TAMと血管新生
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/30 10:00 UTC 版)
「腫瘍随伴マクロファージ」の記事における「TAMと血管新生」の解説
腫瘍の血管新生は、腫瘍が新しい血管を形成するプロセスであり、栄養素と酸素の供給の維持や腫瘍サイズの促進に寄与する。血管新生は、腫瘍細胞の血液循環への移動を可能にし、転移を容易にする。 TAMの主要な癌促進機序の1つとして、血管新生促進因子の高い分泌能力が挙げられる。 TAMにおいて最も高く発現が誘導され、よく知られる血管新生因子は、血管内皮増殖因子A (vascular endothelial growth factor-A:VEGF-A)である。 TAMは腫瘍の低酸素領域に蓄積し、VEGF発現を調節する低酸素誘導因子(hypoxia inducible factor-1α:HIF-1α)の発現を誘導する。 TAMは、VEGF-Aの産生に加えて、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)-9の活性を介して、あるいは内皮細胞にVEGF-A産生を誘導するWNT7Bを発現することで、VEGF-A濃度を調節することが示唆されている。 VEGF-Aに加えて、TAMは血管新生促進因子である腫瘍壊死因子α (TNFα)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(uPA)、アドレノメデュリン(AM)、およびセマホリン4Dを分泌する。 さらに、TAMにより産生されるサイトカインは、腫瘍細胞に対し血管新生促進因子の産生を促し、協調的に作用することで血管新生を誘導する。 Tie2を発現するTAMのクラスは、腫瘍の血管新生を誘導することが示唆されている。 Tie2 + TAMは、内皮細胞により産生されるアンジオポエチン2(Ang-2)を介して血管と結合し、パラクリンシグナル伝達を介して血管新生を活性化する。Ang-2が結合すると、これらのTAMは、チミジンホスホリラーゼ(TP)やカテプシンBなどのより血管新生因子の発現を誘導する。またAng-2は、Tie2 + TAMにT細胞調節因子であるインターロイキン(IL)-10やケモカイン(CCモチーフ)リガンド(CCL)の発現誘導する17 。これによりT細胞の増殖を抑制し、また制御性T細胞の増殖を促進し、腫瘍細胞が免疫応答を回避できるよう促す。 さらに、マクロファージ系統を調節するコロニー刺激因子-1 (CSF1)は、TAMにおけるTie2の発現を増加させ、CSF1およびTie2 + TAMが血管新生に重要な役割を果たす可能性があることが示唆されている。 腫瘍のリンパ管新生は腫瘍の血管新生と密接に関連しており、TAMにより産生される因子、特にVEGFファミリーとその受容体型チロシンキナーゼが関与する可能性が示唆されている。
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