を運転するためには「小型限定普通二輪免許」を取得することが必要になった[1]。原付免許・小型限定普通二輪免許のいずれでも、二輪タイプでも三輪タイプでも運転でき、またガソリン車も電動車も運転できる。 →#法規制と免許
原動機付自転車を運転する場合自動車損害賠償責任保険に加入することが法令により義務付けられており、違反すると処罰される強制保険である。→#保険
125cc以下の原動機付自転車は市区町村へ届け出がなされ、軽自動車税が課せられる。→#税区分
2012年時点の統計で、オートバイ全体の年間販売総数(約38万台)のおよそ6割が原動機付自転車である(第一種原動機付自転車が約12万台、そこに第二種原動機付自転車を加えると総計約24万台に上る)[2]。
四輪以上は後述。
特定小型原動機付自転車
2023年(令和5年)7月1日以降は、道路交通法上の原動機付自転車の一区分としての「特定小型原動機付自転車」(特定原付)が新たな基準及び規制により法令改正・施行されている。これにより、特定原付に該当しない原動機付自転車は、「一般原動機付自転車」(一般原付)と法令上呼称されることとなった。それぞれの基準、交通規制および適用法令は異なるため、詳細は同項目を参照のこと。
なお本項目では以降、簡便のために、特に記載しない限り、道路交通法上の「原動機付自転車」は「一般原動機付自転車」を指すものとする。
- 原動機自転車
-
ホンダ・モンキー(50cc)
-
ホンダ・トゥデイ(スクータータイプ、50cc)
-
ホンダ・スーパーカブ(125cc)
-
スズキ・アドレス V125 (125cc)
-
ヤマハ・シグナス X (125cc)
-
ホンダ・ジャイロX(三輪タイプ、50cc)
-
ヤマハ・トリシティ(三輪タイプ、写真は125ccのもの)
-
ヤマハ・E-VINO(電動スクーター。高視聴率番組『出川哲朗の充電させてもらえませんか?』で広く知られるようになった車種。)
注釈
- ^ 自転車を「チャリンコ」と呼ぶ文化に基づく。
- ^ (50cc以下区分の場合、設計は多くが「49cc」となっている。50.0ccで製作することが困難であることと、50ccをほんのわずかでも超えると法律違反となるため、念のため49ccにしてある。)
- ^ 道路交通法施行令第11条より。30km/hを超える最高速度が指定されている道路であっても、30km/h以下で走行しなければならない。
- ^ 片側(一方通行の場合は道路全体)が三車線以上で「原動機付自転車の右折方法(小回り)」の標識が無い場合、又は、車線数に関わらず「原動機付自転車の右折方法(二段階)」が設置されている場合。
- ^ 保安基準における「最高速度」は、法規制速度のことではなく、車両の性能上の最高速度のことである。
- ^ 特定小型原動機付自転車は、免許不要であり、16歳以上であれば運転可能である。
- ^ 小型自動車(登録ナンバー車)格であれば、道路運送車両法違反(未登録運行罪)にも問われる。
- ^ 道路外出入りのための横断や、駐停車のために規定の路側帯に入る場合を除く。
- ^ a b c 特定小型原動機付自転車を除く。詳細は同項目を参照。
- ^ それぞれ罰則あり。特定小型原動機付自転車も対象である。なお、電動キックボードや一般原付・自動二輪車等であって密閉のボックス等を備えない車両については証書の携行に困難が伴うとされたため、2023年(令和5年)6月1日施行の改正法令および自動車損害賠償保障法に係る民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律に基づき、スマートフォン等による電磁的提示も有効となる予定である。ただし詳細は未詳
- ^ 特定小型原動機付自転車も対象である。
出典
- ^ 「二輪における運転免許制度改正の歴史」
- ^ ウェブアーカイブ - 日本自動車工業会「二輪車販売台数の内訳(2012年時点)」
- ^ “自動車:特定小型原動機付自転車について - 国土交通省”. www.mlit.go.jp. 2023年7月2日閲覧。
- ^ “自動車:道路運送車両の保安基準(2022年12月23日現在) - 国土交通省”. www.mlit.go.jp. 2023年7月2日閲覧。
- ^ “国土交通省|報道資料|特定小型原動機付自転車に関する保安基準の整備等を行います!”. 国土交通省. 2023年7月2日閲覧。
- ^ 道路交通法第85条第2項
- ^ 道路交通法第85条第2項
- ^ 道路交通法第34条第5項
- ^ [1]
- ^ 道路運送車両法第四四条、および道路運送車両の保安基準第六十二条の三より。
- ^ “道路運送車両の保安基準の細目を定める告示”. 自動車交通局 技術安全部環境課 (2012年10月1日). 2020年1月19日閲覧。
- ^ 『セグウェイ』は整備不良…50万円の罰金命令 - Response.jp
- ^ a b c “産業競争力強化法関係|国家公安委員会Webサイト”. 国家公安委員会Webサイト. 2023年7月2日閲覧。
- ^ a b “産業競争力強化法に基づく新事業活動計画を認定しました (METI/経済産業省)”. www.meti.go.jp. 2021年2月17日閲覧。
- ^ a b c 「立ち乗り電動スクーター」に係る特例措置について(通達) (PDF) 警察庁交通局交通企画課長、警察庁交通局交通規制課長
- ^ a b “新事業特例制度の活用実績(METI/経済産業省)”. www.meti.go.jp. 2021年2月17日閲覧。
- ^ a b 国家公安委員会告示第四十三号 (PDF)
- ^ https://www.meti.go.jp/press/2020/10/20201016005/20201016005-1.pdf
- ^ https://www.meti.go.jp/press/2020/10/20201016005/20201016005-3.pdf
- ^ a b https://www.meti.go.jp/policy/jigyou_saisei/kyousouryoku_kyouka/shinjigyo-kaitakuseidosuishin/press/210115b_press.pdf
- ^ https://www.meti.go.jp/press/2020/10/20201016005/20201016005-2.pdf
- ^ https://www.npa.go.jp/laws/kaisei/furei/200925/honbun.pdf
- ^ a b c https://www.npsc.go.jp/policy/list/koutsuu/sankyouhou.pdf、p.7
- ^ 規制改革集中受付期間/全国規模での規制改革要望に対する回答への再検討要請(様式1) (PDF) (p.4「原動機付自転車の最高速度制限の緩和」管理コードz0100070)
- ^ 二輪車特別委員会の調査提言書「二輪車の利用環境デザイン」 (PDF)
- ^ 八重洲出版 雑誌 モーターサイクリスト 2009年5月-11月号の集中連載記事「50ccはいらない?」第1回~第7回。二輪販売業関係者の提言は第5回と第6回、二輪車特別委員会委員長の免許制度の技能講習案の詳しい説明は第7回
- ^ 「クルマの免許で125ccバイクまで」の是非を問う
- ^ “手軽な「原チャリ 」消えてしまうのか50cc原付一種 各社のラインアップは今”. 乗りものニュース. (2021年8月22日) 2023年11月3日閲覧。
- ^ “若者の味方「原付バイク」はどこへ消えた? ヤマハ・ホンダ提携が示すバイク文化の凋落”. 東洋経済ONLINE. (2016年10月10日) 2023年11月3日閲覧。
- ^ “「原付免許は125ccまで」”. モーターファン. (2023年9月11日) 2023年11月3日閲覧。
- ^ “原付き免許で「小型バイク」可能に、警察庁が検討 排ガス規制に対応”. 朝日新聞デジタル. (2023年9月7日) 2023年11月3日閲覧。
- ^ “"原付きバイク"総排気量125cc以下も区別追加検討 警察庁”. NHK NEWS WEB. (2023年9月11日) 2023年11月3日閲覧。
- ^ バイク・原付の事故率と事故の原因
- ^ バイクの二人乗りの条件。原付や子供の二人乗りは禁止?高速はいつから乗れる? チューリッヒ保険
- ^ ミニバイク エントリー方法 - 岡山国際サーキット
- ^ <Road to MotoGP> ついに世界統一規格「ミニGP」スタート! - Webオートバイ・2022年4月18日
- ^ アキヨシ カズタカ『げんつき 相模大野女子高校原付部』株式会社KADOKAWA、2013年1月。ISBN 484014785X。
- ^ トネ・コーケン『スーパーカブ』株式会社KADOKAWA、2015年5月。ISBN 4041056632。
原動機付自転車と同じ種類の言葉
- 原動機付自転車のページへのリンク