カミキリムシ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/07/04 00:18 UTC 版)
人間とのかかわり
カミキリムシは、草木を利用する人間の観点では害虫としての存在が大きい。幼虫(テッポウムシ)が生木に穴を開けて弱らせたり、木材そのものの商品価値をなくす。また、成虫でも木や葉、果実を食害するものがいるので、林業・農業分野においてカミキリムシ類は害虫の一つといえる。
害虫として挙げられるおもなカミキリムシには以下のようなものがある。
- ゴマダラカミキリ - ミカン、ヤナギ、クリ、イチジクなど
- クワカミキリ、キボシカミキリ - クワ、イチジクなど
- シロスジカミキリ、ミヤマカミキリ - クリ、クヌギなど
- スギカミキリ、スギノアカネトラカミキリ - スギ、ヒノキ
- ルリカミキリ、リンゴカミキリ - サクラ、リンゴ、ナシなど、バラ科の樹木
- ブドウトラカミキリ - ブドウ類
- キクスイカミキリ - キク類
また、飛んで移動できるカミキリムシの成虫は、植物の伝染病などを媒介するベクターの役割も果たす。たとえば「マツクイムシ」と呼ばれるマツノマダラカミキリ Monochamus alternatus は日本の在来種だが、明治時代にマツを枯らす線虫の一種・マツノザイセンチュウ Bursaphelenchus xylophilus が北アメリカから日本に梱包材にまぎれて侵入、以降は線虫を媒介するとして線虫共々「マツクイムシ」として恐れられ、駆除が進められるようになった経緯がある[2]。他に遠隔地に移動した例としては、2011年にイギリスにおいて、中華人民共和国から輸入された椅子からマツノマダラカミキリおよびマツノザイセンチュウが見出されたこともある[3]。
害虫として嫌われる一方で、大型種の幼虫は世界各地で食用にされ、蛋白源の一つにもなっている。日本でも、燃焼中の薪の中にひそむカミキリムシの幼虫は焼き上がると破裂音を立てるので、その音がすると火箸などで薪から取り出されて食されていた。「テッポウムシ」の名は、破裂音を銃声にたとえたとも、食害により銃弾が撃ち込まれたかのような穴を開けるからとも言われる。
総じて、大顎が下を向くフトカミキリ亜科の多くや、カミキリ亜科のトラフカミキリ、スギノアカネトラカミキリ、ブドウトラカミキリ等が、農林業害虫として問題視される。
一方、あまり害虫視されていないのはノコギリカミキリやウスバカミキリの系統で、これらの種の幼虫が食するのは地中に埋もれた倒木や、腐朽した木である。その意味で幼虫の生態はクワガタムシに近いといえるが、クワガタムシほど腐朽、軟化が進行した材を食べるわけではない。
ハナカミキリ亜科の幼虫はほぼ全種が枯死、腐朽した材を食樹とする。中でも原始的な種とされるヒラヤマコブハナカミキリやベニバハナカミキリ、ハチに擬態したホソコバネカミキリ属Necidarisの大型種オニホソコバネカミキリ等は、老木の芯腐れ部分を食べるという特異さから、生態がなかなか解明されなかった。ヒメハナカミキリ属Pidoniaの一部は幼虫の食性がさらに極端であり、腐葉土を食べている。クビアカモモブトホソカミキリなどは単為生殖することが知られている。
また、カミキリムシはその多種多様さ、多彩さから昆虫採集の対象としても人気があり、熱心な収集家も多い。彼らは各種の花や木、伐採後の木材置き場や粗朶場(そだば : 間伐材などを積み上げた場所)、夜間の灯火などに集まったカミキリムシを採集する。木材置き場には生殖と産卵のために多くの種が集まる。また、ハナカミキリ類は小型の美麗種が多く、多くは初夏に山地の花に集まる。それもクリの花とかリョウブなど、花がふさふさとしたものに集まるものが多く、これを捕虫網ではたくようにして捕まえるのが大変な楽しみである。
カミキリムシが木に穴をあけることで樹液が出、虫の餌場ができる。
- ^ 高桑, 1984, 月刊むし
- ^ “松くい虫の生態と被害のメカニズム”. 鳥取県ホームページ. 2020年5月14日閲覧。
- ^ “危機に瀕する天然林 外注”. 英国ニュースダイジェスト (2017年11月2日). 2020年5月14日閲覧。
- 1 カミキリムシとは
- 2 カミキリムシの概要
- 3 人間とのかかわり
- 4 下位分類
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