Grok
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/10/23 04:12 UTC 版)
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Grok 3の出力スクリーンショット
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| 開発元 | xAI |
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| 初版 | 2023年11月3日 |
| リポジトリ | |
| プログラミング 言語 |
Python、Rust[1] |
| 種別 | チャットボット |
| ライセンス | プロプライエタリ(Grok-1.5以降) Apache License 2.0[2](Grok-1のみ) |
| 公式サイト | grok |
Grok(グロック[3])は、xAIによって開発された、大規模言語モデル(LLM)に基づいた生成的人工知能チャットボットである。Xの全投稿データをリアルタイムに学習しており、イラストなどの画像生成機能に加え、最新のトピックに関する質問に回答できる[4][5][6]。
概要
「Grok」という名称は、アメリカのSF作家であるロバート・A・ハインラインが1961年に書いたSF小説『異星の客』で用いた造語であり、火星語で「理解する」「認識する」という意味に由来する[7]。
xAIによると、Grokはイギリスの脚本家ダグラス・アダムスが書いたSFシリーズである『銀河ヒッチハイク・ガイド』をモデルにしたAIであると述べ[7]、「質問に対して少しウィットに富んだ答え方をするように設計されており、ユーモアが嫌いなユーザーは手を出さないように」と述べた[8]。また、xAIを立ち上げたイーロン・マスクは、「ChatGPT等の他のAIモデルに比べると、Xへのリアルタイムアクセスと言うアドバンテージを持つことが大きな利点である」と述べた[8]。
歴史
Grok-1
2023年11月3日、マスクはBard(Google。現:Gemini)やChatGPT(OpenAI)に対抗するため、同社の最初の製品として[8]独自の人工知能(AI)チャットボット「Grok」を開発していることを発表し、XのサブスクリプションプランであるX Premium+に提供すると発表した[7]。同月にxAIは一部ユーザーを対象に大規模言語モデル(LLM)に基づいたチャットボットのプレビューを開始したが[9]、早期アクセスプログラムへの参加は認証済みユーザーに限定されていた[10]。Grokの開発期間は2か月で、テスト段階終了後にX Premium+の全ユーザーに提供すると発表した[11]。
2023年12月7日、マスクはGrokをX Premium+ユーザー向けに本格提供すると明らかにした[12]。
2023年12月8日、マスクはGrokが日本語対応になると共に、2024年初頭には全ての言語に対応すると発表した[13]。
2024年3月11日、マスクはGrokをオープンソース化すると発表した[14]。
2024年3月17日、マスクはGrokをGitHubでApache License 2.0で公開した[15][2]。
Grok-1.5
2024年4月12日、Grok-1.5 Vision(Grok-1.5V)を発表した。Grok-1.5Vは、文書や図、グラフ、スクリーンショット、写真などの様々な視覚情報が処理可能となった[16]。
Grok-2
2024年8月14日、Grok 2 mini(beta)を発表した[5]。Xの投稿データを元にした画像生成機能が初めて搭載された[5]。
2024年12月6日、Grokが無料ユーザー向けに条件付き(メッセージ送信は2時間ごとに最大10回まで)ではあるが開放された[17]。
2025年1月9日、Grokのスタンドアロン型iOSアプリがApp Storeでリリースされた[18]。同年2月14日にはスタンドアロン型AndroidアプリがGoogle Playにて事前登録が開始された[19]。
Grok-3
2025年2月17日、Grok 3を発表した[20]。Grok 2と比較して10倍の計算リソースを用いて事前学習を完了させたという[21]。
Grok-4
2025年7月9日、最新の主力AIモデルであるGrok-4と4-Heavyを、Grokのその他のアップデートとともに発表した。 xAIは、この最新モデルがHumanity's Last ExamやARC-AGIなど、複数のベンチマークで最高レベルのパフォーマンスを達成し、GoogleのGemini 2.5 ProやOpenAIのChatGPT o3などの競合モデルよりも優れた性能を発揮すると主張している。
DOGEの活動のための利用
4月8日、ロイターは、イーロン・マスクが率いる第2次トランプ政権の政府効率化省(DOGE)が「大々的に」マスクのGrok AIチャットボットを連邦政府内で利用していることを報じた[22]。また、トランプが指名した政府職員がDOGEはAIを使用してメッセージアプリなどのコミュニケーションを監視していると述べたこと、情報源の一人が「私たちはDOGEがトランプへの反対やマスクへの反対の発言を探していると言われました」と話したことも報じている[22]。
アイルランドデータ保護委員会の調査
2025年4月11日、アイルランドデータ保護委員会(DPC)は、EUユーザーがX上に投稿した公開投稿に含まれる個人データを、生成的AIモデル、特にGrokの大規模言語モデル(LLM)の訓練目的での処理に関する調査の開始を発表した[23]。
この調査は、Xによって管理されていたデータの一部、特にヨーロッパコミュニティのユーザーによってプラットフォームに投稿された公開投稿に含まれる、個人データの使用に関する広範な問題を検討するものであるとされている。調査の実施はデータ保護委員(Commissioners for Data Protection)によって決定され、X社に対して通知された[23]。
トレーニング
Grokは独自開発の大規模言語モデル「Grok-1」が使用され、2か月にわたってトレーニングが行われる。330億のパラメータからトレーニングしたプロトタイプ「Grok-0」より推論およびコーディング能力を強化させ、「HumanEval」等のいくつかのLLM評価指標でベンチマークが行われた結果から、GPT-3.5やLLaMa 2を上回る結果を達成した[24]。
Grokipedia
2025年9月、マスクはxAIが「Grokipedia」と呼ばれるAI生成オンライン百科事典を構築中であると発表した[25][26]。このプロジェクトは、その月の初めにAll-In Podcastのカンファレンスでデイビッド・O・サックスによって提案命名されたものである[27]。マスクはGrokipediaをウィキペディアの対抗馬として設計された「AIを利用した知識ベース」であり、ウィキペディアに散見されるバイアスや誤謬、イデオロギー的偏向に対処するものだとした[28][29]。ギズモードはこれを、2006年のコンサーヴァペディアのプロジェクトと比較した[30]。
2025年10月、マスクはGrokipediaの初期ベータ版が同月内にリリース予定であることを発表した[31][32]。
トラブル
生成した画像を編集すると「内容を無視した画像を出力するケース」があるなど、現時点では画像生成機能に未熟な面が見られる[33]。また、文章の出力においても、性的・暴力的・違法な内容の規制が他のAIチャットボットより緩いほか[34][35]、事実とは異なる情報を生成することがある[36]。このため、不適切な文章やハルシネーション(幻覚)による誤情報の出力を行い、関係者から批判を受けたことがある。
- 2024年8月、アメリカ合衆国大統領選挙において、まだ有権者登録の期間中にも関わらず、Grokは「一部の州では既に登録期限が過ぎた」との偽情報を回答したため、州務長官5人がイーロン・マスクに対して、システムの改善を求める公開書簡を発表した[37][38]。
- 2025年5月、無関係な会話の中で白人虐殺陰謀論を突然出力した[39]。
- 2025年10月、日本の実業家が2018年から監修及び販売しているコルセットについて、Grokはトレンド説明において、「2025年10月に別の人物が開発したコルセットの模倣品」と回答したため、当事者が訂正を求める事態になった[40]。
- 2025年10月、滋賀県長浜市が職員による事務ミスについて厳罰化することを発表したが、Grokは本日のニュースにおいて、「京都市、単純ミスも処分対象に厳格化 隠蔽懸念の声相次ぐ」との見出しを生成したため、京都市役所は運営会社に誤情報の削除要請を行った[36][41][42]。
脚注
- ^ “Announcing Grok”. 2023年11月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年11月19日閲覧。
- ^ a b “Open Release of Grok-1” (英語). xAI (2024年3月17日). 2024年3月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年3月18日閲覧。
- ^ “マスク氏、新対話型AI「Grok」公開 Xにも導入へ”. ロイター (2023年11月6日). 2023年11月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年11月19日閲覧。
- ^ “イーロン・マスク氏の新会社xAI、独自AIボット「Grok」を発表”. CNET Japan. 朝日インタラクティブ (2023年11月7日). 2023年11月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年11月19日閲覧。
- ^ a b c Mehta, Ivan (2024年8月14日). “xAI releases Grok-2, adds image generation on X” (英語). TechCrunch. 2024年8月14日閲覧。
- ^ “Privacy policy” (英語). x.ai. 2024年8月14日閲覧。
- ^ a b c “xAIのAIボット「Grok」、Xプレミアムのハイエンドプランで提供へ”. ITmedia NEWS. ITmedia (2023年11月5日). 2023年11月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年11月19日閲覧。
- ^ a b c “マスクの人工知能スタートアップxAIのウィットに富むチャットボット「Grok」”. Forbes JAPAN. linkties (2023年11月7日). 2023年11月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年11月19日閲覧。
- ^ “Elon Musk debuts 'Grok' AI bot to rival ChatGPT, others”. NBC News. CNBC (2023年11月5日). 2023年11月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年11月19日閲覧。
- ^ “Elon Musk's xAI releases 'rebellious' Grok AI chatbot”. Fortune Europe. Fortune (2023年11月6日). 2023年11月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年11月19日閲覧。
- ^ “イーロン・マスク氏、独自のAIボット「Grok」公開-ChatGPTに対抗”. Bloomberg (2023年11月6日). 2023年11月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年11月19日閲覧。
- ^ “マスク氏、対話AI「グロック」をX有料プランで本格提供と投稿”. ロイター (2023年12月8日). 2023年12月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年12月8日閲覧。
- ^ Elon Musk [@elonmusk] (8 December 2023). “Will expand to all English language users in about a week or so. Japanese is next priority (2nd biggest user base) and then hopefully all languages by early 2024”. X(旧Twitter)より2023年12月11日閲覧.
- ^ “Elon Musk says xAI will open-source Grok this week”. TechCrunch. Yahoo (2024年3月11日). 2024年3月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年3月11日閲覧。
- ^ “イーロン・マスク氏のxAI、LLM「Grok-1」をオープンに”. ITmedia NEWS. ITmedia, Inc. (2024年3月18日). 2024年3月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年3月18日閲覧。
- ^ “Grok-1.5 Vision Preview”. xAI. 2024年4月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年5月6日閲覧。
- ^ “チャットAI「Grok」、Xの無料ユーザーに開放(条件あり)”. ITmedia NEWS. ITmedia (2024年12月8日). 2024年12月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年12月10日閲覧。
- ^ “X launches Grok’s iPhone app in the US”. The Verge. Vox Media (2025年1月10日). 2025年1月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年2月26日閲覧。
- ^ “XのAI「Grok」Androidアプリがまもなく登場”. ASCII.jp. 角川アスキー総合研究所 (2025年2月5日). 2025年2月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年2月26日閲覧。
- ^ “xAI、最も賢いモデル「Grok-3」発表 DeepSearchで詳細調査”. Impress Watch. インプレス (2025年2月18日). 2025年2月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年2月19日閲覧。
- ^ “「世界で最も賢いAI」--イーロン・マスク氏率いるxAIが「Grok 3」提供開始”. CNET Japan. 朝日インタラクティブ (2025年2月19日). 2025年2月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年2月19日閲覧。
- ^ a b ロイター編集「マスク氏のDOGE、米政府職員監視にAI利用=関係筋」『Reuters』2025年4月8日。2025年4月12日閲覧。
- ^ a b O'Donovan, Brian (2025年4月11日). “Irish data watchdog to investigate Musk's AI tool Grok” (英語) 2025年4月11日閲覧。
- ^ “イーロン・マスク、対話型AI「Grok」。X(Twitter)のリアルタイム情報を活用”. PC Watch. インプレス (2023年11月6日). 2023年11月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年11月19日閲覧。
- ^ “'Grokipedia': Elon Musk says xAI is working on a Wikipedia rival powered by AI”. Live Mint. 2025年10月8日閲覧。
- ^ Gucia, Wiktoria (2025年9月30日). “MAGA Melts Down Over Wikipedia ‘Blacklist’” (英語). The Daily Beast. 2025年9月30日閲覧。
- ^ Higgins, Tim (2025年10月4日). “Why Conservatives Are Attacking 'Wokepedia'”. Wall Street Journal. 2025年10月6日閲覧。
- ^ Kan, Michael (2025年9月30日). “Elon Musk Plans to Take on Wikipedia With 'Grokipedia'” (英語). PCMAG. 2025年9月30日閲覧。
- ^ “We are building Grokipedia @xAI . Will be a massive improvement over Wikipedia. Frankly, it is a necessary step towards the xAI goal of understanding the Universe.”. X. 2025年10月8日閲覧。
- ^ Novak, Matt (2025年9月30日). “Elon Musk's Wikipedia Competitor Is Going to Be a Disaster”. Gizmodo 2025年10月2日閲覧。
- ^ “What Is Grokipedia? Elon Musk To Unveil Wikipedia Competitor In Two Weeks”. NDTV. 2025年10月6日閲覧。
- ^ “Elon Musk: 'Grokipedia' Arrives Later This Month” (英語). PCMAG (2025年10月6日). 2025年10月6日閲覧。
- ^ “X、AI「Grok」無料で試せるように 写真みたいな画像も生成できる”. ASCII.jp. 角川アスキー総合研究所 (2024年12月9日). 2024年12月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年4月13日閲覧。
- ^ “イーロン・マスクが新AIモデル「Grok」を発表、“反抗的”なAIでいかなる世界を実現するのか”. WIRED.jp. コンデナスト・ジャパン (2023年11月7日). 2023年11月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年4月13日閲覧。
- ^ “イーロン・マスクのチャットAI「Grok」は爆弾の作り方や麻薬の調合方法をジェイルブレイクしなくても教えてくるという指摘”. GIGAZINE. OSA (2024年4月12日). 2025年4月13日閲覧。
- ^ a b “京都市「単純ミスも処分対象に」は誤情報 XのAI要約ニュース拡散で京都市困惑「正しい情報を届けていただきたい」”. J-CASTニュース (2025年10月22日). 2025年10月22日閲覧。
- ^ Munenori Taniguchi (2024年8月6日). “イーロン・マスクに「Grokによる大統領選に関する嘘情報拡散」停止を要求、米5州の州務長官が発表”. Gadget Gate. 株式会社音元出版. 2025年10月23日閲覧。
- ^ 青木紀美子 (2024年10月1日). “米,選挙控え偽情報対策の後退に懸念”. 放送研究と調査. NHK放送文化研究所. 2025年10月23日閲覧。
- ^ Kyle Orland (2025年5月15日). “xAI’s Grok suddenly can’t stop bringing up “white genocide” in South Africa” (英語). Ars Technica
- ^ “「Grok嘘つくのやめてくんない!??」アパレル女性社長 監修のコルセットを“GENKING監修のパクり”と判断され大炎上、本人は猛抗議”. Smart FLASH. 光文社 (2025年10月16日). 2025年10月22日閲覧。
- ^ 川村一郎 (2025年8月30日). “市役所職員の事務ミスを厳罰化へ 単純ミスはこれまで処分対象ならず、市長「時代に即した処分」”. 京都新聞. 2025年10月22日閲覧。
- ^ “Xで市が発表していない事実無根の情報流れる…生成AIが無関係の複数情報を集約して間違いか”. 読売新聞 (2025年10月22日). 2025年10月23日閲覧。
関連項目
- Ani - Grokに搭載されたAIコンパニオンの美少女キャラクター
外部リンク
- grokのページへのリンク