ビデオカード
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/09 02:21 UTC 版)
ビデオカードの構成
一般的なPC/AT互換機用ビデオカードは主に以下のモジュールにより構成される。
ビデオメモリ (VRAM)
表示する描画情報を保持するためのフレームバッファとして利用されるメモリ領域。大容量化に伴い、オフスクリーンバッファやシェーディングバッファなどとしても利用されるようになっている。グラフィックチップとは専用バスでポイント・ツー・ポイント接続される。広帯域で接続したほうが性能的には有利だが、コスト・実装面積・発熱などを優先しグラフィックチップの仕様より狭い帯域幅で接続することもある。
ビデオメモリには高速性と低価格性の両立が求められるため、汎用のDRAMだけでなく専用のRAMが用いられることも多い。かつては専用モジュールにより、ビデオメモリの増設に対応する製品も存在したが、2000年代以降ビデオメモリの増設に対応したビデオカードの存在は確認されておらず、おおむね2GB~16GB程度に固定されている。
NVIDIA GeForce RTX 4090、NVIDIA RTX 6000 Ada 世代、NVIDIA H100 Tensor Core GPUなど、一部のハイエンド製品やワークステーション・サーバー向け製品では24GB/48GB/80GB/96GBといった大容量ビデオメモリを搭載するものも出現している。
さらに、Radeon RX 6700 XT 12GBやGeForce RTX 3060 12GBなど、ミドルレンジやミドルハイクラスの製品でも比較的大容量のビデオメモリを搭載するものも出現している。
実装面積を重視するモバイル用途ではグラフィックチップのLSIパッケージにビデオメモリ用RAMを同梱している製品も存在する。
ビデオメモリとして用いられたRAM
- EDO DRAM
- Window DRAM
- SDRAM
- SGRAM
- DDR SDRAM
- DDR2 SDRAM
- DDR3 SDRAM
- DDR SGRAM (GDDR)
- GDDR2
- GDDR3
- GDDR4
- GDDR5
- GDDR5X
- GDDR6
- GDDR6X
- HBM
Unified Memory Architecture (UMA)
Unified Memory Architecture (UMA) とは、独立したビデオメモリを持たず、メインメモリをCPUと共有するシステムである。シェアードメモリ(シェアメモリ)・共有メモリなどとも呼ばれる。
メインメモリは同世代の専用ビデオメモリと比較すると低速であり[9]、システムとメモリ帯域を共有するためシステムパフォーマンスが低下するなどのデメリットがある。反面、実装面積が少なく省スペース性に優れる、部品点数が少なく安価であるなどのメリットがあり、チップセット統合グラフィックス機能で多く採用されている。SoCではeDRAMにより性能問題に対処している事例もある。
メインメモリの高速化に伴い、単体型のグラフィックチップにおいてもNVIDIA社のTurbo Cache、AMD社のHyperMemoryなどメインメモリをビデオメモリ領域として利用する技術が登場している。
内部インターフェイス
ビデオカードとシステムを接続するためのインターフェイス。データ転送用に高速な専用バスを用いることが多い。
主なビデオカード用内部インターフェイス
古いインターフェイス(2017年現在ではほとんど使われない)
その他の内部インターフェイス
またHDMIの普及黎明期には、ビデオカード上のHDMI出力端子から音声を出力する為に、基板上にS/PDIF入力インターフェイスを供える製品も登場している。
その他、マルチGPU技術の制御用端子やビデオキャプチャカードとの連携用端子などのオプション機能用の端子が搭載されることも多い。
外部インターフェイス
ビデオカードの出力をディスプレイなど表示デバイスに接続するためのインターフェイス。当初[いつ?]はアナログRGB出力(D-sub)が一般的だったが、2004年頃からDVI-I出力も備えマルチモニター機能に対応するものが一般的になった。S端子やコンポジットによるビデオ出力の他、コンポーネント出力を搭載する製品もあった。2018年現在は、DVI-D、HDMI、DisplayPortといったデジタル出力端子のみを搭載する製品が一般的である。
ビデオBIOS
ビデオカードに搭載されているBIOS。起動直後などシステムがリアルモードで動作している際にVGA互換モード表示機能を提供するためVGA-BIOSなどと呼ばれることもある。ビデオカード基板上のROMチップに格納されている。PC/ATと異なるアーキテクチャであるPC-9821等では、メインボード上に専用の表示回路を持っているため、VGA-BIOSを必要とせず、BIOSのプログラムそのものが非互換であるため、使用可能なボードであっても、BIOSを無効にしておく必要がある。
冷却機構
ビデオカードはPC内部で最も消費電力や発熱量が大きいパーツの一つであり、特に高性能なハイエンド製品では強力な放熱・冷却が必要となる。隣接する拡張スロット用空間を占有してしまうほど巨大なファンやヒートシンクを備える製品が2003年頃から登場し、後に一般化した。1スロットのみ占有するタイプであっても、放熱性を保つよう隣のスロットはなるべく空けておくのが望ましい。また、2018年頃から発売された高性能なビデオカードは冷却装置が大型化し、重量が2.4kgに達するものもある。そのためマザーボードを選択する際は差し込むスロットが重量に耐えきれるか判断して購入する必要がある。大型のビデオカードを利用する際は、パーツの損傷を防ぐため、専用の支え(ステー)の利用を検討することが望ましい。
一方、消費電力の小さいローエンド製品では発熱が少なく軽量でファンレス仕様の物もある。しかし、ファンレスのものはケース内に空気の流れがないと十分に放熱できないことがあるため、冷却が困難な場合はファンがあるものを利用するのが賢明である。
補助電源
ビデオカードの登場以来、駆動に必要な電力はデータインターフェイスから供給されるのが一般的であったが、2000年代初頭頃からのGPU消費電力の増大に伴い、PCIeスロットからの供給では追いつかなくなり、データインターフェイス経由の給電を補うための専用電源インターフェイスが登場し、ミドルレンジ以上の製品での搭載が一般化した。
一般に補助電源と呼ばれており、それぞれ6ピン 1つで75W、8ピン 1つで150W、12VHPWER 1つで最大600Wまでの電力が供給できる。
- ^ メーカーや販売店・販売代理店および時期などによって名称にばらつきがある。日本国内向けローカライズの際に「カード」が「ボード」に変更されることもある。
- ^ “Previous Generation Desktop Graphics Cards from NVIDIA Quadro” (英語). NVIDIA. 2022年9月4日閲覧。
- ^ “プロフェッショナルグラフィックスボードシリーズ - 株式会社 エルザ ジャパン”. www.elsa-jp.co.jp. 2022年9月4日閲覧。
- ^ “グラフィックスカード - GIGABYTE Japan” (英語). GIGABYTE. 2022年9月4日閲覧。
- ^ “ビデオカード - 全シリーズ|ASUS 日本”. ASUS 日本. 2022年9月4日閲覧。
- ^ “Graphics Cards | MSI Japan”. jp.msi.com. 2022年9月4日閲覧。
- ^ “MSI グラフィックボード 国内正規代理店”. 株式会社アスク. 2022年9月4日閲覧。
- ^ ASCII. “NEC、3Dグラフィックスアクセラレーターカード『TE4E』を発売”. ASCII.jp. 2022年9月4日閲覧。
- ^ たとえばDDR3とGDDR5では帯域幅におよそ10倍程度の差がある。
- ^ NVIDIA SLI/AMD CrossFire対応マザーボードと複数枚の対応グラフィックスカードを用いた分散レンダリングのほか、CUDA/OpenCL/DirectX/Vulkanのようなマルチデバイス対応APIによって分散コンピューティング・分散レンダリングを行なうこともできる。
- ^ オンボードグラフィックスやCPU内蔵GPUを用いたUMA構成の場合、システムメモリの一部がGPU用に予約・利用されることで、CPUが利用可能なメモリ空間が減少したり、GPU性能が比較的低速なメインメモリに律速されてしまったりする。外付けのビデオカード(専用VRAMを搭載するディスクリートGPU)を用いることで、これらの問題が解消され、システム全体の性能向上に寄与することがある。
- ^ 瀬文茶 (2014年10月23日). “ファンレス&長寿命、ASUSのGeForce GT 730ビデオカードをテスト ~あなたの知らない(?)ローエンドビデオカードの世界~ text by 瀬文茶”. AKIBA PC Hotline!. 株式会社インプレス. 2022年3月13日閲覧。
- ^ ASCII.jp:AMD、ノートPCに外付けGPUをつなぐ技術「AMD XConnect」を発表
- ^ AMD、Thunderbolt 3経由でノートPCに外部GPUを接続する技術「XConnect」 ~再起動不要で着脱可 - PC Watch
- ^ AMD,Thunderbolt 3接続の外付けGPU技術「XConnect」を正式発表 - 4Gamer.net
- ^ GeForce RTX 30 シリーズ ノート PC - NVIDIA
- ^ Intel gains, Nvidia flat, and AMD loses graphics market share in Q1 - Comments - Press Releases
- ^ a b “日常作業や2D CADを快適に――AMDが1スロットサイズのGPU「Radeon PRO W6400」を2022年第1四半期に投入 229ドルから”. ITmedia PC USER. 2022年3月13日閲覧。
- ^ a b c ““謎の”ビデオカードメーカー「Palit」潜入レポート”. ドスパラ. 2022年3月15日閲覧。
- ^ “「GeForce GT 1030」と「Radeon RX 550」直接対決。新世代のエントリー市場向けGPUをゲーマー目線でチェックする”. 4Gamer.net. Aetas, Inc.. 2022年3月15日閲覧。
- ^ “NEC、独自の3Dエンジンを搭載した業務用ビデオカードなど”. pc.watch.impress.co.jp. 2022年9月4日閲覧。
- ^ “航空管制 | EIZO株式会社”. www.eizo.co.jp. 2022年9月4日閲覧。
- ^ NVIDIAグラフィックス カード - 概要 | 日本ヒューレット・パッカード
- ^ “AMD,メモリ容量32GBのサーバー向けGPU「FirePro S9170」を発売”. 4Gamer.net. Aetas, Inc.. 2022年3月15日閲覧。
- ^ 4Gamer.net ― [COMPUTEX]S3 Graphics,「Chrome 5400E」を製品化。デジタルサイネージ向けに事業展開開始
- ^ 元麻布春男の週刊PCホットライン
- ^ Yoichi Yamashita (2022年9月20日). “NVIDIAグラボ 北米トップのEVGA、グラボから事実上の撤退、その理由は?”. マイナビニュース. 株式会社マイナビ. 2022年9月23日閲覧。
- ^ “Sondrel Agrees to Acquire IMG Works Division of Imagination Technologies” (英語). www.sondrel.com. 2018年6月26日閲覧。
- ^ “【電子版】半導体の英イマジネーション、米ファンドに身売り アップルのGPU内製化で存続困難に”. 日刊工業新聞電子版 2018年6月26日閲覧。
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