エタノール 原料

エタノール

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/15 09:48 UTC 版)

原料

工業的に生産されるエタノールの原料は、主に質とデンプン質のものに大別される。糖質原料としてはサトウキビが使用されているが、テンサイが使用されることもある。これらからとれる廃糖蜜(モラセス)も重要な原料のひとつである。デンプン質の原料として最も使用されるものはトウモロコシであり、ほかにソルガム(スイートソルガム)やコムギなどの類などの穀物や、ジャガイモサツマイモといったイモ類が使用される[22]

このほかにも、炭水化物か糖が含まれていれば、原理的にはエタノールを生成できるため、さまざまな原料が使用されている。酪農においてチーズを製造したのちの乳清(ホエー)にも糖分が含まれているため、ニュージーランドではエタノール原料となっており[23]、また木材パルプ製造後の廃液にも糖分が含まれているため、カナダやロシアで原料として使用されている[24]。このほか、原理的には木材に含まれるセルロースを分解してエタノールを製造することも可能であり、技術自体は確立しているものの、費用面で折り合わず、生産はごく小規模に留まっている[24]

21世紀に入ってから、特にアメリカ合衆国を中心としてエタノール燃料の需要が急拡大し、エタノール用のトウモロコシ需要は、1998年の1,300万tから2007年には8100万tにまで急拡大する[25]など、トウモロコシやサトウキビの生産の多くがエタノール生産へと投入されるようになったが、こうした作物ではこれまでの食用・飼料用の需要と食い合う形となったために価格が急騰し、特にトウモロコシを食用として使用していた国家を中心に食糧危機が発生して、2007年-2008年の世界食料価格危機を引き起こした原因のひとつとなったという説もある[26]


注釈

  1. ^ 重量パーセント (wt%)。15 °Cでの体積パーセント (vol%) は95–96 vol%[4]
  2. ^ 急性アルコール中毒はエタノールを短時間に過剰摂取すれば、ALDH2の活性の有無を問わず、誰でも発症する。ALDH2の活性によって大きく変わるのは、少量のエタノール摂取によって吐き気などのアセトアルデヒドの悪影響が出てくるかどうかである。ALDH2の活性が高いヒトは、少々のエタノールを摂取したところで、エタノールの代謝によって体内で発生するアセトアルデヒドもすぐに処理できてしまえるので悪影響が出にくい。そうでないヒトは、アセトアルデヒドによる悪影響が出やすいということ。
  3. ^ かつては、ベンゼンが用いられていたが、発がん性、毒性のため、近年ではペンタンが用いられている[12]
  4. ^ 平成12年12月26日付け厚生省の通達[16]末尾のアルコール専売法施行規則別表「工業用アルコール変性標準」の抜粋より。
  5. ^ イソプロパノールはメタノールよりも炭素鎖が長いために、油を溶かす能力は高い。したがって、外用した場合は皮膚から脂分を取り去り、手荒れなどの原因になりやすいのはイソプロパノールとされる。

出典

  1. ^ D.D. Wagman, W.H. Evans, V.B. Parker, R.H. Schumm, I. Halow, S.M. Bailey, K.L. Churney, R.I. Nuttal, K.L. Churney and R.I. Nuttal, The NBS tables of chemical thermodynamics properties, J. Phys. Chem. Ref. Data 11 Suppl. 2 (1982).
  2. ^ a b c d e f MSDS- アルコール(99) (PDF) (Report). 日本アルコール産業. 1 January 2013.
  3. ^ 化学辞典』「エタノール」。
  4. ^ エタノール水溶液の容量%と比重及び重量%等との関係
  5. ^ Whitmore, Frank C. (2012). Organic Chemistry, Volume One : Part I: Aliphatic Compounds Part II: Alicyclic Compounds.. Newburyport: Dover Publications. ISBN 978-0-486-31115-9. OCLC 898770698. https://www.worldcat.org/oclc/898770698 
  6. ^ Radiation chemistry; [papers]. Argonne National Laboratory. Washington,: American Chemical Society. (1968). ISBN 0-8412-0120-X. OCLC 451648. https://www.worldcat.org/oclc/451648 
  7. ^ Vogel, Arthur Israel (1989). Vogel's Textbook of practical organic chemistry.. B. S. Furniss, Arthur Israel Vogel (5th ed. ed.). London: Longman Scientific & Technical. ISBN 0-470-21414-7. OCLC 18960711. https://www.worldcat.org/oclc/18960711 
  8. ^ 田中佑樹, 米山嘉治, 椿範立, 「2-4-4 ゼオライト触媒と金属触媒を用いた新規エタノール合成(2-4 天然ガス科学,Session2 天然ガス・メタンハイドレート等,研究発表)」『日本エネルギー学会大会講演要旨集』 2011年 20巻, 第20回日本エネルギー学会大会, セッションID:2-4-4, p.56-57, doi:10.20550/jietaikaiyoushi.20.0_56
  9. ^ 井上剛良, 「沿面放電を用いたメタンと水からのエタノール合成」『第36回日本伝熱シンポジウム講演論文集』 2巻 p.431-432, 1999, NAID 10009687526
  10. ^ 卜部𠮷庸『化学の新研究』三省堂、2019年1月10日、575頁。 
  11. ^ 妻木貴雄, 臼井豊和, 「エタノールからエチレンを作る : 活性アルミナ触媒を用いて(化学実験虎の巻)」『化学と教育』 42巻 1号 1994年 p.42-43, doi:10.20665/kakyoshi.42.1_42
  12. ^ 製造方法概要 - 日本合成アルコール株式会社
  13. ^ Flash points of ethanol-based water solutions”. Engineeringtoolbox.com. 2011年6月23日閲覧。
  14. ^ a b 「図解 バイオエタノール最前線 改訂版」p50 大聖泰弘・三井物産株式会社編 工業調査会 2008年5月25日改訂版1刷発行
  15. ^ 総務省のウェブサイトにある資料 - アルコール専売事業(2001年に廃止)の仕組みをあらわしたもの(2010年12月01日閲覧)。
  16. ^ a b 変性アルコールの例”. 2011年10月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年11月29日閲覧。
  17. ^ Methanol poisoning”. MedlinePlus. National Institute of Health (2013年1月30日). 2015年4月6日閲覧。
  18. ^ 「図解 バイオエタノール最前線 改訂版」p21 大聖泰弘・三井物産株式会社編 工業調査会 2008年5月25日改訂版1刷発行
  19. ^ 「図解 バイオエタノール最前線 改訂版」p91 大聖泰弘・三井物産株式会社編 工業調査会 2008年5月25日改訂版1刷発行
  20. ^ 「図解 バイオエタノール最前線 改訂版」p55 大聖泰弘・三井物産株式会社編 工業調査会 2008年5月25日改訂版1刷発行
  21. ^ Ford Motor Company - Ethanol(2003年3月14日時点のアーカイブ
  22. ^ 「図解 バイオエタノール最前線 改訂版」p15-16 大聖泰弘・三井物産株式会社編 工業調査会 2008年5月25日改訂版1刷発行
  23. ^ 「図解 バイオエタノール最前線 改訂版」p123 大聖泰弘・三井物産株式会社編 工業調査会 2008年5月25日改訂版1刷発行
  24. ^ a b 「図解 バイオエタノール最前線 改訂版」p125 大聖泰弘・三井物産株式会社編 工業調査会 2008年5月25日改訂版1刷発行
  25. ^ 「絵で見る 食糧ビジネスのしくみ」p146-147 榎本裕洋、安部直樹著 柴田明夫監修 日本能率協会マネジメントセンター 2008年8月30日初版第1刷
  26. ^ https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/pr/wakaru/topics/vol2/ 日本国外務省「わかる!国際情勢 食料価格高騰~世界の食料安全保障~」2008年7月17日 2019年3月4日閲覧
  27. ^ a b 消毒剤の毒性、副作用、中毒 (Report). 健栄製薬. 2020年9月26日閲覧
  28. ^ Agents Classified by the IARC Monographs, Volumes 1-111. monographs.iarc.fr
  29. ^ “消火訓練で10人やけど 滋賀、アルコールが飛散”. 日本経済新聞 (日本経済新聞社). (2013年8月4日). http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG0400X_U3A800C1CC1000/ 
  30. ^ “エタノールの「見えない炎」、消火訓練準備で10人やけど”. TBS. (2013年8月5日). http://news.tbs.co.jp/20130805/newseye/tbs_newseye5401821.html [リンク切れ]
  31. ^ 酒税法第二条
  32. ^ 同第七条、第九条
  33. ^ 同第六条
  34. ^ 同第三条
  35. ^ 同第二十三条
  36. ^ 二十歳未満ノ者ノ飲酒ノ禁止ニ関スル法律第一条
  37. ^ アルコール専売法十九条
  38. ^ 同第二十六条
  39. ^ 三協化学株式会社のウェブサイト(2010年11月29日閲覧)
  40. ^ [1] 日本アルコール販売のウェブサイト(2010年11月29日閲覧)
  41. ^ アルコール事業法第三条、第十六条、第二十一条、第二十六条。
  42. ^ 同第二条
  43. ^ 旧食品衛生法第二条第三項
  44. ^ 食品衛生法第十条。食品衛生法施行規則第十二条別表第一(使用を認められている添加物の一覧表)も参照。
  45. ^ a b c 化学史事典』「アルコール」。
  46. ^ a b c ホームヤード (1996), pp. 35–36.
  47. ^ アイド (1972), p. 18.
  48. ^ アイド (1972), p. 17.
  49. ^ アイド (1972), p. 169.






エタノールと同じ種類の言葉


固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「エタノール」の関連用語

エタノールのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



エタノールのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのエタノール (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS