逆流性食道炎とは? わかりやすく解説

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ぎゃくりゅうせい‐しょくどうえん〔ギヤクリウセイシヨクダウエン〕【逆流性食道炎】

読み方:ぎゃくりゅうせいしょくどうえん

胃液逆流して食道に起こる炎症。ひどい胸焼け胸痛、喉に酸っぱい液が上がって来るなどの症状がある。食道下部括約筋がゆるむ、食道の動きが鈍るなどが原因胃食道逆流症一つびらん性胃食道逆流症。→非糜爛性胃食道逆流症


逆流性食道炎

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/02/16 03:06 UTC 版)

逆流性食道炎(ぎゃくりゅうせいしょくどうえん、英:reflux esophagitis)とは、胃酸十二指腸液が、食道に逆流することで、食道の粘膜を刺激し粘膜にびらん・炎症を引きおこす疾患名。胃食道逆流症(Gastroesophageal Reflux Disease:GERD)の一つ。現在では、未治療の逆流性食道炎は狭心症よりもQOLを損なう疾患とされており、胃酸関連疾患の中で非常に重要な疾患として位置づけられる[1]。危険な合併症として、食道出血、狭窄、食道癌が挙げられている。

疫学

1997年の報告[2]では、1323例を対象とした内視鏡検査で、38例(男28、女10)の報告され 2.9% であった[2]。更に、合併症として 9例に消化性潰瘍、11例に裂孔ヘルニアを認めたと報告されている[2]。1995年までは、1〜3% 程度の頻度であったが、1996年以降[3]16.3%と急激に増加している[4][5][6]。増加の原因は、食事の欧米化[6]ヘリコバクター・ピロリ感染者の減少[6]、肥満者の増加[6]、ストレスによる食道知覚過敏亢進と言った患者側の要因のほかに、医師の関心や診断技術の進歩が挙げられている[5][6]。また、胸やけ症状がありながら内視鏡検査で所見を認めない事例も多いとされ、胸やけありと回答した例のうち 55.3% は内視鏡的に食道炎の所見が認められないとの報告がある[5]。一方、胸焼けの自覚症状がなくとも内視鏡的に食道炎の所見が認められる例が 10.5% 存在した[5]

発症メカニズムと現状

食道との接合部には、食道内に胃内容物が逆流することのないよう、下部食道括約筋(LES)などの流防止機構がある。しかし、加齢による下部食道括約筋の働きの低下と食道自体のぜん動運動と唾液の減少[7]食道裂孔ヘルニアによる逆流防止機構の破壊、一過性LES弛緩、腹圧の上昇による胃内圧の上昇などの要因により、胃食道逆流をきたしやすくなる。

食事・生活様式は胃食道逆流症と深く関わっており、炎症を悪化させる食べ物に高脂肪食をはじめ、アルコールコーヒー炭酸飲料、柑橘系ジュース、玉ねぎチョコレートあん饅頭香辛料などが挙げられる。脂肪分の多い食べ物は消化に負担がかかることから、コレシストキニンという脂肪の消化に関わるホルモン物質が大量に分泌され、下部食道括約筋を弛緩させ胃液を逆流しやすくする。予防や治療的観点からはこれらの食べ物を避けることも重要である。喫煙もLES圧を低下させ、胃食道逆流症の増悪因子となる。前屈位などの体位や、食後すぐに横になることなどは腹圧の上昇を招き、逆流の原因、増悪因子となる。反対に就寝時の上半身挙上は、胃酸逆流を抑制させるため有効な治療法ともなる[7][1]

症状

以下のような症状がある。

  • 胸焼け、みぞおちや上胸部痛などが起こる
  • 食事中・後、横になったとき、前屈したときに喉や口に胃酸が逆流する
  • 胸部違和感、不快感
  • 喉の違和感、声のかすれ
  • 腹部膨満感
  • 嘔吐・多くは過度のおくび(げっぷ)を伴う。
  • 流涎
  • 食物による食道痛
  • 就寝中逆流物の気道への誤嚥による呼吸器症状

要因

以下のような要因が知られている。

検査

  • PPIテスト
PPIを短期間試験的に投与し、症状の改善を確認する。
食道上皮に発赤やびらん・潰瘍、腫瘍がないか検査する。
分光画像内視鏡
胃・バレット食道・正常食道の粘膜の色調の変化から判別を行う。
拡大内視鏡
血管走行や腺構造の違いが調べる。
下部食道括約筋の5cm上方にチューブまたはカプセルを留置し、胃酸逆流を評価する。24時間検査し、食道内pH4以下の時間が5%以上で胃食道逆流症と診断。検査中の症状、食事、睡眠を記録し、過剰な胃酸曝露と症状・逆流間の相関を測定し、一致率50%~60%以上で陽性[10]
食道インピーダンスpHモニタリング
  • 食道内圧検査

診断

症状から胃食道逆流症を疑う場合、内視鏡検査で粘膜障害があれば逆流性食道炎の確定診断と重症度評価ができる。内視鏡所見がない患者や難治例では食道内pHモニタリングが診断や治療方針決定に有用である[10][11]

「改訂ロサンゼルス分類」、逆流性食道炎の分類[12]
グレード 解説
Grade N 内視鏡的に変化を認めないもの(normal)
Grade M 色調が変化しているもの(minimal change)
Grade A 長径が5mmを越えない粘膜障害で粘膜ひだに限局されるもの
Grade B 少なくとも1ヵ所の粘膜障害が5mm以上あり、それぞれ別の粘膜ひだ上に存在する粘膜障害が互いに連続していないもの
Grade C 少なくとも1ヵ所の粘膜障害が2条以上のひだに連続して広がっているが、全周性でないもの
Grade D 全周性の粘膜障害

治療

逆流性食道炎の治療では、薬物療法と生活習慣の改善を並行して進める。症状が回復しない場合や症状のコントロールが困難な場合、あるいは長期服用を避けたい場合には、外科治療や内視鏡治療を検討する[13]

薬物治療[11]
胃酸を抑える内服薬として、
生活習慣[11]
  • 就寝前に食事を取らず、胃の中に物が入っていない状態で寝る。
  • 身体の左側を下にして寝ると胃袋が食道よりも下になるので逆流を防ぎやすい。
  • ベッドヘッド(頭側)を15~20cm高くし、腹部から上を挙上して寝る。
  • 暴飲暴食を避ける。
  • 脂質は胃内停滞時間を延長し、下部食道括約筋を弛緩させるため避ける。バター、マヨネーズ、クリーム、揚げ物などの高脂肪食は特に影響が大きい。
  • 起床時に水などを一杯飲む。
  • 肥満による腹囲増加や衣服による腹部圧迫を避ける
  • 低い椅子、床に座る、ものを拾うなどの前傾姿勢を避ける。
外科治療[15]

腹腔鏡下噴門形成術

  • Nissen法(Nissen fundoplication)
    • 胃底部を食道下部に360度巻きつけて逆流防止弁を形成する外科手術。1955年にRudolph Nissenが初めて実施した[16]。腹腔鏡下手術により低侵襲化され、通常3〜5箇所の小切開(0.5〜1cm程度)から行われる。
    • 治療成績

5年成功率87.7%、10年成功率72.9%[17]。20年追跡研究では成功率92%との報告もある[18]。90%以上の患者で胸やけ・逆流症状のコントロールが達成されるが、長期経過で約23%がPPI使用を必要とする[19]

    • 合併症

嚥下障害[16]、 ガス膨満症候群:最大41%で発生、通常2-4週で自然軽快[16]曖気や嘔吐困難[17]、再手術率:約13.6-20%、そのうち91.3%が術後5年以内[17][20]

  • Toupet法 約270度巻き付け

LINXシステム英語版(The LINX Reflux Management System)

内視鏡治療

2022年4月よりARMS(ARM-P含む)は保険適用となっている[13]

  • 内視鏡的逆流防止粘膜切除術(ARMS:anti-reflux mucosectomy)
    • 内視鏡を用いて噴門部の粘膜を切除し、その治癒過程での瘢痕収縮により噴門部を引き締める治療法である。粘膜下層に局注後、粘膜切除を行い、人工的な潰瘍を形成することで、約1~2か月後に治療効果が現れる[21]
  • 内視鏡的逆流防止粘膜形成術(ARM-P:anti-reflux mucosal plasty)
    • ARM-Pは、ARMSやARMAの課題である潰瘍治癒時の収縮率の個人差(約2%で効果不十分)や術後出血リスク(特に抗血栓薬服用患者で約5%)を解決し、主流となりつつある。
    • 本術式では、胃小弯部の約1/3周(約3cm×3cm)の粘膜を切除後、内視鏡的縫合手技(Loop-assisted/Line-assisted clip closure)で直接閉鎖する。従来法と異なり、潰瘍治癒を待たずに閉鎖できるため、収縮の個人差を抑え、術後出血リスクも低減される[22]
    • 当初は、術後2~3週に一過性狭窄が14.4%発生し、3回以上のバルーン拡張を要することもあったが、バタフライ法導入後は狭窄率が低下した。合併症として穿孔や出血が報告されるが、内視鏡的止血術やクリップ閉鎖で対応可能である。治療効果として、PPI内服を中止できた症例は約50%、症状の軽減は約70%の患者で認められ、30%の患者で効果が認められていない[23]
    • 術前から絶食・点滴管理を行い、治療時間は約1時間である。術前から絶食・点滴管理を行い、治療時間は約1時間である。術後は全粥から開始し、創部の癒合までは食事量を調整することが推奨される。主な合併症として、穿孔(0.9%)、出血(1.8%)、狭窄(5%)が報告されている。また、多くの症例で創部痛がみられ、鎮静薬の副作用による吐き気(約30%)、呼吸抑制(数%)なども認められる。[24][25]
  • 内視鏡的逆流防止粘膜焼灼術(ARMA:anti-reflux mucosal ablation)
    • ARM-Pで効果が不十分な場合には、ARMAによる追加治療がされることがある。現在臨床研究が進められている[26]。国際的な二施設共同研究で、ARMA治療後2〜6ヶ月の臨床成功率は60%(39/65)、1年後には70%(21/30)に改善したと報告されている[27]
  • 経口内視鏡的噴門形成術(POEF:per oral endoscopic fundoplication)
    • 経口内視鏡で腹腔治療を行うnatural orifice transluminal endoscopic surgery(NOTES)の技術をもとに開発された[28]
  • 経口無切開噴門形成術英語版(TIF:Transoral incisionless fundoplication)
    • EsophyXという専用デバイスを用いて、内視鏡で胃の一部を食道に無切開で巻き付け縫合し、噴門形成する。5年以上の効果持続が複数報告されている[29]。米国消化器病学会(ACG)は2022年のガイドラインにおいて、TIFは、軽度〜中等度のGERDで食道裂孔ヘルニアが2cm以下の症例で外科手術を希望しない患者に対し、条件付きで推奨される低侵襲治療法として位置づけられている[30]
  • ストレッタ法英語版(Stretta)

脚注

  1. ^ a b c 守口敬仁会病院公式サイト - 逆流性食道炎について”. 2018年8月24日閲覧。
  2. ^ a b c 鈴木孝、服部和彦、一般演題、食道炎の臨床像 日本消化器病学会雑誌 1977年 74巻 10号 p. 1432-1462 (p.1446), doi:10.11405/nisshoshi1964.74.1432
  3. ^ 櫻井幸弘 、「逆流性食道炎の時代的変遷」 『胃と腸』 34巻8号 (1999年7月), doi:10.11477/mf.1403102769 (有料閲覧)
  4. ^ Furukawa, N., Iwakiri, R., Koyama, T. et al., Proportion of reflux esophagitis in 6010 Japanese adults: prospective evaluation by endoscopy., J Gastroenterol (1999) 34: 441., doi:10.1007/s005350050293
  5. ^ a b c d 大原秀一、神津照雄、河野辰幸 ほか、【原著】全国調査による日本人の胸やけ・逆流性食道炎に関する疫学的検討 日本消化器病学会雑誌 2005年 102巻 8号 p.1010-1024, doi:10.11405/nisshoshi.102.1010
  6. ^ a b c d e 星野慎太朗、岩切勝彦、逆流性食道炎患者におけるPPI治療のコツ 日本医科大学医学会雑誌 2016年 12巻 4号 p.135-136, doi:10.1272/manms.12.135
  7. ^ a b c d ロート製薬公式サイト”. 2018年8月24日閲覧。
  8. ^ 髙木隆一、大城崇司、鍋倉大樹 ほか、「開腹スリーブ状胃切除後の難治性逆流性食道炎に対して腹腔鏡下修正手術を要した1例」 『日本内視鏡外科学会雑誌』 21巻3号 (2016年5月), doi:10.11477/mf.4426200266, (有料閲覧)
  9. ^ 食道で増えている病気-逆流性食道炎と食道癌- 日本消化器病学会
  10. ^ a b 外来pHモニタリング”. MSDマニュアル. 2025年2月19日閲覧。
  11. ^ a b c d 胃食道逆流症(GERD)(消化器内科) 慶應義塾大学病院 KOMPAS
  12. ^ 慶應義塾大学病院資料[11]より引用し改変
  13. ^ a b 内視鏡的逆流防止粘膜切除術(ARMS)”. 多根総合病院. 2025年3月7日閲覧。
  14. ^ 岩切勝彦, 佐野弘仁, 田中由理子, 川見典之, 梅澤まり子, 飯泉匡, ... & 坂本長逸. (2010). 食道 pH・多チャンネルインピーダンスモニタリングによる PPI 抵抗性 NERD 患者の解析. 日本消化器病学会雑誌, 107(4), 538-548.
  15. ^ 対象疾患|食道(POEM/ARMA)”. 昭和大学. 2025年1月4日閲覧。
  16. ^ a b c Richter JE (2013). "Gastroesophageal reflux disease treatment: side effects and complications of fundoplication". Clin Gastroenterol Hepatol.
  17. ^ a b c Galmiche JP et al. (2011). "Laparoscopic antireflux surgery vs esomeprazole treatment for chronic GERD: the LOTUS randomized clinical trial". JAMA.
  18. ^ Dallemagne B et al. (2011). "Twenty-year experience with laparoscopic Nissen fundoplication". Br J Surg.
  19. ^ Lundell L et al. (2001). "Long-term results of a prospective randomized comparison of total fundic wrap (Nissen-Rossetti) or semifundoplication (Toupet) for gastro-oesophageal reflux". Br J Surg.
  20. ^ Anvari M, Allen C (2006). "Five-year comprehensive outcomes evaluation in 181 patients after laparoscopic Nissen fundoplication". J Am Coll Surg.
  21. ^ ARMS(内視鏡的逆流防止粘膜切除術)”. 神戸百年記念病院. 2025年2月22日閲覧。
  22. ^ 内視鏡的逆流防止術研究会(第5回ARMS/ARMA研究会)”. ARMS/ARMA研究会. 2025年2月21日閲覧。
  23. ^ 酸分泌抑制薬(PPI)抵抗性難治性胃食道逆流症に対する内視鏡治療(Anti-Reflux Mucosectomy:ARMS)による109例の検討(動画付き)”. J STAGE. 2025年3月14日閲覧。
  24. ^ 小さな創の内視鏡下手術”. 東京女子医科大学病院. 2025年3月26日閲覧。
  25. ^ 術後の吐き気について”. 丸石製薬株式会社. 2025年3月26日閲覧。
  26. ^ 胃食道逆流症(GERD) ARMS/ARMA”. 昭和大学横浜市北部病院 消化器センター. 2025年7月4日閲覧。
  27. ^ Shimamura Y, Inoue H, Tanabe M, Ushikubo K, Yamamoto K, Kimoto Y, Nishikawa Y, Ando R, Sumi K, Navarro MJ, Teruel Sanchez-Vegazo C, Peñas B, Parejo S, Martínez Sánchez A, Vazquez-Sequeiros E, Onimaru M, Albillos A, Rodriguez de Santiago E (2024). “Clinical outcomes of anti-reflux mucosal ablation for gastroesophageal reflux disease: An international bi-institutional study”. Journal of Gastroenterology and Hepatology 39 (1): 149-156. doi:10.1111/jgh.16370. PMID 37787176. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37787176/. 
  28. ^ 胃食道逆流症に対する内視鏡治療の現状と展望」『Gastroenterological Endoscopy』第65巻第6号、2023年、1085-1093頁、doi:10.11280/gee.65.10852025年11月22日閲覧 
  29. ^ 松田, 浩二「最大6年間経過観察したGERD患者におけるEsophyx(TIF 2.0)による経口非切開噴門形成術の長期成績および治療成績の関連因子についての検討」『Gastroenterological Endoscopy』第57巻第6号、2015年、1445-1459頁。 
  30. ^ Gyawali, CP; Katzka, DA; Roman, S; Vela, MF; Young, PE; Gerson, LB; Pandolfino, JE (2022). “ACG Clinical Guidelines: Clinical Use of Esophageal Physiologic Testing”. American Journal of Gastroenterology 117 (1): 27–56. doi:10.14309/ajg.0000000000001538. 

関連項目

外部リンク


逆流性食道炎

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胃切除術」の記事における「逆流性食道炎」の解説

噴門機能低下することで胃液食道逆流し炎症引き起こす。胃を全摘出した場合胃液逆流はないが胆汁膵液逆流問題となる。

※この「逆流性食道炎」の解説は、「胃切除術」の解説の一部です。
「逆流性食道炎」を含む「胃切除術」の記事については、「胃切除術」の概要を参照ください。

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