ビデオカード ビデオカードの歴史

ビデオカード

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/09 02:21 UTC 版)

ビデオカードの歴史

IBM PC系の主なビデオカードと主な表示モード
テキストモード
(桁×行)
グラフィックモード
(解像度/色)
メモリ
MDA 1981 80×25 - 4 KB
CGA 1981 80×25 640×200 / 4 16 KB
HGC 1982 80×25 720×348 / 2 64 KB
PGC 1984 80×25 640×480 / 256 320 KB
EGA 1984 80×25 640×350 / 16 256 KB
JEGA 1986 80×25 640×480 / 16 256 KB
8514 1987 80×25 1024×768 / 256 1 MB
MCGA 1987 80×25 320×200 / 256 ?
VGA 1987 80×25 640×480 / 16 256 KB
SVGA
(VBE 1.x)
1989 80×25 800×600 / 256 512 KB
640×480 / 256 等 512 KB+
XGA 1990 80×25 1024×768 / 256 1 MB
XGA-2 1992 80×25 1024×768 / 65,536 2 MB
SVGA
(VBE 3.0)
1998 132×60 1280×1024 / 16.8M 色々
ISAインターフェイスを備える初期のビデオカードの例

以下、IBM PC(とその末裔)のビデオ設計としてのビデオカードについて主に述べる。

IBM PCのビデオカード採用

1981年IBM PCは、当時のみならず後のパーソナルコンピュータでも普通に見られた、ビデオ回りのハードウェアをオンボードで固定したものにはせず、ビデオカードとして独立させる設計を採用した。

IBM PCはビデオサブシステム(ビデオチップなど)を本体(マザーボード)にではなく、拡張カードIBMはアダプターと呼ぶ)に搭載した。IBM PCの発売時には2種類のビデオカード(テキストモードのみのMDAと、グラフィックモードを持つCGA)が提供され、用途により選択・交換できた。また各アダプターは複数の表示モード(ビデオモード)を持ち、ビデオモードはBIOS割り込み(INT 10h, AH=00h, AL=ビデオモード)によってソフトウェアから切替可能である。更に後継のビデオ規格(EGA, VGA, XGA等)は、前身のビデオ規格の全てのビデオモードを含む。

この拡張性により、IBM PCファミリーおよびIBM PC互換機では、ユーザーは本体を買い換えなくても、各社から販売される多様なビデオカードに交換(種類によっては追加して共存)し、対応したディスプレイとソフトウェアを使用すれば、より高速・高解像度な表示環境を得られるようになった。中でもHerculesHGCは広く使われた。日本での東芝ダイナブック(初代J-3100 SS)も、CGAをベースに独自の日本語モード(640x400)を追加したものだった。

一文字テキスト出力(int 10h, ah=0eh)のような、BIOSの提供する機能としては高水準の機能を用意し(この機能を提供するBIOS ROMは本体ではなくビデオカードに載る)、MS-DOSなどはそちらを使うようにすることで、ハードウェアの差異に対するソフトウェアの互換性を確保した。

EGAの登場と上位互換

1984年のPC/ATではEGAが標準搭載されたが、これはMDAおよびCGAの上位互換であり、MDAとCGAの主要な表示モードを含んでいた。表示モードはソフトウェアで容易に切替できたため、下位の画面モードにしか対応していないソフトウェアも継続して使用できた。この上位互換は、その後の主要なビデオ規格でも継承され、また複数の画面解像度(走査周波数)に自動対応できるマルチスキャン方式のディスプレイが普及した。

EGAは広く普及し、各社がEGA上位互換のグラフィックチップやカードを製造した。日本でのAX規格のJEGAボードも、EGAをベースに独自の日本語モード(640x480)を追加したものだった。

VGAの登場と事実上の標準

1987年のPS/2ではVGAが搭載された。PS/2ではVGAチップはマザーボード上に搭載された(規格名称もAdapterからArrayになった)が、ビデオカードによる拡張性(置換え可能)は維持された。また従来のPC/AT(および互換機)用にもATバス用のVGA搭載ビデオカードが提供された。EGAの時と同様に上位互換性も維持され、VGAはEGAの画面モードを含み(従ってビデオ規格としてのVGAは、今でもMDAやCGAの各画面モードも含んでいる)、さらに独自の画面モード(640x480、16色など)が追加された。

VGAは急速に普及し、PC/AT互換機でもVGAは事実上の標準となった。2017年現在でもOSのインストール画面などはVGA表示を使用しているものが多い[要出典]日本IBMPS/55はPS/2ベースで、前半は日本独自のディスプレイアダプター(1024x768、XGAとは別規格)を搭載していたが、英語モード(英語DOSおよび後のDOS/V)ではマザーボード上のVGAが使用できた。さらにPS/55も後半(1990年の5535-S以降)は、徐々にVGA(のみ)や、後述のXGAや各種SVGAに移行した。

SVGAとXGA

各社から多様なVGA上位互換 (SVGA) カード(チップ)が提供された。なおSVGAは各社のVGA上位互換カード(チップ)の総称であり、特定の規格や解像度ではない。ただし、各社独自の拡張モード間では互換性はなかったため、VESAVBEとして共通となるモードを標準化した。この中で有名なのが初期の800x600画面解像度であり、俗に言われる「SVGAの解像度は800x600」の元となった。

1990年代の有名なXGAおよびSVGAのビデオカード(ビデオチップ)には以下があった。

  • IBMXGA、XGA-2
  • Tseng LabsET4000 シリーズ(多数の各社ビデオカードに搭載)
  • ATI の ATI Graphics Ultra シリーズ
  • Diamond の Diamond Stealth シリーズ(S3 86C911などを搭載)

IBMのXGAは、VGAと8514の上位互換(広義にはSVGAの一種だが、歴史的にSVGAと呼ばないことも多い)で、独自の1024x768 256色などの表示モードが追加され、MCA用とISA用のカードが登場した。XGAはマルチメディアを意識した設計であったが、高価な割には高速ではなかったためにIBM製のPC以外には広く普及せず、IBMはXGAの後には他社のSVGAチップを使用するようになった。

SVGAの中でもS3社の86C911は、ビデオサブシステム回路の複数のLSIをワンチップ化した世界初のグラフィックチップで、従来はCPUが行っていた描画処理のうち使用頻度の高いBitBltなどに対しアクセラレーションを行うことで非常な高速性を実現する画期的な製品となった。これらWindowsに特化したグラフィックアクセラレータウィンドウアクセラレータとも呼ばれるようになった。

また1990年代は拡張バス規格の移行期でもあり、PC/AT互換機ではISAVLバスPCIAGPなど各種のビデオカードが登場し、多数の組み合わせで競争や比較が行われた。またMacintoshも、Power Macintoshの第二世代から、NuBusからPCIに移行した。

日本での状況

世界の中でも日本だけは、PC-9801シリーズFMRシリーズマルチステーション5550などや、更にはIBM PC互換機ベースであるダイナブック、AX(JEGA)、PS/55(前半)でも、日本語表示モードでは固定解像度が主流の時代が続いた。

しかし1990年代にはDOS/VMicrosoft Windowsなどグラフィック中心の使用形態が普及した影響もあり、各社はPC/AT互換機に移行した。この結果、日本でもビデオカードが一般化したが、以上の経緯により国内のPC/AT互換機の大多数は最初からVGA以上を搭載している。

SXGA以降

SXGA以降のビデオカードや画面解像度の傾向については、下記関連項目を参照のこと。


  1. ^ メーカーや販売店販売代理店および時期などによって名称にばらつきがある。日本国内向けローカライズの際に「カード」が「ボード」に変更されることもある。
  2. ^ Previous Generation Desktop Graphics Cards from NVIDIA Quadro” (英語). NVIDIA. 2022年9月4日閲覧。
  3. ^ プロフェッショナルグラフィックスボードシリーズ - 株式会社 エルザ ジャパン”. www.elsa-jp.co.jp. 2022年9月4日閲覧。
  4. ^ グラフィックスカード - GIGABYTE Japan” (英語). GIGABYTE. 2022年9月4日閲覧。
  5. ^ ビデオカード - 全シリーズ|ASUS 日本”. ASUS 日本. 2022年9月4日閲覧。
  6. ^ Graphics Cards | MSI Japan”. jp.msi.com. 2022年9月4日閲覧。
  7. ^ MSI グラフィックボード 国内正規代理店”. 株式会社アスク. 2022年9月4日閲覧。
  8. ^ ASCII. “NEC、3Dグラフィックスアクセラレーターカード『TE4E』を発売”. ASCII.jp. 2022年9月4日閲覧。
  9. ^ たとえばDDR3GDDR5では帯域幅におよそ10倍程度の差がある。
  10. ^ NVIDIA SLI/AMD CrossFire対応マザーボードと複数枚の対応グラフィックスカードを用いた分散レンダリングのほか、CUDA/OpenCL/DirectX/Vulkanのようなマルチデバイス対応APIによって分散コンピューティング・分散レンダリングを行なうこともできる。
  11. ^ オンボードグラフィックスやCPU内蔵GPUを用いたUMA構成の場合、システムメモリの一部がGPU用に予約・利用されることで、CPUが利用可能なメモリ空間が減少したり、GPU性能が比較的低速なメインメモリに律速されてしまったりする。外付けのビデオカード(専用VRAMを搭載するディスクリートGPU)を用いることで、これらの問題が解消され、システム全体の性能向上に寄与することがある。
  12. ^ 瀬文茶 (2014年10月23日). “ファンレス&長寿命、ASUSのGeForce GT 730ビデオカードをテスト ~あなたの知らない(?)ローエンドビデオカードの世界~ text by 瀬文茶”. AKIBA PC Hotline!. 株式会社インプレス. 2022年3月13日閲覧。
  13. ^ ASCII.jp:AMD、ノートPCに外付けGPUをつなぐ技術「AMD XConnect」を発表
  14. ^ AMD、Thunderbolt 3経由でノートPCに外部GPUを接続する技術「XConnect」 ~再起動不要で着脱可 - PC Watch
  15. ^ AMD,Thunderbolt 3接続の外付けGPU技術「XConnect」を正式発表 - 4Gamer.net
  16. ^ GeForce RTX 30 シリーズ ノート PC - NVIDIA
  17. ^ Intel gains, Nvidia flat, and AMD loses graphics market share in Q1 - Comments - Press Releases
  18. ^ a b 日常作業や2D CADを快適に――AMDが1スロットサイズのGPU「Radeon PRO W6400」を2022年第1四半期に投入 229ドルから”. ITmedia PC USER. 2022年3月13日閲覧。
  19. ^ a b c “謎の”ビデオカードメーカー「Palit」潜入レポート”. ドスパラ. 2022年3月15日閲覧。
  20. ^ 「GeForce GT 1030」と「Radeon RX 550」直接対決。新世代のエントリー市場向けGPUをゲーマー目線でチェックする”. 4Gamer.net. Aetas, Inc.. 2022年3月15日閲覧。
  21. ^ NEC、独自の3Dエンジンを搭載した業務用ビデオカードなど”. pc.watch.impress.co.jp. 2022年9月4日閲覧。
  22. ^ 航空管制 | EIZO株式会社”. www.eizo.co.jp. 2022年9月4日閲覧。
  23. ^ NVIDIAグラフィックス カード - 概要 | 日本ヒューレット・パッカード
  24. ^ AMD,メモリ容量32GBのサーバー向けGPU「FirePro S9170」を発売”. 4Gamer.net. Aetas, Inc.. 2022年3月15日閲覧。
  25. ^ 4Gamer.net ― [COMPUTEX]S3 Graphics,「Chrome 5400E」を製品化。デジタルサイネージ向けに事業展開開始
  26. ^ 元麻布春男の週刊PCホットライン
  27. ^ Yoichi Yamashita (2022年9月20日). “NVIDIAグラボ 北米トップのEVGA、グラボから事実上の撤退、その理由は?”. マイナビニュース. 株式会社マイナビ. 2022年9月23日閲覧。
  28. ^ Sondrel Agrees to Acquire IMG Works Division of Imagination Technologies” (英語). www.sondrel.com. 2018年6月26日閲覧。
  29. ^ “【電子版】半導体の英イマジネーション、米ファンドに身売り アップルのGPU内製化で存続困難に”. 日刊工業新聞電子版. https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00444165 2018年6月26日閲覧。 





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