ルビー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/31 00:30 UTC 版)
性質・特徴
コランダムの中で赤色を示すものをルビーと呼び、透明なものから不透明なものまで存在する。当然、透明感が高く、インクルージョンの少ない物が高価である。
コランダムは不純物(金属イオン)の違いで色が変わる。不純物としてクロムが1%ほど混入すると、濃い赤色のルビーになる。鉄・チタンが混入すると青色のサファイアとなり、クロムが0.1%しか混ざっていない薄い赤色のものを「ピンクサファイア」と呼ぶ(ルビーの発色機構は色素を参照)。このクロムの含有割合1%以内という微妙なバランスが、自然界において非常に稀な状況下でしか起こらないため、天然ルビーが貴重とされるのである。なお、クロムが増えるにつれ色合いは濃い赤から黒っぽくなり、価値も下がってゆく。さらに5%を超えると、エメリーという灰色の工業用研磨剤になり、価値は激減する。
下の写真のように、ルビーは赤色成分を一切含まない緑色光源下においても赤く光ることができる(レーザーは完全な単色光である)。これは、ルビー中に0.1%含まれるCr3+が紫および黄緑色光を吸収し、そのエネルギーを赤色発光として再度放出する性質による[4]。
用途・加工法
高い硬度と抗切削性(磨耗しにくい性質)を有し、さらに静摩擦も小さいことから、レコード針や、トラックボールのボール受け、腕時計といった小型精密機械の軸受などに利用される。高コストのため主に高級機で採用される。
また、かつては合成ルビーが固体レーザー素子「ルビーレーザー」として用いられた。
歴史
古代
ルビーの歴史は、古代には青銅器時代にまで遡る。古代ギリシアでは「アンスラックス」(古代ギリシア語: ἄνθραξ、「石炭」の意)、ローマでは「カルブンクルス」(ラテン語: carbunculus)と呼ばれていた。
インドでも古くからルビーがあったようで、ヒンドゥー教の聖典『リグ・ヴェーダ』に名前が出ている。
中世
ルビーの名が使われ始めたのは中世からであるが、11世紀のキリスト教の司教・マルボドゥスが著した中世の代表的な鉱物誌である『石について』では、ダイヤモンドやサファイア、エメラルドなどに比べて記述が少ない。
また、アラビアやペルシアでは、ルビーに病気を治す力があると信じられていた。インドでもルビー粉が秘薬として用いられたことがある。
近代
ヨーロッパ史上最大のルビーとされるものは、1777年にサンクトペテルブルクを訪れたスウェーデン王グスタフ3世が、ロシアのエカチェリーナ女帝に贈ったルビーで、小型の鶏卵程度の大きさで完全に透明であった。この石はロシア革命以前は皇帝の冠に飾られていたが、革命以降の行方はわかっていない。
ルビーとサファイアが同じ成分であることが分かったのは1783年で、ロメ・ド・リールというフランス人による。
1902年、フランスの化学者であるオーギュスト・ヴィクトル・ルイ・ベルヌーイにより、商業用の宝石としては初めて人工合成法が開発・発表された。この合成法は「ベルヌーイ法」と呼ばれる。
- ^ “ルビーに込められた意味とは”. 京セラ オードリー odolly. 2023年10月4日閲覧。
- ^ 大石修治, 手嶋勝弥, 宮本亮, 宮坂晃, 鈴木孝臣「ルビー結晶の酸化モリブデン系フラックス成長」『化学と教育』第54巻第6号、日本化学会、2006年、356-358頁、doi:10.20665/kakyoshi.54.6_356、ISSN 0386-2151、NAID 110008906857。
- ^ “ピジョンブラッドとは?”. morisruby.com. 2023年10月4日閲覧。
- ^ Red Ruby - Causes of Color
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