ルル (オペラ)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/15 07:35 UTC 版)
演奏時間
約3時間(各幕約1時間前後)
あらすじ
プロローグ
サーカスで、猛獣使いがいろいろな動物を紹介する。最後に、彼はヘビをステージに導き「ルル」と紹介する。「蛇は誰にも気付かれることなく、いたずらを扇動し、誘惑し、誘惑し、毒殺し、殺害するために作成された。女性の原始的な性質」
第1幕
19世紀末、ドイツのある都市。ルルは貧民街にいたところを新聞の編集長シェーン博士に拾われた。シェーン博士は愛人関係を続けながらも、ルルを初老の医事顧問官(ゴル博士)と結婚させていた。
ルルの魔性に魅了された画家がルルに言い寄る。そこに医事顧問官がやってきて、怒りのあまり心臓発作で死ぬ。
ルルは画家と再婚し、シゴルヒやシェーン博士が彼女のもとを訪ねてくる。画家もルルの汚れた過去を知り、ショックのため自殺する。
劇場の踊り子になったルルの楽屋をシェーン博士が訪問する。シェーン博士は許嫁を連れて観劇に来たのだが、もはやルルから逃げられなくなったことを悟り、ルルの口述で婚約者への別れの手紙を書く。
第2幕
シェーン博士はルルと結婚する。しかし、ルルの回りには同性愛者のゲシュヴィッツ伯爵令嬢、貧民街時代に関係のあったシゴルヒ、力技師といった怪しげな人間がいて、さらに息子のアルヴァまでルルにのぼせあがってしまう。嫉妬に狂ったシェーン博士はルルにピストルで自殺するよう迫る。しかし、ルルは「誰かが私のために自殺したって、私の価値は下がったりしない」と言い返し、そのピストルでシェーン博士を射殺する。
サイレント映画で、ルルの逮捕・裁判・投獄が描かれる。しかし逮捕の1年後、ゲシュヴィッツ伯爵令嬢がコレラで入院中のルルと入れ替わり、ルルは脱獄に成功する(ただし、当時制作された映画はスティル写真を除いて失われており、本来は再製作が必要であるが現在の演奏では省かれている)。
ルルの脱獄計画を進めるアルヴァたちのもとをギムナジウムの学生が訪ねてくる。学生もルルを逃がす計画を語るが追い出され、そこに脱獄してきたルルが現れる。力技師とシゴルヒが退出し、ルルはアルヴァと二人きりで語り合う。
第3幕
ルルはゲシュヴィッツ伯爵令嬢、アルヴァ、力技師とともにパリに逃げ、華やかな暮らしを送っている。そこにシゴルヒも到着して、ルルをゆする。ちょうど力技師から、金をくれなければ警察に密告すると脅されていたので、ルルはシゴルヒに力技師を始末してくれるよう頼む。シゴルヒが待つ連れ込み宿に力技師を誘い込む役はゲシュヴィッツ伯爵令嬢に頼む。株の暴落の報が届き、さらにルルの過去を知る侯爵の通報で警察が迫って、ルルはアルヴァと逃亡する。
ルルはロンドンで売春婦をして暮らすことになり、教授を客として連れ込む。ともに暮らしているアルヴァとシゴルヒが教授のポケットを漁る。さらにパリから、落ちぶれたなりのゲシュヴィッツ伯爵令嬢が、画家が描いたルルの肖像画を持って到着する。
ルルはつぎに黒人の客を連れて帰る。黒人は前払いを拒否し、争っている最中にアルヴァが殺される。ゲシュヴィッツ伯爵令嬢がピストル自殺を思案しているところに、ルルがさらに別の客を連れてくる。しかし相手は切り裂きジャックで、ルルを惨殺し、さらにゲシュヴィッツ伯爵令嬢も刺して逃げる。重傷を負ったゲシュヴィッツ伯爵令嬢の、「ルル、私の天使!」という悲痛な叫びによりオペラは閉じられる。
構造
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『ルル』の構造は鏡に似ているとよく言われる。たとえば、第1幕のルルは栄華の極みだが、第3幕ではどん底まで落ちぶれているし、第1幕でルルの夫たち(医事顧問官、画家、シェーン博士)を演じた役者たちは、第3幕でルルの客(教授、黒人、切り裂きジャック)をそれぞれ演じるように指示される。
この鏡のような構造は、第2幕のサイレント映画のところでより顕著である(牢獄に入る-出る、といった配置)。そこに付随する音楽もきっちりと回文になっている。
また、第1幕第2場はシェーン博士の音列により全体がソナタ形式で、そして第3幕第2場は変奏曲形式で構成されている(ベルクは同様の試みを『ヴォツェック』ですでに試みている)。
- ^ チャンパイ、ホラント (1988) pp. 342-343
- ^ a b Jarman, Douglas (1992). Alban Berg: Lulu. Cambridge University Press. p. 7
- ^ Clements, Andrew「ルル」スタンリー・セイディ編、日本語版監修:中矢一義、土田英三郎『新グローヴオペラ事典』白水社、2006年、p. 778
- ^ Jarman (1992) pp. 47-48
- ^ 昭和音楽大学オペラ研究所 オペラ情報センター
- ^ 昭和音楽大学オペラ研究所 オペラ情報センター
- ^ 昭和音楽大学オペラ研究所 オペラ情報センター
- ^ a b 浜尾 (1998) pp. 215-217
- ^ Perle (1985) pp.240-241
- ^ Perle (2001) p.111
- ^ ベルクは2作目のオペラの題材としてゲアハルト・ハウプトマンの『ピッパは踊る』(Und Pippa tanzt!) も検討していたが、友人たちは『ルル』を推し、おそらくハウプトマン側の意向もあって実現しなかった。Perle (1985) p. 40
- ^ 公式にはほかの仕事で忙しいと言ったが、実際の理由は原稿の中に反ユダヤ主義的な内容、とくにユダヤ人である銀行家の演じ方について、元のヴェーデキントの台本にはない「mauscheln」(ユダヤ人を軽蔑して指す語である「Mauschel」に由来し、「イディッシュ語で話す」という意味)という指示を見つけたことが原因だったという説がある。Perle (1985) pp.287-288
- ^ ヴィブラフォンを目立つ形で最初に用いた作品はハヴァーガル・ブライアンのオペラ "The Tigers" (1917-19/1928-29/1969)である可能性があり、ダリウス・ミヨーも1932年の "L'annonce faite à Marie" で用いている。Blades, James; Holland, James (2001), “Vibraphone”, in Sadie, Stanley, The New Grove Dictionary of Music and Musicians, 26 (2nd ed.), Oxford University Press, p. 522
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