レンコン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/25 23:45 UTC 版)
歴史
アメリカ大陸やヨーロッパ、日本でも福井県などでレンコンの化石が発掘されており、白亜紀には既に北半球を中心に広く分布していたことが窺える[14]。食用に限ると中国、エジプト、インド、東南アジア[5]など原産地には諸説がある[15]。
日本においても行田古代ハスや大賀ハスなどの例から弥生時代から飛鳥時代にはすでに存在していたと推測されるが、地下茎は今ほど肥大化していなかった[3][15]。奈良時代ごろの『古事記』(712年)や『常陸国風土記』(713年)、『万葉集』(奈良時代末期)[5]には観賞用や食用としての言及が存在し、食用のものは仏教伝来とともに中国、百済から渡来したものと考えられている[15][14][16][5]。その後、鎌倉時代から江戸時代に中国から僧が持ち帰り定着したものが在来種となったと考えられるが、現在日本国内で流通しているレンコンの品種は明治以降に中国から導入した品種を品種改良したものがほとんどである[15][16]。
主な種類
大別すると、細長くて歯切れのよい在来種の系統と、肉厚で節が短くて太い中国種(別名:しなばす)の系統がある[17]。日本では、近畿以西で中国種、近畿以北では在来種の栽培が多い[4]。現在日本に流通しているもののほとんどは中国種で[17]、在来種はほとんど出回らない[4]。日本国内で栽培されている主なレンコンの品種や種類は以下のとおり。
- 備中(びっちゅう) - 晩生品種[14]。明治の初期に中国から導入された品種で、岡山県を中心に栽培されたことから名付けられた[18]。現在は徳島県を中心に西日本での栽培が多い[18]。根茎は整った長楕円形で、肉質は粉質[18]。
- 支那(しな) - 中国から導入された種蓮から選抜して育成した品種で、現在は1965年に選抜された「支那白花」が石川県や山口県を中心に栽培されている[18]。石川県の「加賀レンコン」、山口県の「岩国レンコン」は伝統野菜としてブランド化されている[18]。
- 加賀レンコン - 主に石川県で栽培される品種で、江戸時代に加賀藩主が苗を持ち帰って栽培が始められたと伝えられる。肉質が緻密でデンプン質が多く、もちもちした食感がある[7]。
- ロータスホワイト(単に「ロータス」とも) - 早生品種[14]。岩国レンコンから選抜されて岡山県・愛知県で広まり、現在は愛知県での栽培が多い[14][18]。備中に比べて早生で腐敗病に強く、節が短く肉質が硬い[14]。
- オオジロ - ごく早生の品種で、ハウス栽培では90日程度で収穫が可能[14][18]。備中に比べて腐敗病に強く、根茎は太く丸く白色で、肉厚で穴が小さい[14][18]。
- 金澄(かなすみ) - 早生品種[14]。千葉県の金坂孝澄が育成した品種で、1985年に最初の「金澄1号」が登録された[14]。現在普及しているものは主に金澄20号と金澄37号で、茨城県や千葉県を中心に全国に普及しており、関東地方で栽培されるレンコンの7割を占める[14]。
- 赤蓮根(あかれんこん) - 皮から中までピンク色をしたレンコン。生産量は少なく、日本の在来種は珍しく、中国種のものもある。粘りが強く、肉質はきめ細かく、シャキシャキした食感がある[7]。
- 成蹊(せいけい) - 早生品種。
栽培
主に沼沢地や水田(蓮田)で栽培される[3]。堆肥を使うなどして泥の地味や軟らかさを高めると、見た目が良く糖度が高いレンコンが育つとされる[19]。旧来は晩春に種蓮の植え付けを行い、秋から翌年の春に収穫されていたが、近年は早生の品種も増えている[3]。
主要な収穫方法は鍬などで掘って収穫する方法(「クワ掘り」「手掘り」などと呼ばれる)と、噴射した水を利用して収穫する方法(「水圧掘り」「水掘り」などと呼ばれる)に大分される[20]。水圧掘りのほうが省力的で作業効率が良いが、収穫時期に水が利用可能であることが大前提であり、砂質土壌ではレンコンが傷つくために採用することができない[20]。一方でクワ掘りは意図的に収穫しない列を設けて翌年の種蓮に利用できるといった利点も存在するが、粘土質土壌ではそもそも作業が困難で、田面を乾燥させすぎると腐敗病が発生しやすいという欠点がある[20]。日本国内の主要産地で見ると、茨城県や岡山県では水圧掘り、山口県や愛知県ではクワ掘りでの収穫が多い[20]。
泥付きの状態で出荷されることも多いが、これは空気に触れて酸化して変色することを防いだり、乾燥を防いで日持ちを良くする目的であることが多い[20][21]。特にクワ掘りの地域では泥付きの状態で収穫されるため、生産側の負担を軽減する目的もあって泥付きのまま出荷される割合が多い[20]。水圧掘りの地域では泥がない状態で出荷される割合が多いが、あえて泥を塗ってから出荷する地域も存在する[20][21]。
- ^ 文部科学省 「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」
- ^ 厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2015年版)」
- ^ a b c d e f g h i j “蓮根(読み)れんこん”. コトバンク. 2021年11月25日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k 講談社編 2013, p. 164.
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- ^ 【ふどろん食農教室】レンコン/穴にはどんな役割?『日本農業新聞』2019年9月21日(8面)。
- ^ a b c d e f g h 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 126.
- ^ レンコンの穴 何で開いているの?JAグループ福岡、取材協力:茨城県農業総合センター生物工学研究所(2019年9月23日閲覧)。
- ^ 土浦市は日本一のれんこんの産地です!土浦市ホームページ(2019年4月16日閲覧)。
- ^ “第3章 調理室における衛生管理&調理技術マニュアル”. 文部科学省. 2020年6月5日閲覧。
- ^ 【産直の旅】レンコン掘り*うどん・かば焼き 変幻自在『日本経済新聞』朝刊2019年4月13日別刷り日経+1(9面)。
- ^ 大野, 徹『ビルマ(ミャンマー)語辞典』大学書林、2000年、50頁。ISBN 4-475-00145-5。
- ^ Sofia for Food Magazine (2019年3月8日). “ကြာစွယ်ပျားရည်ပေါင်း (Honey Lotus Root Stuffed with Glutinous Rice)”. Food Magazine Myanmar. 2020年1月5日閲覧。
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- ^ a b c d e f g h 田口忠臣 (2019年10月22日). “蓮根の品種【中国種群】の特徴を紹介!食感はどんな感じ?”. オリーブオイルをひとまわし. 2021年11月11日閲覧。
- ^ 【産地からの手紙 旬菜物語】レンコン 茨城・JA水郷つくば/心つかむ白さと甘味『日本農業新聞』2019年9月21日(8-9面)。
- ^ a b c d e f g h 牧山正男. “レンコン主要産地における収穫方法とその変遷” (PDF). 2021年11月16日閲覧。
- ^ a b “れんこんが泥付きで売っているのはなぜ?”. 野菜大図鑑 (2020年10月16日). 2021年11月25日閲覧。
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