Lorentz groupとは? わかりやすく解説

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ローレンツ群

(Lorentz group から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/07/11 21:12 UTC 版)

ローレンツ群の名前の由来、ヘンドリック・アントーン・ローレンツ (1853–1928) 

物理学および数学において、ローレンツ群 (ローレンツぐん、: Lorentz group) は、(重力を除いた)全ての古典的な設定における物理現象を説明する基礎となる、ミンコフスキー時空上の全てのローレンツ変換が成すである。ローレンツ群の名前はオランダ人物理学者ヘンドリック・ローレンツに因む。

ローレンツ変換の下では、次の法則および等式が不変に保たれる。

そのため、多くのよく知られた自然界の基本法則に対応する対称性は、ローレンツ群によって表現することができる。

基本性質

ローレンツ変換はミンコフスキー時空上の原点不動点とする等長変換であり、ローレンツ群は、等長変換全体が成すポアンカレ群部分群であるといえる。したがって、ローレンツ群はミンコフスキー時空上の等長変換群の等方的部分群である。この理由から、ローレンツ群は同次ローレンツ群 (homogeneous Lorentz group)と呼ばれることがあり、対してポアンカレ群は非同次ローレンツ群 (inhomogeneous Lorentz group) と呼ばれることがある。ローレンツ変換は線形変換あるのに対して、ミンコフスキー時空上の一般の等長変換はアフィン変換である。

数学的には、ローレンツ群は一般化直交群英語版 O(1, 3)、すなわち R4 上の二次形式

2+1次元時空の光円錐

ローレンツ群 O(1, 3)リー群であるから、滑らかな多様体として位相的に説明することができる。多様体としては、四つの連結成分を持っている。直感的には、このことは四つの位相的に分離した部分から成ることを意味する。

四つの連結成分はその要素がもつ二つの変換特性により分類される。

  • ある種類の要素は時間反転ローレンツ変換により逆転される。たとえば、未来を向いた時間的ベクトルは過去を向いたベクトルに反転される。
  • ある種類の要素は向きを非固有ローレンツ変換 (improper Lorentz transformations) により逆転される。たとえば、特定の四脚場英語版がそれにあたる。

時間の方向を保存するローレンツ変換は順時ローレンツ変換 (orthochronous Lorentz transformations) と呼ばれる。順時ローレンツ変換が成す部分群はしばしば O+(1, 3) と表記される。向きを保存するものは固有ローレンツ変換 (proper Lorentz transformations) と呼ばれ、線形変換としての行列式は +1(非固有ローレンツ変換では −1)となる。固有ローレンツ変換の成す部分群は SO(1, 3) と表記される。

向きと時間の方向を両方を保存する全てのローレンツ変換の成す部分群は、固有順時ローレンツ群 (proper, orthochronous Lorentz group) もしくは制限ローレンツ群 (restricted Lorentz group) と呼ばれ、 SO+(1, 3) と表記される。(SO(1, 3)もしくは O(1, 3) とさえ書いていても実際には SO+(1, 3) の意味で書いている著者もいるので注意。)

これら四つの連結成分の集合には、商群 O(1, 3)/SO+(1, 3) としての群構造が与えられ、これはクラインの四元群と同型である。 O(1, 3) の全ての元は、固有等時ローレンツ変換と離散群

{1, P, T, PT}

の元との半直積により書ける。ここで、 P および T はそれぞれ空間反転および時間反転作用素である。

P = diag(1, −1, −1, −1),
T = diag(−1, 1, 1, 1).

したがって、任意のローレンツ変換は固有順時ローレンツ変換に、これら二つの演算子を作用させるかさせないかを選び、どの連結成分に属するかを決めることにより表現できる。このパターンは有限次元リー群において典型的である。

制限ローレンツ群

制限ローレンツ群はローレンツ群の単位元成分英語版であり、従って群内の連続曲線によって単位元と結ぶことができる。制限ローレンツ群はローレンツ群全体の連結な正規部分群であり、次元も同じ六次元である。

制限ローレンツ群は通常の空間回転ローレンツブースト(時間的方向を含む平面上の双曲回転英語版と考えることができる)により生成される。全ての固有順時ローレンツ変換は回転(三つの実パラメータ英語版で記述される)とブースト(やはり三つの実パラメータで記述される)の積で書くことができ、任意の固有順時ローレンツ変換の記述には六つの実パラメータが必要となる。これはローレンツ群が六次元であることを理解する一つの方法である。(リー代数の節も参照。)

回転全ては通常の回転群 SO(3)英語版と同型なリー部分群を成す。しかし、ブーストを二つ組み合わせても一般にはブーストにはならないため、ブースト全ては部分群を成さない(むしろ、二つの非共線なブーストはブーストと回転の組み合わせに相当し、トーマス回転英語版に関連付けられる)。ある方向へのブーストもしくはある軸周りの回転は、1パラメータ部分群英語版を生成する。

推移曲面

一葉双曲面

双円錐面

二葉双曲面

G が空間 V に作用するとき、曲面 SV推移曲面 (surface of transitivity) であるとは、SG の下で不変、つまり gsS が任意の gGsS に対して成り立ち、かつ任意の二点 s1, s2S に対してある gG が存在して gs1 = s2 が成り立つことをいう。ローレンツ群は定義により二次形式

リー代数 SO(1, 3) の共役による違いを除いた部分代数の束

連結リー群の常として、制限ローレンツ群の閉じた部分群の剰余空間、すなわち等質空間は、非常に数学的に興味深い。いくつか簡潔な説明を加えると、

  • Sim(2) は「ヌルライン」、すなわちリーマン球面上の点の であり、等質空間 SO+(1, 3)/Sim(2) は球面 S2 上の共形幾何英語版を表現するクライン幾何英語版である。
  • ユークリッド群 SE(2) (の単位元成分)はヌルベクトルの安定化部分群である。よって、等質空間  SO+(1, 3)/SE(2) は質量のない粒子の運動量空間である。幾何学的にはこのクライン幾何はミンコフスキー時空上の光円錐の「縮退した」幾何を表現している。
  • 回転群 SO(3)時間的ベクトルの安定化部分群である。よって、SO+(1, 3)/SO(3) は質量のある粒子の運動量空間である。幾何学的には、この空間は三次元双曲空間英語版 H3 にほかならない。

被覆群

前節では、スピノル写像と呼ばれる準同型写像 SL(2, C) → SO+(1, 3) を構築した。SL(2, C) は単連結であるから、これは制限ローレンツ群 SO+(1, 3)被覆群である。 制限により、準同型写像 SU(2) → SO(3) が得られる。ここで、特殊ユニタリ群 SU(2) は単位ノルム四元数の成す群と同型であるから、これもまた単連結であり、回転群 SO(3) の被覆群である。これらの被覆写像はそれぞれ、被覆群のちょうど二つの要素が商群の各要素に対応するという意味で二重写像である。制限ローレンツ群と回転群とは二重連結であるということが多い。これは、各群の基本群が二要素巡回群 Z2同型であることを意味する。

量子力学への応用においては、特殊線形群 SL(2, C) のことがローレンツ群とよばれていることもある。)

二重被覆はスピン群の特徴である。実際、二重被覆

Spin+(1, 3) = SL(2, C) → SO+(1, 3)
Spin(3) = SU(2) → SO(3)

に加えて次の二重被覆も存在する。

Pin(1, 3) → O(1, 3)
Spin(1, 3) → SO(1, 3)
Spin+(1, 2) = SU(1, 1) → SO(1, 2)

これらスピノル二重被覆クリフォード代数と密接に関連している。

トポロジー

二重被覆

SU(2) → SO(3)

の左辺と右辺の群はそれぞれ次の二重被覆の左辺と右辺の群の変位レトラクトである。

SL(2, C) → SO+(1, 3)

ここで、等質空間 SO+(1, 3)/SO(3)三次元双曲空間英語版 H3位相同型であるから、制限ローレンツ群はファイバー SO(3) および底 H3 を持つ主ファイバー束であることが示されたことになる。 後者は R3 と位相同型であるから、SO(3) が三次元実射影空間英語版 RP3 と同型であるのに対して、制限ローレンツ群は RP3R3 の積に「局所的に」同型であるといえる。この底空間は可縮であるから、これは大域位相同型に拡張可能である。

より高次元への一般化

ローレンツ群の概念は任意の次元の時空に対して自然に一般化することができる。数学的には、n+1-次元ミンコフスキー時空のローレンツ群は Rn+1 上の線形変換のうち、次の二次形式を普遍に保つ変換の成す O(n, 1)(もしくは O(1, n))である。

出典は列挙するだけでなく、脚注などを用いてどの記述の情報源であるかを明記してください。記事の信頼性向上にご協力をお願いいたします。2016年7月
  • Artin, Emil (1957). Geometric Algebra. New York: Wiley. ISBN 0-471-60839-4  See Chapter III for the orthogonal groups O(p, q).
  • Carmeli, Moshe (1977). Group Theory and General Relativity, Representations of the Lorentz Group and Their Applications to the Gravitational Field. McGraw-Hill, New York. ISBN 0-07-009986-3  A canonical reference; see chapters 1–6 for representations of the Lorentz group.
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  • Fulton, William; Harris, Joe (1991), Representation theory. A first course, Graduate Texts in Mathematics, Readings in Mathematics, 129, New York: Springer-Verlag, ISBN 978-0-387-97495-8, MR 1153249, ISBN 978-0-387-97527-6  See Lecture 11 for the irreducible representations of SL(2, C).
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  • Hatcher, Allen (2002). Algebraic topology. Cambridge: Cambridge University Press. ISBN 0-521-79540-0  See also the online version”. 2005年7月3日閲覧。 See Section 1.3 for a beautifully illustrated discussion of covering spaces. See Section 3D for the topology of rotation groups.
  • Naber, Gregory (1992). The Geometry of Minkowski Spacetime. New York: Springer-Verlag. ISBN 0486432351  (Dover reprint edition.) An excellent reference on Minkowski spacetime and the Lorentz group.
  • Needham, Tristan (1997). Visual Complex Analysis. Oxford: Oxford University Press. ISBN 0-19-853446-9  See Chapter 3 for a superbly illustrated discussion of Möbius transformations.
  • Wigner, E. P. (1939), “On unitary representations of the inhomogeneous Lorentz group”, Annals of Mathematics 40 (1): 149–204, Bibcode1939AnMat..40..922E, doi:10.2307/1968551, MR 1503456 .



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