ズワイガニ ズワイガニの概要

ズワイガニ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/01 04:08 UTC 版)

ズワイガニ
ズワイガニ Chionoecetes opilio
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
亜門 : 甲殻亜門 Crustacea
: 軟甲綱 Malacostraca
亜綱 : 真軟甲亜綱 Eumalacostraca
: 十脚目(エビ目) Decapoda
亜目 : 抱卵亜目(エビ亜目) Pleocyemata
下目 : 短尾下目(カニ下目) Brachyura
: ケセンガニ科 Oregoniidae
: ズワイガニ属 Chionoecetes
: ズワイガニ C. opilio
学名
Chionoecetes opilio
(O. Fabricius, 1788)
和名
ズワイガニ楚蟹
英名
Snow crab

ベニズワイガニ紅楚蟹)などの近縁も本項で記載する

形態

甲羅にカニビルの卵が付着したオオズワイガニ
メスのズワイガニ(セコガニ)

体色は全身が暗赤色をしている。甲は膨らみがある三角形、脚(第1胸脚)と第5胸脚は短いが第2 - 4胸脚が長く、大きなオスが脚を広げると70cmになる。オスの甲幅は最大14cmであるものの、メスは半分の大きさである。メスは性成熟すると産卵、抱卵、幼生放出を繰り返す[3]日本産の個体は歩脚の長節が長く、亜種 C. opilio elongatus Rathbun, 1924 として分類する見解もある[2]

「ズワイ」は、細い木の枝のことを指す古語「楚(すわえ、すはえ)」が訛ったものとされ[3]、漢字で「津和井蟹」とも書かれる。

オスとメスは大きさが異なるために多くの漁獲地域でオスとメスの名前が異なる。

  • オス:エチゼンガニ、マツバガニ、ヨシガニ、タイザガニなど[4]
  • メス:メスガニ、オヤガニ、コッペガニ、コウバコガニ[5]、セコガニ、セイコガニ、クロコガニなど[4]

本種を記載した "Fabricius" は、オットー・ファブリシウス (Otto Fabricius) で、動物分類学の基礎を築いたことで知られるヨハン・クリスチャン・ファブリシウス (Johan Christian Fabricius) とは別人である。記載者まで表記する際は "O. Fabricius" として正確を期すことが多い[1]

生態

日本山口県以東の日本海茨城県以東からカナダまでの北太平洋オホーツク海ベーリング海に広く分布する。水深50 - 1,200mの砂泥底に生息し、水深200 - 600mの深海と水温0 - 3の水域を好む[1][2][3]

食性は雑食性であり、貝類多毛類などを捕食するほか、海底に落ちた魚介類海洋性哺乳類などの屍骸、自分自身の殻も食す。産まれてから親になるまでに約10年を要し、オスは11齢で漁獲許諾サイズの甲羅幅90mmを超える。最終齢からは4年程度生存する[6]

産卵期は初産6 - 7月、経産2 - 4月。深海域に生息するため、脱皮、季節移動、寿命など生態の解明はあまり進んでいない。オホーツク海での調査では、季節により生息域が変化し、雄雌により生息水深が変化していることが確認された[7]交尾後に産卵された卵は、腹節の内面にある腹肢に付着して抱卵され、1年から1年半経過すると、孵化してプレゾエアとなり放出される。放出後、親は短期間で再び産卵する。従って、成熟したメスは長期間、卵を抱いている。交尾時の精子は、メスの貯精嚢に保存されて少しずつ使用される[8]。飼育実験によると、ゾエア幼生からメガロパ幼生期の適正飼育水温は9 - 14℃[9]、100日から120日で稚ガニとなり、着底する。2003年に若狭湾で行われた調査によると、メスは66,000粒程度の卵を抱いており、高齢のメスはあまり放出しない[10]


  1. ^ a b c d 三宅貞祥『原色日本大型甲殻類図鑑 II』保育社 1983年 ISBN 4586300639
  2. ^ a b c d 武田正倫、古田晋平、宮永貴幸、田村昭夫、和田年史「日本海南西部鳥取県沿岸およびその周辺に生息するカニ類」『鳥取県立博物館研究報告 48』29-94, March 30, 2011, ISSN 0287-1688
  3. ^ a b c 水産総合研究センター 『おさかな瓦版 No.2』 2004年12月
  4. ^ a b 武田正倫ほか『新装版 詳細図鑑 さかなの見分け方』講談社 2002年 ISBN 4062112809
  5. ^ 加賀料理の一つ。香箱のように小さい、子を抱くメスという子箱、日本海の香りを秘める、など語原は諸説みられる。泉鏡花の『卵塔場の天女』に近江町市場(石川県金沢市)で売られるコウバコガニが登場し、茹でられた真っ赤なカニが並ぶ美しさを 「珊瑚畑に花を培ふ趣がある」と表現されている。
  6. ^ a b 平成28年度ズワイガニ オホーツク海系群の資源評価 水産庁増殖推進部漁場資源課
  7. ^ 山崎淳、桑原昭彦「大和堆におけるズワイガニの分布と最終脱皮サイズ」『日本水産学会誌』Vol.59 (1993) No.12 P.1977-1983, doi:10.2331/suisan.59.1977
  8. ^ 京都府農林水産技術センター海洋センター. “ズワイガニの生態と漁業 - 成熟と産卵(応用編)”. 2011年5月27日閲覧。
  9. ^ 小金隆之、浜崎活幸、野上欣也「ズワイガニ幼生の生残と発育日数に及ぼす水温の影響」『日本水産学会誌』第71巻第2号、公益社団法人日本水産学会、2005年3月15日、161-164頁、doi:10.2331/suisan.71.161NAID 110003162894 
  10. ^ 今攸、安達辰典「若狭湾沖に生息するズワイガニの産卵数」『日本水産学会誌』第72巻第4号、公益社団法人日本水産学会、2006年7月15日、673-680頁、doi:10.2331/suisan.72.673NAID 110004818347 
  11. ^ オオズワイガニ、浦河・様似沖で大発生 カレイ漁に打撃、巨額損害か”. 北海道新聞 (2023年5月30日). 2023年6月23日閲覧。
  12. ^ 水揚げされる主な魚の紹介 香住ガニ(標準和名:ベニズワイガニ) 但馬漁業協同組合
  13. ^ 本尾洋『日本海の幸 -エビとカニ-』(あしがら印刷出版部、1999年)60-63頁
  14. ^ 食材図鑑
  15. ^ 沖合底びき網漁業とは 水産研究・教育機構 開発調査センター
  16. ^ ベニズワイガニ漁業 鳥取県
  17. ^ 平成27年漁期TAC(漁獲可能量)設定に関する意見交換会 (PDF) 水産庁
  18. ^ ズワイガニ漁業(応用編)京都府
  19. ^ 山崎淳、宮嶋俊明、藤原邦浩、「京都府沖合における底曳網によるズワイガニ水ガニの入網数とリリース直後の生残率」『日本水産学会誌』Vol.77 (2011) No.3 P.372-380, doi:10.2331/suisan.77.372
  20. ^ 宮嶋俊明、岩尾敦志、柳下直己、山崎淳「京都府沖合におけるカレイ漁に使用する駆け廻し式底曳網の選別網によるズワイガニの混獲防除」『日本水産学会誌』第73巻第1号、公益社団法人日本水産学会、2007年1月15日、8-17頁、doi:10.2331/suisan.73.8NAID 110006163730 
  21. ^ ズワイガニ種苗生産研究 兵庫県立農林水産技術総合センター
  22. ^ 平成28年漁業・養殖業生産統計
  23. ^ 広尾克子:高級食材カニ 出世の歩み◇かつては肥料 高度成長期に「かにすき」誕生、産地の努力で変身日本経済新聞』朝刊2021年1月8日(文化面)同日閲覧
  24. ^ a b c d e f g h i j 1「ズワイガニ」ってどんなカニ? - 京都府海洋センター
  25. ^ a b c わが国の水産業 - 日本水産資源保護協会
  26. ^ マツバガニとズワイガニについての説明 - 鮮魚の産直通販:のん気な魚屋
  27. ^ 高級なズワイガニのブランド名と地域を知りたい”. 一般社団法人大日本水産会 魚食普及センター. 2024年1月1日閲覧。
  28. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab 日本海西部におけるズワイガニのブランド名”. 国立研究開発法人水産研究・教育機構. 2024年1月1日閲覧。
  29. ^ a b c 「新潟県産ズワイガニの価格向上を目指して」-肥満度を使った新しい選別-1”. 新潟県. 2024年1月1日閲覧。
  30. ^ ズワイガニ - 鳥取県水産試験場
  31. ^ 石川県漁業協同組合. “香箱ガニ”. 2022年12月30日閲覧。


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