ルル (オペラ)
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『ルル組曲』
ソプラノと管弦楽のための『オペラ"ルル"からの交響的小品』(Symphonische Stücke aus der Oper „Lulu“)いわゆる『ルル組曲』は1934年に作曲された。構成は以下の通りである。
- ロンド - 第2幕のアルヴァとルルの会話の場面で流れる管弦楽のパート。
- オスティナート - 第2幕、シェーン博士を射殺したルルが逮捕されてから収監されるまでの一部始終を描いた映画の音楽。
- ルルの歌 - 第2幕、ルルがシェーン博士に向かって歌うアリア。
- 変奏曲 - 第3幕第1場の終わりで、ルルが警察にまたもや追われて逃れる部分の音楽。
- アダージョ・ソステヌート - 第3幕の終結部。ルルの死とゲシュヴィッツ伯爵令嬢の悲鳴。
1934年11月30日にエーリヒ・クライバーの指揮によってベルリンで初演され、好評を博したが、クライバーはその4日後にベルリン国立歌劇場の音楽監督をやめてドイツを去っている[9]。ベルク自身は、死の直前の1935年12月11日にウィーンでオズヴァルト・カバスタ指揮の演奏に出席した[10]。
第3幕が補筆されるまでは、第2幕の後に「変奏曲」と「アダージョ・ソステヌート」を演奏するのが慣例となっていた。
引用
第1幕第3場には『ローエングリン』の「結婚行進曲」が、そして第3幕にはヴェーデキント自身が作曲した『リュートの歌』が引用されている。また、ベルク自身の『ヴォツェック』から動機の引用が見られるのも特徴である(第1幕第3場での冒頭の引用、第3幕終結部でのマリーの期待を示す空虚五度の引用など)。
楽器編成
クラシック音楽史上初めてヴィブラフォンを使用した曲として知られている[要出典][注 3]。
ピット内
木管楽器:フルート3(2番と3番はピッコロ持ち替え)、オーボエ3(3番はイングリュッシュ・ホルン持ち替え)、アルト・サクソフォーン、クラリネット3、バスクラリネット1、ファゴット3(3番はコントラファゴット持ち替え)
金管楽器:ホルン4、トランペット(C管)3、トロンボーン3、チューバ1
打楽器:ティンパニ(4個)、トライアングル、タンブリン、小太鼓、ジャズ・ドラム、大太鼓、シンバル(合わせと懸垂)、ルーテ、タムタム(大小)、ゴング、ヴィブラフォーン
弦楽器:14型、1stヴァイオリン14、2ndヴァイオリン12、ヴィオラ10、チェロ8、コントラバス6
舞台上 (第1幕第3場)
クラリネット3(テナーサクソフォーン1本持ち替え)、アルトサクソフォーン、ジャズトランペット2、スーザフォン、ジャズ用のドラムセット、バンジョー、ピアノ、ヴァイオリン3、コントラバス。
メディア
CD
2幕版
- ヘルベルト・ハフナー指揮、ウィーン交響楽団、イローナ・シュタイングルーバー(ルル役)、1951年ライヴ (Archipel、ナクソス)
- ブルーノ・マデルナ指揮、ローマRAI交響楽団、イローナ・シュタイングルーバー(ルル役)、1959年ライヴ(Opera d'Oro)
- レオポルト・ルートヴィヒ指揮、ハンブルク・フィルハーモニー国立管弦楽団、アンネリーゼ・ローテンベルガー(ルル役)(EMI)
- カール・ベーム指揮、ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団、イヴリン・リアー(ルル役)、1968年(ドイツ・グラモフォン)
- カール・ベーム指揮、ウィーン国立歌劇場、アニヤ・シリヤ(ルル役)、1968年ライヴ(Andante)
- クリストフ・フォン・ドホナーニ指揮、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、アニヤ・シリヤ(ルル役)、1976年(デッカ)
- シュテファン・アントン・レック指揮、パレルモ・マッシモ歌劇場、アナート・エフラティ(ルル役)、2001年ライヴ(Oehms Classics)
3幕版
- ピエール・ブーレーズ指揮、パリ・オペラ座、テレサ・ストラータス(ルル役)、1979年。下記のライヴ映像と同配役、同時製作だが、こちらはスタジオ録音(ドイツ・グラモフォン)
- ロリン・マゼール指揮、ウィーン国立歌劇場、ジュリア・ミゲネス(ルル役)、1983年ライヴ(BMG)
- ジェフリー・テイト指揮、フランス国立管弦楽団、パトリシア・ワイズ(ルル役)、1991年ライヴ(EMI)
- ウルフ・シルマー指揮、デンマーク国立放送交響楽団、コンスタンス・ホーマン(ルル役)、1996年(シャンドス)
- ポール・ダニエル指揮、イングリッシュ・ナショナル・オペラ、リザ・セイファー(ルル役)(英語歌唱、シャンドス)
DVD
2幕版
- フランツ・ヴェルザー=メスト指揮、チューリヒ歌劇場、ローラ・アイキン(ルル役)、2002年ライヴ(Arthaus Musik)
3幕版
- 上記ブーレーズの録音と同時期のライヴ(ユニテル、ドリームライフ)
- ジェームズ・レヴァイン指揮、メトロポリタン歌劇場、ジュリア・ミゲネス(ルル役)、1980年ライヴ(ソニー)
- アンドルー・デイヴィス指揮、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団、クリスティーネ・シェーファー(ルル役)、1996年グラインドボーン音楽祭でのライヴ(ワーナー)
- アントニオ・パッパーノ指揮、コヴェント・ガーデン王立歌劇場、アイネタ・エイケンホルス(ルル役)、2009年ライヴ(Opus Arte)
- マルク・アルブレヒト指揮、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、パトリシア・プティボン(ルル役)、2010年ザルツブルク音楽祭でのライヴ(ユーロアーツ)
- ミヒャエル・ボーダー指揮、リセウ大劇場、パトリシア・プティボン(ルル役)、2010年(ドイツ・グラモフォン)
- ^ チャンパイ、ホラント (1988) pp. 342-343
- ^ a b Jarman, Douglas (1992). Alban Berg: Lulu. Cambridge University Press. p. 7
- ^ Clements, Andrew「ルル」スタンリー・セイディ編、日本語版監修:中矢一義、土田英三郎『新グローヴオペラ事典』白水社、2006年、p. 778
- ^ Jarman (1992) pp. 47-48
- ^ 昭和音楽大学オペラ研究所 オペラ情報センター
- ^ 昭和音楽大学オペラ研究所 オペラ情報センター
- ^ 昭和音楽大学オペラ研究所 オペラ情報センター
- ^ a b 浜尾 (1998) pp. 215-217
- ^ Perle (1985) pp.240-241
- ^ Perle (2001) p.111
- ^ ベルクは2作目のオペラの題材としてゲアハルト・ハウプトマンの『ピッパは踊る』(Und Pippa tanzt!) も検討していたが、友人たちは『ルル』を推し、おそらくハウプトマン側の意向もあって実現しなかった。Perle (1985) p. 40
- ^ 公式にはほかの仕事で忙しいと言ったが、実際の理由は原稿の中に反ユダヤ主義的な内容、とくにユダヤ人である銀行家の演じ方について、元のヴェーデキントの台本にはない「mauscheln」(ユダヤ人を軽蔑して指す語である「Mauschel」に由来し、「イディッシュ語で話す」という意味)という指示を見つけたことが原因だったという説がある。Perle (1985) pp.287-288
- ^ ヴィブラフォンを目立つ形で最初に用いた作品はハヴァーガル・ブライアンのオペラ "The Tigers" (1917-19/1928-29/1969)である可能性があり、ダリウス・ミヨーも1932年の "L'annonce faite à Marie" で用いている。Blades, James; Holland, James (2001), “Vibraphone”, in Sadie, Stanley, The New Grove Dictionary of Music and Musicians, 26 (2nd ed.), Oxford University Press, p. 522
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